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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

COVID-19緊急事態宣言七都府県に発令!戦後初の公布と想定される自衛隊新型肺炎災害派遣

2020-04-07 20:08:05 | 国際・政治
■人類,第二次大戦後最大の危機
 安倍総理大臣は本日1800時に戦後初となる緊急事態宣言を布告しました。今回はその発令の背景と自衛隊の対応に軸を置いて視てみましょう。

 緊急事態宣言は、東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県、福岡県、埼玉県、千葉県、の一都一府五県に本日から5月6日まで発令されます。今回の緊急事態宣言は、新型コロナウィルス肺炎COVID-19世界的流行禍の最中にあって、我が国でも感染拡大が続く事から、その感染拡大が顕著であり、感染源追尾が飽和状態により難易度が上がる地域への布告です。

 都市封鎖を行うものではない。今回の緊急事態宣言は新型コロナウィルス対策特別措置法に基づく宣言であり、大規模商業施設の休業要請や集会自粛要請等の強い権限が付与されますが、欧州やアジア地域等で広範に行われている外出禁止令や都市封鎖を行うものではなく、人と人との接触を八割削減する事で感染拡大を抑制し沈静化を期すもの、とのこと。

 新型肺炎COVID-19,国内感染状況は東京都だけで80名の感染が本日確認されました。日本国内の感染状況は4107名と昨日より242名増えており、この内79名が重症化重篤化しています。また死者数も昨日より4名増えて97名となっており、更にクルーズ船検疫での感染者712名と死者11名という厳しい状況があります。この時点での緊急事態宣言となった。

 世界の感染、深刻を極めます。感染者数は121万4466名、死者数は6万7767名に達し、欧州ではイタリアが感染者12万8948名と死者1万5889名、スペインが感染者13万0759名と死者1万2418名、フランスが感染者6万9607名と死者8064名、ドイツが感染者9万5391名と死者1434名、そしてイギリスが感染者4万7810名と死者4934名、という。

 世界大戦は過去百年間に二度ありましたが、今回のCOVID-19は感染拡大の速度が1959年アジア風邪や2003年新型肺炎SARSよりも深刻であり、過去百年間に一度ありました1919年のスペイン風邪新型インフルエンザ以来、あのスペイン風邪は遥かに死者が出ていますが、再来が懸念される極めて深刻な疾病で治療法がありません。感染を避けましょう。

 緊急事態宣言とともに自衛隊の任務について。既に防衛省は東京都知事からの要請を受け、軽症者滞在施設での生活支援として9名の隊員を派遣しており、主として食事のは以前などの支援に当たるとのこと。ただ、今後において必要が生じた際には都道府県知事からの災害派遣要請を受け対応する、とのことです。自衛隊の任務について幾つか考えられます。

 自衛隊の任務、当面は想定されていないのが治安出動です。日本では外出禁止要請に強制力はなく、通院や食料品買い出しなどの緊急時に外出を制限する必要はないため、治安出動の必要はありません。また、警察力で対応できない騒擾事案にたいして都道府県知事は要請する事が可能ですが、数十万規模の暴動等は想定できる将来においてありません。

 災害派遣として、一つの可能性としては道路除染支援です。自衛隊化学科部隊として陸上総隊直轄部隊と各師団や旅団の化学防護部隊と特殊武器防護部隊が置かれており、市街地等でのウィルス汚染地域と判断された地域には一時的に道路を封鎖し、消毒薬などの散布が可能です。この消毒薬の散布は中国や途上国などにおいて実施されている手法のひとつ。

 消毒薬散布による除染ですが、今回のCOVID-19新型肺炎は消毒薬が有効である者の感染経路については、飛沫感染するものの、天然痘の様な空気感染はありません。ただ感染者の下水などから観戦する事がある為、公共インフラなどに特定の事情がある場合を除けば、道路除染による感染拡大防止というものは、それ程必要ないもの、ともいえるでしょう。

 しかし、自衛隊には今後おそらく幾つかの医療崩壊事案などが想定されることから、人命を守るための災害派遣として出動が要請される可能性があります。具体的には自衛隊が有する医療資源の開放、そして自衛隊の有する機動力を人命救助などに応用することなどが考えられます。逆に考えるならば、既存医療機能の限界というものが、考えられるという。

 自衛隊病院の開放。国家緊急事態であり、自衛隊病院の幾つかは病床開放を要請される可能性があります。東京都世田谷区には自衛隊中央病院が置かれており、陸海空自衛隊共同機関として運用、病床数500というかなり巨大な病院施設で、感染症病棟も10床確保されています。また今回の緊急事態宣言当該地域には加えて幾つかの自衛隊病院があります。

 自衛隊中央病院はじめ自衛隊の医療機関には訓練中の事故や感染症などにより入院する自衛官などの問題もあります。ただ、全国には15の地区病院が配備されており、コロナウィルス感染者以外の入院患者を広域転院させ、受け入れに用いることが出来るでしょう。更に緊急事態宣言発令都道府県やその近傍の自衛隊地区病院の動員も、想定されるでしょう。

 陸上自衛隊関係では自衛隊富士病院、富士駐屯地祭などで正門となりに置かれている病院です。また大阪府近郊には兵庫県川西市に自衛隊阪神病院、福岡県には自衛隊春日病院が置かれており、大きくはありませんが仮に感染が拡大した場合には都道府県知事からの要請により病床開放要請や逆に医官などの派遣が要請される可能性も、考えられるでしょう。

 海上自衛隊関連では首都圏には自衛隊横須賀病院が、航空自衛隊関連では首都圏にもっとも近い病院は岐阜病院ですが、現在、自衛隊入間病院が2021年開業にむけて建設が進められています。更に最悪の場合には、これはイタリア北部やスペイン首都圏のような状況に際して、当該地域近傍の駐屯地医務室なども受け入れを検討する事となるかもしれません。

 広域搬送支援。イタリア軍のように医療崩壊となった地域から、航空機による重篤患者の広域搬送を実施する事も考えられるでしょう。患者搬送、実は簡単ではありません、重篤患者の場合は座席に固定して輸送というよりも、例え一時間でも人工呼吸器を取り外せない、という事態も想定され、人工呼吸器ごと空輸する必要も想定すべきです。この点は。

 ドクターヘリ、自衛隊は保有していませんが全国に2019年時点で53機が配備されています。BK-117やEC-135などの中型ヘリコプターが転用され、機内にはストレッチャーと看護師席、そして酸素吸入調整レギュレータ装置や心電図などの患者監視情報表示装置と輸液ポンプが設置されています。ただ、輸送力は同時に1名を運ぶことを想定しているのみ。

 CH-47輸送ヘリコプター、投入が有り得る。陸上自衛隊と航空自衛隊が75機を装備する輸送ヘリコプターです。このCH-47であれば24床の担架と看護師2名をそのまま収容し空輸が可能です。もちろんバッテリー駆動人工呼吸装置や感染防止のビニール皮膜などで陰圧化する必要がありますが、少なくともCH-47の輸送力はBK-117とは比較になりません。

 野外手術システム。自衛隊にはトラック四台のコンテナに収容可能な移動式手術室というべき装備があります、手術車と手術準備車及び滅菌車と衛生補給車よりなり、24時間で15名へ四肢切断を含む手術が可能です。これは各師団や旅団の後方支援連隊衛生隊と方面衛生隊に配備されている装備です。ただ、外科手術用の装備であり、感染症治療用ではない。

 自衛隊の野外手術能力ですが、既存の病院がコロナ重篤患者で満員となった場合の交通事故などの外科手術が必要となった場合には、最後の医療設備として威力を発揮するかもしれません。また、衛生隊には一定数の病院天幕があり、10名の無症患者の収容に、既存の民間宿泊施設やマンション、ショッピングモールなどが満員となった場合に活用可能です。

 国連のグテーレス事務総長は、今回のCOVID-19世界的感染禍パンデミーについて、第二次世界大戦後では人類が経験した最大の危機であるとしています。さて、自衛隊の感染対策等について考え得ることを列挙しましたが、感染防止はわたしたち一人ひとりの感染予防、基本的に最大限外出せず人と接触しない事により成し遂げられます。がんばりましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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