■特報:世界の防衛,最新論点
今週はF-35戦闘機最新情報です、驚いたのはシンガポール海軍がかなり小型の揚陸艦をF-35B母艦としようとしているところです。
海上自衛隊はアメリカのレイセオン社よりJPALSジョイントプレシジョンアプローチアンドランディングシステムを導入します。いずも型ヘリコプター搭載護衛艦へF-35B戦闘機の運用能力付与改修を進める海上自衛隊にとり、JPALSの導入はその発着を単なる発着点から恒常的運用能力付与に繋がることとなり、計画の要諦となる重要な施策となります。
JPALSジョイントプレシジョンアプローチアンドランディングシステムは、アメリカ海軍のF-35B戦闘機運用能力を有するすべての航空母艦と強襲揚陸艦、イギリス海軍のクイーンエリザベス級航空母艦とイタリア海軍の空母カブールに搭載されており、あらゆる天候や海象でのF-35戦闘機を母艦へと誘導するとともに自動着陸能力を支援するものです。
F-35B戦闘機は強襲揚陸艦や軽空母におけるハリアー攻撃機の後継機という位置づけとなっていますが、ハリアーは艦上運用ではその発着訓練が飛行訓練の大半を占めていました、しかしJPALSにより、極端な表現では手放しでも発着艦できるほどに自動化され、F-35B戦闘機は航空打撃戦や制空戦闘など戦闘機としての訓練に専念できる事となりました。
イギリスのBAEシステムズ社はF-35戦闘機1000号機の胴体部分を納入しました。第五世代戦闘機として猛烈な勢いで量産を進め、アメリカ空軍や海兵隊と海軍はもちろん、わが国航空自衛隊でも隣国の韓国空軍やオーストラリア空軍でも配備が進むF-35戦闘機ですが、1000号機の組立てが進んでいるということはその配備の速さに驚かされるものです。
F-35戦闘機1000号機の胴体部分はランカシャー州サムルズベリーのBAEシステムズ社施設において製造されており、胴体部分についてはすべてのF-35戦闘機がBAEシステムズ社において製造されています。その量産初号機の胴体部品は2005年に生産されており、18年間で1000機を製造したこととなり、また近年その量産度合いは加速化しています。
1000号機の生産はBAEシステムズ社製胴体の納入を受けたロッキードマーティン社において組み立てられることとなりますが、F-35戦闘機は現在17か国で採用もしくは採用決定しており、その生産数は3000機を超えることとなります。一方、BAEシステムズ社も胴体部品などの生産にはイギリスの500社以上の企業がその分担生産に参加しています。
シンガポール空軍はF-35B戦闘機を8機追加調達し12機体制とする計画です。もともとシンガポールはF-35国際共同開発に際して開発パートナー国として参加しており、当初はF-35戦闘機100機を調達する計画があるとしていました、ただ、当時の国防環境の変化からF-16戦闘機近代化改修計画を優先するとし、優先度は中程度ともしていました。
エンデュランス、シンガポール空軍がF-35戦闘機について大きく評価を変えたのはドック型揚陸艦であるシンガポール海軍エンデュランス級揚陸艦へ垂直離着陸発着パッドを装着した場合、後部ヘリコプター甲板から運用できる可能性が示された際です。全通飛行甲板でないエンデュランス級ですが、F-35Bは短距離発着のほかに垂直離着陸も可能です。
F-35Bはハリアー攻撃機と異なり、一応垂直離着陸は可能ですが、垂直離陸運用を行った場合には搭載兵装や搭載燃料に大きな制約が加わるため、基本的に全通飛行甲板からの短距離発艦を行いますが、シンガポール海軍の揚陸艦から仮にF-35Bを運用する実績を積んだ場合、各国海軍へF-35Bのポテンシャルが大きく転換することとなるかもしれません。
ドイツのラインメタル社はF-35戦闘機中央胴体部分の組み立てについてアメリカのロッキードマーティン社と覚書に署名しました。この計画はF-35戦闘機の量産加速を視野に生産能力をアメリカ以外にも拡大する方針であり、中央胴体部分の供給源にラインメタル社の生産能力を付与、ノースロップグラマンでの製造される胴体部分を補完するのが狙い。
IAL部分統合組立ラインをドイツのラインメタル社に整備するための覚書で、最終的には翼外板の製造もラインメタル社において行う検討を進めています。重要なのはドイツはF-35戦闘機を開発するJSF計画の参加国ではありません、またドイツはフランスとの将来戦闘機計画を推進する政治上の制約からF-35戦闘機導入にも大きな論争がありました。
F-35戦闘機について大きな転換となったのは2022年にメルケル政権からショルツ政権に政権交代となり、また2022年のロシア軍ウクライナ侵攻に伴うロシアウクライナ戦争の勃発を受け、何時できるか不明の共同開発戦闘機よりもF-35を選定したためです。この採用の翌年にしてドイツがF-35戦闘機主要部分の生産参画を調整するのは驚きといえます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週はF-35戦闘機最新情報です、驚いたのはシンガポール海軍がかなり小型の揚陸艦をF-35B母艦としようとしているところです。
海上自衛隊はアメリカのレイセオン社よりJPALSジョイントプレシジョンアプローチアンドランディングシステムを導入します。いずも型ヘリコプター搭載護衛艦へF-35B戦闘機の運用能力付与改修を進める海上自衛隊にとり、JPALSの導入はその発着を単なる発着点から恒常的運用能力付与に繋がることとなり、計画の要諦となる重要な施策となります。
JPALSジョイントプレシジョンアプローチアンドランディングシステムは、アメリカ海軍のF-35B戦闘機運用能力を有するすべての航空母艦と強襲揚陸艦、イギリス海軍のクイーンエリザベス級航空母艦とイタリア海軍の空母カブールに搭載されており、あらゆる天候や海象でのF-35戦闘機を母艦へと誘導するとともに自動着陸能力を支援するものです。
F-35B戦闘機は強襲揚陸艦や軽空母におけるハリアー攻撃機の後継機という位置づけとなっていますが、ハリアーは艦上運用ではその発着訓練が飛行訓練の大半を占めていました、しかしJPALSにより、極端な表現では手放しでも発着艦できるほどに自動化され、F-35B戦闘機は航空打撃戦や制空戦闘など戦闘機としての訓練に専念できる事となりました。
イギリスのBAEシステムズ社はF-35戦闘機1000号機の胴体部分を納入しました。第五世代戦闘機として猛烈な勢いで量産を進め、アメリカ空軍や海兵隊と海軍はもちろん、わが国航空自衛隊でも隣国の韓国空軍やオーストラリア空軍でも配備が進むF-35戦闘機ですが、1000号機の組立てが進んでいるということはその配備の速さに驚かされるものです。
F-35戦闘機1000号機の胴体部分はランカシャー州サムルズベリーのBAEシステムズ社施設において製造されており、胴体部分についてはすべてのF-35戦闘機がBAEシステムズ社において製造されています。その量産初号機の胴体部品は2005年に生産されており、18年間で1000機を製造したこととなり、また近年その量産度合いは加速化しています。
1000号機の生産はBAEシステムズ社製胴体の納入を受けたロッキードマーティン社において組み立てられることとなりますが、F-35戦闘機は現在17か国で採用もしくは採用決定しており、その生産数は3000機を超えることとなります。一方、BAEシステムズ社も胴体部品などの生産にはイギリスの500社以上の企業がその分担生産に参加しています。
シンガポール空軍はF-35B戦闘機を8機追加調達し12機体制とする計画です。もともとシンガポールはF-35国際共同開発に際して開発パートナー国として参加しており、当初はF-35戦闘機100機を調達する計画があるとしていました、ただ、当時の国防環境の変化からF-16戦闘機近代化改修計画を優先するとし、優先度は中程度ともしていました。
エンデュランス、シンガポール空軍がF-35戦闘機について大きく評価を変えたのはドック型揚陸艦であるシンガポール海軍エンデュランス級揚陸艦へ垂直離着陸発着パッドを装着した場合、後部ヘリコプター甲板から運用できる可能性が示された際です。全通飛行甲板でないエンデュランス級ですが、F-35Bは短距離発着のほかに垂直離着陸も可能です。
F-35Bはハリアー攻撃機と異なり、一応垂直離着陸は可能ですが、垂直離陸運用を行った場合には搭載兵装や搭載燃料に大きな制約が加わるため、基本的に全通飛行甲板からの短距離発艦を行いますが、シンガポール海軍の揚陸艦から仮にF-35Bを運用する実績を積んだ場合、各国海軍へF-35Bのポテンシャルが大きく転換することとなるかもしれません。
ドイツのラインメタル社はF-35戦闘機中央胴体部分の組み立てについてアメリカのロッキードマーティン社と覚書に署名しました。この計画はF-35戦闘機の量産加速を視野に生産能力をアメリカ以外にも拡大する方針であり、中央胴体部分の供給源にラインメタル社の生産能力を付与、ノースロップグラマンでの製造される胴体部分を補完するのが狙い。
IAL部分統合組立ラインをドイツのラインメタル社に整備するための覚書で、最終的には翼外板の製造もラインメタル社において行う検討を進めています。重要なのはドイツはF-35戦闘機を開発するJSF計画の参加国ではありません、またドイツはフランスとの将来戦闘機計画を推進する政治上の制約からF-35戦闘機導入にも大きな論争がありました。
F-35戦闘機について大きな転換となったのは2022年にメルケル政権からショルツ政権に政権交代となり、また2022年のロシア軍ウクライナ侵攻に伴うロシアウクライナ戦争の勃発を受け、何時できるか不明の共同開発戦闘機よりもF-35を選定したためです。この採用の翌年にしてドイツがF-35戦闘機主要部分の生産参画を調整するのは驚きといえます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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