■ジェーン海軍年鑑調達
古書店を検索していたらば、ジェーン海軍年鑑の70年代のものが3000円というお手ごろ価格にてWebに上がっていた。
その古書店とは、名古屋!ちょうど名古屋に所用があり赴く予定があった為、思い切って展開することとした。思い切ってというのは、なにやら名東区という遠い場所であるとのことで、駅からも遠いようだ。実は、名古屋港に海上保安庁の練習巡視船“こじま”が寄港しており、本日1600時に出航ということで、この特集をしたかったのだが、予定とは時間通りにいかぬもの、時間が空いたころには既に出航の時間を過ぎており、それならば、と名東区への展開を決意した。
名東区、東山動物園の向こう側にある名古屋市営地下鉄東山線上社駅を出ると、そこから1.7km。バス路線に詳しくないので、徒歩で向かう。幾度か迷うも新鋭携帯電話機によるGPS機能を活用したどり着いた“古本まゆ”、現在在庫整理中とのことながら、オーナーは快く応じてくれ、3000×二冊という破格の値段で購入することが出来た。在庫も豊富で、次回はバスにて展開したい(京都市営バスのように名古屋市営バスは均一区画制なのかから調べねばならないが)。
“古本まゆ”の玄関で現物を見せてもらい、状態が非常に良く、これで3000円か、神保町の文華堂ならばもっと値段が張るのにと感動に震えていた。しかし、あとで駅に戻ったら判ったのだが、感動に震えていただけではなく、単に名古屋市で地下鉄が不通になるほどの地震が起こっていただけだった。東海道線とか止まってないかな?と危惧するも止まっているのは地下鉄全線と乗り入れる名鉄犬山線だけであったようだ。
1972~1973年版のジェーン海軍年鑑。1972年に発行されたものである。
時期的には、欧州ではヘルシンキ宣言に向け、全欧州安全保障会議が開催され、1968年の金プール協定以降いよいよ基軸通貨ドルを支えるブレトンウッズ体制が揺らぎ始め、ヴェトナム戦争は米軍が撤退に向け大きく動き、日本では田中角栄の台頭が始まった時期のものだ。
日本の項目、護衛艦“はるな”が掲載されている。“はるな”が就役したのは1973年であるから、その前に掲載されたものであるが、同時期の世界の艦船などをみるとその図は正確であり、さすがジェーン、といったところか。各国の海軍の現勢に加え、艦艇の写真と要目、主要艦艇に関しては写真、写真入手が困難なものや計画段階のものに関してはイメージ図かイラストが掲載されている。また、準軍事機構として日本の部分には海上保安庁のものも掲載されている。
1974~1975年版のジェーン海軍年鑑。1974年に発行されたもので、当時は1973年の第四次中東戦争を契機として発動された石油危機により国際通貨体制は大混乱となり、低価格の石油供給という大前提の下で進められていた先進諸国の工業体系は根底から覆り、一方で突如オイルマネーに沸いた中東諸国は、その外貨を多国籍銀行に預け、膨大なオイルマネーが投機に用いられ、これが途上国貸付に転用、今日の途上国累積債務問題へと展開するわけである。
石油危機は紙資源への供給にまで影響を及ぼしたことが、当時の雑誌、世界の艦船に掲載されており、この様子はジェーン年鑑の質にも影響している。しかし、1972年はジェーン年鑑発行75周年記念号とのことで、それで厚さが異なるからかもしれないが。さて、石油危機により工業が発展途上の途上国に大きな影響が及び、そこが資金を必要とし、多国籍銀行が預金されたオイルマネーを貸付、債務は焦げ付き、通貨危機とIMFによる構造調整が貧困を呼び、地域紛争の連鎖という今日の状況に至る。
護衛艦“はるな”、写真もカラーではないが、アスロック発射という魅力的なものを掲載している。“はるな”型は、この当時、三隻整備される計画であったようだ。石油危機により第四次防衛力整備計画は三年目にして縮小を余儀なくされ、例えば74式戦車は160輌を129輌に、73式装甲車は136輌を76輌に大幅に下方修正されたという実情があり、全般的に予算は縮減されたというから、“はるな”型の三番艦にも影響を及ぼしたのだろうか。
さて、世界の艦船の別冊などで、“海上自衛隊の50年”、“海上自衛隊全艦艇史”、“海上自衛隊護衛艦建造史”など、資料的価値の非常に高い特集が組まれているが、時代ごとに区切ったものは時事資料に限る。ここでジェーン年鑑をみると、なんというか世界に伍する、もしくは上を行く近年の新鋭艦に見慣れれば、旧式な供与艦が多く、当時の海上自衛隊というのは、世界的に見て限界があったのだ、そういった実感を抱かずにはいられない。
小生の研究分野は、東西冷戦構造の下での相互信頼醸成であり、1973年のヘルシンキ宣言、1983年のストックホルム合意がその対象である。こうした関係上、この時期の資料は必要なのだが、入手は容易ではなく、こうした機会で調達できることは非常にありがたい。3000円という価格で調達できたが、まだ異なる年のジェーン年鑑が調達時点で二冊あり、興味があられる方は“日本の古本屋”で検索し、サイト内で洋書検索をお勧めしたい。
ジェーン年鑑は結構重い、これは先日、鶴舞で調達した際に経験済みである。紙袋は二重で破れる心配は無い、重いがいい買い物して心は軽く、上社駅に到達すると、隣にBOOK OFF。ううむ、あるならば入ってみたくなるのが小生。BOOK OFFは
本の価値を目方で計っているフシがあるので違う意味で掘り出し物も期待でき、今まで結構貴重な本が100円均一で並んでいたことも多かった。まあ、流石にジェーン年鑑は無いだろうが(あったら逆に困る)。
一本350円。レンタル落ちのが200円で新京極蛸薬師のビーバーレコードにあったが、こちらは通常版でVHS、一本350円。妥当な価格より下である。
HARUNA
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