北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい"海洋国家日本の構想"を考える(2)核なき抑止力-日本の覚悟~新年防衛論集2025~

2025-01-03 20:23:21 | 北大路機関特別企画
■核なき抑止力-日本の覚悟
 核兵器は日本にとり現実の脅威です。

 日本の安全保障を考える場合、直視しなければならないのは核の脅威に対してどのように向き合うか、ということです。ウクライナでは核兵器が使われていない実情に鑑みて、核兵器の脅威は無視できる、こう考えるのは現実的ではありません、その理由として、ウクライナで核兵器が使われた場合はNATOが直接介入する、というNATO理事会の一致が2022年にあり、使えない状況にあるのです。

 難しいのは日本における核兵器の運用は、ウクライナにおける核兵器の有用性、戦術核兵器により戦況を好転かさせるという全面戦争における戦域優位獲得のための核兵器、という位置づけではなく、日本の場合は指揮中枢破壊や産業基盤破壊など、いわば、日本本土へ地上部隊を侵攻させ戦況を優位とさせるための核兵器ではなく、地上戦を度外視した核兵器の使用そのものが目的となっている。

 核兵器が使われた場合に米軍が介入する、という言質があっても、京浜地区や京阪神地区が核攻撃を受けた後では、米軍の介入は意味がありません、すると、核兵器を保有しないという前提のもとでの抑止力構築というものが重要になります。その一つの選択肢が、ミサイル防衛能力整備でした。これは計画当初、もう22年前か、不可能であると識者の一部さえ嘲笑したものでしたが。

 ミサイル防衛はある程度、具現化した、2024年にはイランの中距離弾道弾を宇宙空間において迎撃成功した事例がありますので、いままでのクウェジェリン環礁からの迎撃試験よりも実戦、実戦に近いというのではなくイスラエル本土攻撃に向かうミサイルの撃墜という実戦の戦果をたたき出したわけです。すると、迎撃ミサイルの数さえ揃えば、核攻撃を無力化出来うる、とうう可能性を示した。

 ただ、問題はその巨額のミサイル防衛に関する費用を捻出できる見通しがなくなり、一応海上自衛隊はイージス艦の数的増強を行う方針ではありますが、とてもではないが足りない状況にある。政府が進める反撃能力整備というものは、迎撃一辺倒だけでは日本のミサイル生産能力からして早々に在庫が払底することを自覚したもので有り、この現実に向き合った結果が反撃能力、と。

 核兵器の脅威に対して通常兵器で対応できるのか。この問題に一つの解決策を示したのが、昨年韓国が国軍の日において発表した新型ミサイル"玄武5"です。弾頭重量が6t程度と通常弾頭のミサイルとしては破格に大きく、バンカーバスター弾頭を備えるため、地下指揮中枢を破壊できる、ということ。宇宙空間から落下し高速度を発揮するミサイル、地下100mでも安全とは言いがたい。

 日本の周辺国で核兵器を保有する諸国は、権威主義国家である。これは結果論なのですが通常兵器による抑止力が機能するのかと問われるならば、権威主義国家は国民すべてを目標とせず、指導者に対する抑止力がその最大限の意味を持つため、広範囲を核の焔で巻き添えにする必要が無い、ということです。故に韓国のミサイル開発は核抑止に対抗する通常兵器の限界の強さを見せた。

 日本の防衛政策は、核攻撃を受けてから措置が為された後では意味が無いという大前提のもとで、通常兵器による独自の対核恫喝への抑止力というものを真剣に見てゆく必要があるでしょう。一方、防衛政策を左右するものは国民の世論であるため、日本は核の脅威にさらされているという現実を共有することが、抑止への方策を前進させるまず最初の難関なのかもしれませんが、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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