現在陸上自衛隊では、96式装輪装甲車を補完するものとして、次期装輪装甲車の開発が進められている。
96式装輪装甲車とは、1992年より小松製作所を中心に進められ、1996年以降毎年28輌程が調達されており、既に予算認可を含め250輌程度が配備、イラク復興人道支援任務に関係する用途のほか、北海道の各師団一部普通科連隊及び、各方面隊の一部戦車大隊等に配備されている。
そもそも、96式装輪装甲車とは、1960~1972年までに428輌が配備された60式装甲車の後継として開発されたもので、装軌式から装輪式となったのは、増加が予想された国連平和維持活動への参加などが挙げられる。また、装軌式に対して安価であるとの配慮も当然働いたはずである。
というのも、96式の開発当時調達が進められていた89式装甲戦闘車は、重MATや35㍉機関砲、暗視装置といった優秀な装備品を備えた高度な装甲戦闘車であったが、その分価格も高価であり、第十一普通科連隊一部中隊と富士教導団の一個中隊分の調達に留まることが確実と見られたからである。
装甲車とは、単に普通科隊員を輸送するだけのものではなく、戦車大隊本部管理中隊や、場合によっては施設科部隊にも用いられるものである。89式の場合はオーバースペックと判断された事にも疑いは無い。
しかし、現行では、60式に続き、338輌が配備された73式装甲車の後継にも装輪装甲車が当てられるとの構想である。陸上幕僚監部では装軌式装甲車を推す声も大きかったが、結果的に混戦猿を得られたのは装輪装甲車開発という結果であった。
こうして、装輪装甲車の配備は現在に至るも順調に進み、例えば富士総合火力演習では、73式装甲車にかわり96式装輪装甲車が全般的に運用される状況となっている。加えて、イラク復興人道支援派遣以降、更に装輪装甲車への需要は増加するものと考えられる。
また、2001年からの軽装甲機動車大量配備開始により、年間150~200輌という多数の装甲車を陸上自衛隊は配備するに至り、例えば、最も近代化が後回しとされた中部方面隊も、隷下の師団普通科連隊は大半が一部中隊に軽装甲機動車を配備し、加えて高機動車と併せた高度な展開能力と防御力を有するに至っている。
軽装甲機動車以上の調達度合で配備が進む高機動車も、イラク派遣の際には最低限の装甲防御が与えられており、73式中型トラックに代わり普通科部隊の機動力として、また、96式多目的誘導弾発射機や120㍉迫撃砲牽引用、93式近距離誘導弾発射機や発煙装置運搬用と、広範に運用されている。
だが、果たして装輪装甲車に、戦車部隊としての運用が可能であるかということである。当然ながら、装軌式車輌が無限軌道という面で車体を支えているのに対して、装輪車は車輪という点で支えられているのみであるから、特に泥濘地や森林地帯突破能力では、心もとないのはいうまでも無い。
ここで誤解しないで戴きたいのは、装軌式絶対優位主義ではなく、装軌式と装輪式とで、利点が活かされる点は活かし、適材適所を貫く必要があるという事だ。例えば、87式偵察警戒車のような装備は路上機動性能が重視される装備であるから、後継車輌はこのまま装輪式で問題ない。また、特に戦略機動性が重視される普通科部隊にも装輪装甲車の方が有利であろう。しかし、機甲部隊に随伴する部隊、例えば、戦車大隊の本部管理中隊や、連隊戦闘団編成時に戦車を支援する部隊として、装軌式車輌は必要であると考える。
高価とされる89式も、砲塔部分を、現行の熱線暗視装置・35㍉機関砲・重MAT装備砲塔から、例えば87式偵察警戒車(25㍉機関砲・微光倍増方式暗視装置)の砲塔に換装すれば、価格は大きく低下する事も考えられ、また、施設科部隊向けには無砲塔機銃装備型も配備するという柔軟性での調達が為されれば、少なくとも機甲部隊に随伴できる装甲車を大量配備できよう。

装軌式装甲車は、89式の車体を用いたもの、若しくは新規開発でも問題は無いが、特に73式装甲車の本格退役が始まれば、必要となる装備であろう。
HARUNA



装甲車とは、単に普通科隊員を輸送するだけのものではなく、戦車大隊本部管理中隊や、場合によっては施設科部隊にも用いられるものである。89式の場合はオーバースペックと判断された事にも疑いは無い。








装軌式装甲車は、89式の車体を用いたもの、若しくは新規開発でも問題は無いが、特に73式装甲車の本格退役が始まれば、必要となる装備であろう。
HARUNA