日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

TPPと農業

2013-03-15 11:03:35 | マーケティング
いよいよ本格的論議が始まろうとしている、TPPへの参加。
国内での争点となるのは、やはり農業分野というコトになるのだろう。

農林族と呼ばれる議員さんたちだけでは無く、多くの農家さんもTPPへの参加を拒否したいと考えているようだ。
その理由として上げられるのが「林業の様に、安い輸入品が入ってくると、日本の農業がダメになる」というコト。
確かに、林業の衰退の大きな要因の一つは、安価な輸入木材の影響があったと思う。
でもそれだけだろうか?

戦後の復興政策の一つとして、住宅事情の改善というものがあったと思う。
それが、今多くの人の悩みの種となっている「花粉症」の元となる、杉や檜の植林事業だった。
その植林事業が始まってからしばらく経つと、都市近郊にある建築物の集合体が登場する。
「団地」だ。
鉄筋コンクリートでつくられた集合住宅は、「団地族」という言葉を生み、東京では高島平団地、大阪では千里ニュータウンという、新しいまちを造るコトになっていく。
その後も、全国各地に「マンション」と呼ばれる鉄筋コンクリートで出来た、集合住宅が次々と誕生し、今では戸建て住宅よりもマンションの方が、住まいのカタチの基本形のようになってきている。

それだけでは無く、いわゆる「住宅メーカー」と呼ばれる企業が登場し、ニュータウンと呼ばれる新興住宅地には、住宅メーカーが造った規格の家が建ち並ぶ様になってきた。
余りにもお隣さんと造りが一緒なので、間違える人もいるのでは?と、言われた時代もあった。
その「住宅メーカー」の規格住宅を造る為に便利だったのが、輸入木材だったのではないだろうか?
住宅メーカーが造る家には、昔ながらの大黒柱も大きな梁もない。
言い換えれば、団地やマンション、住宅メーカなどの登場により、家の造りが変わってきたコトで、安い輸入木材へと需用が変わっていった、とも考えられるのではないだろうか。

そう考えると、今の農業の問題と過去の衰退した林業とを、同じように考え、単純に「TPPに参加すると安い輸入作物が入ってくるので、日本の農家がダメになる」と、言えるのだろうか?

もう一つ思い浮かぶのが、1993年の冷夏によるお米の不作の騒動だ。
この時は、緊急輸入としてタイのお米が輸入された。
もちろん、日本のお米よりも随分安価だったと記憶している。
にも関わらず、タイのお米はほとんど売れなかったのである。
言い換えれば価格では無く、お米そのものが当時多くの人に受け入れられなかった、と言うコトなのだ。
安い輸入農作物が入るコトで、一時期的にダメージを受けるかも知れない。
しかし、日本の生活者の食に対する志向は世界の中でも厳しいのでは?と感じている。
それは「食への安全性」という点も含め、相当厳しい基準を生活者一人ひとりが持っている様に感じるのだ。

その中で鍛えられてきたのが、日本の農業なのではないだろうか?
問題とすべきは、生活者に鍛えられた農家の高齢化や構造的な市場流通なのでは?
「林業の衰退=農業も同じ」だと考える前に、林業の衰退を招いた社会的背景などの問題点を洗い出していくコトで、農業の未来像が見つかるような気がするのだ。