2017年3月13日の参院予算委で社民党の福島瑞穂が安倍政権の国家戦略特区構想の元、今治市が取り決めた市有地16・8ヘクタール、約36億7500万円の土地を加計学園が開設予定の岡山理科大学の獣医学部に無償提供、校舎建設費補助金8年間計64億円支払いに関して政策が歪めれれていないか、いわば直接的な表現は使わなかったが、安部晋三の口利きがあったのではないか、あるいは政治的圧力の介入があったのではないかといったニュアンスで疑惑を追及した。
NHKのこの中継を見るまで、ネット上では騒がれていると言うのに、この件に関して何も知らないでいた。
福島瑞穂の追及に対する安倍晋三の答弁を聞くと、状況証拠的には真黒毛のクロに見える。
この問題については2017年3月13日付の「しんぶん赤旗」が詳しく解説している。
獣医師への社会的な需要と獣医数のバランスを図る目的で文部科学省や農林水産省は、大学獣医学部の新設を抑制する方針を取っていたこと。僅かな期間の手続きを経て20171月20日の安倍晋三議長の国家戦略特区諮問会議で加計学園を実施主体とする獣医学部新設が認定されたこと、加計学園理事長加計孝太郎と安倍晋三はゴルフや食事を共に愉しむ30年来の友人であることなどが書かれている。
安倍晋三家計学園口利き疑惑は週刊誌でも取り上げられていることが安倍晋三の答弁から分かった。
福島瑞穂の質問はこの記事内容にほぼ添いながら、より具体的になっている。2014年6月から2016年12月までの2年半で13回食事をしているとか、その親密性を浮かび上がらせて、国家戦略特区構想に基づいた今治市市有地を建設地とした加計学園の獣医学部新設の決着のスピードぶりから窺うことができる口利きを、「政策が歪められているんじゃないですか」との表現で匂わせた。
最初安倍晋三は素っ気ない口調で、「担当大臣を呼んで頂きますか。呼ばなければ、私は答えようがない」と、自身は無関係であることを装っていたが、福島瑞穂が安倍晋三と加計学園理事長の加計孝太郎との懇意な関係が獣医学部開設に影響しているのではないかと問うと、急に苛立ちを見せた答弁となった。
安倍晋三「福島さんね、特定の人物の名前、あるいは役所の名前を出しているんであれば、何か政治によって歪められているという確証が無ければですね、その人物に対して極めて私は、失礼ですよ。
そしてこの学校でですね、学んでいる子どもたちにも傷つけることになるんですよ。まるで私が友人であるからですね、何か政治的な力を加えたが如く、もう今質問の仕方ですよ。あなた責任が取れるんですか、これ全く関係なく。
先ず申し上げましょう。今、週刊誌を基に言ってるかもしれませんがね、えー、言ってますけど、例えばですね、それ今治市がタダで提供されたと言うことについて、これおかしいだろうという週刊誌がありますが、20年の間にですね、25例あるんですよ。20年の間にですね、25例あってですね、これはタダで、いわば土地が譲渡された例ですね、いわば貸与されている例はもっとあるんです。
つまりなかなか遊休地があって、地方自治体が困っているときに学校法人が来ることなんです。これは若い人たちが来ますし、研究者も来るし、街が形成されるんです。
なかなかこれね、簡単には来ませんよ。で、タダで提供するって言ったって、なかなか来ないんです。いま子どもたちの数が減っていますから、タダで提供すると言っても、なかなかずっと学校法人が来ないのは事実であります。
で、さらにですね、これは今治市が、今度市がですね、決めたことでしょ?これ、市ですから、国有地ですらないわけですから、私、影響がしようがないじゃないですか。
そしてですね、今ここまであなたがですね、疑惑があるが如くにしているじゃないですか。知人に対して質問しているわけであります。名前を出しているわけじゃないですか。名前を出した。しかも学園の名前も出していますよね。それは生徒の募集にも大きな影響を与えますよ。
これ、あなた責任取れるんですか。私はそう問いたい。これね、NHKで放送されて、全国放送でされるんですね。私は驚くべきことであります。
で、申し上げますとですね、今治市はですね、今治市はですね、獣医学部設立を進める。しまなみ街道のサイクリングブームの後押しをする。高度外国人人材の積極的な受け入れや、活力ある地域づくりのための道の駅民間参入など、大胆な規制改革を提案、極めて高い評価を得たわけであります。――」
そして国家戦略諮問会議を開いて規制改革を進め、獣医学部設立を決定するまでの経緯を長々と喋り続ける。
ここに書いた安倍晋三の答弁だけで獣医学部設立が安倍晋三の口利きの成果なのか、政治的圧力の成果なのか、印象的には真黒毛のクロなのは十二分に見て取ることができる。
福島瑞穂は口利きや政治的圧力の関与の有無を問い質した。対して安倍晋三はないことの証明をすれば済む。その証明があればである。
だが、答弁している全てはその証明とならなないことばかりである。
地方自治体が自らの所有地をタダ、つまり無償で法人に提供した例が「20年の間にですね、25例」あろうがなかろうが、今治市の市有地を新設獣医学部設置の土地として無償提供することへの口利きや政治的圧力の関与を否定する証明とはならない。
25例が100例あったとしても、証明とはならない。25例中25例共に政治家の口利きや政治的圧力の関与がゼロであることを立証して初めて、そのことの証明となり得る。
だが、安倍晋三は証明とならない説明をしているに過ぎない。
「遊休地があって、地方自治体が困っているときに学校法人が来て」、「若い人たちが来ますし、研究者も来るし、街が形成される」ことが政治家の口利きや政治的圧力の疑惑が存在しなかったことの証明とはならない。
「これは今治市が、今度市がですね、決めたことでしょ?これ、市ですから、国有地ですらないわけですから、私、影響がしようがないじゃないですか」と言っていることも、一国の首相が裏から国有地ではない市有地に手を伸ばすことができない何の証明ともならない。
今治市が「獣医学部設立を進める。しまなみ街道のサイクリングブームの後押しをする。高度外国人人材の積極的な受け入れや、活力ある地域づくりのための道の駅民間参入など、大胆な規制改革を提案、極めて高い評価を得た」としても、同じことを言うことができる。何のl証明にもなりませんよと。
ここで当たり前のことを断っておくが、疑惑があることを証明するのは追及側であって、疑惑がないことを証明するのは追及を受ける側である。双方共にそれぞれ証明しなければならない。
但し追及側は疑惑が心情の面にとどまるのみで、確証を得ていなくても追及することを許されるが、追及を受ける側は物的に確証を証明できなくても、少なくとも心情的には自分は正しいというしっかりとした信念を有していなければならない。
追及側が確証を得ていなくても追及することを許されるのは、警察が確たる物的証拠がなくても、状況証拠的に犯罪を犯したことが疑わしい人物を重要参考人として警察に任期同行して取り調べることが許されているのと同じで、それは任意の聴取の過程で参考人の発した事実と矛盾した言葉をキッカケに捜査が進んだり、自白に追い込んだりすることがあるからで、国会という追及の場で同じ場面が演じられない保証はないからだ。
当然、福島瑞穂が確証がなくても何らかの疑惑を嗅ぎ取ったなら、追及しても許されるし、追及するのは当然であって、そうすることは追及する側の権利でもある。
対して追及を受ける側の安倍晋三は自身は不正な口利きもしていない、政治的圧力も加えていないという確証を物的に示すことができなくても、自分は正しいという信念を有していたなら、その信念に基づいて誰が何と言おうと、「自分は正しい」、あるいは「自分は間違っていない」ということを言えば済むはずだし、そうすることが追及を受ける側の義務であるはずだが、自分は正しいとする証明することができない無駄な言葉を延々と続けるばかりで、挙句の果てに疑惑があるが如くに知人の名前を出した、学園の名前を出した、さらには生徒の募集に影響を与える、「NHKで放送されて、全国放送でされている」と、追及を受ける側の証明の義務を忘れているばかりか、追及する側の証明の権利をも無視して「あなた責任取れるんですか」と追及自体を非難している。
このムダな言葉を費やすだけの自分は正しいとする信念の欠落こそが状況証拠的に真黒毛のクロを示して余りある。
ウソつきがいくら自分は正しい、ウソつきではないと思い込んでいても、それが信念にまで高まることはないゆえに自分がついているウソを事実と相手に信じ込ませるために多くのムダな言葉を費やさねければならなくなるように安倍晋三のムダな言葉の費やしはウソつき由来の多弁に似ている。
岡山理科大学獣医学部設置への今治市市有地16・8ヘクタール、約36億7500万円の土地無償提供、校舎建設費補助金8年間計64億円は国家戦利略特区に名を借りた、30年来の親友に対する安倍晋三の政治的便宜が手を貸した実現と見て、ほぼ間違いはないだろう。