北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ズムウォルト級駆逐艦ミサイル初実験と躍進のカルロベルガミーニ級フリゲイト

2020-11-30 20:01:00 | インポート
■週報:世界の防衛,最新8論点
 今回は各国水上戦闘艦動向に焦点を当てて。ちなみにズムウォルト級駆逐艦は艦砲二基背負い式の設計思想が日本の第一世代DDHを思いだし好きです。

 アメリカ海軍最新型駆逐艦ズムウォルト級一番艦ズムウォルトが10月20日、初のスタンダードSM-2ミサイルの発射試験に成功したとの事、竣工したのは2016年だ。ズムウォルト級は従来のMk41VLSに代わる垂直発射装置としてMk57VLSを開発、舷側にVLSを配置する事で万一の被弾に際してバイタルパート船体重要部への被害を局限できるという。

 ズムウォルト級は満載排水量14797tという空前の大型駆逐艦であり、徹底したステルス性を採用した事でレーダー反射面積では3000t級のフリゲイトとしか映らず、統合電機推進による徹底したステルス性、有効射程118kmという155mm先進砲による卓越した沿岸攻撃能力、最新鋭のSPY-3レーダーの採用など、画期的な設計の駆逐艦となっていました。

 駆逐艦の概念を超えた強力な駆逐艦ですが、建造費が高騰し当初の30隻建造計画は議会により24隻に縮小、これが更なるコスト高騰を招き7隻に、当然のコスト増を受け3隻に縮小され、建造費は一隻30億ドルに達しています。VLSの初の射撃試験成功も朗報み見えますが、竣工後四年間に渡りミサイルの発射さえ、実施出来ていなかった事を示しています。
■FFGはコンステレーション級
 アメリカ海軍の次期ミサイルフリゲイトFFG計画に動きがありました。

 アメリカ海軍が新しく導入するFFGミサイルフリゲイト計画の一番艦がコンステレーションと命名されるもようです。FFGはアメリカ海軍が当面10隻、最終的に20隻を量産する汎用ミサイルフリゲイトで、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の六割程度の水準であり、これは高速多目的哨戒艦というべき沿海域戦闘艦の打撃力不足を補完する目的があります。

 コンステレーション級、一番艦がコンステレーションであるため、FFGはコンステレーション級ミサイルフリゲイトとなります。このコンステレーションというのはアメリカ独立戦争に参加した最初期のアメリカ海軍艦艇六隻の一つを意味しまして、かつては航空母艦に冠せられた艦名です。FFGは従来海軍功労者の名が冠せられた為、異例といえましょう。

 国際競争入札の結果、イタリア海軍のカルロベルガミーニ級フリゲイト派生型としてフィンカンティエリ社案が採用されました。FFGは満載排水量6200t規模で新型のEASRレーダーとイージスシステム派生のCOMBATSS-21戦闘情報処理装置を搭載し、32セルのVLSにNSM新型ミサイルやスタンダードSM-2を搭載、ヘリコプター運用施設も搭載します。
■フランス防空艦アルザス公試
 アルサスならば小説の”魔弾の王と戦姫”なのですが閑話休題、フランス海軍の防空艦の話題です、日本では防空艦と云えばイージス艦ですがフランスは。

 アルザスが10月5日、初の公試へロリアン造船所を出航しました。アルザスはフランス海軍の最新型防空フリゲイトです。アルザスはアキテーヌ級フリゲイトの一隻ですが、アキテーヌ級は対潜型と防空型が建造されており、対潜型については既に6隻が建造され、輸出もされている一方、防空型は今回公試に漕ぎ着けたアルザスが一番艦となります。

 アキテーヌ級は仏伊共同水上戦闘艦計画FREMMに基づき建造された水上戦闘艦で、共同開発ながら外見は全く異なる点が特色です。基準排水量5200tと満載排水量6100tであり比較的大型、全長は142mです。ヘラクレスレーダーとSETIS戦術情報処理装置による高度な防空能力を有し、射程120kmのアスター30ミサイルを32発VLSに搭載しています。

 アルザスは防空型の一番艦で防空型は二番艦ロレーヌと併せ2隻が整備、前型にあたるホライズン欧州統合防空艦計画により建造されたフォルバン級2隻と共にフランス海軍の艦隊防空中枢艦となります。公試はフランス国内においてCOVID-19感染症第二波の最中に実施され、造船所関係者や海軍関係者等艤装員100名は徹底した対策の下で乗艦しました。
■カルロベルガミーニ級輸出
 カルロベルガミーニ級はアメリカのFFG原型となりましたが開発国イタリアは更にエジプトへの輸出に成功しました。

 エジプト海軍は9月30日、イタリアのFREMMカルロベルガミーニ級フリゲイト2隻の導入に関する契約を12億ドルで成約させたとのこと。エジプト海軍は近年、フランスからミストラル級強襲揚陸艦を導入するなど海軍力を増強しており、カルロベルガミーニ級フリゲイト導入もその一環であろう。なお本型は汎用型と並行して対潜型が存在している。

 カルロベルガミーニ級フリゲイトは満載排水量5950t、フランスと共同開発した欧州汎用フリゲイト計画のイタリア版でEMPAR/SPY-790多機能レーダーを搭載、127mm砲と76mm砲を各1門搭載し、射程30kmのアスター30対空ミサイルをVLSに16発、射程250kmのテセオ艦対艦ミサイル8発を搭載し、NH-90対潜ヘリコプターも1機搭載可能です。
■沿海域戦闘艦モービル公試
 アメリカ海軍の沿海域戦闘艦にかんする話題です。あぶくま型と同程度の排水量ながら画期的な三胴型船体を採用した水上戦闘艦は数が揃ってきました。

 モービルが9月25日、メキシコ湾での初の公試に成功しました。モービルはアメリカ海軍が建造したインディペンデンス級沿海域戦闘艦の13番艦です。インディペンデンス級沿海域戦闘艦の建造は急ピッチで進められており、2020年には4隻が竣工する予定です。インディペンデンス級沿海域戦闘艦の特色は三胴型船体を採用し高速性を重視した点にある。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦は基準排水量2300t、満載排水量3100t、ディーゼルガスタービン併用により8万3400馬力を発揮し40ノットの高速航行が可能です。三胴構造により排水量では小型艦ながら船体最大幅は32mあり、MH-60多用途ヘリコプター2機を搭載可能です。他方、武装は57mm艦砲とSEA-RAM簡易防空システムのみ、軽装です。
■沿海域戦闘艦サンタバーバラ
 沿海域戦闘艦は排水量では護衛艦あぶくま型を若干大型化させた程度ですが速力と多用途任務に重点を置いた高速哨戒艦というもの。

 サンタバーバラ。アメリカ海軍は10月27日、アラバマ州モービルのジェネラルダイナミクス社系列オースタルアメリカ社においてインディペンデンス級沿海域戦闘艦16番艦の起工式を挙行しました。起工式ではアラバマ州において感染拡大が深刻な新型コロナウィルスCOVID-19への配慮から出席者を最小限に抑え感染対策とともに実施されています。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦は三胴船構造を採用した高速水上戦闘艦で満載排水量は3100t、速力は40ノットを発揮します。2000年代の沿岸海域作戦を念頭に重武装よりも速力とセンサー性能を重視した設計ですが2010年代の中国海軍重武装フリゲイトの台頭を受け、近年では艦橋前にハープーンミサイル発射筒を追加しまして、武装を強化しました。
■ドイツ海軍カールスルーエ
 ドイツ海軍コルベットの最新艦起工式の話題です、このブラウンシュバイク級は先ごろ改良型の拠点防空型がイスラエル海軍へ引き渡されましたね。

 ドイツ海軍がゲパルト級ミサイル艇の後継として整備を進めているK-130型/ブラウンシュバイク級コルベットの八番艦カールスルーエが10月6日、ドイツのヴォルガストピーン造船所にて起工式を迎えたとのことです。ブラウンシュバイク級は2008年より竣工となっており、初期の5隻をバッチ1としており、6番艦ケルン以降をバッチ2としています。

 RBS-15Mk4対艦ミサイルを搭載する初のドイツ艦となるもよう。ブラウンシュバイク級は満載排水量1850tの小型艦で対潜能力を持たない哨戒コルベットではありますが射程180kmのRBS-15Mk3と76mm艦砲及び2基のRAM21連装発射装置や小型無人機2機を搭載しますが、RBS-15Mk4は射程が400kmと大幅に延伸、打撃力が強化されています。
■インド海軍カバラティ竣工
 インド海軍も新鋭コルベットを竣工させました、排水量では護衛艦ゆうばり型というよりもこれはもうフリゲイトの大きさだ。

 インド海軍は10月22日、カモルタ級フリゲイト四番艦カバラティを受領しました。カモルタ級フリゲイトはインド海軍ではコルベットに類別されていますが、満載排水量でみれば本型は3150tと大型水上戦闘艦に分類されます。引渡式典にはマノジムクンドナラヴァン将軍、アトゥールクマールジャイン副提督といったインド軍要人が出席しています。

 カモルタ級フリゲイトは対潜運用を重視した水上戦闘艦で、前型で日本にも親善訪問しているコーラ級が水上打撃を重視したのに対し本型はKa-28対潜ヘリコプター1機と533mm連装魚雷発射管2基、RBU-6000対潜ロケットなどの対潜兵装に加え艦砲や艦対空ミサイルなどを搭載しています。インド海軍では中国原潜部隊のインド洋進出を警戒しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする