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新しい"海洋国家日本の構想"を考える(1)間に合った決断-反撃能力整備~新年防衛論集2025~

2025-01-02 20:05:00 | 北大路機関特別企画
■新年防衛論集2025
 海洋国家日本の構想刊行60周年という事で本年の新年防衛論集を掲載してゆきましょう。

 ロシア軍による日本本土原子力施設攻撃計画、こうしたものが存在したというイギリスメディア報道が今年に入り早速為されまして、日本の防衛力というものをどの段階まで考えるか、という命題を突きつけられた印象です。反撃能力、自衛隊の新しい段階の防衛力整備は、場合によっては、若干遅かったものの、間に合った部分があったのかもしれません。

 原子力施設攻撃、首都圏に近い東海村の原子力施設が標的となっていたといい、これは2014年時点の、つまりいまのロシアウクライナ戦争開戦前の時点で計画され、この実行のために爆撃機などを用いた自衛隊の即応体制の検証まで実施していた、とのこと。こうした計画というものが存在することは予見できていましても、報道されると改めて衝撃におもう。

 間に合った、というのは自衛隊の反撃能力整備が進めば、ラズボイニク湾の陸上原子力施設を破壊してウラジオストク軍港を使用不能に追いやることが可能ですし、射程の長い反撃能力は水上戦闘艦に搭載し大西洋まで進出した上でロシア心臓部を直接攻撃出来る能力、を示すことにより相手の攻撃を抑止させることができるわけで、この点の意味は大きい。

 カリーニン原子力発電所、東海第二原発が攻撃された場合には自衛隊は必ずカリーニン原発を攻撃し、モスクワを東京と同じ状態に追い込む、かりにこうした覚悟を政治が示すならば、少なくとも攻撃目標から原子力施設を外させることは出来るでしょう。厳しい話ではありますが、現在の安全保障情勢はこうした選択肢を求められる段階まできている。

 反撃能力整備、射程を聞いた際にその射程が目指すものは何であるかを考えたものですが、射程から四川省まで届くということが判明しますと、四川省南部の核ミサイル施設をその射程に収めていることから、これは大陸中国が政権交代などにより過激化した場合に最後の覚悟を行い、日本本土への核攻撃を決意した場合への阻止の手段なのだろうと直感しました。

 四川省、続いて日本が必要と考えるならば、もう少し踏み込んだ射程を付与させることも出来るかもしれない、いわば、岸田ドクトリンというものは必要な防衛力を必要な水準で対応させるという段階へ、踏み込んだ、ようやく日本国家は脅威を直視し、直視した脅威を評定し、必要な防衛力整備を具現化する段階まで、リアリズムの段階に到達したのだ、と。

 反撃能力整備について、実のところ岸田ドクトリンには北大路機関は批判的でした、それは明らかな専守防衛政策からの転換を、現行憲法はそのままとしても、一内閣の方針転換として行い得るのか、という危惧でしたが、結局とのこと、法整備を待てない故に現行法の最大限の解釈を行わざるを得ないという、いままでのモラトリアムが一気に具現化した、とも。

 憲法改正などは冷戦時代の内に覚悟を決めておくべきであったのかもしれないが、逆に解釈の幅を残すことで冗長性ある制度運用基盤を構築し、現行憲法のままでも安全保障法整備、いや、小泉内閣時代の有事法制整備も起点であったというべきか、橋本内閣時代の日米新ガイドラインまで含めて考えるべきか、冗長性ある法制度の延長線上に今があるともいえるか。

 ともあれ、反撃能力整備は、日本を攻撃した場合のアメリカ軍の抑止力、という従来型の抑止構造が成り立たない、1980年代に既に提唱されていた"多極化時代"の具現化を前に、専守防衛というものごとのあり方も変容せざるを得ないという厳しい現実を反映したものといえるのかもしれません。しかし同時にこれは、間に合った、という視点でも考えるべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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