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【防衛情報】フランスカエサル自走榴弾砲の躍進-チェコとリトアニア等2022年55門注文と課題の生産能力過小

2023-03-06 20:13:38 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本製鋼所の19式装輪自走榴弾砲は自衛隊火砲数が削減されているとはいえ相応の規模ですので場合によっては輸出に対応するのかなと思った話題です。

 リトアニア国防省はフランス製カエサル2自走榴弾砲18両を導入するとのこと。これは2022年12月29日にパリを訪問したアヴィダス国防相がフランスとの二国間国防相会談において、フランスでのカエサル2開発プログラムへ参加を表明したもので、特にフランスがウクライナへ供与したカエサル自走榴弾砲の威力が大きく、評価されたかたち。

 カエサル2自走榴弾砲は現在開発中のものです、ただ主砲である52口径155mm榴弾砲については変更はありません、そこで車体部分には大幅な能力向上が見込まれていて、エンジン出力を二倍のものに換装することで不整地突破能力や最高速度を大幅に向上させる、車内容積は六輪型では手狭であるものの防護装備を装着したままの収容を可能とする。

 カエサル2は更に現在カエサルの車体部分は非装甲であり増加装甲により対応しているのにたいして完全な装甲車体として完成させる方針です。現在リトアニア陸軍ではドイツ製PzHー2000自走榴弾砲を装備しています、リトアニア陸軍では選択肢としてこのPzH-2000を増強するという選択肢もありますが、確実かつ素早く導入を重視した構図でしょう。

 コロンビア国防省はフランスからカエサル自走榴弾砲を採用すると発表しました。コロンビア陸軍はカエサル自走榴弾砲の大きな射程とともに正確な命中精度に注目しており、その導入数については発表されていませんが、1億0170万ドルを国防費から拠出するとのこと。コロンビア陸軍の運用要求では精密誘導砲弾の導入なども求められる事でしょう。

 カエサル自走榴弾砲について、コロンビア陸軍はながらく強力な武器で武装する麻薬カルテルとのあいだで苦戦を強いられており、驚くべきことですが射程延伸弾では55kmもの射程の火砲を麻薬組織の拠点攻撃に活用するとのこと。このほかコロンビアはFARCゲリラとの戦いにも苦戦を強いられることがあり、射程の大きな火砲に期待を集めている。

 八輪型と六輪型が開発されているカエサル自走榴弾砲ですが、コロンビア軍は六輪型を導入する見込み、六輪型の車体部分についてはフランス製シェルパトラックかドイツ製ウニモグU2450Lトラックを選択できますが、こちらについてコロンビア政府の決定はは明らかにされていません、ただ近接戦闘に備え車体には増加装甲を装着させ防護するもよう。

 チェコ軍はフランス製カエサル自走榴弾砲を更に10両追加調達します。これは2022年12月14日にチェコ国防省代表団がフランスのネクスター社とともに正式契約を交わしており、10両の追加費用は17億7700万コルナ、米ドル換算では7700万ドルとなります、初度装備品はすでにチェコ軍はカエサル自走榴弾砲を採用しているため、必要有りません。

 カエサル自走榴弾砲は原型車両にウニモグトラックを採用していますが、これは空輸性能を考慮してのものであり、チェコ軍には自走榴弾砲の緊急展開計画はないため、八輪型のチェコ製タトラ815-7T3RCトラックの大型車体を採用しています、タトラトラックはチェコ軍のほかに輸出では民生車両としても多数が採用され、高い性能で知られています。

 チェコ軍は2020年にカエサル自走榴弾砲を採用、特にチェコスロバキア時代からダナ装輪自走榴弾砲を運用してきましたチェコ軍にはこの種の装備について運用実績を積んでいます。その上で過去にチェコはダナ自走榴弾砲の改良を検討しましたが射程が20kmでしかなく、カエサル自走榴弾砲の40km、RAP弾射程55kmを高く評価し採用を決定しました。

 フランスのネクスター社は大量のカエサル榴弾砲注文に対し生産体制が飽和状態となっています。2022年に確定した生産数は55門、リトアニアからの18門の調達契約とチェコからの既に納入された55両の調達に続く10両の追加調達、そしてウクライナ戦争開戦に伴うウクライナ軍事支援策としてのフランス軍供与火砲の補填としての追加調達など。

 カエサル自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲を搭載する装輪自走榴弾砲であり、試作車が発表された1994年当時にはトラック自走砲として、また簡易自走砲という評価がありましたが、機動力の高さは現代陸上戦闘においては大きな優位性があり、特に前線の後方からの52口径長砲身を活かしての精密誘導砲弾射撃には機動力の重要性が増していました。

 52口径155mm榴弾砲、しかし課題は砲身の鋳造は鉄パイプのような簡単な工程で出来るものではなく、特に軍需産業を冷戦後の欧州軍隊縮小に合せ大幅にコンパクト化させているネクスター社にとり、年間の砲身鋳造数は30本程度、増産するにしても限度があります。大量受注の朗報は、同時に喫緊生産拡大の難しさという課題を突き付ける事になりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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