北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

小牧基地航空祭 詳報

2005-10-14 02:21:33 | 防衛・安全保障
 10月9日、愛知県小牧市にある航空自衛隊小牧基地において、航空祭が実施された。IMG_2829小牧基地には第一航空輸送隊や第五術科学校、そして小牧救難隊などの部隊があり、特に国際平和維持活動や国際人道支援派遣に欠かせない輸送機C-130Hがわが国で唯一配備される航空基地で、15機が配備されている。
 この他には、航空管制の支援などの教育を行う第五術科学校が運用するT-1練習機が保有航空機として特筆すべきだろう。IMG_2816T-1練習機は、わが国が第二次大戦後初めて国産開発したジェット練習機で、半世紀近くにわたって、航空搭乗員の練成や航空管制の支援、技量維持に当たってきたが、今年度中に全て退役する予定である。
IMG_2911 T-1練習機の展示飛行には、二機が離陸し、タッチアンドゴーや宙返り、急上昇などを展示し、一見F-86のような外見を持つT-1の、F-15やT-4とは異なる滑らかなフライトが印象的であった。
 また、小松基地航空祭に引き続き、築城基地の第五航空団より、F-1支援戦闘機とT-2練習機が駆けつけた。F-1支援戦闘機は、1977年より部隊配備が開始された日本初の国産超音速支援戦闘機であるが、T-1と同じく、今年度中に全機用途廃止となる予定だ。IMG_2821 空対艦ミサイルASM-1を運用する有力な支援戦闘機として期待され、搭載するアドゥーアエンジンの出力不足に悩まされながらも、新型のF-2支援戦闘機に座を譲りつつある。小牧へは、岐阜基地の開発飛行実験団のF-2が駆けつけ、F-1とF-2という貴重な集合写真を多くの観客がカメラや脳裏に納めていた。
IMG_3092 この他には、浜松基地と三沢基地より駆けつけた空中早期警戒管制機E-767と、早期警戒機E-2Cの貴重なツーショットを見る事が出来た。いうまでもなく、E-2Cは1979年のMiG-25函館亡命事件を契機に防空能力向上の観点から導入されたもので、E-767は、防衛予算に余裕の出来た時期にE-2C以上の性能を有する機体を、ということで開発された機体である。それぞれ、E-767が4機、E-2Cが13機配備され、全国の防空警戒任務に就いている。
IMG_2847 小松基地より飛来したF-15Jが、小松基地航空祭の際と同じように格納庫内で一般公開されていたが、その奥にはC-130Hが置かれている。小生には実感が余り湧かなかったが、同行した航空技師の友人が言うには、さすがはC-130Hの格納庫だけあって、天井が高い、ということだ。
IMG_2892 基地防空隊は、小松基地のようにVADSや81式短SAMを展示していたほか、岐阜基地より第四高射群第15高射隊のペトリオットミサイルが一式展示されていた。射程約100kmの地対空ミサイルであるが、破片効果により目標を撃破する方式は対航空機には有効ではあるが、弾道ミサイルに対しては必ずしも万能ではない為、射程を15kmとし、直撃方式で撃破するPAC-3型の配備が決定している。
IMG_2851 また、C-130Hの機内展示も行われ、あたかも邦人救出に飛来したC-130Hと難民のような様相を呈していた。なお、緑色迷彩は、低空飛行する場合の迷彩効果を重視したもので、逆に青色迷彩は、イラクなどでSAM脅威がある地域において螺旋状に降下するスパイラル降下を行う際に迷彩効果を高めるために為されたものだ。
IMG_3022 救難展示には、U-125救難機二機とUH-60JA二機が見事な連携を見せていた。写真では、二機の救難ヘリの間に一機、奥に一機U-125が写っている。同機は、航空自衛隊以外に海上自衛隊でも救難ヘリとして運用されており、陸上自衛隊では人員輸送用に運用されている。救難用器具を落下傘降下させた後、ヘリコプターから救難要員が降下、救助するという一連の展示を行った。IMG_3047 小松救難隊の青を基調としたロービジ塗装とは異なり、要救助者から視認性が高い救難機塗装となっている。これは日本海沿岸という小松基地、そして太平洋沿岸という小牧基地の地的背景が反映されているのだろう。
IMG_3069 救難と関係して、災害派遣任務に関する展示が行われた。
 これはCH-47J輸送ヘリコプターによる空中放水の様子で、6~8tの水を一気に放出し、森林火災に対して有力な効果を持っており、毎年のように発生する四国や山陰、中国地方での森林火災へ出動している。また、3年前に発生した岐阜市近郊においての森林火災への活躍も、記憶に新しい。
IMG_2957 さて、最後の飛行展示である災害派遣展示を行うべく、C-130H三機が続々と離陸してゆく。川崎重工C-1輸送機には劣るものの、世界有数のSTOL性を有するC-130は、米軍の記録では車輪を出さず強行着陸し装備を下し、車輪を油圧で出して発進するという強行輸送をヴェトナムでは何度と無く実施している。IMG_3097 災害現場を想定した15㍍四方の区画に救難物資を投下するC-130H、正確な物資投射能力を展示していた。この他、着陸しエンジンを回転させつつ、車輌を卸下する展示も行われ、航空自衛隊のワンボックスカーと73式小型トラックが飛び出した。IMG_3194 続いて着陸したC-130H二機が会場正面を通過すると、会場にはひと際強い疾風が飛んだ。しかし、エンジンを最大出力にすれば自動車一台、木の葉のように飛ばすだけの能力を秘めているという。
IMG_3230 展示飛行終了後、外来機の帰投が開始される。これはバイバイフライトといわれ、航空祭最後の見せ場として定評があり、1500時終了という事だが、1530時程度まで、申し訳ないと思いつつカメラを構え続けるファンは多い。IMG_3286 特に、F-1やT-2の帰投まで、多くのファンが名残惜しそうに列線を敷いていた。展示機は、E-767・E-2C・C-1・U-4・U-125・YS-11に加え、F-15J・RF-4・F-2・F-1・T-2、そしてT-3、CH-47、UH-60Jといった多数機が飛来しており、バイバイフライトは熱気に覆われていた。IMG_3330 しかし、小牧基地と県営名古屋空港の関係がよくないことは特に周辺住民であれば周知であろうが、反対デモも出ていた。他に、終日逆光であるのには閉口した。写真はF-1のバイバイフライトではあるが、可能ならば名古屋空港の見送りデッキから撮影できれば、順光の理想的な写真が撮れよう。

IMG_2902 さて、航空祭とは若干視点を変え、写真を掲載したい。
 小牧基地は輸送機の基点であるから、自衛官を輸送する場合もあり、こうした電光掲示板も、また待合室も設けられている。待合室は、体験飛行などでご覧になった方も多いと思うが、電光掲示板は、小生も初めて見たものであり、ここに掲載した。
IMG_2936 写真は着陸するT-1練習機、しかし注目して欲しいのは、背景にある電波塔、これは名古屋の中心繁華街、栄にあるテレビ塔である。他に名古屋駅前にあるツインタワーやトヨタビルも観る事が出来、小牧ではあるが、対面にあるのは名古屋空港であるという実感がああった。尚、今日、県営名古屋空港は小型機とチャーター機用になっており、小型機とボーイング747も接続可能な国際線ウイングが共存するというシュールな光景も見る事が出来た。
IMG_2806 以上が小牧基地航空祭の詳報である。
 名鉄小牧線牛山駅から徒歩五分、走れば三分。小牧線と地下鉄は接続してあり、交通は便利である。例年の観客動員は小松基地や岐阜基地航空祭の半分程度の6~8万人、ブルーインパルスが飛行展示を行わない場合は観客数に影響があり、写真撮影を行いたい場合は観客が少ないほうが好都合といえよう(それでも、あの富士総合火力演習の2~3倍だが)。
 屋台も盛況で、焼肉・たこ焼き・ビールにフランクフルト、秋でもカキ氷に加え、なんとパスタの屋台まで出ていた。
 皆さんも、来年は足を運ばれては如何だろうか?

 HARUNA

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする