安倍晋三が仕掛けた従軍慰安婦日韓合意の一から分かる歴史認識に向けたカラクリ 偉そうな口を叩く資格はなし

2018-11-23 12:33:51 | 政治
                                     
 韓国が2015年12月28日の日韓外相会談で日韓間の慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意に基づいて主として韓国人元慰安に対する「支援」という体裁のいい名称をつけた、実質的には賠償に当たるカネの支払いを任務とする、日本側拠出金10億円を財源とした韓国側設立の「和解・癒やし財団」の解散の方針を公表した。そしてこの方針は国内から財団の解散を求める声が強まっていたことを受けた措置だとしているが、文在寅(ムンジェイン)大統領の歴史認識にも関係していないはずはない。

 対して安倍晋三が首相官邸エントランスで記者団の質問に答えている。

 《安倍晋三:「和解・癒やし財団」の解散に関する方針の発表についての会見》(首相官邸サイト/2018年11月21日)

 安倍晋三「3年前の日韓合意は最終的かつ不可逆的な解決であります。日本は国際社会の一員としてこの約束を誠実に履行してきました。

 国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなってしまいます。韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望みたいと思います」

 単に国と国との約束ではなく、国際社会への発信ともなる約束なのだから、それを破ることになると、国際社会を場とした国と国との関係が成立しなくなる、約束した以上、国際社会の一員として責任ある対応を取るべきだといった趣旨の発言となる。

 なかなか手厳しい正当性ある立派な発言に見える。

 先ず従軍慰安婦に関わる韓国側の歴史認識を見てみる。大体のことは理解しているが、より公式性を持たせるためにネットを探したところ、次のサイトに行き当たった。英文は省略して和訳分のみを記載する。適宜文飾を施した。

 《韓国政府の公式見解に関して》誰かの妄想・はてなブログ版/2013年5月15日)

 ▸従軍慰安婦

韓国女性家族部(Ministry of Gender Equality and Family)の下にHERMUSEUMというサイトがあります。“E-Museum for the victims of Japanese military sexual slavery”とあるように日本軍従軍慰安婦に関する電子資料館です。ハングル版が正だと思いますが、私はハングルが読めませんので英語版の方を参照しています。
 
日本の従軍慰安婦とは何か?

「慰安婦」とは戦時中に日本の旧植民地(朝鮮や台湾など)や占領地(中国、フィリピン、インドネシアなど)から強制募集され、意に反して性奴隷として奉仕させられた若い女性に対する婉曲表現である。日本軍、官僚及び民間業者が20万人もの女性を騙し、誘い、あるいは連れ去って、日本の植民地や占領地の至る所で性奴隷として売春を強要した。これらの女性は「comfort women」、「comfort girls」、「従軍慰安婦( military comfort women)」「military-serving women」などと呼ばれてきましたが、現在では性奴隷として犠牲になったことを意味する「military sex slaves」として定義されている。
  
何のために慰安所(軍用売春宿)を作ったのか?

(訳)
日本軍による中国侵略中に、日本兵は頻繁に中国の民間人女性を強姦したため、占領地住民に強い反日感情を生じさせた。また、日本軍は性病による戦力低下に苦しんだ。

そこで日本軍当局は、戦場に「慰安所」を設立して、日本兵の性欲を満足させ、更なる戦力低下を防ごうとした。

歴史家の指摘するところによると、1904年から1905年にかけての日露戦争の初期に性病による深刻な戦力低下に苦しみ、兵士の性感染症を検査できる施設を必要とした。1931年の満州事変に続く1932年の第一次上海事変で、日本兵による上海周辺の民間人女性の強姦がさらに増加したため、海軍に続いて陸軍も「慰安所
(軍用売春宿)」を設立した(日本兵の記録、公文書を参照)。

「慰安所」には2種類あった。1)日本軍によって直接設立運営されたものがいくつか、2)他は民間人によって運営されたもの、である。民間人によって運営された慰安所であっても、企画、許可、統制、監督したのは日本軍である。「慰安所」の規則は、コンドームの使用と性病検査を主眼とし、軍医による検査がほぼ週に1回実施されていた(日本の公文書、連合軍の公文書を参照)。

しかし、目撃者たちは軍用売春宿設置後でさえも日本兵は民間人女性に対する強姦をやめなかったと述べている。

 出所元のアドレスが記されているが、アクセスすると、韓国語で「ページが見つかりません。」(グーグル辞書で翻訳)と出て、記載文書に対する事実か否かの検証ができないが、韓国人元慰安婦が賠償を求めたり支援を求めたりすること自体が自ら応募して従軍慰安婦になったわけではなく、何らかの不法な扱いを受けていたことの事実を証明することになるし、ここに書いてあることは韓国側の一般的な歴史認識として流布されてもいる。

 いずれにしても20万人という人数については色々と説があるが、〈日本軍、官僚及び民間業者が20万人もの女性を騙し、誘い、あるいは連れ去って、日本の植民地や占領地の至る所で性奴隷として売春を強要した。〉、いわば日本軍もが関与した強制連行と強制売春が韓国に於ける従軍慰安婦に関わる一般的な歴史認識となっている。

 2015年12月28日の日韓外相会談合意後の公式発表を見てみる。日本軍の関与があったかどうかについて言及している個所のみを抜粋する。

 「日韓両外相共同記者発表」(外務省/2015年12月28日)

〈1 岸田外務大臣

 (1)慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。

安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。〉――

 韓国側の従軍慰安婦に関わる一般的な歴史認識からしたら、「当時の軍の関与の下に」云々の文
言は安倍政権側が強制連行と強制売春に関して旧日本軍の関与を事実認定したとの解釈を当然取ることになる。

 この解釈に基づくと、〈安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。〉は強制連行と強制売春に向けた「心からおわびと反省の気持ち」ということになる。

 だが、実際は強制連行と強制売春に関しての日本軍の関与は認めていなかった。

 2016年1月18日の参議院予算委員会

 中山恭子「今回の共同記者発表は極めて偏ったものであり、大きな問題を起こしたと考えております。共同記者発表では『慰安婦問題が当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本の責任を痛感している』。

 すべての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復の代替として日本のために戦った日本の軍人たちの名誉と尊厳が救いのない程に傷つけられています。さらに日本人全体がケダモノのように把えられ、日本の名誉が繰返しがつかない程、傷つけられています。

 外務大臣にお伺い致します。今回の共同発表が著しく国益を損なうものであることに思いを致さなかったのでしょうか」

 対して岸田文雄は、この合意は「従来から表明してきた歴代の内閣の立場を踏まえたものであり」、「この立場は全く変わっておりません」と答えている。

 この答弁に納得せず、中山恭子は質問を安倍晋三に変えて、なお追及している。

 中山恭子「安倍総理は、私たちの子や孫、その先の世代の子供たちにいつまでも謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかないと発言されています。私も同じ思いでございます。しかし、御覧いただきましたように、この日韓外相共同記者発表の直後から、事実とは異なる曲解された日本人観が拡散しています。

 日本政府が自ら日本の軍が元慰安婦の名誉と尊厳を深く傷つけたと認めたことで、日本が女性の性奴隷化を行った国であるなどとの見方が世界の中に定着することとなりました」

 安倍晋三「海外のプレスを含め正しくない事実による誹謗中傷があるのは事実でございます。性奴隷 あるいは 20万人 といった事実ではない。この批判を浴びせているのは事実でありまして、それに対しましては政府としては、それは事実ではないということはしっかりと示していきたいと思いますが、政府としてはこれまでに政府が発見した資料の中には、軍や官憲による所謂強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったという立場を辻本清美議員の質問主意書に対する答弁書として平成19年、これは第1次安倍内閣の時でありましたが、閣議決定をしておりまして、その立場には全く変わりがないということでございまして、改めて申し上げておきたいと思います。

 また 当時の軍の関与の下にというのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設営されたものであること、慰安婦所の設置、管理及び慰安婦の移送について旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与したこと、慰安婦の募集については軍の要請を受けた業者が主にこれにあたったこと、であると従来から述べてきている通りであります。

 いずれにいたしましても重要なことは今回の合意が、今までの慰安婦問題についての取り組みと決定的に異なっておりまして、史上初めて日韓両政府が一緒になって慰安婦問題が最終的且つ不可逆的に解決されたことを確認した点にあるわけでありまして、私は私たちの子や孫そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えておりまして、今回の合意はその決意を実行に移すために決断したものであります」――

 要するに日韓が合意した「当時の軍の関与の下に」とは「慰安婦所の設置、管理及び慰安婦の移送」についてのみであって、強制連行と強制売春への日本軍の関与を認めた合意ではなく、歴代の内閣の立場と何ら変わりはないとの答弁となる。

 ではなぜ韓国大統領朴槿恵は自身の歴史認識とも国民一般的の歴史認識とは相容れないにも関わらず、合意したのだろうか。「当時の軍の関与の下に」との文言に騙されて合意することになったのか、この「関与」が強制連行と強制売春を意味しないと知りながら、妥協することになったのだろうか。

 朴槿恵政権時代は財閥支配の経済構造からの様々な矛盾の噴出と世界的な景気後退を受けて国家経済が低迷する中、歴史認識の違いから日本との関係が悪化し、中国に急接近し、ある意味、その庇護を受けることになった。

 そして朴槿恵は2013年6月に訪中した際、伊藤博文を1909年10月26日に中国黒竜江省のハルビン駅頭でピストルで狙撃、暗殺した、日本では犯罪人とされているが、韓国では英雄とされている安重根の記念碑の設置を提案、日中関係も悪化していたことから国家主席の習近平が承諾、2014年1月20日、「安重根義士記念館」が一般公開されることになった出来事は歴史認識に於いても経済関係に於いても中韓が蜜月時代を迎えていた象徴的事例とすることができる。

 但し安倍政権はこの記念碑設置に反発、官房長官菅義偉は「アン・ジュングン(安重根)はわが国初代の内閣総理大臣を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだと認識している。日本と韓国の立場は異なっているが、一方的な評価に基づいて韓国・中国が連携し、国際的に展開するような動きは 地域の平和と協力の関係構築に資するものではないと言わざるを得ない」(NHK NEWS WEB/2014年1月20日 12時27分)と批判、犯罪者からより悪質・凶悪なテロリストに格上げしている。

 だが、中国急接近によっても韓国経済は一向に改善しなかった。「韓国経済、今年の下半期も明るくはならない」東洋経済オンライン/2015/07/05 15:30)によると2014年4月からのネットで調べてみると、2014年の4月からの経済成長率は3四半期連続の0%台で、2015年も同様の傾向が続くと予想されていたと言う。

 このような政権運営の苦境に対して更に2014年4月16日の大型旅客船「セウォル(世越)」の転覆・沈没事故に対する救助活動の不手際や政府の危機管理能力に対する信頼低下が原因で71%あった大統領支持率が40%台後半にまで一気に低下することになった。(「Wikipedia」から)

 こういったジリ貧状態からの脱出のために朴槿恵としたら、歴史認識の違いを言っているどころではなくなり、日韓関係の改善を力とした政権運営の建て直しと国家経済の建て直しの背に腹は代えられない必要性に迫られて、「当時の軍の関与の下に」云々が強制連行と強制売春が行われたことを認めたものではなく、慰安婦所の設置や管理及び慰安婦の移送のみを意味しているに過ぎないことを弁えていながら、日本側の思惑に乗って2015年12月28日の従軍慰安婦日韓合意に至ったという可能性は否定できない。

 いわば日本側が強制連行と強制売春を認める意味を持たせていない文脈で「当時の軍の関与の下に」という文言を使い、それが韓国側の歴史認識に反する日本側の思惑に過ぎないことを承知していながら乗った妥協の産物としての合意だとしたら、そこに日韓双方共に国際社会や韓国民に向けて一種のカラクリを仕掛けていたことになる。

 このことは中山恭子が上記2016年1月18日の参議院予算委員会で触れたように国際社会の多くが旧日本軍が強制連行と強制売春を認めた合意だと解釈したことに反して安倍晋三以下日本側がそのような解釈を否定したことにも現れることになるカラクリでもあろう。

 日韓合意がこういった経緯が正体だとすると、安倍晋三は「国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなってしまう」だ、「韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望みたい」などと偉そうな口を叩く資格はないことになる。

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