安倍晋三も山下貴司も受入れ外国人材1割使い捨て論者 2018/11/7参院予算委対小池晃答弁で判明

2018-11-08 11:58:26 | 政治

 2018年11月7日参議院予算委員会。共産党の小池晃が現在の技能実習制度についての問題点として失踪者の多さを挙げて、「主な失踪理由はなんですか」と法務相山下貴司を問い質した。

 山下貴司「お答えいたします。これまでに失踪した技能実習生に関係者から事情聴取などした調査では主な失踪理由としては現状の賃金等への不満からより高い賃金を求めて失踪する者などが約87%。実習終了後も(帰国せずに)稼働したいとする者が14%。また厳しい指導を理由に上げる者が約5%などなどが判明しています」

 小池晃「より高い賃金を求めてというのが調査票で言う、低賃金、契約賃金以下、最低賃金以下、これを合わせたものですね」

 山下貴司「その三つを合わせたものでございます」

 小池晃「より高い賃金を求めてと何か綺麗な言い方をしていますよ。低賃金なのですね。失踪者の87%は低賃金を理由にしていると。こんな事態を放置して、受入拡大するのはあまりにも無責任だと思いますよ。

 大臣ね、失踪者の調査項目、全ての集計結果明らかにして頂きたい」。

 山下貴司「先程申し上げた調査というのは失踪した技能実習生のうち、不法残留等の入管法違反により、入国管理局が違反調査を行った技能実習生から失
踪項目等の聴取を行ったのもでございます。そしてその調査項目の中には例えば就労場所であるとか、失踪での住居といった、内容によっては結果を公表することにより、失踪技能実習生の傾向が明らかになり、失踪を誘発する(?)といった技能実習制度に対する悪影響を与えかねないものも含まれておりますし、また個人情報に属するものもあり得るわけでございます。

 そのため調査結果の公表に関しては調査項目及びその結果の内容を踏まえ、公表を控えるべきであると、調査項目を含めて慎重に検討する必要があると考えております」

 小池晃「これだけ大問題になっているんですよ。個人情報はそれは出さなくてもいいと思いますよ。公表できるものは公表する、当然じゃないですか」

 実際に詳細な調査を試みたのか、試みなかったのか。試みたが、不都合な情報は隠すために具体的な調査結果は公表しないという場合もある。

 「平成29年 外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」(厚労省)を見ると、技能実習制度が、「日本の企業において発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学び、帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とする」といった表向きの趣旨とは違って、安価な労働力として利用している実態が浮かんでくる。

 〈監督指導状況

 ⑴ 全国の労働基準監督機関において、実習実施者に対して5,966件の監督指導を実施し、その70.8%に当たる4,226件で労働基準関係法令違反が認められた。

 <注>違反は実習実施者に認められたものであり、日本人労働者に関する違反も含まれる。

 ⑵ 主な違反事項は、①労働時間(1566件 26.2%)、②使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(1176件 19.7%)、③割増賃金の支払(945件15.8%)の順に多かった。〉――

 ③の「割増賃金の支払(945件 15.8%)」は残業に対する割増賃金が支払われていないケースであろう。この他賃金関連の違反事項に関しては「賃金の支払26件8.8%」(=賃金の未払い)、「最低賃金の支払92件 1.5%」(=最低賃金以下の給与)があり、合計すると、賃金に関わる不法行為は1563件26.1%と4分の1にのぼる。

そして②の「使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(1176件 19.7%)」は安全設備に如何にカネを掛けていないかの現れであり、賃金に関わる不法行為と合わせると、従業員に対しても設備に対しても掛けるべきカネを掛けない、一種の搾取を手段としたカネ儲け主義が浮かび上がってくる。

例え日本人労働者に関する違反が含まれていたとしても、単に外国人実習生が安い賃金でより使い易いと言うだけのことで、監督指導実施の5966事業場数に対して2739件、実に46%が搾取紛いのカネ儲け主義として技能実習制度を利用していることになる。
 
 安倍晋三はこういったカネ儲け主義利用は、当然、認めはしなかったが、技能実習制度自体に低賃金とか失踪とかの問題点があることは認めざるを得ないから、認めた。対して小池晃は「問題あると認めたわけですよ。(外国人材受入れ拡大を)なぜ来年4月に実施する。なぜそんなことが言えるんですか」と、技能実習制度の問題点を解決しないままの外国人材受入れ拡大の性急さを批判した。

 技能実習制度のこのような欠陥・矛盾について山下貴司が答弁している。

 山下貴司「先ず制度全体のファクトの問題として申し上げます。即ち29年、技能実習で在留していた、前年度末で在留していた技能実習生が22万超。そしてそして新規入国者数が29万超。そしてその中で失踪された方が7089人でございます。

 で、そうすると、少なくとも9割を遥かに超える技能実習生の方々が技能実習生計画に基づいてこの日本での、まあ、実習に勤しみ、そしてそれを見守る方々がおられるという制度なんです。このことを前提に考えなければならないと思っております。

 そしてこれまで累次技能実習に於いて様々な問題が指摘されておりました。その指摘された問題を踏まえて、技能実習法定が定められ、そして国会でご議論を頂いて、去年の11月から施行された訳でございます。そしてそこでのご議論された論点、そういったものも踏まえて、例えば今回の新たな人材受入れ制度に取り入れているものもあるわけでございます。

 先程失踪の理由につきまして給料が安い部分があったところについてですね、例えば日本人と同等の報酬というものを確保することなどですね、これは技能実習制度にも入れていますし、今回の新たな受入れ制度にも入れている。そうした形でしっかりと取り組んでいると参っているということでご理解頂きたいと思っております」

 小池晃「(来年4月に実施?)できますかということ、一言も答えていませんよ。総理」

 安倍晋三「ですから、今山下大臣がお答えしたようにですね、今までもですね、9割の方々が技能実習生、まさに目的に添った形でですね、日本で技能を身に付け、母国に帰って、その技能を活かして、活躍しておられるんだろうと、こう思っておりますが、その中に於いて小池委員がですね、指摘をされた問題、我々もそれを把握しているということを申し上げておきます」  

 天下の法務大臣山下貴司が言っていることは技能実習制度を利用した外国人雇用で賃金不払いや長時間労働、あるいは失踪の問題等々色々とあるが、2017年末在留技能実習生22万超、2018年新規入国者数29万超、合わせて51万超のうち、2017年失踪者7089人を除いて残る9割を遥かに超える技能実習生が勤勉に働き、「それを見守る方々がおられる」、いわば9割超の彼ら外国人は技能実習制度に順応しているし、日本側から見た場合は技能実習制度は十分に機能し、効力を発揮しているとする正当性の主張となる。

 このことは安倍晋三の「9割の方々が技能実習生、まさに目的に添った形でですね、日本で技能を身に付け、母国に帰って、その技能を活かして、活躍しておられるんだろうと、こう思っておりますが」の答弁にも現れている正当性である。

 山下貴司は更に続けて、技能実習制度の実態が示している正当性を前提にしなければならないし、給料が安いという理由で失踪問題が起きていることから、技能実習制度に取入れている「日本人と同等の報酬の確保」も新たな外国人材受入れ制度にも取入れていることも踏まえて新たな外国人材受入れ制度を可能とする入管法改正案に理解して欲しいと訴えている。

 但し技能実習生のうち失踪者は1割に過ぎない、残り9割超が技能実習制度に順応していることを根拠に技能実習制度は機能し、効力を発揮しているとした正当性を新たな外国人材受入れ制度に対しても援用するのは、安倍晋三は山下貴司共々、外国人材1割使い捨て論をブチ上げていることになる。

 迂闊なことに無知・不勉強ゆえに技能実習制度が日本人と同等の報酬を規定していることは知らなかった。ネットで調べたところ、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の第9条に、「技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることその他技能実習生の待遇が主務省令で定める基準に適合していること」と規定している。

 安倍晋三も2018年11月1日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭の技能実習制度に於ける失踪や賃金未払いの問題点の追及に対して「(新たな外国人受入れ制度は)必要な人材に限って受入れ、日本人と同等の報酬が払われるということを前提としている」と発言、この「前提」によって賃金に関わる不法行為は起こらないかのような正当論を披露していたが、技能実習制度の規定が守られていない以上、新たな外国人受入れ制度に同じ規定を設けても、守られる保証はなくなる。

 いわば安倍晋三も山下貴司も、当てにもならないことを新たな外国人受入れ制度実施の主たる正当性の一つに数え上げ、世に認めさせようとしていることになる。

 当然考えられることとして、技能実習制度外国人材1割使い捨て論は新たな外国人受入れ制度に反映される危険性の高い確率を上げることができる。

 外国人材1割使い捨て論と言い、技能実習制度の矛盾・欠陥を何ら改善できずに新たな外国人受入れ制度を進めようとしていることと言い、出任せもいいとこである。

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