安倍晋三の南スーダンPKO派遣自衛隊部隊撤収「南スーダンの国創りに大きな貢献」は真っ赤なウソッパチ

2017-03-11 12:18:51 | 政治

 南スーダン派遣自衛隊PKO施設部隊が5月末を目途に撤収させるという。この件について安倍晋三が2017年3月10日、首相官邸でぶら下がり会見受けている。    

 安倍晋三「先程国家安全保障会議を開催し、南スーダンに派遣中の自衛隊施設部隊は、現在従事している道路整備が終わる5月末を目途にその活動を終了することを決定いたしました。

 南スーダンPKOへの自衛隊部隊の派遣は今年1月に5年を迎え、自衛隊の施設部隊の派遣としては過去最長となります。

 その間、首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました。

 南スーダンの国創りが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当しているジュバにおける施設整備は一定の区切りをつけることができると判断いたしました。この5年にわたる自衛隊の活動は、過去最大規模の実績を積み重ねてまいりました」

 約350人構成の部隊そのものは撤収させるが、南スーダンPKO司令部への自衛隊要員4人の派遣は継続させるという。

 この他に南スーダン大統領キールが自衛隊の活動を高く評価し、感謝する言葉を伝えたといった発言をしている。

 安倍晋三が「首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました」と言っていることからすると、安倍政権は2016年11月15日にPKO派遣の自衛隊施設部隊に対して駆け付け警護と宿営地共同防衛の新任務を付与したものの、新任務での活動は一度もなく、それ以外は主たる任務としていた道路整備で「独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献」を果たしたと言うことになる。

 そして「ジュバにおける施設整備は一定の区切りをつけることができると判断」したから、撤収を決めることにした。

 道路整備を主とした活動によって大きな貢献を果たすことができる国創りとは一般的には道路整備が交通と物流の利便性の向上に寄与して、それが経済活動を活発化させて経済発展に繋がっていき、経済発展が国力の強化をイコールさせて、さらに国民の生活向上に役立っていくというサイクルを後に控えていなければ、「独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました」とは決して誇ることはできない。

 果たしてこのようなサイクルを国創りの次のプロセスとして想定できる道路整備だったのだろうか。

 いわば自衛隊の活動によってこのようなサイクルを国創りの次のプロセスとして想定できたから、あるいはこのようなサイクルが国創りの次のプロセスに繋がっていくのを確証できたから、撤収を決めたとしなければ、「国創りに大きな貢献を果た」したとは言えないことになる。

 確実に言うことができるのは、このようなサイクルを想定できずに道路整備だけで国創りへの貢献と決して言うことはできない。

 南スーダンの現状をマスコミ報道から見てみる。

 2017年2月10日の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)発表による大規模な戦闘が起きた2013年12月以降の南スーダンの約1200万人の人口うち国外難民が150万人超。国連保護施設などに身を寄せている国内難民が210万人、合計360万人、30%に達している。

 そしてその60%以上は子どもが占め、その多くが栄養失調の状態だという。

 この大量な難民化の原因は単に政府のキール大統領派と反政府の元副大統領マシャール派間の武力衝突だけではなく、キール大統領派が南スーダン最大部族のディンカ族を形成し、元副大統領マシャール派が南スーダン2番目に多いヌエル族を形成していて、両者の争いが相互に相手部族に対する憎悪に根ざした部族抗争の姿を取り、さながら民族浄化の状況に至っているからだと言う。

 この手の憎悪が相手部族に対する殺戮だけではなく、略奪や誘拐、レイプを横行させ、これらの被害に遭わないために国内外に難を逃れざるを得なくなって大量の難民を発生させている状況にあるということであろう。
 このことはまた南スーダン政府が統治に関わる機能不全に陥っていることを示して余りある。

 当然のこと、戦闘は起きていない場合であっても最悪の治安状況を呈していることになる。南スーダンの首都ジュバは現在はある程度治安は安定しているとのことだが、南スーダン政府が機能不全に陥っていることと難民がこれだけ大量に発生している状況からすると、大きな衝突があった2016年7月以降は目立った戦闘は起きていないという観点からの治安状況であって、異なる部族間の兵士同士だけではなく、兵士による相手部族に属する市民に対する殺戮や誘拐、レイプ、市民による相手部族に属する市民に対する同じく殺戮や誘拐、レイプ、そして兵士や市民による商店等を襲撃する略奪が首都ジュバに於いても発生していることは否定できない悪化した治安状況にあると見なければ、大量の難民の説明がつかなくなる。

 もし首都ジュバが全ての点に於いて治安が安定状態にあるとすると、地方の難民は首都ジュバに逃れることになり、ジュバはパンクする状況にあるはずだ。

 治安が悪化した状況にあった場合、道路整備が交通と物流の利便性の向上に寄与して、それが経済活動を活発化させて経済発展に繋がっていき、経済発展が国力の強化をイコールさせて、さらに国民の生活向上に役立っていくという国創りのサイクルは悪化した治安が阻害要因となって期待できないことになる。

 と言うことは、国創りの第一歩は治安の安定から始めなければならない。治安の安定が上記サイクルを保障する第一要件となる。

 ところが、安倍晋三は南スーダンの治安が悪化している状況では不可能であるにも関わらず、「首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました」と平気で言うことができる。真っ赤なウソッパチもいいとこである。

 安倍晋三は上記ぶら下がりで南スーダンの今後のことについて次のように発言している。

 安倍晋三「我々は、これからも南スーダンPKO司令部への(4人の)自衛隊要員の派遣は継続いたします。そして、人道支援を充実するなど、『積極的平和主義』の旗の下、国際社会と手を携えて南スーダンの平和と、そして発展のためにできる限りの貢献を行っていく考えであります」

 人道支援とは食糧危機に陥っていると言うから、難民や一般市民に対して食糧支援や水支援、医薬品提供等を行うということなのだろうが、しかし悪化している治安が改善しないことには難民の常態化や一般市民の生活の困窮の常態化に繋がり、このことが人道支援の常態化へと跳ね返ってくる。

 治安の安定が国創りの第一要件でありながら、安倍政権はアメリカが国連安全保障理事会に南スーダンへの武器禁輸を含む制裁決議案を提出したのに対して棄権に回った。

 かくこのように国創りの重要な要件であるはずの治安の安定を無視して、自衛隊は国創りに大きな貢献をしたと言う。実際には貢献していないのだから、自画自賛以外の何ものでもない。

 このような自画自賛に過ぎないことは2017年3月11日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている2917年3月10日の定例記者会見でのハク国連の副報道官の発言が証明してくれる。

 ハク国連の副報道官「日本が南スーダンでしてくれたことに感謝したい。国連は日本と連携して、日本が将来にわたって国連のほかのPKO活動に貢献できるようにしたい。

 (自衛隊が撤収したあとの対応について)可能なかぎり早く、自衛隊の施設部隊の穴を埋めていきたい」

 他の国のPKO部隊が自衛隊PKO部隊の穴埋めをしなければならないということは、自衛隊PKO部隊が南スーダンで必要とされる任務を果たし終えていないことの証左そのものであろう。

 あるいはその任務の継続を代役で賄う必要性が生じている状況にあるということの提示そのものであろう。

 だとすると、自衛隊が5年間活動したと年数を挙げることは意味を成さないことになる。

 2017年2月1日の衆院予算委員会で安倍晋三は次のように答弁している。

 安倍晋三「南スーダンはですね、国連に加盟した国の中に於いて独立して間もない国で、一番若い国と言ってもいいんだろうと思います。その国が失敗した国とならないように、立派に自分の足で立てるようにまさに60カ国が参加してPKO部隊を出して、この国の発展のために貢献をしているわけであります」

 安倍晋三が南スーダン派遣自衛隊が「国創りに大きな貢献をした」と言っていることも真っ赤なウソッパチなら、この発言も、南スーダンが「立派に自分の足で立てるように」なっていないのだから、ウソッパチそのものとなる。

 なぜこうまでもウソッパチを並べてまでして自衛隊を撤退させるのだろうか。

 考えられる理由は衆議院を解散して総選挙に打って出る必要上からの、南スーダンの状況を無視した撤退ではないかということである。

 2016年10月頃から解散の噂が出たが、2017年1月末に安倍晋三が国会で「衆議院の解散については現在、一切考えていない」と否定して解散の噂はピタッと収まった。

 自民党は2017年3月5日の党大会で総裁任期を現行の連続2期6年までから連続3期9年までの延長を決定した。安倍晋三は2018年9月予定の総裁選挙に立候補可能とななり、総裁選挙で勝てば、2021年9月まで自民党総裁でいることができる。

 衆議院議員の任期満了日は2018年12月13日までだから、2021年まで安倍政権を維持するためには次の総選挙に勝つことが安倍晋三の長期政権の絶対条件となる。

 ここに来て安倍晋三の内閣支持率は上昇傾向にある。

 だが、世論調査で国民の半数以上が反対している駆けつけ警護と宿営地共同防衛の新任務を与えられた南スーダン派遣自衛隊が新任務で銃を使用することになって隊員の1名でも死者が出た場合、選挙に大きな悪影響を与える要素となり得る。

 但し撤退して総選挙に臨めば、悪影響を受ける要素を前以て排除できることになる。

 いわば内閣支持率と南スーダンからの撤退は総選挙に勝つための欠かすことのできない必須要件であろう。

 以上の理由付けが間違っていないとしたら、南スーダン派遣自衛隊PKO部隊撤収は衆議院解散・総選挙のサインという見方もできる。

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