■舞鶴にて実施予定が延期に
福田総理大臣が辞任したが、同じ頃、防衛省より行われた発表で、9月9日から実施される予定であった、海上自衛隊とロシア海軍による合同捜索救難演習が、グルジア紛争を契機とする米ロ対立により、実施が延期となる見通しとなった。
当初、佐世保基地において実施する計画であったが、米ロ対立の関係に配慮し、アメリカ海軍の施設が置かれた佐世保基地ではなく、海上自衛隊の舞鶴基地に艦船を受入、訓練海域を日本海に変更した上で実施する予定であった。今回は、ロシア海軍よりミサイル駆逐艦(ソブネメンヌイ級?)と航空機が参加する予定であったが、延期し、ロシア海軍に訓練日程の再調整などを申し入れる方針とのことだ。
捜索救難演習であるが、現在、日本とロシアにおいて定期的に実施されている軍事演習にあたり、1998年の開始以来、今回で10回目となる。この種の軍事演習(規模的には合同訓練と呼称するべきか)は、特に信頼醸成の観点から重要であり、特に拡大NATOと、グルジア紛争を結果的に支持する姿勢を見せている上海協力機構の、新しい対立の構図に対して、国際関係のトライアングル構造に依拠して緊張緩和を図るという意味でも重要であり、舞鶴にて実施されると聞いていた中で、残念であった。ただし、延期であり、中止ではないので、極力早い時期に実施を期待したい。舞鶴基地において実施された場合は、舞鶴基地においてロシア海軍艦艇の一般公開が行われるのでは、ということで期待していたりもする。
8月8日に、グルジア軍が緊張の高まっていた南オセチア自治州に対して攻撃を行い、平和維持の目的で駐留していたロシア軍との間で戦闘に発展し、グルジア軍は敗走、結果的にオセチア自治州はアブハジア自治州とともに分離独立するに至り、ロシアとの外交関係の断絶に至った。これに対して、人道物資援助の輸送を目的として、アメリカ海軍や沿岸警備隊、NATO海軍の艦船がボスポラス・ダータネルス海峡を越えて黒海に展開、ロシア黒海艦隊との間で睨みあいが続く。同時にアメリカの弾道弾防衛網により対立が続いていた背景もあり、ロシア軍はNATOとの軍事演習が全面的に凍結、加えて、ロシアはイランへの武器輸出再開を発表し、アメリカを牽制する結果に至っている。
国際関係においては、出来る限り多くの外交関係、これは民間外交や自治体国際関係も含めて、維持しておくことが信頼醸成に繋がっており、米ロ関係の停滞、NATOと上海協力機構という新しい対立構造の可能性が生じてきた中において、特に日中関係の改善に重点を置いてきた福田内閣は、いわば、太平洋の架け橋として、中国経由での米ロ関係の緩和に役割があったのだが、その可能性は閉じられようとしている。こうした中で、日ロ合同演習の位置づけは信頼醸成という観点から低くないのだが、今後の展開を見守りたい。
HARUNA
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