◆五島列島・豊後水道・紀伊水道・小笠原でも計28隻
防衛省によれば、現在海上自衛隊は沖縄本島周辺海域において比較的大規模な自衛艦11隻による訓練を実施中とのことです。
沖縄周辺海域での訓練は、沖縄HH海域において10隻2機と二日間に渡り11隻2機、沖縄MM海域でも10隻2機と二日間に渡り11隻2機、沖縄Ⅱ海域についても10隻2機と二日間に渡り11隻2機、延べ96隻が参加する規模となりますが、10隻の部隊が海域を移動しつつ訓練を実施、途中1隻が合流し訓練、ということなのでしょう。海上自衛隊演習や自衛隊統合演習ではなく、日常的な訓練です。
実弾訓練の期間は4月18日から26日までの期間で、予備日を含めた場合28日までの予定。実施海域は、沖縄本島東方のHH区域、沖縄本島南東方のMM区域、沖縄本島東方のⅡ区域で、訓練内容について、いずれも護衛艦や航空機などによる水上射撃、対空射撃、対潜ロケット射撃、フレア発射等が実施されると発表しました。
沖縄本島東方HH区域は沖縄本島から太平洋側に位置する海域で、18日には、自衛艦10隻と航空機2機による水上射撃、対空射撃、対潜ロケット射撃、フレア発射等の射撃訓練の実施を発表していて、予備日に19日から22日の期間を設けているとのことです。
この海域では23日と26日にも射撃訓練が予定され、予備日として25日と27日、28日が予定。こちらは自衛艦11隻、航空機2機が水上射撃、対空射撃、対潜ロケット射撃、フレア発射等の射撃訓練を行うとのこと。対水上射撃の実施には、曳航標的が用いられ、場合によっては訓練実施艦のほかに多用途支援艦や訓練支援艦の展開があるかもしれません。
沖縄本島南東方MM区域、逆三角形に太平洋を広がる広大な訓練海域でこちらでも18日と予備日に19日から22日という設定にて、自衛艦10隻、航空機2機をもって対水上射撃訓練と対空射撃訓練、対潜ロケと射撃にフレア発射訓練の実施が発表されていました。
23日と26日にも同海域において同じ内容の射撃訓練が実施され、自衛艦11隻と航空機2機が参加。こちらの予備日は25日と27日、28日となっています。訓練内容として示されている対空射撃訓練は護衛艦の艦砲や高性能機関砲を用いて行うもので、航空機により標的を曳航、実施するものです。
沖縄本島東方Ⅱ海域は、沖縄本島から遠く離れ大東諸島南方に展開する五角形に広がる海上で、18日と予備日に19日から22日という設定にて、自衛艦10隻、航空機2機をもって対水上射撃訓練と対空射撃訓練、対潜ロケット射撃にフレア発射訓練。23日と26日に自衛艦11隻と航空機2機が参加する訓練が行われます。
対潜ロケットとはアスロック対潜ロケットを意味しているものと考えられ、加えて航空機からのロケット弾攻撃訓練も示しているのかもしれません。フレアーは赤外線誘導ミサイルを回避する囮熱源を示し、護衛艦及び航空機からの発射訓練が行われる、ということなのでしょう。
これだけの規模の部隊訓練ですので、射撃訓練に参加しない支援艦として前述の多用途支援艦や訓練支援艦に加え、補給艦も護衛艦への補給へ参加している可能性があります。また自衛艦と記載がありますが、掃海艇やミサイル艇なども射撃訓練へ参加している可能性もあるところです。
このほか、佐世保警備区では24日に五島列島南方F海域において自衛艦2隻が対水上射撃と対空射撃訓練を実施。同じく24日に下関沖S-2海域にて自衛艦3隻が水上射撃訓練を実施。翌25日には五島列島東方S-1海域において自衛艦1隻航空機1機による水上射撃訓練が実施されると発表されています。
これだけでも相当の規模ですが、同時に横須賀警備区では野島崎南方C海域にて24日に自衛艦5隻と航空機1機による対水上射撃と対空射撃に対潜ロケット射撃を実施予定。17日に同じ海域で自衛艦6隻と航空機1機による訓練を行ったところでの実施のもよう。
また、硫黄島東方Y-3海域でも1日から5月31日にかけ、自衛艦8隻が対水上射撃と対空射撃訓練を設定しています。流石に全ての期間で毎日実施、ということは無いでしょうが沖縄近海と大東島を支える小笠原諸島において、同時期にこうして実弾訓練が実施されているということ。
呉警備管区でも豊後水道では豊後水道南方L-1海域にて自衛艦5隻と航空機2機が19日と20日に対水上射撃訓練と対空射撃訓練を実施。同じくL-1海域に24日、自衛艦4隻による対水上射撃と対潜ロケット射撃が行われると発表。本日19日には紀伊水道南方K-1海域にて自衛艦3隻が対水上射撃訓練を実施中です。
沖縄周辺での訓練は、海上自衛隊全体の訓練規模からみれば、突出して大きいということは必ずしも言えませんが、沖縄東方海域を中心に巡回し訓練を行う、ということは訓練という形でも必然的にそれだけの部隊が集中し、抑止力として機能しているということは、同時に間違いありません。
特に訓練というかたちでも、自衛艦が巡回している海域には、我が国の島嶼部への領土的野心を表面化させている隣国に対し、艦船の接近を拒否する機能を発揮させることが出来るということそのものが、抑止力として機能します。実のところ、艦船数もさることながら、こうした巡回こそが抑止力であり、実戦での能力以上に武力紛争の発生を未然に防ぐという観点からは重要とさえ言えるもの。
近年、我が国南西諸島への隣国の領有権主張に加えて、南西諸島での同国海軍の行動が活性化している点が指摘されますが、同時期は我が国海上自衛隊がインド洋対テロ海上阻止行動給油支援や、ソマリア沖海賊対処任務といった新しい任務が重なり、訓練計画の体系に影響が出た時期と重なることを忘れてはなりません。
また、近年の原油価格高騰に対し、防衛費に占める艦艇訓練用燃料の取得費用が増額されなかった、ということも即ち艦艇の稼働時間へ影響するものですから、必然として訓練体系へ及ぼした影響がある、ということも、こうした訓練範囲の縮小というかたちで表面化していること、忘れてはならないでしょう。
これにより、日本周辺の巡回しての訓練実施も縮小され、その間隙に隣国の海軍力強化と加えて南西諸島地域での活性化が重なっているわけです。そうした意味でも、今回のような巡回しての訓練は、海上自衛隊の練度向上とともに、領土的野心を隣国が行動として示すことを封じるという意味で重要性が高いのだ、といえるわけです。
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