北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南西諸島防衛 沖縄戦の文民被害を反省するならば改めて防備を固めよ

2012-04-04 23:02:25 | 防衛・安全保障

◆弾道ミサイル防衛反対論調への疑問

 どうしても疑問なのですが、航空自衛隊のF-15から数十グラムの部品が落下することを問題視する一部論調が33tのテポドン一号本体の落下に対して寛容なのはなぜでしょうか。

Oimg_8040 北朝鮮の弾道ミサイル実験に際し、我が国領域へミサイル本体や四散した破片が落着する場合に備え、沖縄本島と島嶼部にはペトリオットミサイルPAC-3部隊が展開、先んじて高高度で警戒し必要ならば迎撃をおこなうべくスタンダードSM-3を搭載したイージス艦が広く洋上に警戒に当たっています。

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 これら部隊の防護を行うべくイージス艦に対しては常時F-15戦闘機二機、沖縄近海では二隻のイージス艦が展開するとのことですから常時四機、交代と待機を含めれば実に一個飛行隊相当のF-15が防空の任務にあたることになりますし、早期警戒管制機の派遣やこれら戦闘空中哨戒体制の維持に必要な物資を輸送するべく輸送機が最大限の任務にあたることでしょう。

Oimg_4776 陸上自衛隊は沖縄救援隊を既に派遣、人員不足が常に指摘される陸上自衛隊においても旅団の一個普通科連隊に相当する450名を派遣し、迎撃ミサイルの警備に当たると共に、万一ミサイル本体や破片が落下し当該区域の住民に死傷者が出た際を想定し派遣されているというのが現状です。

Oimg_1263 これに対して、一部市民団体は迎撃態勢を固めることが落下を招くとして反発しています。備えなければ憂いなしという論法、もちろん、防備が固まることで交戦的な風潮が生じるという論理は相互確証破壊の論理において説明されているのですが我が国は一方的な防備の姿勢、相互確証破壊の先方を破壊する核戦力もなければ長距離弾道弾の準備もありません。

Img_0060 防備なければ落下無しの論調、これはどうなのでしょうか。先の大戦において我が国は中国大陸に侵攻しましたが、あの場合中国の国民党政府をはじめ抵抗が無ければ占領できて確かに戦争は起きなかったでしょう。真珠湾攻撃に際しても、あれでアメリカが降伏していれば太平洋戦争は起きませんでした。しかし、その後我が国が中国を併合していた場合、彼らが望む平和はあったのでしょうか。

Img_4213 戦争がおきなくとも新しい併合された政権により虐殺が行われる事例は隣国に50年代に併合された国やかつて初めてPKOに展開した国が国家破綻の要因となった事件など歴史上は数多く、戦争が無くとも虐殺という事案があっては本末転倒なのではないか。このあたり、十年ほど前に機会がありましたので民青の方やその手の主張をされる方に思い切って疑問をぶつけてみたのですが、相手の論理を破たんさせてしまったので、20vs1のディベートになった場合でも論理的にはこちらが相手を説得してしまった形でした。

Oimg_7891 さて、今回の防備を、沖縄を再び戦場とするな、との主張があるのですが、そもそも沖縄戦、アイスバーグ作戦でゃ米軍は当初防備の比較的軽く日本本土への攻撃拠点となる台湾攻略を計画していました。しかし、1944年のフィリピン決戦へ台湾から抽出された二個師団を補うべく台湾軍が隷下の沖縄第32軍基幹三個師団から一個師団を抽出したため、逆に沖縄が手薄となり米軍が沖縄へ進攻したという事実、忘れてはなりません。

Oimg_2360 今回の弾道ミサイル危機については、先方が一方的に弾道ミサイルを志向しているため、直接侵攻の余地はないという点で異なるのですが、そもそも防備が固いところは攻撃対象となりません。しかし、その地域の戦略的重要性から優先順位が定められ、外交政策と国家戦略の延長上として損失と利益の均衡点から、外交政策の延長としての不法行為が行われるということ。そうした意味から十分な防備無き沖縄がかつて戦火に沈んだという事実、受け入れる必要があるでしょう。

Oimg_0278 加えて、我が国はかつて中央が沖縄戦において沖縄の防備を固める努力を怠ったという事実があります。沖縄戦に先んじて姫路第84師団を沖縄へ転地させる検討が大本営でなされていましたが、本土決戦の準備を行う優先から派遣を見送り、沖縄ではなく小田原へ展開させているのです。今回、政府が必要な措置を怠り、犠牲者が出た場合には我が国として沖縄を二度見捨てたことになるのです。そんなことはあってはならない。

Oimg_2746 もちろん、我が国の領域は全て等しく国民が生存権と幸福追求権と財産権の保護という恩恵を享受する基盤が構築されねばなりません。しかし、今回は脅威正面が明確となっているのですから、その地域に生活する同胞が見捨てられぬよう、必要な措置を取ることはむしろ当然のこと。

Oimg_7891_2 こうしたうえで我が国での防備反対を主張する面々への問いは以下の通り。無防備こそ安全というならば日本軍に抵抗した中国は等しく批判されるべきなのか、防備堅き台湾を避け防備薄き沖縄が戦場となった事実をどう説明するのか。そして、沖縄戦へ本土から先んじて増援が送られなかったことは是か非か、我が国自衛隊からのグラム単位部品落下事故よりも他国トン単位弾道弾落下事案に寛容なのはなぜか、という明確な回答が欲しいですね。

Oimg_6056 もっとも、先日舞鶴からの帰路、ミサイルより復興を周辺住民の会というプラカードを持って京都に行く快速電車に乗り込んでいる方を見まして、いや、周辺住民にしては100km以上離れていますよ、と思ったりしまして、周辺住民というのは彼らの主張するところの地球市民というべきか、同じ地球というだけで周辺というにはかなり遠方の方がいることは知ってはいます。ただ、そうした方が周辺住民の反対として報道されていることも事実で、少なくとも疑問が前述のとおりありましたので素朴な疑問を掲載しました次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (8)
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