■影響は国際政治から教育まで
COVID-19新型コロナウィルス肺炎は医療生活分野から経済問題を侵食し遂に教育問題や国際政治という問題領域をも冒しはじめています。

国家緊急事態宣言が日本全土に発令され警戒が続いていますが感染拡大は止まらず、COVID-19新型コロナウィルス肺炎は国内感染確認者数が1万0810名となり、万の大台に乗りました。この数にはクルーズ船検疫者数を含めておらず、これを加えた場合は1万1522名となり、死者数も国内で238名、そしてクルーズ船乗客13名、251名が死亡しました。

一万を超えた国内感染者数、国内感染確認者数という表現は保健所削減と衛生研究所能力不足によるPCR検査体制の遅れから相当数の検査漏れ懸念が顕在化している為です。感染者の中でPCR検査により陰性となた後でも再陽性となる事例が中国国内に続いて韓国でも確認されており原因不明、改めて感染拡大防止への取り組みの難しさが痛感させられます。

世界の状況は、238万8268名が感染し、死者数は16万4918名、これはロイター通信が19日までの感染状況を集計したもので、治療中は全体の67.40%で死亡率は6.90%、一方で回復事例は25.70%となっています。潜伏期間が長く感染拡大が見えない新型肺炎に対応策の王道は無く、各国が能力と実情に合わせた感染拡大防止か重篤化阻止を模索しています。

中国武漢ウィルス研究所から漏えいしたのではないか、こうした報道は一部メディアにより早い時期から可能性が指摘されていました。現実問題としてコロナウィルスは毒性と効果までの時間が生物兵器として不適であり、中国が極秘裏に開発した生物兵器が事故により漏えいし世界を危機に追いやった、との論調は冷静に考えますと現実的ではありません。

しかし、中国政府が最初の感染源とした武漢海鮮市場からの感染拡大には湖北省衛生当局でも疑問視する報道はあり、一方中国当局は武漢ウィルス研究所からの漏えいを明確に否定し所員に感染者は一人もいないと強調していますが、生物兵器ではないとしても武漢ウィルス研究所に検体保管された生物兵器以外のウィルス漏えい可能性は、何とも言えない。

原因不明のウィルスではあるのですが、中国当局がウィルス感染に関する情報をすべて開示していない可能性は四月に入りアメリカ政府やオーストラリア政府から指摘、オーストラリアのマリスペイン外相は中国への情報開示を求める方針を19日に発表し、アメリカのトランプ大統領も故意に中国が情報隠ぺいしたならば報いを受ける、18日に発言しました。

世界はポピュリズム政治の潮流を迎え、所謂伝統的な国際政治の枠組がEU欧州連合の揺らぎやアメリカの国際協調と一国主義のモザイク的な施策等の揺らぎが見えます。こうした中での一種陰謀論的な論調と情報開示制度が存在しない国からの感染拡大、そして経済問題を含めた対立要素の存在は、COVID-19が新しい問題領域をも冒し始めている模様だ。

しかし日本の影響は現実として深刻です。日本国内で死者二万を越える、一ヶ月後の日本に普通にあり得る未来です。日本国内では最初の感染者確認から三ヶ月で感染者一万を越えた、という状況ですのでCOVID-19の危険性はこの程度なのか、こう誤解されるかもしれません。しかし、イタリアやスペインとイギリスでの感染拡大と大量の死者数をみますと、COVID-19は先が見えないのです。

東日本大震災の死者数は二万に迫るものでした。しかし、日本の人口から半分以下で、集中治療施設も日本国内よりも整備されており、日本ほど高齢化が進んでいない欧州諸国で二万を越える死者がでているのです。日本で感染対策をあやまったならば死者は40万を越える、こう警鐘されているのですが、実のところこの数字さえ楽観的にみえるのですね。

100万の死者を想定しているのはドイツ内務省、200万の死者を警告しているのはアメリカCDCでした。死者を20万以下に抑えられたならば我々は上手くやったといえる、トランプ大統領はアメリカ国内での感染拡大が本格化した時点で国民に最悪の数字、200万を示しつつ全米に警戒を促しました。さて、日本ではどうなるのでしょう、数字が出ていない。

死者を10万以下に抑えられれば上手く行ったといえる、こうした発言は安倍総理からはありません。しかし、政府諮問委員会専門家が最悪の場合で40万という数字を示しているのですから、アメリカが想定している上手く行った場合の半分程度、つまり東日本大震災五回分の死者数は当然あり得る、ということを割り切った上でどう努力するか、こう考える。

現実問題として、現在、医療崩壊という単語が簡単に使われているようで危惧します、欧州や北米で生じている医療崩壊というものもこの程度だろう、と誤解されそうなものですが、要するに病院が準備した病床が満床になるか、医療従事者のなかに保菌者がでただけで医療崩壊がはじまった、と定義されているようで、認識に温度差があるのではないか。

応召義務、医師法では明確に定義されていまして、病院に外来しました患者は引き受けなければならない、という。このために救急車たらいまわし、というような、そもそも対応できない患者は引き受けない、という施策を採っています、引き受けなければ応召義務が生じないという、一種不思議な方便をとってのことです、救急外来はこう拒否できる。

徒歩や自家用車で外来となった場合はどうするのか、外来を予約制として救急外来を拒否することにより病院は院内感染を防止しようとしていますが、医療がこうして義務を放棄することで、自発的医療崩壊、医療自爆というべきか、生じるわけです。そしてこう、せざるを得ない背景には平時の医療水準で百年に一回の流行禍に対応しようとするため。

現実問題として、医師会や保健所、現在の施策で対応する第一線の方々には、医療崩壊が起こる、と警鐘をならすだけに留まります、医療崩壊を回避するための施策は、これ以上感染者を出さないで、という本末転倒の施策しか聞こえてこないもので、病院は拡張できない、医療従事者は制度面から増員できない、という前提を崩そうとしていないのですね。

医療崩壊というものは、病院が受け入れられない患者が病床はもちろん待合室や通路に溢れている状況か、病院が拒否した重篤患者が病院前の駐車場や自動ドア前に滞留し、もしくは医療関係者が病院を脱出して患者だけが生死を問わず究明を求め横たわる状態、欧州や北米の医療崩壊はこうしたものでして、地震でいえば震度3と震度7くらい違います。

地方病院の統廃合、平時の感覚で進む流行禍前の施策は、恰も仮に今北海道に外国機甲師団が上陸した状況で自衛隊の苦戦が伝えられる一方で、しかし戦車削減は決定しているので、この戦車大隊とあの戦車隊は廃止します、としているようなもの。こうした感染拡大は起きない前提の病院統廃合、現実に有事が起きたが続けるのか、という認識が必要です。

有事への切り替え、現実問題として行うかどうかは別としても準備が必要だと考えるのは、医学部と看護学部の学生修業短縮と国家試験免除による医療第一線への投入、介護士資格の看護資格への戦時統合による看護要員確保、未熟医師と名ばかり看護士が増えるだけだとの批判もあるでしょうが、そうしなければ40万名死ぬが良いのか、と反論が成り立つ。

危機感は有る、しかし危機感を共有出来ているのかが甚だ疑問です。医療従事者が足りないとしつつ増やす努力の欠如、病院が不足するとしつつ病院統廃合の政策矛盾、平時感覚に基づく政策の原因は失政ではありません、しかし対処法として平時規模のまま有事に臨む姿勢は事後的に失政を醸成しつつあります、政治は危機感の共有と切替が必要でしょう。

教育の問題、実のところこの規模の大規模感染は例がありません、エボラ出血熱やマールブルク熱のアフリカ地域での感染拡大やハイチ地震にともなうコレラ拡大、という事例はありましたがアフリカ地域の大学教育と疾病下での維持という研究は、恐らく今回の日本国内における感染拡大を前に参考とする事例は少ないでしょう。しかし、問題は大きい。

大学教育ひとつとっても、四月入学の大学では感染拡大地域での五月末までの休校を決定している大学も少なくありません、そして感染拡大地域は四大都市圏全てを含んでいますので日本全体の問題となっています。文部科学省は大学に対して単位授与に15講義を求めており、なにしろ90分講義、シラバス一つとって単純に組み替えることは出来ません。

研究法、一回生は特に年度始めに感染拡大が重なった事で高校生の学校での本義が学習、理系的論理構築と文系的知識集約、ここで帰結していますが、大学では知識の再生産が求められ、根本的に与えられた教科書に依拠するだけの知識構築では不十分です。そのための研究方法を基礎科目として履修するのですから、その機会を喪失した構図なのですね。

理論再構築による内部化、要するに理論を文章から図式化して理解し、どの理解度合いを討議により共有してゆく、言わば創造を先行研究が拓いた基本に依拠して進めてゆく事が、少なくとも文系学部の目的なのですから、討議が必要で、これは独学では限界があるのです。四月一杯と五月一杯を喪失する現状は学生にとって厳しいといわざるを得ません。

文部科学省が求める15講義ですが、例えば文部科学省が今年度に限り10講義で良い、という特例を出さない限り、夜間学部の時間帯まで延ばし、一日七限、七限終了は2210時頃か、大学院なみだ、こうした無理を重ねるか、夏期集中講義のように日々で三講義連続の集中履修を行わなければ対応できません。また、二回生三回生には別の問題が生じます。

二回生までは必修講義が残りますが、就職活動もインターンシップなどが本格化する時期です。大学休校中にインターンシップ、と励みたいところですが、原因が大学だけではなく感染拡大が進む社会全体の停滞なのですから、インターンシップでテレワーク実習ができる場合をのぞき、あるのでしょうか、就職活動と学業の輻輳という問題が生じます。

OJTという視点からは、例えば教育学の学校実習、医学看護学の病院実習という問題もあります。実際のところ医学部看護学部は今回、繰り上げ教育と国家試験免除による国家資格付与を条件に医療現場へ出てもらいたい、イタリア方式を真剣に検討すべきとも思うのですが、教育学部の教育実習などは学校休校中では原則実施できず代替案もありません。

五月六日に緊急事態宣言は期限満了を迎えます、そして考えたくはない事なのですが、果たしてあと二週間少々で感染拡大を抑えられるのでしょうか、もちろん終息までは制度は想定していないでしょうが、仮に解除できたとしても感染拡大が再発した場合、七月下旬に再度緊急事態宣言を布告し八月盆休の帰省自粛を求める可能性もあり、不透明が続く。

大学での15講義を必須とする文部科学省、しかし、文部科学省の専管外に疾病対策があり、五月六日に緊急事態宣言が延長される可能性、緊急事態宣言解除後に再拡大し七月下旬に一ヶ月の再度緊急事態宣言全国布告となる可能性、ともにあります。期待したいのは五月六日に収束し、再開後にもクラスター感染を回避でき終息に進むことなのですが、難しい。

オンライン講義。文部科学省が提示するのはこの一点です。ただ、回線整備や教育動画収録は各大学の能力に依存するかたちであり、90分講義を毎日二回から三回を平日一杯受講し、受信できる通信量を学生全員が確保しているのか、いまから検討している段階の大学も多い。そして単に講義を配信しただけで教育効果は十分確保できるものなのでしょうか。

講義録。例えば必修科目を中心に一部大学では研修や実習により講義出席が出来なかった学生への救済手段へ講義録画を準備している事例は、あります。しかし、講義ノートや質疑応答の反映がなければ、少なくとも出席を採らない場合に講義録画だけで試験に臨んだ場合に、レジュメなどの補完があったとしても芳しい結果をあまり聞かないのですよね。

大学は感染をおそれず講義を再開すべき、とは絶対に考えません。クラスター感染で取り返しのつかないことになりますし、なにより世界の平均致死率は6.5%で推移し、医療崩壊時の致死率は10%を越えているのですから、簡単にいえば各ゼミ一人死亡しておかしくない水準です。例えば文部科学省は今年度に限り10講義で完結させる救済策を出すべきです。

高等教育への影響、こちらも甚大です。大学入学新共通テスト、幸い2021年に予定されていました記述式試験の導入は延期されていますので、センター試験に変わる新しい試験は制度からはそれほど混乱を誘発しないものとなるでしょう。問題は、共通テストを来年一月に実施できるのか、という問題です、終息に転じているとは考えたいのですが、どうか。

しゅうきんぺいを避けよう、密集と近接と密閉を避ける新しい用語です。そして、問題はセンター試験の会場がほぼ、この"しゅうきんぺい"が揃っているのですよね。社会的距離としまして2mの離隔が呼びかけられているのですが、試験会場ではカンニング対策にて横に2mの離隔は可能なのかもしれませんが、前後は2mの距離を確保できないことが多い。

社会的距離を確保する。試験監督の通路が必要ですので通路付近は4mの離隔が必要となります。もちろん、大講堂に屋内球場や格技場、全国には大学が多数ありますので全く施設がないとは言い切れませんが、過去に実施実績のある会場ならば大丈夫、ということにはなりません。社会的距離と両立する試験会場の確保、これからでも本格化すべきです。

センター試験、2020年のセンター試験ではCOVID-19の日本侵入は1月16日の中国人観光客からの確認であったものの、日本国内での感染拡大が本格化する前でした。大学入試後期試験でも感染拡大の萌芽とは重なっていましたが、緊急事態宣言検討よりもかなり前の状況でした。しかし、2021年1月の段階で、果たして状況は大丈夫なのでしょうか。

COVID-19のもっとも懸念される点は潜伏期間が長く、その潜伏期間にあっても感染拡大を誘発することです。インフルエンザなどは十数時間から二十数時間で発症するために識別は容易で発熱を警戒すれば良かったのですが、COVID-19は潜伏期間が14日程度、300時間以上を要する為に発熱など、外見で感染の兆候を見つけられません、試験会場でも。

新共通テスト。実施まで9ヶ月ありますので、理想としては受験生全員が試験開始前一週間でPCR検査を受けられる、つまり試験とPCR検査がセットという状態が望ましいのですが、受験者数が膨大で、残念ながら9ヶ月間で受験生だけ数十万を短期間で検査できる体制を構築することは簡単ではありません、衛生技師養成から必要となり時間がかかる。

宿泊ひとつとっても簡単ではありません。京都市のような政令指定都市ならば話は違ってくるのですが、全国の市町村全てでセンター試験が実施されるわけではありません、新共通テストでも試験会場が増強される計画は先学にして聞きませんので、地方都市によっては試験会場近くに前泊が必要となります、その宿泊施設はコロナ禍下で確保できるのか。

採点でも、答案そのものが重要な個人情報であり個人の入試全般に影響するものですから、採点をテレワークで採点者が自宅へ持ち帰り、というわけには行かないでしょう。もちろん、N95マスクと防護ゴーグルと除染施設を充分準備できるならば採点会場で感染拡大する懸念は薄いでしょう、しかし防護装備を潤沢に用意するならば、今から準備が要る。

クラスター感染、唯一の幸いは受験生の個人情報が明確であるため、仮にクラスターが発生した場合でも厚生労働省クラスター対策班の追尾が、受験生の着席位置と受験生連絡先が明白であうるため、容易、ということでしょうか。試験時間中の休み時間に手洗い移動を徹底的に管理し、そしてマスクとゴーグル着用、出来ることといえばこのくらい、か。

試験監督で感染が確認された場合はどうするのか。センター試験では五秒の遅滞が全国報道で報じられるほどに徹底した管理がおこなわれており、これにより公正公平が確保されています。試験監督が使用する時計の性能まで厳正に求められているものなのですから、例えば試験監督が感染した場合、会場でせき込んだ場合など、どうするのか指針不明です。

PCR検査能力の不足があるのですから、試験監督の安全を確保することも簡単ではありません。徹底した消毒とマスク着用、これで予防を期待したいところですが、マスクの世界規模の不足とともに消毒薬の不足も顕著であり、出来る範囲内で行うとして結果的に不十分という状況があった場合どうするのか、試験会場に丸投げという訳にも行きますまい。

大学入試。学校教育の一つの分岐点であることは確かです。このなかでもセンター試験に変わる新共通テストは日本国内で実施される試験の中でももっとも公正公平が求められる試験であることは確かです。そのためにもCOVID-19感染が終息しない状況下でも確実に実施する方法、文部科学省は、会場や規則、いまから真剣に検討することが必要でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
COVID-19新型コロナウィルス肺炎は医療生活分野から経済問題を侵食し遂に教育問題や国際政治という問題領域をも冒しはじめています。

国家緊急事態宣言が日本全土に発令され警戒が続いていますが感染拡大は止まらず、COVID-19新型コロナウィルス肺炎は国内感染確認者数が1万0810名となり、万の大台に乗りました。この数にはクルーズ船検疫者数を含めておらず、これを加えた場合は1万1522名となり、死者数も国内で238名、そしてクルーズ船乗客13名、251名が死亡しました。

一万を超えた国内感染者数、国内感染確認者数という表現は保健所削減と衛生研究所能力不足によるPCR検査体制の遅れから相当数の検査漏れ懸念が顕在化している為です。感染者の中でPCR検査により陰性となた後でも再陽性となる事例が中国国内に続いて韓国でも確認されており原因不明、改めて感染拡大防止への取り組みの難しさが痛感させられます。

世界の状況は、238万8268名が感染し、死者数は16万4918名、これはロイター通信が19日までの感染状況を集計したもので、治療中は全体の67.40%で死亡率は6.90%、一方で回復事例は25.70%となっています。潜伏期間が長く感染拡大が見えない新型肺炎に対応策の王道は無く、各国が能力と実情に合わせた感染拡大防止か重篤化阻止を模索しています。

中国武漢ウィルス研究所から漏えいしたのではないか、こうした報道は一部メディアにより早い時期から可能性が指摘されていました。現実問題としてコロナウィルスは毒性と効果までの時間が生物兵器として不適であり、中国が極秘裏に開発した生物兵器が事故により漏えいし世界を危機に追いやった、との論調は冷静に考えますと現実的ではありません。

しかし、中国政府が最初の感染源とした武漢海鮮市場からの感染拡大には湖北省衛生当局でも疑問視する報道はあり、一方中国当局は武漢ウィルス研究所からの漏えいを明確に否定し所員に感染者は一人もいないと強調していますが、生物兵器ではないとしても武漢ウィルス研究所に検体保管された生物兵器以外のウィルス漏えい可能性は、何とも言えない。

原因不明のウィルスではあるのですが、中国当局がウィルス感染に関する情報をすべて開示していない可能性は四月に入りアメリカ政府やオーストラリア政府から指摘、オーストラリアのマリスペイン外相は中国への情報開示を求める方針を19日に発表し、アメリカのトランプ大統領も故意に中国が情報隠ぺいしたならば報いを受ける、18日に発言しました。

世界はポピュリズム政治の潮流を迎え、所謂伝統的な国際政治の枠組がEU欧州連合の揺らぎやアメリカの国際協調と一国主義のモザイク的な施策等の揺らぎが見えます。こうした中での一種陰謀論的な論調と情報開示制度が存在しない国からの感染拡大、そして経済問題を含めた対立要素の存在は、COVID-19が新しい問題領域をも冒し始めている模様だ。

しかし日本の影響は現実として深刻です。日本国内で死者二万を越える、一ヶ月後の日本に普通にあり得る未来です。日本国内では最初の感染者確認から三ヶ月で感染者一万を越えた、という状況ですのでCOVID-19の危険性はこの程度なのか、こう誤解されるかもしれません。しかし、イタリアやスペインとイギリスでの感染拡大と大量の死者数をみますと、COVID-19は先が見えないのです。

東日本大震災の死者数は二万に迫るものでした。しかし、日本の人口から半分以下で、集中治療施設も日本国内よりも整備されており、日本ほど高齢化が進んでいない欧州諸国で二万を越える死者がでているのです。日本で感染対策をあやまったならば死者は40万を越える、こう警鐘されているのですが、実のところこの数字さえ楽観的にみえるのですね。

100万の死者を想定しているのはドイツ内務省、200万の死者を警告しているのはアメリカCDCでした。死者を20万以下に抑えられたならば我々は上手くやったといえる、トランプ大統領はアメリカ国内での感染拡大が本格化した時点で国民に最悪の数字、200万を示しつつ全米に警戒を促しました。さて、日本ではどうなるのでしょう、数字が出ていない。

死者を10万以下に抑えられれば上手く行ったといえる、こうした発言は安倍総理からはありません。しかし、政府諮問委員会専門家が最悪の場合で40万という数字を示しているのですから、アメリカが想定している上手く行った場合の半分程度、つまり東日本大震災五回分の死者数は当然あり得る、ということを割り切った上でどう努力するか、こう考える。

現実問題として、現在、医療崩壊という単語が簡単に使われているようで危惧します、欧州や北米で生じている医療崩壊というものもこの程度だろう、と誤解されそうなものですが、要するに病院が準備した病床が満床になるか、医療従事者のなかに保菌者がでただけで医療崩壊がはじまった、と定義されているようで、認識に温度差があるのではないか。

応召義務、医師法では明確に定義されていまして、病院に外来しました患者は引き受けなければならない、という。このために救急車たらいまわし、というような、そもそも対応できない患者は引き受けない、という施策を採っています、引き受けなければ応召義務が生じないという、一種不思議な方便をとってのことです、救急外来はこう拒否できる。

徒歩や自家用車で外来となった場合はどうするのか、外来を予約制として救急外来を拒否することにより病院は院内感染を防止しようとしていますが、医療がこうして義務を放棄することで、自発的医療崩壊、医療自爆というべきか、生じるわけです。そしてこう、せざるを得ない背景には平時の医療水準で百年に一回の流行禍に対応しようとするため。

現実問題として、医師会や保健所、現在の施策で対応する第一線の方々には、医療崩壊が起こる、と警鐘をならすだけに留まります、医療崩壊を回避するための施策は、これ以上感染者を出さないで、という本末転倒の施策しか聞こえてこないもので、病院は拡張できない、医療従事者は制度面から増員できない、という前提を崩そうとしていないのですね。

医療崩壊というものは、病院が受け入れられない患者が病床はもちろん待合室や通路に溢れている状況か、病院が拒否した重篤患者が病院前の駐車場や自動ドア前に滞留し、もしくは医療関係者が病院を脱出して患者だけが生死を問わず究明を求め横たわる状態、欧州や北米の医療崩壊はこうしたものでして、地震でいえば震度3と震度7くらい違います。

地方病院の統廃合、平時の感覚で進む流行禍前の施策は、恰も仮に今北海道に外国機甲師団が上陸した状況で自衛隊の苦戦が伝えられる一方で、しかし戦車削減は決定しているので、この戦車大隊とあの戦車隊は廃止します、としているようなもの。こうした感染拡大は起きない前提の病院統廃合、現実に有事が起きたが続けるのか、という認識が必要です。

有事への切り替え、現実問題として行うかどうかは別としても準備が必要だと考えるのは、医学部と看護学部の学生修業短縮と国家試験免除による医療第一線への投入、介護士資格の看護資格への戦時統合による看護要員確保、未熟医師と名ばかり看護士が増えるだけだとの批判もあるでしょうが、そうしなければ40万名死ぬが良いのか、と反論が成り立つ。

危機感は有る、しかし危機感を共有出来ているのかが甚だ疑問です。医療従事者が足りないとしつつ増やす努力の欠如、病院が不足するとしつつ病院統廃合の政策矛盾、平時感覚に基づく政策の原因は失政ではありません、しかし対処法として平時規模のまま有事に臨む姿勢は事後的に失政を醸成しつつあります、政治は危機感の共有と切替が必要でしょう。

教育の問題、実のところこの規模の大規模感染は例がありません、エボラ出血熱やマールブルク熱のアフリカ地域での感染拡大やハイチ地震にともなうコレラ拡大、という事例はありましたがアフリカ地域の大学教育と疾病下での維持という研究は、恐らく今回の日本国内における感染拡大を前に参考とする事例は少ないでしょう。しかし、問題は大きい。

大学教育ひとつとっても、四月入学の大学では感染拡大地域での五月末までの休校を決定している大学も少なくありません、そして感染拡大地域は四大都市圏全てを含んでいますので日本全体の問題となっています。文部科学省は大学に対して単位授与に15講義を求めており、なにしろ90分講義、シラバス一つとって単純に組み替えることは出来ません。

研究法、一回生は特に年度始めに感染拡大が重なった事で高校生の学校での本義が学習、理系的論理構築と文系的知識集約、ここで帰結していますが、大学では知識の再生産が求められ、根本的に与えられた教科書に依拠するだけの知識構築では不十分です。そのための研究方法を基礎科目として履修するのですから、その機会を喪失した構図なのですね。

理論再構築による内部化、要するに理論を文章から図式化して理解し、どの理解度合いを討議により共有してゆく、言わば創造を先行研究が拓いた基本に依拠して進めてゆく事が、少なくとも文系学部の目的なのですから、討議が必要で、これは独学では限界があるのです。四月一杯と五月一杯を喪失する現状は学生にとって厳しいといわざるを得ません。

文部科学省が求める15講義ですが、例えば文部科学省が今年度に限り10講義で良い、という特例を出さない限り、夜間学部の時間帯まで延ばし、一日七限、七限終了は2210時頃か、大学院なみだ、こうした無理を重ねるか、夏期集中講義のように日々で三講義連続の集中履修を行わなければ対応できません。また、二回生三回生には別の問題が生じます。

二回生までは必修講義が残りますが、就職活動もインターンシップなどが本格化する時期です。大学休校中にインターンシップ、と励みたいところですが、原因が大学だけではなく感染拡大が進む社会全体の停滞なのですから、インターンシップでテレワーク実習ができる場合をのぞき、あるのでしょうか、就職活動と学業の輻輳という問題が生じます。

OJTという視点からは、例えば教育学の学校実習、医学看護学の病院実習という問題もあります。実際のところ医学部看護学部は今回、繰り上げ教育と国家試験免除による国家資格付与を条件に医療現場へ出てもらいたい、イタリア方式を真剣に検討すべきとも思うのですが、教育学部の教育実習などは学校休校中では原則実施できず代替案もありません。

五月六日に緊急事態宣言は期限満了を迎えます、そして考えたくはない事なのですが、果たしてあと二週間少々で感染拡大を抑えられるのでしょうか、もちろん終息までは制度は想定していないでしょうが、仮に解除できたとしても感染拡大が再発した場合、七月下旬に再度緊急事態宣言を布告し八月盆休の帰省自粛を求める可能性もあり、不透明が続く。

大学での15講義を必須とする文部科学省、しかし、文部科学省の専管外に疾病対策があり、五月六日に緊急事態宣言が延長される可能性、緊急事態宣言解除後に再拡大し七月下旬に一ヶ月の再度緊急事態宣言全国布告となる可能性、ともにあります。期待したいのは五月六日に収束し、再開後にもクラスター感染を回避でき終息に進むことなのですが、難しい。

オンライン講義。文部科学省が提示するのはこの一点です。ただ、回線整備や教育動画収録は各大学の能力に依存するかたちであり、90分講義を毎日二回から三回を平日一杯受講し、受信できる通信量を学生全員が確保しているのか、いまから検討している段階の大学も多い。そして単に講義を配信しただけで教育効果は十分確保できるものなのでしょうか。

講義録。例えば必修科目を中心に一部大学では研修や実習により講義出席が出来なかった学生への救済手段へ講義録画を準備している事例は、あります。しかし、講義ノートや質疑応答の反映がなければ、少なくとも出席を採らない場合に講義録画だけで試験に臨んだ場合に、レジュメなどの補完があったとしても芳しい結果をあまり聞かないのですよね。

大学は感染をおそれず講義を再開すべき、とは絶対に考えません。クラスター感染で取り返しのつかないことになりますし、なにより世界の平均致死率は6.5%で推移し、医療崩壊時の致死率は10%を越えているのですから、簡単にいえば各ゼミ一人死亡しておかしくない水準です。例えば文部科学省は今年度に限り10講義で完結させる救済策を出すべきです。

高等教育への影響、こちらも甚大です。大学入学新共通テスト、幸い2021年に予定されていました記述式試験の導入は延期されていますので、センター試験に変わる新しい試験は制度からはそれほど混乱を誘発しないものとなるでしょう。問題は、共通テストを来年一月に実施できるのか、という問題です、終息に転じているとは考えたいのですが、どうか。

しゅうきんぺいを避けよう、密集と近接と密閉を避ける新しい用語です。そして、問題はセンター試験の会場がほぼ、この"しゅうきんぺい"が揃っているのですよね。社会的距離としまして2mの離隔が呼びかけられているのですが、試験会場ではカンニング対策にて横に2mの離隔は可能なのかもしれませんが、前後は2mの距離を確保できないことが多い。

社会的距離を確保する。試験監督の通路が必要ですので通路付近は4mの離隔が必要となります。もちろん、大講堂に屋内球場や格技場、全国には大学が多数ありますので全く施設がないとは言い切れませんが、過去に実施実績のある会場ならば大丈夫、ということにはなりません。社会的距離と両立する試験会場の確保、これからでも本格化すべきです。

センター試験、2020年のセンター試験ではCOVID-19の日本侵入は1月16日の中国人観光客からの確認であったものの、日本国内での感染拡大が本格化する前でした。大学入試後期試験でも感染拡大の萌芽とは重なっていましたが、緊急事態宣言検討よりもかなり前の状況でした。しかし、2021年1月の段階で、果たして状況は大丈夫なのでしょうか。

COVID-19のもっとも懸念される点は潜伏期間が長く、その潜伏期間にあっても感染拡大を誘発することです。インフルエンザなどは十数時間から二十数時間で発症するために識別は容易で発熱を警戒すれば良かったのですが、COVID-19は潜伏期間が14日程度、300時間以上を要する為に発熱など、外見で感染の兆候を見つけられません、試験会場でも。

新共通テスト。実施まで9ヶ月ありますので、理想としては受験生全員が試験開始前一週間でPCR検査を受けられる、つまり試験とPCR検査がセットという状態が望ましいのですが、受験者数が膨大で、残念ながら9ヶ月間で受験生だけ数十万を短期間で検査できる体制を構築することは簡単ではありません、衛生技師養成から必要となり時間がかかる。

宿泊ひとつとっても簡単ではありません。京都市のような政令指定都市ならば話は違ってくるのですが、全国の市町村全てでセンター試験が実施されるわけではありません、新共通テストでも試験会場が増強される計画は先学にして聞きませんので、地方都市によっては試験会場近くに前泊が必要となります、その宿泊施設はコロナ禍下で確保できるのか。

採点でも、答案そのものが重要な個人情報であり個人の入試全般に影響するものですから、採点をテレワークで採点者が自宅へ持ち帰り、というわけには行かないでしょう。もちろん、N95マスクと防護ゴーグルと除染施設を充分準備できるならば採点会場で感染拡大する懸念は薄いでしょう、しかし防護装備を潤沢に用意するならば、今から準備が要る。

クラスター感染、唯一の幸いは受験生の個人情報が明確であるため、仮にクラスターが発生した場合でも厚生労働省クラスター対策班の追尾が、受験生の着席位置と受験生連絡先が明白であうるため、容易、ということでしょうか。試験時間中の休み時間に手洗い移動を徹底的に管理し、そしてマスクとゴーグル着用、出来ることといえばこのくらい、か。

試験監督で感染が確認された場合はどうするのか。センター試験では五秒の遅滞が全国報道で報じられるほどに徹底した管理がおこなわれており、これにより公正公平が確保されています。試験監督が使用する時計の性能まで厳正に求められているものなのですから、例えば試験監督が感染した場合、会場でせき込んだ場合など、どうするのか指針不明です。

PCR検査能力の不足があるのですから、試験監督の安全を確保することも簡単ではありません。徹底した消毒とマスク着用、これで予防を期待したいところですが、マスクの世界規模の不足とともに消毒薬の不足も顕著であり、出来る範囲内で行うとして結果的に不十分という状況があった場合どうするのか、試験会場に丸投げという訳にも行きますまい。

大学入試。学校教育の一つの分岐点であることは確かです。このなかでもセンター試験に変わる新共通テストは日本国内で実施される試験の中でももっとも公正公平が求められる試験であることは確かです。そのためにもCOVID-19感染が終息しない状況下でも確実に実施する方法、文部科学省は、会場や規則、いまから真剣に検討することが必要でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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