北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ペトリオット地対空誘導弾の観閲行進

2006-12-19 11:44:15 | 航空自衛隊 装備名鑑

■小牧基地から岐阜基地へ

 昨日の記事、小牧基地での観閲行進(?)、ご覧になって気付かれた方もいようが、ペトリオットミサイルの肝心の発射機が写っていない、しかもかなりの逆光で鮮明とは言いがたい。まあ、偶然撮れたものだし贅沢は言うまいが、撮れるならば撮りたいものだと思うのが人の心というもの。

Img_9416  さてさて、小牧基地航空祭の翌日は守山駐屯地祭であるが、これにはペトリオットは来ない(多分、大きすぎて発射機以外入れない)、そしてその次の伊丹駐屯地祭は、2002年に発射機だけペトリオットの発射機が装備品展示に来たので期待したが、残念ながら来なかった。そして来たのは岐阜基地航空祭、なにしろ第四高射群の本部がある基地、こんどこそ、走行状態のペトリオットを撮れるに相違ない、初めからそう考えたのではないが、教えてもらった撮影ポイントでは偶然に収めることが出来たのだ!何があるかわからない、それが航空祭である。

Img_9683  既報ながら、岐阜基地の飛行開発実験団には装備開発の実験を行う部隊とあって、多くの装備品が並び、また飛行展示の様子も多くの機種が大空を駆けた。多機種編隊飛行は百里基地でもF-15J,RF-4とT-4練習機が実施するようだが、岐阜基地の編隊は更にF-2やC-1などが加わる。そして機動飛行の展示も幾つもの機種が飛びかう、F-15JとF-4EJ改が同時に機動飛行を行う様子は、多分、築城基地以外では観れないものである。

Img_9437_1  今回の岐阜基地航空祭は、今年度を以て運用が終了し、全機航空自衛隊から用途廃止となるT-3練習機の飛行展示で、F-2支援戦闘機との模擬空中戦の様子が新鮮であった。巴戦をすれば、例えば零戦と九六式艦戦では低速性能と小回りが利く九六式が圧勝した様子が「大空のサムライ」の著者、撃墜王坂井三郎により伝えられているが、CCV性能で知られるF-2もオーバーシュート(前に出てしまうこと)を繰り返し、不得手のような様子が印象的であった。

Img_9528  いつもお世話になっているC,ジョニー氏が「誘導路近くでいい撮影ポイントがありますよ」というお話をいただき、そんな美味しい場所があるのか、と展開してみれば周回道路をやや歩き、おお、飛行展示を終えた航空機が続々と進んでくる。F-4とF-2、この取り合わせも中々観れまい、しかもF-2は試作機の初号機(どうも小生の世代は、初号機、と聞くとマニアックな想像をしてしまうが、これはこの初号機が飛んだ時期のアニメの影響ですな)である。

Img_9598  この撮影位置の利点は、いままでのエプロン地区での撮影では空挺降下を輸送機の後姿を見ながらの撮影となるが、この誘導路付近外周道路沿での撮影はは輸送機を傍から撮影することが出来る。しかも、相当人はいるのだが、なにせ外周道路は滑走路のエンドを回り反対側の保存機展示区域(バス駐車場がある)へ延々5kmほど続いているので、最前列撮影が可能である。しかし、飛行展示はエプロンを対象に行われるのでやや遠い。撮影には小生の300㍉望遠レンズは必須で出来れば500㍉望遠が欲しい立地ではある。

■飛行展示終了後

 ブルーインパルスの飛行展示が終了し、エプロン地区(管制塔と格納庫のすぐ傍で機体を普段並べるところ)からの装備品撤収とバイバイフライトが開始された。

Img_0019  航空自衛隊の国産初期のトラックが小生ら撮影位置の傍を通る、ならばペトリオットも?と期待。ボンネット型のトラックは日本の公道では中々見ることが出来ないが、C,ジョニー氏のお話では、航空自衛隊は基地内の物資輸送など、走行距離が限られているということでまだこうした古い車両が現役とのこと、そういえば冒頭に挙げたジープ(陸自でいう73式小型トラック、空自正式名称1/2トラックV16BBRSFA)も新型のパジェロに置き換わる気配が無いように思えたのはこの為だろうか。

Img_0055  来た来た!来ました!高射隊の車輌、その後方にペトリオット発射機、しかも走行状態だ。今回は順光、絶好の撮影位置だ。正式名称3.1/2㌧トラックSKW464、陸自の73式大型トラックと同型である。陸自のように、年代別に△□式、とならないのは源田実航空幕僚長時代の裁定で、零式戦闘機のように制式化に拘り過ぎれば、適宜必要な近代化改修を受けさせることが出来ないとの旧海軍の反省から生まれたものとのこと。

Img_0052  この危惧はある程度的を射ているように思える。例えば、74式戦車であるが、アナログ式射撃統制装置や赤外線サーチライトによるアクティヴ式暗視装置が現代の第三世代戦車のデジタルコンピュータや熱戦パッシヴ式暗視装置に太刀打ちできないのに対し改善されず、僅かに不良部分である車体底部の薄さや砲身部分のサーマルジャケットの不備が運用上の問題から装備修繕されたのに対し、航空自衛隊の戦闘機などはMSIP機のような抜本的改修ではないが、適宜改修を受けることが可能と聞く。

Img_0035  さあ、いよいよペトリオットミサイル発射機!と思いきや、聞き覚えのあるローター音、これはもしや?とカメラを向ければ明野駐屯地の航空学校から地上展示に飛来した三機のヘリコプターが帰投するところ、皆さんご存知の通り、霞ヶ浦での事故の関係で駐屯地祭での飛行展示を一切自粛しているこの時期、陸上自衛隊のヘリコプターによる飛行展示は貴重である、しかもUH-60JA、OH-1、AH-1Sと三機編隊である。

Img_0044  この三機で最も珍しい機体はOH-1であろうか、伊丹の中部方面隊創設記念行事では毎年(今年を除く)飛行展示を行い、また明野に行けば毎日のように飛んでいるとのことで、岐阜基地航空祭では毎年帰投の際に曲芸飛行をして帰る(今年はしなかった)事で有名だが、霞目の東北方面隊記念行事で物凄い人だかりに囲まれていたところを観ると、他の地域では珍しい機体であることが実感できた。UH-60JAも珍しい筈だが、代わりに空自のUH-60Jは多くの基地で見ることが出来る。

Img_0063  ヘリ三機編隊の写真、その端に写っていたC-1が離陸を始める。隣ではペトリオットの発射機がどんどん向かってくる、ああ、どっちかにしてくれい、と思うのを知ってか知らずか(知らんに決まってる)大きく翼を左右にバンクしながら飛び去っていく、オオッとシャッターを切るが、考えれば翼を振ってバンクする機体は入間の機体、中には先ほど降下展示を行った空挺隊員が乗っている。左右に振られたらば酔ってしまわないかな?と思ったりした。

Img_9650_1  C-1が飛び去ると、ペトリオットミサイルの発射機がすぐ傍に迫っていた、カメラを広角に持ち替え、早速シャッターを切る。昨日の記事に掲載した写真は逆光であったが、今回は理想的な撮影条件である。プレ・プログラム誘導とTVM(ミサイル経由目標情報入手)による誘導計算と誘導を行うもので、ソフトウェア部分の改修には大きな努力が払われているという。低高度目標から高高度目標までの対処能力を有し、現在航空自衛隊が運用しているのはPAC-2型とよばれるものだ。

Img_9651_1  射程は約100km、岐阜から撃てば京都近傍の草津、若しくは浜松近傍の豊橋あたりまで到達する。PAC-2は弾道ミサイルに対する限定対処能力を有しているが、湾岸戦争でスカッドのような戦域弾道弾への対処能力は極めて限定的と判明している。しかし、フロッグ7などの短距離弾道弾にはある程度の対処能力を執するとされ、イラク戦争ではイラクからのアッサムード2迎撃に威力を発揮した。現在、射程を15~30kmに限定させ弾道ミサイル対処能力を高めたPAC-3型への配備の準備が進んでいる。

Img_0109  その後、C,ジョニー氏一行と小生一行は、岩国基地から飛来した米海兵隊F/A-18Cホーネットの撮影を行い駅へ帰路についた。実際は幸運で撮影できたような走行状態のペトリオットであるが、考えてみればかなり貴重な写真なのかな、と考えた次第である。

HARUNA

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