北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省、平成24年度上半期対領空侵犯措置任務緊急発進実施状況を発表

2012-10-24 22:58:10 | 防衛・安全保障

◆回数は微増、南西方面の緊急発進は減少傾向

 防衛省は平成24年度上半期におけるスクランブル発進、対領空侵犯措置任務緊急発進の実施状況を発表をしました。

Simg_3280 緊急発進回数は209回、上半期の回数としては2012年の209回は昨年度の203回と比較して微増、という傾向にありますが、上半期毎の回数は2010年度が186回、2009年度が146回、2008年度が106回ですので、2012年度の209回は2008年度とだけを比較すれば倍増近い、昨年の高い状況がそのまま推移していることが分かります。昨年度全体の緊急発進は425回でしたが、おれはソ連崩壊により緊張が高まった1992年の488回以来の規模で、今年は昨年を上回る勢い。

Simg_2103 周辺国の接近はロシア機が64%、中国機が33%、その他が3%となっており、依然としてロシアが占める割合が非常に大きいことが分かります。中国との尖閣諸島を含む南西諸島の緊張が報じられる昨今ですが、尖閣諸島上空へ中国空軍の航続距離が大きくない戦闘機が最短距離で接近するバイは、必ず台湾北部に大きく接近することになりますので、台湾空軍の要撃を受ける事になり、実のところ中国軍機の接近は沖縄県北部と鹿児島県島嶼部南部の境界線に集中していることはあまり知られていません。

Simg_1929 この緊急発進を航空方面隊別にみてゆきますと北海道と青函地区を防空管区とする北部航空方面隊が77回で昨年度の77回と同数、首都圏と京阪神中京地区を含む中部日本を防空管区とする中部航空方面隊が32回で昨年度の20回と比較し六割増大、九州を防空管区とする西部航空方面隊の緊急発進回数も28回ですが昨年の17回と比較してかなり増大していることが分かります。対して南西諸島を防空管区とする南西方面航空混成団だけは72回となっており、昨年の89回と比較し減少傾向となっていました。

Simg_7354 国別の回数でゃロシア機が134回で昨年の106回と比較し増大傾向、特にロシア機は長距離飛行など実施するため、依然として長距離打撃能力が健在であることが分かります。中国軍機が69回であり、昨年度の83回と比較し減少傾向、展開も近海に限られ、ロシア機のような長距離飛行は実施していません。一方で台湾軍機へは昨年の上半期に4回実施されていますが今年度上半期は0回でした。北朝鮮ですが、空軍の稼働率が低いようで0回であり、昨年の上半期も0回でした。

Simg_2079 我が国領空への接近経路ですが、今年度上半期はロシア軍機による東京急行、太平洋岸を首都圏へ南下する長距離飛行は実施されませんでした。日本海上空に対するものが大半を占めています。しかし、ロシア機の南下経路で特筆すべきものがありました日本海を南下し対馬海峡上空の公海上を飛行し沖縄本島北部沖、具体的には中国の上海沖を飛行し杭州方面の沖合を飛行する経路を採りました、東京急行に対し上海エクスプレスという経路でしょうか。

Simg_7837 対照的に中国機は飛行が東シナ海に限られ黄海方面からの接近はありません。ただし、日中間の国境での緊張と共に中韓間でも韓国側が島と自称する海面下の環礁を巡り大陸棚の自然延長を境界線とするかで紛争状態となっており、今後この方面の緊張が高まる場合、我が国では九州南部方面への緊張が増大することも予想され、警戒が必要でしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (1)
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