北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

任務完了!自衛隊沖縄救援部隊、北朝鮮弾道ミサイル危機収束に伴い撤収を開始

2012-04-16 23:14:58 | 防衛・安全保障

◆沖縄防衛の決意示した初の自衛隊緊急展開
 防衛省によれば、北朝鮮ミサイル危機の収束を受け沖縄へ展開した沖縄救援部隊の撤収開始が始まったとのことです。
Timg_8586 ミサイルは発射後一分少々で空中分解となりましたが、これにより幸いにして我が国への被害は生じませんでした。実験失敗は、北朝鮮では特にミサイル発射失敗との表現が用いられているとされ、人工衛星ではなくミサイルという認識が北朝鮮国内でも一部でなされている模様。恐らく今後も、一つの国威発揚としてミサイル開発と核開発は継続されるものとは考えられるため、十分な準備と即応体制は維持されなければなりません一方、我が国は対外的に断固迎撃するという強い姿勢を示しました。このことが非常に大きな実例と言えるのではないでしょうか。
Timg_2865 ミサイル発射実験は失敗に終わった翌日に当たる14日土曜日、田中防衛大臣はミサイル破壊命令の解除を発令、これを以て凡そ二週間に渡る沖縄県での緊張はひと段落した構図です。14日には西部方面隊第八師団より沖縄へ派遣されていた第八化学防護隊の隊員35名と車両18両が鹿児島行きの民間フェリーにより北熊本駐屯地へ撤退を開始。この部隊はミサイルの推進剤に記念な液体燃料ヒドラシンが用いられており、この燃料タンク部分が人口密集地域等に落下した場合に備えて展開していた部隊になります。今週末の日曜日に第八師団は創設50周年記念行事を迎えますが、第八化学防護隊は、課せられたその任務を完了させました。
Timg_6531_1 ペトリオットミサイルPAC-3,石垣島港湾部と宮古島のレーダーサイトへ展開、射程十数kmのミサイルですがミサイル本体に直撃し比較的航空で大型の目標を破砕し弾頭を無力化すると共に推進剤などの有害な物質を地上の影響が及ばない範囲内で拡散させる目的で展開しました部隊も撤収を開始です。石垣島より同日14日、航空自衛隊のミサイル部隊も撤収を開始し、警備任務に当たった80名が航空自衛隊輸送機により原隊である那覇基地へ撤収。ミサイル発射器なども19日までには撤収するとのことで、こちらは海上自衛隊輸送艦と民間車両運搬船が展開に協力していますので、恐らく撤収にも同様の手段が用いられるのでしょう。
Timg_3037 ミサイルの発射を感知できなかったことについて、政府部内では我が国も独自の弾道ミサイル早期警戒衛星を保有し、早期警戒情報を得る必要はあるのではないか、という見解が示されています。ここで考えておきたいのですが、今回のミサイルは高度120kmまで上昇したとのことで、地球の局面と朝鮮半島南部の地形障害を考えても、下甑島レーダーサイトなど航空自衛隊の警戒網では探知出来ていた、と考えることが出来ます。我が国へ飛来しなかったため継続追跡はできませんでしたが、目的は達することはできたのではないか、とも。
Timg_1283 早期警戒衛星は、特に我が国へ中国東北部に或る我が国を標的とする中距離弾道弾などへの警戒には必要なものと考えられます。しかし、北朝鮮の場合は早期警戒衛星の開発と実用化、それに運用に要する予算については、かなりの費用を要するものがありますので、第一にイージス艦の増強を行うことの方が重要でしょう。優先度は高いことは認めるのですが、北朝鮮からの弾道ミサイル情報についてはイージス艦の配備数に余裕を持たせることの方がより優先度は高いわけで、今回もイージス艦に余裕があったならば黄海洋上へ展開させ、米海軍や韓国海軍と共同し早期警戒情報を得ることはできたはずです。
Timg_9394 例えば、現在護衛艦隊には四個の護衛隊群が編制され、各護衛隊群は二個護衛隊編成、ミサイル防衛に当たるイージス艦を中心とした護衛隊、そしてヘリコプター搭載護衛艦を中心とし対潜掃討及び戦力投射任務にあたる護衛隊の二個を基幹としています。護衛艦隊にはこの護衛隊八個が置かれているのですが、八個を共通編制として、ヘリコプター搭載護衛艦とミサイル防衛対応イージス艦を有する艦隊編成としたならば、半数を稼働させる体制を確保していた場合でも四隻のイージス艦を任務に充て、朝鮮半島近海での警戒任務と共に人口密集地域での防空に充てることが出来ます。
Timg_6561 他方一部では、我が国においてJ-アラートシステムが用いられなかったことに対して批判があるようですが、飛来しないという情報はJアラートで通知するものではありません。これはミサイルの接近を警戒情報として通知するものですから、ミサイルが接近しない情報についてはJ-アラートを用いる必要はないわけです。具体的には緊急地震速報を思い浮かべるといいでしょう。緊急地震速報は携帯電話に通知し、テレビ放送などでも危険を通知する我が国の優れた危機管理情報通知システムですが、例えばインド洋上や南米に中央アジアといった地域の緊急地震速報が携帯電話で通知されたとしてどうでしょうか、ニュース速報の字幕で通知する必要はあり、ニュースでも扱われるべきですが、緊急地震速報が扱う内容ではないと批判されるでしょう、それと同じことです。
Timg_3673 さて、冒頭にも示しましたが今回の事案ですが、我が国は沖縄を護るという断固たる意思を示すことが出来たのは非常に大きな意義があります。弾道ミサイル脅威が沖縄に及ぶということは、文字通り当初は想定外という段階にあったのですが、我が国は本土から迅速に迎撃舞台と沖縄救援隊を編成し展開させました。南西諸島へは、特に沖縄本島那覇の真西に中国上海が位置し、海洋進出の足掛かりとして領土的野心を表面化させています。これに対し、有事の際には自衛隊を緊急展開させ、防備を一挙に強化する、という姿勢を示していましたが、実際に行ないえるのか、という疑問符が我が国の危機管理の限界として危惧があったのですけれども、今回実例を構築しました、大きな意義として、我が国は主権国家として責任ある姿勢を行動と共に示す、これを明示したことが大きいでしょう。

北大路機関:はるな

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