菅仮免視察は3月12日の上空視察ヘリコプター内で被災地の窮状を他処にビデオ撮影の主人公を演じていた

2011-04-28 11:03:41 | Weblog



 4月24日(2010年)当ブログ記事――《菅仮免は「KAN-FULL TV」4月23日紹介の石巻市避難所視察で情報隠蔽を謀った - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り扱った4月23日首相官邸発信、石巻市視察報告の「KAN-FULL TV」付属のブログの最初の謳い文句の箇所、〈「もっと現場を見ろ」「邪魔になるから行くな」「時期尚早」「遅すぎる」---様々な意見が飛び交う、総理の被災地訪問。事実を、淡々とお見せします。いつもの音楽もナレーションも、付けません。まずは、石巻から。〉の〈「もっと現場を見ろ」「邪魔になるから行くな」「時期尚早」「遅すぎる」〉などの声〉を「asahi.com」記事――《首相ブログ、批判も見せます 被災地訪問「事実のまま」》(2011年4月26日0時40分)は被災者の声、現場の声として取り扱っていた。

 私自身は、〈被災住民の声かと思ったが、あとの会話から菅仮免の視察に対する閣僚等が発した色々な意見だと分かった。〉と書いた。

 「asahi.com」記事の冒頭は、〈さまざまな意見が飛び交う被災地訪問、事実を淡々とお見せします――。〉とカンフルブログの謳い文句の紹介から入って、続けて、〈菅直人首相が自身のブログで自らの被災地訪問を取り上げ、これまでと違って音楽もナレーションもつけない動画をネット上で配信した。「邪魔になるから行くな」「時期尚早」といった批判めいた表現も、自戒を込めて載せたという。〉と、「邪魔になるから行くな」「時期尚早」を被災者の声として扱っている。

 記事は書いている。〈これまでは首相出席の国際会議の成果などを強調し、広報的な色彩が濃かった。今回は政権への好意的な反応に偏らず、視察の様子をそのまま伝えた。〉と。

 つまり批判的な反応もそのまま伝えたということになる。

 だが、「邪魔になるから行くな」「時期尚早」といった批判めいたとしている表現や、自戒を込めて載せた、様々な意見が飛び交う、総理の被災地訪問を今回は政権への好意的な反応に偏らず、視察の様子をそのまま伝えたと等々の文言を併せた前後の脈絡から見ると、「邪魔になるから行くな」「時期尚早」の声は被災地側の被災者等の批判の声ということにどうしてもなる。

 そうでなければ、残念ながら菅仮免よりも私自身の頭が悪いことになる。

 大体が、「政権への好意的な反応に偏らず」と言っているが、4月23日再開したというカンフルブログでは、80代の女性だという「これからどういう風に、自分たち生きていくのか…」という嘆きの言葉を伝えているものの、批判的な発言は一切伝えていない。

 「asahi.com」記事は撮影・制作の広報担当の下村健一内閣審議官の発言を伝えている。

 下村審議官「視察をどう思うか、判断や議論の材料として見てほしい」

 この発言自体にも、好意的反応だけではなく、批判的反応をも材料として提供する意思表示を含んでいる。まさか好意的反応のみを取上げて、「判断や議論の材料として見てほしい」と言っているとしたら、公平さに欠ける。

 「もっと現場を見ろ」「邪魔になるから行くな」「時期尚早」「遅すぎる」の声のうち、「もっと現場を見ろ」と「遅すぎる」は被災地の声と解釈できないこともないが、「邪魔になるから行くな」の「行くな」は官邸側が発する言葉であって、被災地側が発するとしたら、「邪魔になるから来るな」になる。

 また、「時期尚早」は時期の判断であって、その判断はどちらかというと官邸側が下す判断であろう。首相側から訪問の意向を伝えられた被災地側が「時期尚早」とは言わない。失礼に当たるからだ。

 官邸側の誰かが、「現地はまだ混乱しているから、訪問は時期尚早ではないですか」とは言えるが、被災地側の県知事か市長が、「現地はまだ混乱しています。訪問は時期尚早です」とは言えない。「訪問できる程に現地が落ち着いたなら、連絡します」といった言葉を使うはずだ。

 実はこの「時期尚早」という言葉を使って枝野官房長官が視察を止めている。《枝野官房長官の会見全文〈14日午後9時3分〉》(asahi.com/2011年3月14日23時15分)

 〈【首相の災害対応】

 記者「夕方の会見で、首相が避難所を直接訪問したいと検討していたと。誰が誰に持ちかけ、どういう理由で遠慮してほしいとなったのか」

 枝野「遠慮してほしいというよりも、事務方を通じて、現地が受け入れられる状況かどうか、改めて情報を把握したところ、かえって思いは別として迷惑をかけるということを、私のところで判断して、まだ時期尚早でありますということを、総理に進言して、できるだけ早い時期に、しかし、現場にかける迷惑が、様々な救援活動に影響を及ぼさない、出来るだけ早い時期に改めて検討することになった」

 「時期尚早」は、裏方を通じて把握した現地の情報に基づいて枝野自身が行った判断となっている。

 この枝野官房長官の記者会見は3月14日。時期尚早ということで一カ月近く待たされてから、4月10日の石巻市訪問となったということなのだろう。

 また「時期尚早」は理由を必要とする。いくら無能のトップリーダーだとしても、地位上は上の相手に対して理由を述べもせずに頭ごなしに「時期尚早です」とは言えない。

 「時期尚早」の理由が「邪魔になるから行くな」であろう。

 勿論「邪魔になるから行くな」と命令はできない。「邪魔になりませんか」とやんわりと諌めたはずだ。それを端的な命令形に変えることで、さも様々な意見が飛び交ったかのように見せかけることができる。

 「遅すぎる」は「時期尚早」に対する反意語として用いられている。「時期尚早」の意見に対して、菅仮免に取り入っている閣僚などが菅仮免の視察願望に迎合して「遅すぎる」といった意見、「もっと現場を見るべきだ」(=もっと現場を見ろ」)といった意見が出されたことは容易に想像することができる。

 「時期尚早」と「邪魔になるから行くな」の意見に対して、その意見に対立する「遅すぎる」と「もっと現場を見ろ」の意見を並立させることで、訪問や視察が批判一方でないこと、紛れもなく進める意見もあったことを示すことができる。

 それを正当理由とした菅仮免の石巻市訪問と見ることもできる。

 下村審議官は「視察をどう思うか、判断や議論の材料として見てほしい」とは言っているが、避難所内部の撮影をカットして放映した事実を裏切る発言であって、この言葉自体が情報操作となる。

 「KAN-FULL TV」に関係することだが、4月26日の衆議院予算委員会で自民党の小野寺五典(いつのり)議員が既にご承知の向きもあるかもしれないが、面白い事実を言及している。

 小野寺議員「少しだけ総理に、最後に初動態勢について確認させていただきたい、そのように思っております。あの、原発のことについては、あとで額賀先生が触れられます。この写真、総理がこの地震発生直後の1月(3月の間違い)12日の朝、ヘリコプターで、視察に、まわられた、そのときの写真です。

 私、この映像、テレビで見ました。総理、これを撮られたのは誰ですか」

 左に載せた写真だが、自衛隊服を着て、耳に大型のレシーバーのような防音用の耳当てを当ててヘリコプターの窓から下界を覗いている。青色の防災服で間に合うのに、何のために自衛隊服を着ているのだろうか。勿論、自衛隊の最高指揮官ではあるが、自衛隊の最高指揮官としての役目ではなく、あくまでも内閣トップとしての役目上、大震災に当たろうとしているのである。

 わざわざ着替えて写真を撮らせたところを見ると、変わった一枚として宣伝用に用意したとしか思えない。

 だが、この自衛隊服については小野寺議員は何も追及しなかった。

 秘書官が菅仮免に近づき、膝をつく形で何か伝えた。

 菅仮免「えー、同行した官邸のスタッフ、うー…、だったと思います。シー」

 小野寺議員「えー、下村さんという審議官、元TBSの。えー、テレビでキャスターをされた方。エ、この方と伺っております。そして、この、総理、あなたは一番震災で、大変なとき、視察をされたとき、そのときに、同行をお願いしたのは、寺田、えー、補佐官、斑目(原子力安全委員会)委員長。そして、この下村さんというふうに伺っています。あの時ヘリコプターにいらっしゃったのは、その方々であったでしょうか」

 菅仮免「エ、12日早朝に、イー…、宮、城県のー、仙台上空ー、を、おー、視察をし、またそれに先立って、福島原発に、まあ、これは、あのー、現場に行って、えー、関係者の話を聞きました。

 シー、今、確認しました、あ、この写真は、あー、官邸の公式のカメラマン、あー、であって、あー、今ご指摘をされた、あー、方ではない。今ちょっと秘書官に聞いたんですが、えー、これは、あのー、私は、えー、特に仙台から、あー、えー、石巻にかけて、海岸線沿いをずっと、見ておりましたので、えー、そのときの、おー、そうだと思います」

 同行者の名前を挙げるだけで片付くことを余分なことをまで言って埋めなければ答弁を成り立たせることができない的確な判断能力の欠如を物の見事に遺憾なく発揮している。

 下村審議官のことを、「今ご指摘をされた、あー、方ではない」と名前を挙げなかったのは、何か隠したい意識が働いたからだろう。表情は落着いてはいたものの、かなり苦し紛れの言葉遣いとなっていたのはそういった意識が働いていたこともあったからに違いない。
 
 中井洽予算委員長「随行者の名前は?」 

 小野寺議員(座ったまま)「随行者の名前は?」 

 菅仮免「あのー、全員を、私、あのー、SPさんを含めて、たくさんおられますので、分かりませんけれども、シー、えー…、政治家としては、あ、寺田、補佐官と、それから今ご指摘のあった下村、イー、参事官と、それから公式の、おー…お名前は、すぐには浮かびませんが、エ、官邸のカメラマン。あー、また、あのー、警備の人は、何人か同行をしております。(一旦帰りかけるが、戻ってきた)斑目委員長もその一人です」

 SPは質問の対象となっていないこととして把える判断能力さえ持ち合わせていない。内心うろたえ、何か誤魔化したい意識が働いているから、質問の対象とはなっていないSPの名前に言及しようとしたに違いない。

 小野寺議員「一番大事な斑目さんを忘れたくないと思っています。えー、実は写真ですが、同じような映像をビデオに撮っておりました。これは下村さんが撮ってらっしゃる。これは官邸のブログを発するために、実はいつもカメラを回している。

 私はヘリコプターでとても不思議なことがありました。映像がずっと流れていました。誰が撮ったか聞いたら、下村さんという方。

 ではなぜ、この一番大切な初動のときに同行する方が、例えば松本防災大臣ではない。なぜ、原発の問題だったら、所管する、海江田担当大臣じゃないのか。

 なぜ、カメラマンを連れて行くのか。なぜビデオを回す人がいるのか。私は正直言って、初めに総理が行った目的というのは、官邸ブログで自分のプロモーションビデオを作るためじゃないか。こんなことは思いたくないと思います」

 最初の「asahi.com」記事も下村審議官を撮影・制作の広報担当として扱っている。

 小野寺議員は視察のヘリコプター内で「KAN-FULL TV」用のビデオ撮影を行っていたことの不謹慎を追及しようとしたわけではなかった。地震発生を受けて危機対応に全力を傾けなければならない最も大切な初期段階の3月13日に蓮舫を節電啓発担当相任命したこと、辻元清美を首相補佐官に任命したこと、翌3月14日に在日外国人からの献金をドサクサに紛れてこっそりと返したことなど、緊急に必要ではないことにエネルギーを注いでいたことを以って初動態勢にミスはなかったかと追及したのだった

 対して菅仮免は例の如く、地震発生後決算委員長が委員会の休憩を宣した、直ちに官邸に戻って、それから視察以外は一秒たりとも官邸から出ていない、法律に基づいて緊急災害対策本部と原子力対策本部を立ち上げた。自衛隊を出動させ、できる限りのことはやってもらいたいと命令した、消防、警察も出動させた、献金は国会で日本国籍でないことを確認した上でお返しすると約束したから、弁護士が当事者と面会して返金した、こっそり返したわけではないと、長々と自己正当性を訴えた上で、最後にこれも例の如くの答弁で責任遂行を訴えている。

 菅仮免「えー、私は、色んな問題も見方はありますけども、私、個人というだけではなくて、えー、内閣全体として、できることは精一杯やってきたということだけは、はっきりと申し上げておきます」

 いくらでも言い逃れるのだから、そんなことの追及よりも、小野寺議員はなぜ、まだ津波が引かない被災地の惨劇を下に見て、その瞬間にも命を落としているかもしれない惨状や、あるいは建物内に取り残されて孤立した多くの被災者の不安や恐怖、避難所で身内の命を案じている被災者の極度の不安などに思いを馳せることができずに、「KAN-FULL TV」用のビデオ撮影のためにカメラを回させ、よくも被写体となっていられましたねと、その不謹慎を追及しなかったのだろうか。


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