新たな外国人材受入れによる「共生」は技能実習制度での「共生」の状況に対応 後者が劣悪なら、前者もそれに応じる

2018-11-04 12:21:09 | 政治
 2018年11月1日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭が外国人材受入れ拡大政策に関して問い質した。立憲民主党は安倍政権のこの政策を移民政策と見ている。質問に先立って受入れの「哲学」についての質問を試みている。

 長妻昭「外国人労働者拡大の哲学を先ず、大本の哲学を先ずお尋ねしたいんですが、ま、一つは多文化共生という形を一つの軸足に置いて国を開いていくのか。あるいは同化政策ということですね、日本人になってもらうというような考え方で国を開いていくのか。大きな哲学ってのは総理、どうお考えですか」

 安倍晋三「お答えする前にですね、混同して頂くと困りますものですから、前以って申し上げておきたいことは政府としてはいわゆる移民政策を取ることは考えていないわけであります。

 あのー、いわば、えー、多文化共生、あるいは同化というのは、この我が国に来られて、ずっとそのまま家族の方々と来られて、永住する方々がどんどん増えていくということを念頭に仰ってるんであれば、そういう政策は私たちは取らないってことは今まで再々申し上げている通りでございます。

そのところを先ず混同しないで頂きたいと思います。その上でお尋ねの多文化共生型及び同化政策については一義的な定義があるとものではないと思われますが、少なくとも外国人に対して自国の価値観等を強制するようなことがあってはならない、こう考えております。

 受入れる外国人に対し社会の一員としてその生活環境を確保するため現在検討を進めている外国人材の受け入れ、共生のための総合的対応策をしっかりと実行に移し、受け入れる側もですね、お互いが尊重し合えるような共生社会の環境整備を進めていくことが大切であると考えておりますが、再三申し上げておきたいことはですね、これは永住ということでですね、これは我々が移民として受入れるという政策を取るわけではないということでございます。

 単に人手不足が多発する中に於いてですね、そうした業種に限ってですね、この一定の期限を設けて、基本的には家族の帯同なしでということで、今後新たな制度設計をしているところでございます」――

 ここに毎日新聞の「新たな在留資格」の画像を載せておく。

 在留期間が5年限定、基本的に家族を呼び寄せることができない「特定技能1号」と違って「特定技能2号」は家族帯同が認められる上に在留期間の更新が可能で、条件を満たせば永住申請も可能となることが検討されているという。但し受入人数については長妻昭の問に対して法務相の山下貴司は、「近日中に法案を提出する予定であり、法案の審議に資するように鋭意作業を進めたいと思っています」と答弁、確定していないとしている。

 但しである、「特定技能2号」の条件を満たして日本の生活に成功した家族帯同の、あるいは日本に来てから結婚し、家族をなし、日本の生活が当たり前となった外国人材は必然的に永住を望む方向に進むことになる。最終的に日本国籍を取得する外国人がでてきたとしても、一連の続きから言って、移民という形を取ったことになる。例え安倍晋三が移民政策だと考えていなくても、「特定技能2号」に限って言うと、移民政策の側面を備えることになる。

 あるいは望んだ永住を拒否する慣習が生じた場合、その例は他の永住を望む外国人に失望を与えるだけではなく、日本人や日本という国に対する拒絶感となって現れ、その噂はネット社会という構造上、世界中に拡散され、そのことを参考とする外国人が多発する恐れも考えなければならない。

 安倍晋三は「移民として受入れるという政策を取るわけではない」が、「外国人に対して自国の価値観等を強制するようなことがあってはならない」との考えから外国人が持つ出身国の価値観を尊重する「多文化共生型及び同化」が可能な「総合的対応策」を心掛けていると言っている。

 そして最後に「人手不足が多発する中に於いてですね、そうした業種に限ってですね、この一定の期限を設けて、基本的には家族の帯同なしでということで、今後新たな制度設計をしているところでございます」と発言しているが、明らかに移民政策と解釈されないために「特定技能1号」のみについて説明し、「特定技能2号」は省く誤魔化しを働いている。

 「特定技能2号」も人手不足補充要員としての外国人材受け入れの対象であるこに変わりはない。日本人のみで人材が十分であれば、「特定何号」だといった名称を設けて外国人材を受入れることはしない。

 「共生」は日本人と同じ境遇での受入れによって可能となる。安倍晋三はあとの方で「必要な人材に限って受入れ、日本人と同等の報酬が払われるということを前提としている」と発言しているが、同じ境遇での受入れの一つとして報酬は重要な柱となるが、厳密には「同等の報酬」ということではなく、発揮した能力に対する正当な報酬の支払いでなければならない。

 そのような支払いには支払う側からのリスペクト(尊敬)が自ずと伴う。受けた側からも、そのお返しが生まれて、共生が否応もなしに芽生え、力強いものとなっていく。

仕事も日本人と同様に能力や技術の向上に応じてより高度な持ち場を任せていくことも、同じ境遇での受入れの重要な一つの要件であって、「共生」確立に必須となる。便利だからと言って、何年も同じ仕事をさせていたなら、当然、報酬も年数加算のみとなって、人件費を安く抑えることができるだろうが、「共生」は生まれない。

 果たしてこのような同じ境遇での受入れが可能なのだろうか。

 長妻昭が技能実習制度で来日した外国人から逃げられないようにパスポートを取り上げたり、違法な長時間労働を強制したり、賃金を支払わなかったり、失踪者が毎年多数出ているだけではなく、平成26年から5年間で国が調べただけで技能実習生が12人も自殺いる状況、いわば共生とは反対の疎外感のみを植え付けるような雇用状況を挙げ、「毎年7千人も疾走するようなこれを(「技能実習生の失踪者の推移」を示したボードを指差して)分析して、何がこうなっているのか、こうならないような仕組みを作んなければならない」と言って、外国人受入れ拡大に関わる質問を終えたが、要するに技能実習制度で確立できなかった共生は新たな外国人材受け入れでも、とても実現できやしないということなのだろう。

 外国人から逃げられないようにパスポートを取り上げる行為自体がその多くは正当な労働と正当な賃金を考慮していないことから発生している事態であろう。

 長妻昭がボードで示した失踪者数は「技能実習制度の現状(不正行為・失踪)」(法務省/平成30年3月23日)に記載されている。

 平成24年2,005人
 平成25年3,566人
 平成26年4,847人
 平成27年5,803人
 平成28年5,058人
 平成29年7,089人
 平成30年4279名(1月~6月)

 この平成30年の4279名は上記法務省のページは載っていないが、長妻昭が前以って法務省から聞いていた人数を山下貴司に言わせてからボードをテーブル上に出している。

 この失踪者のうち、帰国しないまま不法滞在の形で行方不明となっている元実習生も相当数いると長妻昭は指摘している。

 「特定技能1号」対象の業種であろうと、「特定技能2号」対象の業種であろうと、技能実習制度対象の業種と同様に過酷労働の部類に入るか、時間が不規則であるか、賃金が安いか、こういったことが人不足の原因となっているはずた。いくら安倍晋三が「日本人と同等の報酬」を払うと約束しても、そこで働いている日本人に支払われる賃金が過酷な労働の割に安かったり、時間が不規則であったり、長時間労働を矯正されたりしたら、日本人にしても外国人にしてもお互いに「同等の報酬」は意味を失う。お互いに大変な仕事をさせられ、安く使われているということだけになるだろう。

 単に「人手不足が多発する」、「人手不足が多発する」と言うだけでは解決できない現状が横たわっている。安倍晋三がいくら「社会の一員」に迎え入れるようなことを言っても、簡単には行かない。

 「共生」はとてものこと覚束ない。新たな外国人材受入れによる「共生」は技能実習制度での「共生」の状況に対応し、後者が劣悪なら、前者もそれに応じる。技能実習制度自体が外国人を一個の人間として扱わない差別と矛盾に満ちた制度となっていて、「共生」を確立できていなかったのだから、安倍晋三の「お互いが尊重し合えるような共生社会の環境整備を進めていくことが大切である」云々は戯言(ざれごと――ふざけた言葉)に等しい。

 但し移民政策でありながら、移民政策でないと誤魔化すよりも、移民政策をこそ、採用すべきだと思っている。同じ境遇での受入れができないことによって移民による犯罪が多発し、社会の障害となって立ちはだかるかもしれない。だが、世界に責任を負う日本として移民政策から生じている矛盾や障害と闘っている欧米等の国々に参加して、共に闘うべきだろう。

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