安倍晋三の新たな歴史改竄:「募集」、「官斡旋」、「徴用工」の「旧朝鮮半島出身労働者」へと呼称統一

2018-11-13 12:38:31 | 政治
                                     
 安倍政権は戦争中に不当雇用した朝鮮人を「旧朝鮮半島出身労働者」へと呼称を統一することにしたと以下記事が伝えている。全文を参考引用してみる。

 《「徴用工」は「旧朝鮮半島出身労働者」に 政府》NHK NEWS WEB/2018年11月11日 4時46分)   

韓国の最高裁判所が、太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で新日鉄住金に賠償を命じた判決を受けて、政府は、すべての人が徴用されたわけではないことを明確にする必要があるとして、「旧民間人徴用工」などとしてきた呼称を「旧朝鮮半島出身労働者」に改めました。

韓国の最高裁判所が先月、太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で新日鉄住金に賠償を命じた判決について、政府は、1965年の国交正常化に伴う日韓請求権協定や国際法に反しているとして、適切な措置を講じるよう韓国政府に求めています。

こうした中、政府は、日本の統治下にあった朝鮮半島から日本に渡り、炭鉱や建設現場などで働いた人たちについて、「旧民間人徴用工」や「旧民間徴用者」などとしてきた呼称を「旧朝鮮半島出身労働者」に改めました。

政府は今後、原則として、この呼称を国会答弁や政府の資料などで統一して使うことにしています。

これについて政府関係者は、太平洋戦争が終盤にさしかかった1944年、日本政府は「国民徴用令を朝鮮半島にも適用して現地の人を徴用したが、それ以前は、民間企業による「募集」や行政による「官斡旋(あっせん)」など、さまざまな形をとっていて、すべての人が徴用されたわけではないことを明確にする必要があるからだ」と説明しています。

 〈国民徴用令を朝鮮半島にも適用して現地の人を徴用したが、それ以前は、民間企業による「募集」や行政による「官斡旋(あっせん)」など、さまざまな形をとっていて、すべての人が徴用されたわけではないことを明確にする必要があるからだ〉との理由を以って「旧朝鮮半島出身労働者」に呼称を統一する。戦争を直接知らない戦後世代がこの呼称に慣れたとき、強制連行、あるいはそれ紛いの最も悪質な雇用形態を伴った「徴用」が統一的呼称の影に隠れて、悪質な雇用形態が存在したことを隠す効用が自ずと現れることになる。あるいは気づかなくさせることになる。いわば悪質性の払拭が生じて、このこと自体、歴史改竄に相当することになる。

 この記事は2018年11月11日発信であるが、呼称統一に向けた布石を見取れる動きがあった。

 《2018年11月1日衆議院予算委員会》  

 岸田文雄「最後に韓国についてお伺いします。日韓関係です。北朝鮮情勢が動く中にあって日韓、日米間の連携、誠に重要です。また、今年は日韓パートナーシップ宣言、20周年という節目の年です。しかしながら、最近の日韓関係、好ましくない事態、立て続けに起こっています。先月だけでも韓国国際観艦式への自衛官派遣見送り。米国、失礼、韓国国会議員十数名による竹島上陸が行われました。
 
 そしてつい先日、30日には韓国大法院(最高裁)が徴用工判決、裁判に関する判決を言い渡し、日本企業に賠償を命じました。これは明らかに1965年の日韓請求権協定に反し、両国友好の法的基盤を根底から覆しかねないといった議論です。さらには慰安婦問題で韓国政府が和解、癒し財団の解散をしたりしています。これは世界が評価した2015年12月の日韓合意、ないがしろにするものであると思います。

 こういった事態自体、日韓関係、あるいはアジア太平洋の安定、こういったものにもマイナスを、マイナスの影響を与える。このように心配をしています。日韓関係、どのようにマネージしていくのか、最後に総理にお願い致します」

 安倍晋三「(原稿読み)日韓関係については9月の国連総会の際の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談を初め、様々な機会に未来志向の日韓関係構築に向けて、協力していくことを累次確認してきたにも関わらず、ご指摘の韓国主催国際観艦式に於ける自衛艦旗掲揚の問題や、韓国国会議員の竹島上陸、あるいは韓国大法院の判決など、そういう逆行するようなことが続いていることは大変遺憾であります。

 旧朝鮮半島出身労働者の問題につきましては、この問題については1965年の日韓請求権協定によって完全且つ最終的に解決して、今般の判決は国際法に照らせば、あり得ない判断であります。

 日本政府としては国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然として対応していく考えでございます。なお日本政府としてはこの『徴用工』という表現ではなくて、旧朝鮮半島出身者、出身労働者の問題というふうに申し上げているわけでございますが、これはあの、当時の国家総動員法の国民徴用令に於いては募集と官斡旋と徴用がございましたが、実際、今般の裁判の原告4名はいずれも募集に応じたものであることから、朝鮮半島の出身労働者問題と言わさせて頂いているとこでございます。

 日韓の間の困難な諸課題をマネージしていくためには日本側のみならず韓国側の尽力も必要不可であります。今回の判決に対する韓国政府の前向きな対応を強く期待しているところでございます」

 韓国最高裁が損害賠償を命じた判決の原告は強制連行を伴った類いの徴用工ではなく、募集に応じた労働者だから、「朝鮮半島の出身労働者問題と言わさせて頂いている」。

 「募集に応じたもの」だとしても、このような例に限定した場合の断りがないままに「朝鮮半島の出身労働者問題」とし、「旧朝鮮半島出身労働者」へと呼称統一するのは正確な歴史認識から外れて、統一呼称の裏側に「徴用」の事実もあったことを隠す歴史改竄となる。

 外相の河野太郎も2018年11月9日の記者会見で安倍晋三国会答弁につ出井した発言を見せている。

 「河野太郎記者会見」(外務省2018年11月9日(金曜日)15時29分 於:本省会見室)

 鬼原朝日新聞記者「韓国の判決についてですけれども,安倍総理が委員会だったと思いますけれども,徴用工という言い方はしなくて,朝鮮半島出身の労働者だったかと思いますけれども,これは政府として徴用工という言い方はしないという決定をされたという理解でよろしいんでしょうか」

 河野太郎「今回の原告は,募集に応じた方というふうに政府として理解をしております」

 鬼原朝日新聞記者「これまで裁判に絡んでも,日本政府として議事録なんか見ますと,徴用工という言葉が入った答弁が見つかります。この判決が出たあとに,あえて募集に応じたということをもって表現を変えた理由は何なんでしょうか」

 河野太郎「現実にそういうことだからという以上にありません」

 鬼原朝日新聞記者「先ほど冒頭で大臣,国民の間の交流に影響が出ないようにということで,先週末の講演でも同じようなことをおっしゃっていたと思います。
こうした徴用という言葉にこだわって,今回その言葉を使わないということが,韓国の民間レベルに誤ったメッセージというか,そこにこだわるのかと,やはり歴史にこだわ
るのかというメッセージを伝えることになってしまって,結果的に国民間のやり取りが少なくなる,そういう影響が出るという懸念はありませんでしょうか。なければその理由もお願いします」

 河野太郎「今回の原告は徴用された方ではございません」

 河野太郎は「今回の原告は徴用された方ではございません」と限定しているが、だとしたら、この限定に対応させた呼称を用いるのが正直な歴史認識であるはずだが、そういった呼称を用いずに「募集」も「官斡旋」も「徴用」もそれぞれに雇用作用は異なるにも関わらず、同一線上の雇用作用と看做して、「旧朝鮮半島出身労働者」の中に全てをひっくるめる形で呼称統一するのは、やはりそこに歴史改竄の意思を汲み取らざるを得ない。

 2018年11月9日付「Newsweek Japan」記事が五味洋治東京新聞論説委員による韓国大法院の判決文に対する解説を載せている。

 第2次世界大戦中の日本統治の朝鮮半島からの人員動員は最初は募集広告を通じて、戦争の最終段階では「国民徴用令」によって本人の意思に関係なく労働させたが、〈4人の原告について判決文は、一般的呼称である「徴用工」という表現は使わず、強制動員被害者と呼んでいる。その理由は、原告がいずれもが新日鉄住金(当時は日本製鉄)の募集に応じて日本で働くことになったからだろう。〉と説明、安倍晋三の国会答弁や河野太郎の記者会見発言と対応させている。

 具体的には、〈原告のうち2人は1943年頃に旧日本製鉄が平壌で出した大阪製鉄所の工員募集広告を見て応募した。〉

 他の2人は別の募集広告に応じたということなのだろうか。

 工員募集広告には、「2年間訓練を受ければ、技術を習得することができ、訓練終了後、朝鮮半島の製鉄所で技術者として就職することができる」と書いてあった。

 〈しかし実態は「1日8時間の3交代制で働き、月に1、2回程度外出を許可され、月に2、3円程度の小遣いが支給されただけ」だった。賃金全額を支給すれば浪費するから、と本人の同意を得ないまま、彼ら名義の口座に賃金の大部分を一方的に入金し、その貯金通帳と印鑑を寄宿舎の舎監に保管させた。

 賃金は結局、最後まで支払われなかった。ほかの原告も当初の話とは全く違う苛酷な条件で働かされ、逃走しないよう厳しい監視下に置かれて、時に体罰を振るわれたと証言している。原告たちは当時まだ10代だったと思われる。〉――

 工員募集広告の文言と実際の労働実態との乖離は、〈我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくために外国人労働者の受入れによって日本の技能、技術又は知識を習得させて、それらの開発途上国等への移転と開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としている。〉とする外国人技能実習制度を広く覆っている謳い文句と実態の乖離に似ている。

 判決文についての解説を見てみる。

 大法院は「請求権協定は日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための協定ではなく、(中略)韓日両国間の財政的・民事的な債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのものであったと考えられる」と判断、いわば個人の未払賃金や補償金等の「民事的な債権・債務関係」は解決を見た。但し「原告らは被告に対して未払賃金や補償金を請求しているのではなく、 上記のような(強制動員への)慰謝料を請求している」として、その賠償を認めたとしている。

 とは言っても、原告は工員募集広告に応募したのだから、「(強制動員への)慰謝料の請求」資格はない。この矛盾を解くには募集広告とは大違いに異なる低賃金下の過酷な労働をも、"強制動員"のうちに入れていなければならない。

 事実「動員」という言葉には単に駆り集めるという意味だけではなく、動員の形態に応じた活動を伴わせて初めて動員となる。例えば、「地域の清掃活動に社員を動員する」場合、「清掃活動」を伴わせることによって、「動員」は全体的な意味を成す。

 あるいは「動員されて戦地に赴く」と言った場合、戦闘活動への従事があって初めて「動員」は完結させ得る。逆な言い方をすると、動員の形態に応じた活動が伴わない「動員」というものは存在し得ない。

 だから、韓国大法院は4人の原告を「強制動員被害者」と呼ぶことになったのだろう。

 記事は1991年8月27日の参院予算委員会で当時の柳井俊二外務省条約局長が、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言していることを挙げて、慰謝料の請求に妥当性を与えている。

 この発言については2018年11月3日付の「当ブログ」に書いた。

 1991年8月27日 参議院予算委員会。

 政府委員柳井俊二(当時外務省条約局長)「日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国は国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。

 従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」――

 「日韓両国は国家として持っております外交保護権を相互に放棄した」と言うことは国家と国民の財産その他に関わる賠償は国家が持っている外交保護権を行使して請求・保護することは放棄したという意味であって、この放棄によって「個人の請求権」に関しても「日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない」ものの、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させてはいない」、つまり三権分立のタテマエ上、国家以外、例えば最高裁が外交保護権の類似行為を行使することまで禁じていない、あるいは賠償請求は国家保有の外交的保護権の埒外にあるということであろう。

 例えば韓国の最高裁だけではなく、日本の最高裁が朝鮮人労働者に対して日本企業の強制労働に対する損害賠償を認めた場合、国家保有の外交的保護権の埒外にあるという理由から外交保護権の相互放棄の適用除外に当たる。

 そうであるゆえに「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません」という答弁になっているということなのだろう。

 日本人は戦争末期の朝鮮人労働者の多くに対して過酷なまでに非人間的に扱った。そして日本国家はそのことを放置した。いや、日本国家自身が自発的に非人間的扱いを平然と行った。

 その最初の例を挙げてみる。かつて当ブログに書いた2011年2月27日放送のNHK「証言記録 市民たちの戦争『“朝鮮人軍夫”の沖縄戦』」に出演した元朝鮮人軍夫が証言した話を再度ここに引用してみる。

 戦争末期、沖縄戦に備えて沖縄に大量の兵力・武器・弾薬・爆弾を送り込んだ際、船から荷揚げして背負って基地まで運ぶ運搬と壕掘りの過酷な労働に従事させるための軍夫を朝鮮半島から募集、中には強制連行した。

 過酷な重労働に従事させられながら、食事を満足に与えられなかった。

 当時阿嘉島青年団員の垣花武一さんの証言「我々が銀飯(ぎんめし)を食うとき、あの人たち(朝鮮人軍夫)はおかゆ。我々がおかゆに変わるときは、あの人たちは雑炊とか粗末な食事。量も半分くらい。だから、あれですよ。あの壕掘りとか重労働に耐えられなかったと思うんですよ。そういう食料で」

 空腹に耐えかねて、近所の田の稲や畑の芋をこっそりと食べて飢えを凌いだ。ポケットの稲が軍人に見つかって、13人が手を縛られ、銃殺された。

 もう一つの例を「Wikipedia」から。

 〈「国民徴用令」は1939年(昭和14年)7月より、日本内地で実施され、1944年(昭和19年)8月8日、国民徴用令の適用を免除されていた朝鮮人にも実施するとした閣議決定がなされて、日本植民地下の韓国でも実施されたることになった。

 その9日前の1944年7月31日付で、朝鮮半島内の食料や労務の供出状況について調査を命じられた内務省嘱託小暮泰用が内務省管理局に報告した、動員された朝鮮人の家庭について記述した「復命書」が外務省外交史料館に残されているという。

 「民衆をして当局の施策の真義、重大性等を認識せしむることなく民衆に対して義と涙なきは固より無理強制暴竹(食糧供出に於ける殴打、家宅捜査、呼出拷問、労務供出に於ける不意打的人質的拉致等)乃至稀には傷害致死事件等の発生を見るが如き不詳事件すらある。斯くて供出は時に掠奪性を帯び志願報国は強制となり寄附は徴収なる場合が多いと謂ふ。

 然らば無理を押して内地へ送出された朝鮮人労務者の残留家庭の実情は果たして如何であろうか、一言を以って之を言うならば実に惨憺目に余るものがあると云っても過言ではない。朝鮮人労務者の内地送出の実情に当っての人質的掠奪的拉致等が朝鮮民情に及ぼす悪影響もさることながら送出即ち彼等の家計収入の停止を意味する場合が極めて多い様である。

 徴用は別として其の他如何なる方式に依るも出動は全く拉致同様な状態である。其れは若し事前に於て之を知らせば皆逃亡するからである、そこで夜襲、誘出、其の他各種の方策を講じて人質的略奪拉致の事例が多くなるのである、何故に事前に知らせれば彼等は逃亡するか、要するにそこには彼等を精神的に惹付ける何物もなかったことから生ずるものと思はれる、内鮮を通じて労務管理の拙悪極まることは往々にして彼等の身心を破壊することのみならず残留家族の生活困難乃至破壊が屡々あったからである」〉――

 1944年(昭和19年)8月8日の国民徴用令適用免除を朝鮮人に対しても実施する閣議決定前のから朝鮮半島では「無理強制暴竹」(食糧供出に於ける殴打、家宅捜査、呼出拷問、労務供出に於ける不意打的人質的拉致等)の暴力的・強制的徴用が行われ、ときには「傷害致死事件等の発生を見るが如き不詳事件」が発生した。

 このような「暴力的・強制的徴用」という名の動員に対してその形態に応じた活動として、当時朝鮮人にとっては悪名高かった日本政府のやることだったから、長時間に亘る過酷労働・低賃金、あるいは賃金未払い、不十分な食事、逃亡防止の監禁紛いの拘束等々の非人間的待遇は前後の状況が終始一貫しているという点である意味妥当性を持つ。

 だが、好条件を示した募集に応募・採用した朝鮮人労働者に対して応募条件を裏切る形で上記過酷な待遇を行った場合、前後の状況に何ら一貫性はなく、妥当性はどこにも認めることができないばかりか、却って隠していた悪質性を曝け出したという一点で、「暴力的・強制的徴用」よりも始末が悪い。

まるで優しい男のフリをして女を口説き終わった後に暴力男に変身して、殴る蹴るの暴力を振るう行為を戦争末期の日本政府と日本の企業は朝鮮人労働者に対して行ったのである。

 こういった観点からすると、「募集」と「官斡旋」と「徴用」という形態でそれぞれに勧誘された朝鮮人労働者でありながら、「旧朝鮮半島出身労働者」と呼称を統一することで、その呼称の影に「徴用」といった悪質な雇用形態を隠すのは歴史改竄であるばかりか、「募集」という雇用形態を「徴用」とは異なることとして正当性を持たせる歴史改竄も行っていることになる。

 ここに安倍晋三の新たな歴史改竄を見ない訳にはいかない。

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ウソをつく閣僚が混じっている 安倍晋三は起用続行で「適材適所」と「全員野球」を取り繕い、任命責任を回避

2018-11-10 10:26:28 | 政治
 2018年11月5日の参院予算委員会で五輪相の櫻田義孝は立憲民主党参院幹事長蓮舫から、2020年東京オリ・パラ大会の基本コンセプトや大会ビジョンを問われたが、自身では答えることができず、役人のメモに頼って、それを読み上げるだけでその場をどうにか遣り過ごす、閣僚とは言えない無様な醜態を演じた。

 ところが、この無様さを11月6日閣議後記者会見で巧妙に言い繕っている。

 2018年11月6日付「日刊スポーツ」記事から桜田義孝の発言を纏めてみる。

 記者「参院予算委で大臣として初答弁した感想は」

 櫻田義孝「質問の事前通告がなく、何にもよく分からない中で、残念だった」

 記者「今後、事前通告のない質問も予想されるが」

 櫻田義孝「私が承知している範囲内では真摯に答えたい。ただ質問する人と接触禁止だと、準備が出来ない。通告していただければ、丁寧な答弁ができる。議論の質を高めるためにもその方が良い」

 記者「接触禁止だった人物とは」

 櫻田義孝「昨日は通告なしで質問する人がいたということ。名指しは敢えてしない。皆さんご承知置き、ですよね」

 記者「大会ビジョンや基本コンセプトは大会の根幹。事前通告がないと答えられない内容か」

 櫻田義孝「丁寧に答えるにはそうだと思うし、全然、何を質問するか分からないのは困ったなということ」

 例え蓮舫から事実質問通告がなかったとしても、記者が言っているように「大会ビジョンや基本コンセプトは大会の根幹」であり、大会の謳い文句である。五輪相を務めていながら、それすら頭に入れていなかった。だから、役人から読み上げるメモを渡されていながら、関係ない箇所を読み上げることになった。

 要するに無様な答弁を「事前通告」がなかったとすることで正当化し、その正当化によって「大会ビジョン」と「基本コンセプト」すら頭に入れていなかったことをナシにするさりげないウソを展開している。

 因みに「大会ビジョン」と「基本コンセプト」について私自身のことを言うと、知らなかったし、知る必要もなかった。なぜなら、興味はなかったからだ。2020年オリンピック開催都市として東京と福岡が立候補を表明したとき、東京に決まった場合は東京一極集中を加速させて都市と地方の格差を拡大一方に方向付けることになる東京反対、福岡開催賛成のブログを書いているから、東京に決まった「大会ビジョン」も「基本コンセプト」もどうでも良かった。

 事実、オリンピックの名のもとに国のカネまで入れて東京一極集中が加速している。

 記者が「今後、事前通告のない質問も予想されるが」と問うと、櫻田義孝は「私が承知している範囲内では真摯に答えたい」と答えているが、「大会ビジョン」も「基本コンセプト」も役人のメモに頼らなければ答弁できなかった無様さと、あとで「全然、何を質問するか分からないのは困ったなということ」と発言している事前通告頼みからすると、「通告していただければ、丁寧な答弁ができる」と請け合っていることは、事前通告に基づいて役人に作成させた答弁メモに頼った「丁寧な答弁」であり、「真摯に答える」がホンネを看做さざるを得ない。

 となると、事前通告がなくても、「私が承知している範囲内では真摯に答えたい」と言っていることにしても体裁よくウソをついて誤魔化しているとしか見ることはできない。

 このようにさりげないウソや誤魔化しで自己正当性を取り繕う閣僚がいる。となると、安倍晋三が言っていた閣僚任命の「適材適所」は一人でも欠けた場合でもウソになるし、「全員野球」も信用できないことになる。

 蓮舫は桜田義孝の「事前通告がなかった」とする発言に対して直ちに「事前通告しており、事実誤認」と反論。桜田義孝は「事前通告がなかった」とした発言を撤回することになった。「NHK NEWS WEB」(/2018年11月9日 11時18分)

 11月9日記者会見。

 櫻田義孝「事前に詳細な質問内容の通告をいただければ、充実した質疑ができたと考えている。一方で、通告が全然なかったと申し上げたのは事実と若干違いますので、撤回をさせていただきたい。

 今後、職務をしっかり全うできるよう努力していきたい。できるだけ丁寧な答弁ができるように、情報収集についてもいろいろと協力してもらいながら進めていきたい」

 この場に及んでもウソをついている。実際は事前通告はあった。にも関わらず、「事前に詳細な質問内容の通告をいただければ、充実した質疑ができたと考えている」と体裁よくウソをついている。底なしのウソにウソを重ねる典型例である。

 「詳細な質問内容」とは質問と一言一句同じ、あるいはそれに近いという意味での事前通告を言っていて、そういった類い求めているとしたら、そうではない一般的な事前通告でも他の閣僚がこなしている答弁を櫻田義孝は役人の手助けを得ても扱いきれていないことになって、この点を取り上げただけでも閣僚の資格を失う。

 大体が事前通告の事実があったのになかったとするウソの事実にして、そのなかったとした事実までウソでしたと撤回するために、いわばウソにウソを重ねた挙げ句に「事実と若干違います」と、「若干違う」という言葉を使うこと自体、自身のウソを限りなく薄める体裁の良い心理用語でしかなく、潔さは薬にしていないようだ。

 記事は最後に、〈一方、桜田大臣は、立憲民主党の蓮舫参議院幹事長について、先の参議院予算委員会に続いて、9日も「レンポウ」議員と言い間違え、今後、野党側の批判が強まることも予想されます。〉と解説している。

 読みが「レンホウ」であることを知らないとしたら、昨日今日国会議員になったわけではないのだから(1996年に第41回衆議院議員総選挙に初当選。以後連続当選4回。蓮舫の方は2004年7月の第20回参議院議員通常選挙に当選。「Wikipedia」)、無知そのもので、この一事から見ても、閣僚の資格も資質もない。読みを知りながら、「レンポウ」と呼んでいるとしたら、窺うことができるのは悪意のみで、この悪意は閣僚の資格・資質に決して馴染まない。

 櫻田義孝はどうも自身の能力の欠如をさりげなくウソをつくことで悟られまい心がけつつ、一人前の政治家でございますと装う名人のようだ。

 安倍晋三がもし櫻田義孝を起用し続けるようなら、適材適所とした閣僚任命と「全員野球」と称した内閣が些かでも綻びないように取り繕うことになり、こういった取り繕いは任命責任回避行動の選択に当たる。

 櫻田義孝の無責任安倍晋三が自らの無責任を響き合わせることになる。

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蓮舫の11/5参院予算委:議員・閣僚としての資質・資格を質すはずが、狙い所中途半端な杉田水脈発言と櫻田義孝追及

2018-11-09 12:42:46 | 政治
 2018年11月5日の参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫が杉田水脈のLGBT関連発言と第4次安倍改造内閣によって2018年10月2日に東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当の国務大臣として初入閣を果たした櫻田義孝の閣僚としての資質を問うはずの追及を行った。

 先ず杉田水脈のLGBT関連発言の追及から。

 蓮舫「子供をつくらない、持たない人は生産性はないんでしょうか」

 安倍晋三「生産性という言葉をどう使うか、色んな議論が認められるでしょうが、子供をつくるかつくらないかということに関してですね、生産性という概念は当てはめるのは間違っていると、このように思います」

 蓮舫「自民党の杉田議員は月刊誌『新潮45』が廃刊となるキッカケとなった寄稿、『LGBTのカップルが子供をつくらない、生産性がない、税金をそこに使うのはいいのか』と、これ書かれました。どうお考えですか」

 安倍晋三「ご指摘の通り、LGBTと言われる性的少数者に対する不当な差別や偏見はあってはならないと思います。多様性が尊重され、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を共有できる共生社会の実現に政府は取り組んでいるところであります。内閣、与党・野党問わず、国民から選ばれた一人ひとりの政治家が自身の発言で関係者を傷つけることないよう、細心の注意を払わなければなりません。

 その上で政策を磨き、結果を出すことによって国民の負託に応えていかなければならないと考えております」

 蓮舫「安倍総理は総裁選の間にこの件について問われると、『まだ若いですから、これから注意しながら、仕事をしていって貰いたい』、これ同じ認識ですか、今も」

 安倍晋三「今申し上げましたように内閣、与党・野党問わず、国民から選ばれた一人ひとりの政治家は自身の発言で関係者を傷つけることがないよう、細心の注意を払わなければなりません。その上で政策を磨き、結果を出すことによって国民の負託に応えていかなければならないと考えております」

 蓮舫「答えておりません。若ければ許されるんですか」

 安倍晋三「答えていると思いますが、自身の発言で関係者を傷つけることがないよう、細心の注意を払わなければならない。その上で政策を磨き、結果を出すことによって、国民の負託に答えていかなければならないと考えております」

 蓮舫「細心の注意がなかった。この結果月刊誌が発売された7月18日以降、抗議声明がなかったですか(?) 自民党本部には全国各地で抗議活動が行われました。このことはご存知でしたか」

 安倍晋三「存じております」

 蓮舫「そして杉田議員本人はようやく記者の取材に答えたのは寄稿してから3カ月後の10月24日、『誤解を招いたことを心苦しい思いです。傷ついた方がいらっしゃることは大変重く受け止める』。謝罪も撤回もしていません。

 これは抗議活動とか様々な声明が誤解であったということでしょうか」

 安倍晋三「それは御本人が説明していることだろうと思いますが、党としての考え方はお示しをしているとおりでございます」

 蓮舫「『世の中に待機児童なんて一人もいない。待機しているのは預けたい親でしょ』、SNSで何度か発信。『離別の場合、シングルマザーになるのはある程度自己責任。ダメステックバイオレンスなんていう場合もあるかも知れないが、厳しいことを言うと、そんな男性を選んだのはあなたでしょに終始する』。月刊誌への『シングルマザーをウリにするな』の寄稿。

 『国会では男女平等は絶対に実現し得ない。反道徳の妄想です。女性しか子供を産めないことをネガティブに捉える社会になってしまった。その結果、DVは蔓延し、離婚は増加。少子化や貧困の原因になっています』。国会で発言しています。

 厚労大臣、正しいですか、この認識」

 根本匠「今私からは意見を異にします」

 蓮舫「総理、如何でしょうか」
 
 安倍晋三「今、発言については確認しているわけではございませんですので(蓮舫が自席から何か言う)、いやいや、これは私自身が確認させて頂いておりませんので、コメントのしようがございませんが、それが事実であるとすれば、今、根本大臣が答弁したとおりでございます。繰返しになりますが、私自身は確認しておりません」

 蓮舫「事実を私は調べて、今ご紹介をさせて頂いております。その杉田議員は安倍総理と同じ山口県連に所属。先の総選挙では自民党の比例単独候補。自由民主党で選ばれた議員がこれらの発言、生産性がない発言等を含めて、処分はしなくていいということですね」

 安倍晋三「処分をするのかどうかということは党で判断することでありますが、先程申し上げたとおりですね、自身の発言がどういう影響を及ぼしたのかということについて常に細心の注意を払っていくべきだろうと、このように思います」

 蓮舫「その程度の認識だということは愕然と致します」

 外国人材受入れ制度に質問を変える。

 蓮舫の月刊誌『新潮45』寄稿のLGBTに関わる内容の質問は明らかに杉田水脈の国会議員としての資質・資格を問い質す発言であったはずだ。杉田水脈を「まだ若いですから、これから注意しながら、仕事をしていって貰いたい」と擁護した安倍晋三の発言を捕まえて、「若ければ許されるんですか」も、杉田水脈の国会議員としての資質・資格を問い質す発言となるし、「処分はしなくていいということですね」も、同列の発言となる。

 対して安倍晋三は杉田水脈の国会議員としての資質・資格の問題とすることは避けて、あくまでも杉田水脈個人の考え方として片付けている。LGBTを含めて「共生社会の実現に政府は取り組んでいるところであります」とか、「党としての考え方」は違うといった物言いで杉田水脈の国会議員としての資質・資格の問題から距離を置いた答弁を心がけている。

 いわば蓮舫と同じ土俵に上がるまいと細心の注意を払って答弁に立っている。当然、蓮舫は同じ土俵に立たせるべく追及を工夫しなければならない立場にありながら、それが全然できていない。

 なぜ、「このような認識を持った国会議員が国会議員としての資質・資格はあるとお考えですか、自民党総裁としての総理自身の認識をお伺いしたいと思います」と単刀直入に追及できなかったのだろう。

 安倍晋三が「処分をするのかどうかということは党で判断することであります」と言ったことに対しても、「処分はこのような認識を持った政治家に対して国会議員としての資質・資格があると判断しているのか、ないと判断しているのかが前提となります。自民党総裁としてどう判断しているのですか」と質問、あくまでも杉田水脈の国会議員としての資質・資格の問題に焦点を絞り込むことで同じ土俵に立たせなければならなかった。

 もし安倍晋三が杉田水脈個人の考え方として片付けようとする発言を続けるなら、「私自身は杉田水脈議員は国会議員の資格も資質もこれポッチも持ち合わせていないと確信しています。それゆえに議員辞職に相当すると考えていますが、安倍総理は総理としても自民党総裁としても杉田水脈議員に対して国会議員を続けさせているのですから、国会議員としての資格も資質も持ち合わせていると考えていることになります。それでいいということなりますが、それでよろしいですか」と、安倍晋三を同じ土俵に立たせた上で、その認識の程度を印象づけするぐらいのことはすべきだったろう。

 狙い所中途半端な杉田水脈発言に対する安倍晋三追及となっていた。

 次に桜田義孝に対する追及。

 蓮舫「総理、桜田大臣はなぜオリ・パラ担当大臣に指名したんですか」

 安倍晋三「東京オリンピック・パラリンピックに関してですね、まさに(第2次安倍内閣)当時文部科学副大臣としてしっかりと担当して頑張って来られた方でございますので、その情熱をですね、再来年に迫ったオリンピック・パラリンピックの成功にですね、活かして頂きたいと思っております」

 蓮舫「桜田大臣のホームページ、5年間調べました。政治理念、政策にはどこにもオリンピックの文字は一文字もございません。オリ・パラ議連の役員でもあります。あるいはオリンピックに掛ける情熱はブログには一言も(?)書いてはありません。副大臣のときに行った・・・で、『行きました』という報告があるみで、ご自身がオリ・パラに相応しいと考えるのどこでしょうか」

 桜田義孝「なぜ選ばれたかは私は分かりませんが、総理が適材適所と言って選んで頂いたと思って、その選んで頂いた人に如何に任務を果たすようにしっかりと取組んででいくつもりでございます」

 蓮舫「じゃあ、基本的なことから教えてください。東京オリンピック・パラリンピックの三つの基本とは何でしょうか」

 背後に黒衣として張り付いていた役人からメモ用紙を渡される。

 桜田義孝「(メモ用紙を読み上げる)えー、ご指摘の基本方針はオリ・パラ特別措置法第13条に基づき、国として大会の円滑な準備及び運営に関する施策の総合的且つ集中的な推進を図るため、平成27年11月に閣議決定をされております。ま、具体的にはこうした観点から、大会の円滑な準備及び運営の推進の有無(?)に関する事項、政府が実施すべき施策に関する基本的な方針、政府が講じるべき具体的な措置などについて記載しております。

 ま、今後、こうした基本方針に従って大会の準備運営に当たる組織委員会、東京都と十分な連携を図り、万全を期していく所存であります」

 蓮舫「桜田大臣、今お読みになられたのは政府としての基本方針で、私が聞いているのは東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会が掲げている三つの基本原則です」

 再び背後の役人から桜田自身が手にしているメモの一箇所を指差される。

 桜田義孝「えー、全ての人が自己ベストを目指し、一人ひとりか互いを認め合い、そして未来につなげよう、この3つの基本コンセプトとして、史上最も、届く、えー、イノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会とするとあります」

 蓮舫「全員が自己ベスト、多様性と調和、未来への継承、これが三つのコンセプトになっていると記載されています。因みに大会ビジョンもご存知ですか」

 役人に読み上げるべきメモの場所の指差しを受ける。

 桜田義孝「全ての人が自己ベストを目指し、一人ひとりが互いを認め合い(蓮舫「違います」)、そして未来につなげよう、三つの基本コンセプトとして史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革・・・・・」

 最後はいい加減な読みとなる。場内騒然。役人が読み上げるべき場所を指差しし直す。櫻田が再び手を挙げる。

 桜田義孝「スポーツが世界と未来を考える力がある。このように共通コンセプトであります」

 蓮舫「このビジョンがあって、3つの基本方針があって、それに対して関連予算が作られて、国と組織委員会の資質が決まるんです。この前提条件、常に頭に入れてください。そうしないと、行革など絶対できませんから」

 こちら見て頂きたいんですが、オリンピック予算は平成25年度立候補ファイルでは大会経費、8299億円とされていたものが平成29年12月、1兆3千500億円になりました」

 蓮舫は論点をオリンピック予算に移して、大会経費の膨張を取り上げる。桜田義孝はこれ以後も役人の指示を受けては答弁するが、一切頭に入っていないからだろう、満足な答弁をすることができず、審議中断や答弁の遣り直しが続く。

 蓮舫の最初の質問、「総理、桜田大臣はなぜオリ・パラ担当大臣に指名したんですか」は安倍晋三の任命責任と桜田義孝の閣僚としての資格・資質を問い質した発言となる。但しこのような追及を行うには第4次安倍改造内閣後の安倍晋三の「記者会見」発言のうち、「明日(あす)の時代を切り開くための全員野球内閣であります」、あるいは「今回の党役員人事においても、また内閣においても、正に適材適所で、それぞれ人材を適用させていただいた、登用させていただいたと、こう考えています」の文言を押さえて置かなければならない。

 要するに桜田義孝のみならず、他の閣僚全員が適材適所の任命でなければならなかった。このことを前提にして初めて「全員野球内閣」は実現可能となる。

 蓮舫が桜田義孝の閣僚としての資格・資質を問い質す発言で追及を始めた以上、このことの一点に絞らなければならなかった。一点に絞って成功したなら、安倍晋三の首相としての任命責任まで問うことができるからだ。あるいは「全員野球内閣」とした言葉のホンモノ・ニセモノを見極めることができる。

 対しての安倍晋三の答弁は「文部科学副大臣時代にスポーツ科学技術担当として頑張ってきた、その情熱を東京オリ・パラに向けて活かして頂きたい」との文言で「適材適所」であることを請け合っている。と言うことは、「全員野球内閣」の一員であることの保証でもある。

 ところが、蓮舫は狙いを一本に絞るべきを、「桜田大臣のホームページ、5年間調べた」、「オリンピックの文字は一文字もない」は余分な質問に過ぎない。単刀直入に「ご自身はどのような理由で東京オリ・パラ担当の国務大臣に任命されたと思っていますか」で十分である。

 桜田義孝は「総理が適材適所と言って選んで頂いたと思って、その選んで頂いた人に如何に任務を果たすようにしっかりと取組んででいくつもりだ」と答弁している。いわば任務を果たしていると衆目が認めることによって、その任命は「適材適所」ということになり、安倍晋三の任命責任に適うことになる。

 但し蓮舫に「東京オリンピック・パラリンピックの三つの基本」を尋ねられると、役人から手渡されたメモの中の「政府としての基本方針」を読み上げてしまい、蓮舫に注意を受け、役人からメモの読み上げるべき箇所を指差されて、やっとどうにか答弁ができる失態を演じることになった。

 さらに蓮舫から「大会ビジョン」を聞かれると、役人に読み上げるべき箇所の指差しを受けながら、その箇所を読み上げることができず、再度「三つの基本」を読み上げてしまい、席に戻って指差しを受け直してやっと「大会ビジョン」を読み上げることができるといった始末であった。

 いわば「東京オリンピック・パラリンピックの三つの基本」にしても、「大会ビジョン」にしても、桜田義孝の頭の中には全然入っていなかった。入っていなかったから、記憶としてカスリもしなかった。もし少しでもカスっていたなら、手渡されたメモの中から、記憶にカスッた文字を探すことができたのだろうが、そうではないから、無関係な箇所を読み上げることになった。

 この失態は桜田義孝の「総理が適材適所と言って選んで頂いたと思って、その選んで頂いた人に如何に任務を果たすようにしっかりと取組んででいくつもりだ」の答弁に明らかに反している。

 蓮舫の「このビジョンがあって、3つの基本方針があって」以下云々の発言はムダそのものである。桜田義孝の上記発言を俎上に載せて、「3つの基本方針も自分では答弁することもできない。大会ビジョンも自分では答弁できない。役人に読み上げる場所を指差されて、ようやく答弁ができた。適材適所の発言とはなっていないのではないのか。任務を果たしていることにならないのではないか。ご自身は適材適所だと自負しているのか」、安倍晋三に対しては「これまでの答弁だけで明らかなように適材適所となっていないのはミエミエではないのか。全員野球に綻びがあるのではないのか」と追及できたはずだが、できなかった。

 桜田義孝にしても、安倍晋三にしても、色々と誤魔化しの答弁を繰り出すだろうが、「適材適所」だと直接的な表現を使った答弁はできないはずだし、少なくとも適材適所ではないことを浮かび上がらせることができる。「全員野球内閣」が口程でもないことを炙り出すことも可能である。

 野田第1次改造内閣時代の2012年1月13日に防衛大臣に就任した田中直紀はその防衛知識のお粗末さ――いわば防衛大臣としての資格・資質を、特に自衛隊出身の佐藤正久を中心に自民党から散々に追及されて、見るに堪えない答弁を繰り返し、5カ月弱の就任で、積め腹を切らされたのだろう、2012年6月4日に退任に追い込まれたが、そのときの追及の執拗さから比べると蓮舫の追及は大甘で中途半端な分類に入る。

 こんな調子ではいつまで経っても、安倍政治の不備、政治姿勢の胡散臭さは追及できない。

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安倍晋三も山下貴司も受入れ外国人材1割使い捨て論者 2018/11/7参院予算委対小池晃答弁で判明

2018-11-08 11:58:26 | 政治

 2018年11月7日参議院予算委員会。共産党の小池晃が現在の技能実習制度についての問題点として失踪者の多さを挙げて、「主な失踪理由はなんですか」と法務相山下貴司を問い質した。

 山下貴司「お答えいたします。これまでに失踪した技能実習生に関係者から事情聴取などした調査では主な失踪理由としては現状の賃金等への不満からより高い賃金を求めて失踪する者などが約87%。実習終了後も(帰国せずに)稼働したいとする者が14%。また厳しい指導を理由に上げる者が約5%などなどが判明しています」

 小池晃「より高い賃金を求めてというのが調査票で言う、低賃金、契約賃金以下、最低賃金以下、これを合わせたものですね」

 山下貴司「その三つを合わせたものでございます」

 小池晃「より高い賃金を求めてと何か綺麗な言い方をしていますよ。低賃金なのですね。失踪者の87%は低賃金を理由にしていると。こんな事態を放置して、受入拡大するのはあまりにも無責任だと思いますよ。

 大臣ね、失踪者の調査項目、全ての集計結果明らかにして頂きたい」。

 山下貴司「先程申し上げた調査というのは失踪した技能実習生のうち、不法残留等の入管法違反により、入国管理局が違反調査を行った技能実習生から失
踪項目等の聴取を行ったのもでございます。そしてその調査項目の中には例えば就労場所であるとか、失踪での住居といった、内容によっては結果を公表することにより、失踪技能実習生の傾向が明らかになり、失踪を誘発する(?)といった技能実習制度に対する悪影響を与えかねないものも含まれておりますし、また個人情報に属するものもあり得るわけでございます。

 そのため調査結果の公表に関しては調査項目及びその結果の内容を踏まえ、公表を控えるべきであると、調査項目を含めて慎重に検討する必要があると考えております」

 小池晃「これだけ大問題になっているんですよ。個人情報はそれは出さなくてもいいと思いますよ。公表できるものは公表する、当然じゃないですか」

 実際に詳細な調査を試みたのか、試みなかったのか。試みたが、不都合な情報は隠すために具体的な調査結果は公表しないという場合もある。

 「平成29年 外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」(厚労省)を見ると、技能実習制度が、「日本の企業において発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学び、帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とする」といった表向きの趣旨とは違って、安価な労働力として利用している実態が浮かんでくる。

 〈監督指導状況

 ⑴ 全国の労働基準監督機関において、実習実施者に対して5,966件の監督指導を実施し、その70.8%に当たる4,226件で労働基準関係法令違反が認められた。

 <注>違反は実習実施者に認められたものであり、日本人労働者に関する違反も含まれる。

 ⑵ 主な違反事項は、①労働時間(1566件 26.2%)、②使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(1176件 19.7%)、③割増賃金の支払(945件15.8%)の順に多かった。〉――

 ③の「割増賃金の支払(945件 15.8%)」は残業に対する割増賃金が支払われていないケースであろう。この他賃金関連の違反事項に関しては「賃金の支払26件8.8%」(=賃金の未払い)、「最低賃金の支払92件 1.5%」(=最低賃金以下の給与)があり、合計すると、賃金に関わる不法行為は1563件26.1%と4分の1にのぼる。

そして②の「使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(1176件 19.7%)」は安全設備に如何にカネを掛けていないかの現れであり、賃金に関わる不法行為と合わせると、従業員に対しても設備に対しても掛けるべきカネを掛けない、一種の搾取を手段としたカネ儲け主義が浮かび上がってくる。

例え日本人労働者に関する違反が含まれていたとしても、単に外国人実習生が安い賃金でより使い易いと言うだけのことで、監督指導実施の5966事業場数に対して2739件、実に46%が搾取紛いのカネ儲け主義として技能実習制度を利用していることになる。
 
 安倍晋三はこういったカネ儲け主義利用は、当然、認めはしなかったが、技能実習制度自体に低賃金とか失踪とかの問題点があることは認めざるを得ないから、認めた。対して小池晃は「問題あると認めたわけですよ。(外国人材受入れ拡大を)なぜ来年4月に実施する。なぜそんなことが言えるんですか」と、技能実習制度の問題点を解決しないままの外国人材受入れ拡大の性急さを批判した。

 技能実習制度のこのような欠陥・矛盾について山下貴司が答弁している。

 山下貴司「先ず制度全体のファクトの問題として申し上げます。即ち29年、技能実習で在留していた、前年度末で在留していた技能実習生が22万超。そしてそして新規入国者数が29万超。そしてその中で失踪された方が7089人でございます。

 で、そうすると、少なくとも9割を遥かに超える技能実習生の方々が技能実習生計画に基づいてこの日本での、まあ、実習に勤しみ、そしてそれを見守る方々がおられるという制度なんです。このことを前提に考えなければならないと思っております。

 そしてこれまで累次技能実習に於いて様々な問題が指摘されておりました。その指摘された問題を踏まえて、技能実習法定が定められ、そして国会でご議論を頂いて、去年の11月から施行された訳でございます。そしてそこでのご議論された論点、そういったものも踏まえて、例えば今回の新たな人材受入れ制度に取り入れているものもあるわけでございます。

 先程失踪の理由につきまして給料が安い部分があったところについてですね、例えば日本人と同等の報酬というものを確保することなどですね、これは技能実習制度にも入れていますし、今回の新たな受入れ制度にも入れている。そうした形でしっかりと取り組んでいると参っているということでご理解頂きたいと思っております」

 小池晃「(来年4月に実施?)できますかということ、一言も答えていませんよ。総理」

 安倍晋三「ですから、今山下大臣がお答えしたようにですね、今までもですね、9割の方々が技能実習生、まさに目的に添った形でですね、日本で技能を身に付け、母国に帰って、その技能を活かして、活躍しておられるんだろうと、こう思っておりますが、その中に於いて小池委員がですね、指摘をされた問題、我々もそれを把握しているということを申し上げておきます」  

 天下の法務大臣山下貴司が言っていることは技能実習制度を利用した外国人雇用で賃金不払いや長時間労働、あるいは失踪の問題等々色々とあるが、2017年末在留技能実習生22万超、2018年新規入国者数29万超、合わせて51万超のうち、2017年失踪者7089人を除いて残る9割を遥かに超える技能実習生が勤勉に働き、「それを見守る方々がおられる」、いわば9割超の彼ら外国人は技能実習制度に順応しているし、日本側から見た場合は技能実習制度は十分に機能し、効力を発揮しているとする正当性の主張となる。

 このことは安倍晋三の「9割の方々が技能実習生、まさに目的に添った形でですね、日本で技能を身に付け、母国に帰って、その技能を活かして、活躍しておられるんだろうと、こう思っておりますが」の答弁にも現れている正当性である。

 山下貴司は更に続けて、技能実習制度の実態が示している正当性を前提にしなければならないし、給料が安いという理由で失踪問題が起きていることから、技能実習制度に取入れている「日本人と同等の報酬の確保」も新たな外国人材受入れ制度にも取入れていることも踏まえて新たな外国人材受入れ制度を可能とする入管法改正案に理解して欲しいと訴えている。

 但し技能実習生のうち失踪者は1割に過ぎない、残り9割超が技能実習制度に順応していることを根拠に技能実習制度は機能し、効力を発揮しているとした正当性を新たな外国人材受入れ制度に対しても援用するのは、安倍晋三は山下貴司共々、外国人材1割使い捨て論をブチ上げていることになる。

 迂闊なことに無知・不勉強ゆえに技能実習制度が日本人と同等の報酬を規定していることは知らなかった。ネットで調べたところ、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の第9条に、「技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることその他技能実習生の待遇が主務省令で定める基準に適合していること」と規定している。

 安倍晋三も2018年11月1日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭の技能実習制度に於ける失踪や賃金未払いの問題点の追及に対して「(新たな外国人受入れ制度は)必要な人材に限って受入れ、日本人と同等の報酬が払われるということを前提としている」と発言、この「前提」によって賃金に関わる不法行為は起こらないかのような正当論を披露していたが、技能実習制度の規定が守られていない以上、新たな外国人受入れ制度に同じ規定を設けても、守られる保証はなくなる。

 いわば安倍晋三も山下貴司も、当てにもならないことを新たな外国人受入れ制度実施の主たる正当性の一つに数え上げ、世に認めさせようとしていることになる。

 当然考えられることとして、技能実習制度外国人材1割使い捨て論は新たな外国人受入れ制度に反映される危険性の高い確率を上げることができる。

 外国人材1割使い捨て論と言い、技能実習制度の矛盾・欠陥を何ら改善できずに新たな外国人受入れ制度を進めようとしていることと言い、出任せもいいとこである。

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新たな外国人材受入れによる「共生」は技能実習制度での「共生」の状況に対応 後者が劣悪なら、前者もそれに応じる

2018-11-04 12:21:09 | 政治
 2018年11月1日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭が外国人材受入れ拡大政策に関して問い質した。立憲民主党は安倍政権のこの政策を移民政策と見ている。質問に先立って受入れの「哲学」についての質問を試みている。

 長妻昭「外国人労働者拡大の哲学を先ず、大本の哲学を先ずお尋ねしたいんですが、ま、一つは多文化共生という形を一つの軸足に置いて国を開いていくのか。あるいは同化政策ということですね、日本人になってもらうというような考え方で国を開いていくのか。大きな哲学ってのは総理、どうお考えですか」

 安倍晋三「お答えする前にですね、混同して頂くと困りますものですから、前以って申し上げておきたいことは政府としてはいわゆる移民政策を取ることは考えていないわけであります。

 あのー、いわば、えー、多文化共生、あるいは同化というのは、この我が国に来られて、ずっとそのまま家族の方々と来られて、永住する方々がどんどん増えていくということを念頭に仰ってるんであれば、そういう政策は私たちは取らないってことは今まで再々申し上げている通りでございます。

そのところを先ず混同しないで頂きたいと思います。その上でお尋ねの多文化共生型及び同化政策については一義的な定義があるとものではないと思われますが、少なくとも外国人に対して自国の価値観等を強制するようなことがあってはならない、こう考えております。

 受入れる外国人に対し社会の一員としてその生活環境を確保するため現在検討を進めている外国人材の受け入れ、共生のための総合的対応策をしっかりと実行に移し、受け入れる側もですね、お互いが尊重し合えるような共生社会の環境整備を進めていくことが大切であると考えておりますが、再三申し上げておきたいことはですね、これは永住ということでですね、これは我々が移民として受入れるという政策を取るわけではないということでございます。

 単に人手不足が多発する中に於いてですね、そうした業種に限ってですね、この一定の期限を設けて、基本的には家族の帯同なしでということで、今後新たな制度設計をしているところでございます」――

 ここに毎日新聞の「新たな在留資格」の画像を載せておく。

 在留期間が5年限定、基本的に家族を呼び寄せることができない「特定技能1号」と違って「特定技能2号」は家族帯同が認められる上に在留期間の更新が可能で、条件を満たせば永住申請も可能となることが検討されているという。但し受入人数については長妻昭の問に対して法務相の山下貴司は、「近日中に法案を提出する予定であり、法案の審議に資するように鋭意作業を進めたいと思っています」と答弁、確定していないとしている。

 但しである、「特定技能2号」の条件を満たして日本の生活に成功した家族帯同の、あるいは日本に来てから結婚し、家族をなし、日本の生活が当たり前となった外国人材は必然的に永住を望む方向に進むことになる。最終的に日本国籍を取得する外国人がでてきたとしても、一連の続きから言って、移民という形を取ったことになる。例え安倍晋三が移民政策だと考えていなくても、「特定技能2号」に限って言うと、移民政策の側面を備えることになる。

 あるいは望んだ永住を拒否する慣習が生じた場合、その例は他の永住を望む外国人に失望を与えるだけではなく、日本人や日本という国に対する拒絶感となって現れ、その噂はネット社会という構造上、世界中に拡散され、そのことを参考とする外国人が多発する恐れも考えなければならない。

 安倍晋三は「移民として受入れるという政策を取るわけではない」が、「外国人に対して自国の価値観等を強制するようなことがあってはならない」との考えから外国人が持つ出身国の価値観を尊重する「多文化共生型及び同化」が可能な「総合的対応策」を心掛けていると言っている。

 そして最後に「人手不足が多発する中に於いてですね、そうした業種に限ってですね、この一定の期限を設けて、基本的には家族の帯同なしでということで、今後新たな制度設計をしているところでございます」と発言しているが、明らかに移民政策と解釈されないために「特定技能1号」のみについて説明し、「特定技能2号」は省く誤魔化しを働いている。

 「特定技能2号」も人手不足補充要員としての外国人材受け入れの対象であるこに変わりはない。日本人のみで人材が十分であれば、「特定何号」だといった名称を設けて外国人材を受入れることはしない。

 「共生」は日本人と同じ境遇での受入れによって可能となる。安倍晋三はあとの方で「必要な人材に限って受入れ、日本人と同等の報酬が払われるということを前提としている」と発言しているが、同じ境遇での受入れの一つとして報酬は重要な柱となるが、厳密には「同等の報酬」ということではなく、発揮した能力に対する正当な報酬の支払いでなければならない。

 そのような支払いには支払う側からのリスペクト(尊敬)が自ずと伴う。受けた側からも、そのお返しが生まれて、共生が否応もなしに芽生え、力強いものとなっていく。

仕事も日本人と同様に能力や技術の向上に応じてより高度な持ち場を任せていくことも、同じ境遇での受入れの重要な一つの要件であって、「共生」確立に必須となる。便利だからと言って、何年も同じ仕事をさせていたなら、当然、報酬も年数加算のみとなって、人件費を安く抑えることができるだろうが、「共生」は生まれない。

 果たしてこのような同じ境遇での受入れが可能なのだろうか。

 長妻昭が技能実習制度で来日した外国人から逃げられないようにパスポートを取り上げたり、違法な長時間労働を強制したり、賃金を支払わなかったり、失踪者が毎年多数出ているだけではなく、平成26年から5年間で国が調べただけで技能実習生が12人も自殺いる状況、いわば共生とは反対の疎外感のみを植え付けるような雇用状況を挙げ、「毎年7千人も疾走するようなこれを(「技能実習生の失踪者の推移」を示したボードを指差して)分析して、何がこうなっているのか、こうならないような仕組みを作んなければならない」と言って、外国人受入れ拡大に関わる質問を終えたが、要するに技能実習制度で確立できなかった共生は新たな外国人材受け入れでも、とても実現できやしないということなのだろう。

 外国人から逃げられないようにパスポートを取り上げる行為自体がその多くは正当な労働と正当な賃金を考慮していないことから発生している事態であろう。

 長妻昭がボードで示した失踪者数は「技能実習制度の現状(不正行為・失踪)」(法務省/平成30年3月23日)に記載されている。

 平成24年2,005人
 平成25年3,566人
 平成26年4,847人
 平成27年5,803人
 平成28年5,058人
 平成29年7,089人
 平成30年4279名(1月~6月)

 この平成30年の4279名は上記法務省のページは載っていないが、長妻昭が前以って法務省から聞いていた人数を山下貴司に言わせてからボードをテーブル上に出している。

 この失踪者のうち、帰国しないまま不法滞在の形で行方不明となっている元実習生も相当数いると長妻昭は指摘している。

 「特定技能1号」対象の業種であろうと、「特定技能2号」対象の業種であろうと、技能実習制度対象の業種と同様に過酷労働の部類に入るか、時間が不規則であるか、賃金が安いか、こういったことが人不足の原因となっているはずた。いくら安倍晋三が「日本人と同等の報酬」を払うと約束しても、そこで働いている日本人に支払われる賃金が過酷な労働の割に安かったり、時間が不規則であったり、長時間労働を矯正されたりしたら、日本人にしても外国人にしてもお互いに「同等の報酬」は意味を失う。お互いに大変な仕事をさせられ、安く使われているということだけになるだろう。

 単に「人手不足が多発する」、「人手不足が多発する」と言うだけでは解決できない現状が横たわっている。安倍晋三がいくら「社会の一員」に迎え入れるようなことを言っても、簡単には行かない。

 「共生」はとてものこと覚束ない。新たな外国人材受入れによる「共生」は技能実習制度での「共生」の状況に対応し、後者が劣悪なら、前者もそれに応じる。技能実習制度自体が外国人を一個の人間として扱わない差別と矛盾に満ちた制度となっていて、「共生」を確立できていなかったのだから、安倍晋三の「お互いが尊重し合えるような共生社会の環境整備を進めていくことが大切である」云々は戯言(ざれごと――ふざけた言葉)に等しい。

 但し移民政策でありながら、移民政策でないと誤魔化すよりも、移民政策をこそ、採用すべきだと思っている。同じ境遇での受入れができないことによって移民による犯罪が多発し、社会の障害となって立ちはだかるかもしれない。だが、世界に責任を負う日本として移民政策から生じている矛盾や障害と闘っている欧米等の国々に参加して、共に闘うべきだろう。

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韓国高裁「徴用工」賠償命令判決:個人的請求権は外交的保護権の埒外なのか、志位和夫の記者会見発言から窺ってみる

2018-11-03 10:45:41 | 政治
 沖縄タイムスの動画をgif動画に変換。音声なし

 玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。

 2018年10月30日付「NHK NEWS WEB 」記事が、〈太平洋戦争中に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、韓国の最高裁判所は30日、「個人請求権は消滅していない」として、賠償を命じる判決を言い渡した。〉と伝えた。

ネットで調べた事実を纏めると、日本と韓国との間に1965年(昭和40年)6月22日に「日韓基本条約」(正式名称「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」)が締結されて、両国間の請求権の完全かつ最終的な解決し、それらに基づく関係正常化などが取り決められた上、この締結に伴い、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(通称「日韓請求権協定」)が結ばれた。

 「日韓請求権協定」の第2条1は次のように規定されている。

 一方の締約国の国民で1947年8月15日から協定署名日の1965年6月22日までの間に他方の締約国に居住したことがある者の財産、権利及び利益を除いて、〈両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。〉

 韓国政府と韓国民が韓国内に持っていたが、日韓併合以降に日本政府や日本国民によって毀損された「財産、権利及び利益」と、日本政府と日本国民が日韓併合以降に韓国内に持つに至っていたものの日本の敗戦によって失われた「財産、権利及び利益」の双方共に相手国に対する請求権は「日韓基本条約」で取り交わした日本の韓国に対する総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)の経済援助によって「完全かつ最終的に解決された」ものとしている。

 だが、韓国最高裁判所は「個人請求権は消滅していない」と判決した。

 この判決に対して外相の河野太郎は2018年10月30日、「談話」(外務省/平成30年10月30日)を発表している。(一部抜粋)

 大韓民国大法院による日本企業に対する判決確定について(外務大臣談話)

1 日韓両国は,1965年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約及びその関連協定の基礎の上に,緊密な友好協力関係を築いてきました。その中核である日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの資金協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。

2 それにもかかわらず,本30日,大韓民国大法院が,新日鐵住金株式会社に対し,損害賠償の支払等を命じる判決を確定させました。この判決は,日韓請求権協定第2条に明らかに反し,日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであるばかりか,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって,極めて遺憾であり,断じて受け入れることはできません。

3 日本としては,大韓民国に対し,日本の上記の立場を改めて伝達するとともに,大韓民国が直ちに国際法違反の状態を是正することを含め,適切な措置を講ずることを強く求めます。

 「請求権に関する問題は『完全かつ最終的に解決』された、韓国最高裁判所の判決は「国際法違反」だと反発し、この是正を韓国政府に求めている。

 安倍晋三も同じ10月30日に韓国最高裁判決について首相官邸エントランスで記者団に対して「発言」(首相官邸サイト)している。

 安倍晋三「本件については、1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決しています。今般の判決は国際法に照らしてあり得ない判断であります。日本政府としては毅然(きぜん)と対応してまいります」――

 一旦国と国が締結した取り決めなのだから、「国際法に照らしてあり得ない判断」だと河野太郎と同様に国際法違反だと韓国最高裁判所の判決に反発を示している。新聞記事風に言うと、"不快感を示した"。あるいはそれ以上だったのかもしれない。

 ところが、韓国最高裁判所が「個人請求権は消滅していない」と判決したことに対する安倍晋三や河野太郎、いわば日本政府の反発に共産委員長の志位和夫が記者会見で異を唱えたことを2018年11月1日付「NHK NEWS WEB」記事で知った。この記事に導かれて、共産党サイトにアクセスしてみた。

 「徴用工問題の公正な解決を求める――韓国の最高裁判決について」(共産党/2018年11月1日)

日本共産党幹部会委員長  志位和夫

(1)

 10月30日、韓国の最高裁判所は、日本がアジア・太平洋地域を侵略した太平洋戦争中に、「徴用工として日本で強制的に働かされた」として、韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、賠償を命じる判決を言い渡した。

 安倍首相は、元徴用工の請求権について、「1965年の日韓請求権・経済協力協定によって完全かつ最終的に解決している」とのべ、「判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ」として、全面的に拒否し、韓国を非難する姿勢を示した。

 こうした日本政府の対応には、重大な問題がある。

(2)

 日韓請求権協定によって、日韓両国間での請求権の問題が解決されたとしても、被害にあった個人の請求権を消滅させることはないということは、日本政府が国会答弁などで公式に繰り返し表明してきたことである。

 たとえば、1991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長は、日韓請求権協定の第2条で両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決」されたとのべていることの意味について、「これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということ」であり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言している。

 強制連行による被害者の請求権の問題は、中国との関係でも問題になってきたが、2007年4月27日、日本の最高裁は、中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判について、日中共同声明によって「(個人が)裁判上訴求する権能を失った」としながらも、「(個人の)請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではない」と判断し、日本政府や企業による被害の回復にむけた自発的対応を促した。この判決が手掛かりとなって、被害者は西松建設との和解を成立させ、西松建設は謝罪し、和解金が支払われた。

 たとえ国家間で請求権の問題が解決されたとしても、個人の請求権を消滅させることはない――このことは、日本政府自身が繰り返し言明してきたことであり、日本の最高裁判決でも明示されてきたことである。

 日本政府と該当企業は、この立場にたって、被害者の名誉と尊厳を回復し、公正な解決をはかるために努力をつくすべきである。

(3)

 韓国の最高裁判決は、原告が求めているのは、未払い賃金や補償金ではなく、朝鮮半島に対する日本の不法な植民地支配と侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為――強制動員に対する慰謝料を請求したものだとしている。そして、日韓請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を根本的に否定したと指摘し、このような状況では、強制動員の慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれると見なすことはできないと述べている。

 1965年の日韓基本条約および日韓請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性について一切認めようとせず、謝罪も反省も行わなかったことは、動かすことのできない歴史の事実である。

 徴用工の問題――強制動員の問題は、戦時下、朝鮮半島や中国などから、多数の人々を日本本土に動員し、日本企業の工場や炭鉱などで強制的に働かせ、劣悪な環境、重労働、虐待などによって少なくない人々の命を奪ったという、侵略戦争・植民地支配と結びついた重大な人権問題であり、日本政府や該当企業がこれらの被害者に対して明確な謝罪や反省を表明してこなかったことも事実である。

 今年は、「日本の韓国への植民地支配への反省」を日韓両国の公式文書で初めて明記した「日韓パートナーシップ宣言」(1998年、小渕恵三首相と金大中大統領による宣言)がかわされてから、20周年の節目の年である。

 日本政府と該当企業が、過去の植民地支配と侵略戦争への真摯で痛切な反省を基礎にし、この問題の公正な解決方向を見いだす努力を行うことを求める。(文飾は当方)

 1991年8月27日の参院予算委員会で具体的にどのような質疑応答があったのか、ネットで調べてみた。

 「1991年8月27日 参議院予算委員会」

 清水澄子(当時社会党の参議院議員)「外務大臣、韓国では民間の中からどのような要求が起こっておりますでしょうか」

 外務大臣中山太郎「アジア局長から具体的にご説明を申し上げたいと思います」

 政府委員谷野作太郎(外務省職員)「お答え申し上げます。韓国におきまして最近、いわゆる強制連行者あるいは元軍人軍属の方々、サハリンの残留者の方々、元戦犯、あるいはその家族の方々の補償、あるいは未払の賃金の支払等を求めて色々な訴訟なりを行う運動が起こってきておりまして、私どもも報道等を通じてそのようなことを承知致しております」

 清水澄子「今、なぜこのような補償要求が起きてきたのでしょうか。その理由をどうお考えでしょうか」
 
 政府委員谷野作太郎「個々のケースによって当事者の方々のお気持等は異なるのではないかと思います。一概に私の方からご説明する資料もございませんけれども、他方、いずれにいたしましても、先方もご存知の通りでございますが、政府と政府との関係におきましては、 国会等でも度々お答え申し上げておりますように1965年の日韓間の交渉を以ってこれらの問題は国と国との間では完全に且つ最終的に決着しておるという立場を取っておるわけでございます」

 外務大臣中山太郎「昨晩、私は委員会終了後に来日中の韓国の外務次官と約40分間会談を致しましたが、政府間の関係は韓国の外務省の次官のお言葉を借りれば、今日ほど日韓関係が円満にいっていることはないというご意見でございました。盧泰愚大統領の訪日、また海部総理の訪韓ということによって日韓関係は未来に向けて共同のパートナーとして協力をやっていく。

 グローバルな立場でも協力をしていこうということが日韓間の国際的な外交に関する基本的な認識であるということも昨晩双方で確認を致した次第であります」

 清水澄子「そこで今をおっしゃいましたように政府間は円骨である。それでは民間の間でも円滑でなければならないと思いますが、これまで請求権は一切解決済みとされてまいりましたが、今後も民間の請求権を一切認めない方針を貫くおつもりでございますか」

 政府委員谷野作太郎「先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、政府と政府との間におきましてはこの問題は解決解決済みという立場でございます」

 政府委員柳井俊二(当時外務省条約局長)「ただいまアジア局長からご答弁申し上げたことに尽きると思いますけれども、敢えて私の方から若干補足させていただきますと、先生ご承知の通り、日韓請求権協定におきましては両国間の請求権の問題は最終且つ完全に解決したわけでございます。

 その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国は国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。

 従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます

 柳井俊二が言っていることを纏めてみると、日韓請求権協定によって日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄した結果、日韓間に於ける国家レベルの賠償請求権問題は最終且つ完全に解決したが、それぞれの国民個人の賠償請求権に関しては日韓双方共に国家の立場で外交保護権の名のもとに行使・保護することはできないものの、「国内法的な意味で消滅させたわけではない」、いわば個人としての賠償請求権は国に行使・保護を求める外交的保護権の埒外にあり、行使することに関しては可能だということであろう。

 このことを根拠に韓国最高裁が「個人請求権は消滅していない」と判決したのかどうか分からないが、1991年8月27日の参院予算委での当時の外務省条約局長柳井俊二の答弁に相対応していることになる。

 「Wikipedia」「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」の中の「個人請求権に関する日本政府答弁と訴訟」の項目に共産党委員長志位和夫が挙げた個人請求権を認める上記国会答弁以外に1993年5月26日の衆議院予算委員会での丹波實外務省条約局長答弁を同様例として示している。

 1993年5月26日衆議院予算委員会質疑

 丹羽實政府委員(外務省条約局長)「この(日韓請求権協定)第2条1項で言っておりますのは、財産、権利及び利益、請求権のいずれに付きましても、外交的保護権の放棄であるという点につきましては先生(宇都宮真由美元社会党衆院議員)のおっしゃるとおりでございますが、しかしこの1項を受けまして3項で先程申し上げたような規定がございますので、日本政府と致しましては国内法をつくりまして、財産、権利及び利益につきましては、その実態的な権利を消滅させておるという意味で、その外交的な保護権のみならず実体的にその権利も消滅しておる。

 ただ、請求権につきましては外交的保護権の放棄ということにとどまっておる。個人のいわゆる請求権というものがあるとすれば、それは外交的保護の対象にはならないけれども、そういう形では存在し得るものであるというものであるということでございます

 宇都宮真由美社会党議員「韓国政府がその外交保護権を放棄したからといって、日本の法律で直接、その韓国人の権利を消滅させるという、その根拠は何なんでしょうか」

 丹羽實政府委員「それは何度も立ち戻りまして恐縮ですけれども、韓国との請求権・経済協力協定の第2条1項を受けまして3項の規定があるものですから、日本政府が相手国、この場合は韓国ですが、韓国政府及び国民の財産、権利及び利益に対して如何なる措置をとっても、相手国あるいは相手国政府としては如何なる主張もしないということになっておるものですから、その意味で、日本政府がまさにこの財産、権利及び利益というものを消滅させても、韓国としては如何なる主張もしないということが規定されておるものですから、日本政府としてはそういう措置を取ってということでございます」

 宇都宮真由美社会党議員「それは韓国政府が何も言わないということで、韓国人が何も言わないということまでは決めていないと思います。ちょっと長くなりなりますので、もうこれでやめます」

 韓国従軍慰安婦の戦後補償の問題についての質問に移る。(文飾は当方)

 「請求権につきましては外交的保護権の放棄ということにとどまっておる。個人のいわゆる請求権というものがあるとすれば、それは外交的保護の対象にはならないけれども、そういう形では存在し得るものであるというものであるということでございます」

 要するに外務省条約局長である丹羽實は国家間レベルの請求権に関しては外交的保護権は放棄されていて、その権利行使はできない取り決めだが、国民個人の賠償請求権に関しては外交的保護権放棄の埒外であり、そのような形で存在しているということを言っていて、1991年8月27日の参院予算委で政府委員として出席した外務省職員柳井俊二の答弁と同趣旨の答弁となる。

 だから、「それは韓国政府が何も言わないということで、韓国人が何も言わないということまでは決めていないと思います」との表現を用いた宇都宮真由美社会党議員の、「日韓請求権協定」が個人的請求権をどう扱うかまでは「決めていない」とする指摘に繋がることになっている。

 確かに損害賠償を命じる判決は韓国最高裁が言い出したことで、韓国政府が日本に対して直接言い出したことではない。それゆえに三権分立の制度に基づいて国家としては行使不可能であるものの、「日韓請求権協定」で取り決めた外交的保護権放棄とは埒外の賠償請求と認めるのか、韓国最高裁判所と言えども、広い意味では韓国の一部分であるゆえに外交的保護権放棄の埒内とするのかによって扱いは違ってくる。

 前者の立場に立つなら、損害賠償請求は正当性を持つ。後者の立場に立つなら、安倍晋三や河野太郎等、日本政府の「1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決している」との主張が正当性を持つことになる。

 但し日本国内に於いて最高裁判所の国に対する判決を高裁判所と言えども、広い意味では国の一部分であるという理由で国とは違う考えは受け入れることはできないと判決を拒否する例は聞いたことがない。大体が安倍政権は最高裁は憲法の番人に位置づけている。最高裁の国に対する判決に従わなければ、憲法違反を犯すことになる。 

 少なくとも最高裁判決拒否不可能は韓国に対しても当てはめなければならない一般例となる。当然、個人の請求権に関わる上記2例の国会質疑政府側答弁に従わなければならないはずだ。

 日本側が勝手に請求権を拒否する国内法法律をつくることはできないし、つくったとしても韓国に対して効力を持つことはない。韓国との取り決めによって国家間の条約としなければならない。

 元朝鮮人従軍慰安婦の日本政府に対する損害賠償請求訴訟に対して日本政府は1965年の「日韓基本条約」で賠償義務は政府間で決着済みとの態度を取っているが、今後改めて訴訟が起こされた場合、外交的保護権放棄の埒外とされる可能性も浮上する。

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プーチンの前提条件なし平和条約締結要求はロシアの繁栄は安倍晋三の自身と日本が主導するかのような思い上がりが原因

2018-11-02 11:16:49 | 政治
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 玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。 

 2018年10月30日、衆院本会議代表質問で旧民主党元総理の野田佳彦が登壇、消費税の引き上げを過去2回先送りした安倍晋三の責任を追及、「消費税引き上げの先送りや使途の変更を、突然、選挙の争点にするのは政争の具にしたと同じではないか」と糾弾。あるいは安倍晋三の任期が2019年11月に在職歴代1位となることに対して
「結果を何も残していない。『長きをもって貴しとせず』、この言葉を肝に銘じるべきだ」と安倍政権を酷評、その他北朝鮮問題や北方四島問題等の外交課題を取り上げて、解決に向けた能力不足を指摘した。

 安倍晋三は元総理から声高に批判を浴びせられて頭に血が上ったのか、声高に対して声高で応じる如くのかなりヒートアップした答弁を行った。

 ここでは北方四島問題の遣り取りだけを取り上げてみる。

 2018年10月30日衆院本会議代表質問野田佳彦

 野田佳彦「総理は戦後日本外交の総決算と高らかに宣言をしています。念頭にあるのは北方四島問題と拉致問題でしょう。国民の関心の高い外交課題を政権浮揚の道具にしたいのでしょうが、いずれも前進しているとは言えません。

 9月12日、ロシアので開かれた東方経済フォーラムに於いてプーチン大統領は『平和条約を結ぼう。年末までに。前提条件なしで』と突然提案しました。北方四島の帰属問題の解決を前提とする日本の方針と真逆です。引き分け狙いを持った柔道家プーチン大統領と22回も会談を重ねて効果はなかったようで、習近平主席らの面前で意表を突く提案で技アリを取られ、直ちに反論できずに更に技アリを取られ、併せて1本負けではないですか。

 反論があれば、お伺いを致します」

 安倍晋三「北方四島についてお尋ねがありました。

 ご指摘のプーチン大統領の発言の全体の中には様々なサインが含まれています。フォーラムという公開の場で交渉の一部となるような遣り取りを行われたことは適当ではないと考え、終了後直ちに私はプーチン大統領に対し領土問題を解決して平和条約を締結するのが引き続き我が国の基本的な立場であることを伝え、突っ込んだ遣り取りを行いました。

 何れにせよ政府としては北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き取り組んでまいります」

 2018年9月12日東方経済フォーラム2018全体会合は公開の場で開催され、壇上のテーブルにプーチンを初め、中国の習近平、日本の安倍晋三、その他モンゴルなどの各国首脳が3名、合計6名が居並んでいた。

 プーチンの件(くだん)の発言はプーチン自身や我が安倍晋三、習近平中国国家主席のスピーチ後、司会者に求められて行ったものだという。先ず安倍晋三の「スピーチ」(総理官邸/2018年9月12日)の一部を取り上げてみる。

 2018年9月12日東方経済フォーラム全体会合 安倍総理スピーチ

 安倍晋三「そして、日露関係であります。日本にとって、21世紀におけるこの地域の平和と繁栄の礎を築くに当たり、日露関係は無限の可能性を秘めています。日露の間には、戦後70年以上の長きにわたり、平和条約が締結されていません。これは異常な状態であるとする思いにおいて私とプーチン大統領は一致しています。2016年12月、プーチン大統領を私の故郷(ふるさと)、長門(ながと)にお迎えし、2人で日露関係の将来についてじっくりと話し合い、北方四島において共同経済活動を行うための特別な制度に関する協議の開始、元島民の方々による自由な墓参の実現について約束しました。そして、長門の地で平和条約問題の解決に向けた真摯な決意を共有しました。聴衆の皆さん、この長門での約束は、着実に実施されつつあります。日露関係は今、かつてない加速度で前進し始めています。プーチン大統領と私が約束した両国協力のプランは、150以上に上ります。うち半数以上が、もう現実に動いているか、今正に動こうとしています。お見せするビデオが、そこを雄弁に教えてくれます。ではビデオを御覧いただきます。

 いかがでしょうか。一本貫く太い流れをお感じいただけたでしょうか。8項目の協力プランの実現を通じて、ロシア住民の生活の質の向上が、皆様にも実感できるようになるのではないでしょうか。ロシアと日本は、今、ロシアの人々に向かって、ひいては世界に対して、確かな証拠を示しつつあります。ロシアと日本が力を合わせる時、ロシアの人々は健康になるのだというエビデンスです。ロシアの都市は快適になります。ロシアの中小企業はぐっと効率を良くします。ロシアの地下資源は、日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届きます。ここウラジオストクを始め、極東各地は、日露の協力によって、ヒト、モノ、資金が集まるゲートウェーになります。デジタル・ロシアの夢は、なお一層、早く果実を結ぶという、そんな証拠の数々を、今正に、日本とロシアは生み出しつつあります。

 日本とロシアには、他の二国間に滅多にない可能性があるというのに、その十二分な開花を阻む障害が依然として残存しています。それこそは皆さん、繰り返します、両国がいまだに平和条約締結に至っていないという事実にほかなりません。今年の5月25日のことでした。場所はサンクトペテルブルクの国際経済フォーラムです。想像してみましょうと、私は聴衆を促しました。

 日本とロシアに永続的な安定が生まれたあかつき、一帯はどうなるのか、希望と共に想像してほしいと呼びかけました。そのあかつき、私たちは、北半球と東半球の一角に平和の柱を打ち立てている。それは頼もしくも地域と世界を支える太い柱となっているはずなのであります。

 北極海からベーリング海、北太平洋、日本海は、平和と繁栄の海の幹線道路になることだろう。対立の原因をなした島々は物流の拠点として明るい可能性を見いだし、日露協力の象徴へと転化するだろうし、日本海も恐らく物流のハイウェイとして一変しているだろう。

 そしてその先には、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された、平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域が登場するであろう。

 プーチン大統領、もう一度ここで、たくさんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか。今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか、と問いながら、歩んでいきましょう。

     ・・・・・・・・
 プーチン大統領と私は、今度で会うのが22回目となりました。これからも機会をとらえて、幾度となく会談を続けていきます。平和条約締結に向かう私たちの歩みをどうか御支援を皆さん、頂きたいと思います。力強い拍手を、聴衆の皆さんに求めたいと思います。ありがとうございました」

 8項目の協力プランの実現を通してロシアと日本が力を合わせれば、ロシア住民の生活の質が向上し、ロシアの人々が健康になる根拠となり、ロシアの都市は快適になって、ロシアの中小企業は格段に効率性を獲得、ロシアの地下資源は日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届くようになる。

 さらに日ロの協力によって両国間はヒト、モノ、資金が集まるゲートウェー化し、その結果、(プーチンによって2016年末作成のコンピュータを使った各種情報処理技術駆使をベースとした「デジタル経済推進プログラム」の到達点である)「デジタル・ロシア」の夢は、なお一層、早く果実を結ぶという、そんな証拠の数々を、今正に、日本とロシアは生み出しつつあるだけではなく、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域が登場することになる。

 そして「プーチン大統領、もう一度ここで、たくさんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか」と北方四島の帰属問題解決を出発点とした平和条約締結を迫っている。「今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか、と問いながら、歩んでいきましょう。」と。

 発言に効果を持たせるために要所要所で適宜間を置き、要所要所で顔を右に左に動かしてプーチンを見たり、習近平を見たり、あるいは聴衆に目を向け、手をジェスチャーたっぷりに横に差し出したりして得々となって喋る安倍晋三の様子が浮かんでくる。

 だが、自身がこのように口にしたロシアの繁栄は全て北方四島帰属の解決と平和条約締結にかかっていて、それなくして実現しない絶対的要因であるかのように位置づけ、このようなロシアの繁栄構築だけではなく、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた太平洋地域構築の主導者として自身・日本をロシア、さらに中国やその他の太平洋の国々の上に置いている物言いとなっている。

 日本や自身に対するこの万能化の思い上がりは凄い。

 では、プーチンの発言を見てみる。

プーチン(戦後70年以上、日ロ間で北方領土問題が解決できずにいることに触れた上で)「今思いついた。まず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに。

 (会場から拍手)拍手をお願いしたわけではないが、支持してくれてありがとう。その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう。そうすれば70年間、克服できていない、あらゆる問題の解決がたやすくなるだろう」

 多分、プーチンは日本や安倍晋三の主導なくしてロシアの繁栄はないといった安倍晋三の思い上がった物言いにカチンと来たはずだ。その結果、領土の帰属問題の解決は時間がかかる、その解決は抜きに平和条約を締結して、お前さんが言うロシアの繁栄、太平洋地域の繁栄を早いとこ見せてくれといった思いが反発の形で内心に渦巻いた結果、このような要求になったと見ることはできる。

 但し安倍晋三に対する反発が言わせた前提条件なしの平和条約締結要求であったとしても、プーチンと22回の首脳会談を重ねながら、平和条約締結の前提となる北方四島の帰属問題の交渉が何ら進展していない、ゼロそのものであることに変わりはない。

 なぜなら、安倍晋三自身が首脳会談という場ではない経済フォーラムの場に領土の帰属問題と平和条約締結問題を持ち出して、「今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか」などとわざわざ迫らなければならなかったということは、首脳会談の場で何ら進展がないからで、進展していない「エビデンス」(根拠・証拠)としかならない。

もし安倍晋三が習近平やその他の国の首脳、さらには経済フォーラムの聴衆を領土の帰属問題と平和条約締結を前に進める証人にしようする目的をスピーチに隠していたなら、そのこと自体も何ら進展がない「エビデンス」(根拠・証拠)としかならない。

 進展ゼロだから、首脳会談の外に持ち出さなければならなかったのであって、少しでも進展していたなら、首脳会談で積み重ねていかなければならない問題である。

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安倍晋三の都合のいい各種統計使用・自慢のアベノミクス3本の矢の対成果国民の答・評価は「まあ満足」程度が正体

2018-11-01 10:58:13 | 政治
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 玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。

 題名に使用した「まあ満足」は内閣府の「国民生活に関する世論調査」質問項目に対する回答項目で、一度「ブログ」(2018年8月31日)に使用した。大した内容ではないが、気が向いたなら、併せて読んで頂きたい。

 立憲民主党参議院議員吉川沙織(42歳 比例区)が2018年10月30日の参議院本会議で安倍晋三の所信表明に対する代表質問を行った。その中から吉川沙織が質問冒頭、「日米の民主主義をめぐる現状認識と総理自身の『政略主義』に対する見解」、さらに「国家戦略特区の成果及びアベノミクスに関する現状での総括」を問い質したが、それに対する安倍晋三の答弁のみを文字起こしして取り上げ、その是非を見てみる。

 「政略主義」とは策略や巧妙な駆け引きを用いて自身に有利な政治を進める政治上の方法論を言うはずである。

 質問全文は「代表質問立憲民主党・民友会吉川沙織」を参考されたい。

 安倍晋三は元々滑舌が良いとは言えない。文字起こしの際、聞き取れない箇所がかなりあったが、聞き取れた単語を検索エンジンの検索窓に入力、多くは関連語から正確な単語の摘出ができたが、できなかった単語に関しては「?」をつけることにした。

 安倍晋三「吉川さおり議員にお答え致します。日米の民主主義と政略主義についてお尋ねがありましたが、他国の民主主義については控えますが、我が国の民主主義は絶えず、これは発展させていく。これは私たち政治家全員の責任であります。

 政治家が激しい言葉で互いの批判に終始したり、行政を担う公務員を萎縮させても、これも民主主義の発展に資するとは考えません。それぞれが国民の皆さんの前にしっかりと政策の選択肢を示すこと、そして建設的な議論を通じて政治を前に進めていくことこそが民主主義の王道であると考えます。

 長い民主主義の歴史を持つ英国のチャーチル首相がかつて最悪の制度と称したしたように民主主義に完璧などありません。それでもなお私達政治家は責任を果たさなければならない。現状への不満を言い募るよりも、より良い民主主義を求めて共にたゆまぬ努力を重ねていくべきであります。

 お尋ねの政略主義という考え方については立憲民主党の皆さん程詳しくは研究したことはありませんが、全ては国民のため、如何なるテーマについても、自由忌憚なく議論をさせて頂きたい。与党・野党の立場を超えて、国民の負託に応える建設的な議論をさせて頂きたいと考えております。

 審議時間と採決の在り方についてお尋ねがありましたが、国会の運営については国会に於いて適切に決められるものと考えております。政府としては国会から求められれば、誠実に真摯に対応すべきものである考えており、今後とも丁寧な対応に努めてまいります。

 国家戦略特区の成果とアベノミクスの現状の総括についてお尋ねがありました。国家戦略特区は岩盤規制改革の突破口として企業による農地取得などの農業改革や都市公園内での保育園設置の特例による待機児童対策、都市計画手続きや航空法の高さ制限の特例による都市再生など、これまで長年に亘って推進(?)できなかった規制改革を推進(?)することで経済成長に大きく寄与しております。

 こうした取組みの中で例えば首都圏の特区を活用した都市再生開発プロジェクトについては東京都は8兆5千億円の経済効果があると試算しています。また、福岡の都市再生開発プロジェクトでは市の資産によれが8千5百億円の経済効果が見込まれるなど、その地域の経済成長に繋がっています。

 さらに農業、医療、エネルギー分野などに於ける規制改革、法人税引き下げ20%台の実現、TPP、日EU・EPA経済連携の推進など、この5年余り、大胆な成長戦略を実行してまいりました。こうしたアベノミクス3本の矢によって名目GDPは12.2%増加し、過去最高となります。

生産年齢人口が450万人減る中、雇用は250万人増加し、正社員の有効求人倍率は調査開始以来初めて1倍を超えています。さらに5年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現し、この春の中小企業の賃上げ率は過去20年間で最高になっています。

 こうした中で先般の内閣府の調査でも、『現在の生活に満足』と回答した方々の割合は75%と過去最高となりました。今後さらにアベノミクス3本の矢を力強く放つことで、さらなる景気回復、所得の向上とデフレ脱却の実現を目指してまいります。

 安倍晋三の「政略主義」は世論調査で国民の支持を得ることができていなかった憲法解釈を手段とした集団的自衛権の行使容認や憲法9条に自衛隊の存在を明記する憲法改正等は選挙の際、争点として真正面から取り上げずに国民が最も関心のある消費税の延期の是非、あるいは景気対策、教育費等の生活に関わる政策だけが争点であるかのように装って選挙戦を繰り広げ、選挙に勝利すると、集団的自衛権の行使容認、あるいは憲法9条自衛隊存在明記までをも国民の信を得たとして、それらの政策を数の力で強引に進める意図的でないはずはない策略に最も顕著に現れている。

 「政策の選択肢を示すこと、そして建設的な議論を通じて政治を前に進めていくことこそが民主主義の王道であると考えます」と言ってはいるものの、争点隠しは「政策の選択肢」の曖昧化、あるいは隠蔽そのものであって、当然、「国民の負託に応える建設的な議論」を回避していることになるのだから、この発言とは裏腹の安倍晋三の姿勢は「政略主義」に相当しないはずはない。

 にも関わらず、「お尋ねの政略主義という考え方については立憲民主党の皆さんほど詳しくは研究したことはない」とか、「長い民主主義の歴史を持つ英国のチャーチル首相がかつて最悪の制度と称したしたように民主主義に完璧などない」といった物言いで自らの政略主義的な姿勢を巧妙に隠す、このような事実からも、「政略主義」が安倍晋三の精神に根付いていることを窺うことができる。

 次に安倍晋三は国家戦略特区の成果を縷々挙げ、試算された経済波及効果は何兆だ、何千億円だと、試算イコール費用対効果となって現れる保証はないにも関わらず、「地域の経済成長に繋がっている」と試算を以って成果であるかのように見せかけるレトリックを用いている。

 これも国民を騙して内閣支持率を得る「政略主義」に入る。

 このような国家戦略特区を用いた経済効果の他にアベノミクス3本の矢によって過去最高の名目GDP12.2%増加、生産年齢人口が450万人減る中、雇用の250万人増加、調査開始以来の正社員の有効求人倍率初の1倍超、5年連続の今世紀に入って最も高い水準の賃上げ実現、今春の中小企業賃上げ率の過去20年間で最高等々、既に何度も聞かされ、聞き飽きているが、これらの成果を上げ、成果に対する国民の答が内閣府調査の「現在の生活に満足」過去最高の75%だとしている。

 事実75%がそっくりそのままの75%なら、アベノミクス3本の矢の成果に対する国民の答は75%もの満足度で占められていることになる。

 では、75%がそっくりそのままの75%なのか、《「国民生活に関する世論調査」の概要》(内閣府政府広報室/2019年8月)を覗いてみる。

(2)現在の生活に対する満足度

問2 あなたは、全体として、現在の生活にどの程度満足していますか。この中から1つお答えください。

 平成29 年6月        30 年6月

満 足(小計) 73.9%    → 74.7%
満足している 12.2%    → 12.2%
まあ満足している 61.7% → 62.5% 

 安倍晋三は75%を「現在の生活に満足」の回答に入れているが、実際の内訳は「現在の生活に満足している」の回答が12.2%(2019年比±0)で、「現在の生活にまあ満足している」の回答が昨年比+0.8に過ぎない62.5%の大部分を占めている。

 もしアベノミクスの成果が進化していく状況にあるなら、「現在の生活にまあ満足している」は大きく減る傾向にあり、対して「現在の生活に満足している」が大きく増えていく傾向になければならない。ところが逆の傾向になっているだけではなく、「地域の経済成長に繋がっている」としている、試算を弾き出した段階の経済波及効果に過ぎない国家戦略特区を用いた地域経済効果や各種統計を用いたアベノミクス3本の矢の成果に対する内閣府調査に現れた国民の答は実質的には「現在の生活にまあ満足」程度であって、安倍晋三の自慢とは大きくズレることになる。

 いわばアベノミクス3本の矢の成果とその成果に対する各種統計を用いた安倍晋三の自慢との間にズレがないことを国民に証明するためには「現在の生活に満足している」はたったの12.2%ではなく、「現在の生活にまあ満足している」の62.5%に取って代わって、「現在の生活に満足している」が62.5%もの大多数派を占め、対して「現在の生活にまあ満足している」は12.2%の少数派とならなければならない。

 とてものこと、そうはなっていない以上、アベノミクスの成果に対する国民の答・評価は安倍晋三が各種統計を用いて自慢している状況からは程遠く、「まあ満足」程度に留まっているに過ぎないことを明らかに示している。「5年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現」も国民の"満足"に繋がっていないことの暴露
そのものとなる。

 この程度がアベノミクスの実力の正体ということでもあるのだろう。

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