■護衛艦くらま退役一周年
DDH,ヘリコプター搭載護衛艦は海上自衛隊が独力で構想し構築した艦船装備体系です。
ヘリコプター搭載護衛艦くらま退役から今日で一年となりました。ヘリコプター搭載護衛艦かが就役から一周年である事も意味します。海上自衛隊は1973年から1981年までヘリコプター搭載護衛艦四隻の建造という一大事業を推進し達成しています。これは1973年の第一次石油危機、1979年の第二次石油危機の影響下では非常な困難を乗り越えて、です。
2009年から2017年にかけ、海上自衛隊は上記第一世代型ヘリコプター搭載護衛艦の第二世代への更新、はるな、ひえい、しらね、くらま、ヘリコプター巡洋艦型護衛艦の全通飛行甲板型護衛艦への世代交代という一大事業を推進し、航空機運用を重視した、ひゅうが、いせ、いずも、かが、四隻を四個護衛隊群へ配備する新たな防衛力整備を完了しました。
HSS-2対潜ヘリコプターの艦載運用以来、海上自衛隊は限られた予算から洋上航空部隊の錬成を継続的に実施し、HSS-2A対潜ヘリコプター、HSS-2B対潜ヘリコプター、SH-60J哨戒ヘリコプター、SH-60K哨戒ヘリコプター、と継続的な機種更新を実施し、日本独自の洋上航空運用体系を構築、普遍化させてきました。これは特筆すべき防衛力整備といえる。
はるな、最初のDDH竣工の1973年には、大型ヘリコプターの艦載運用はまだまだ世界各国では模索の時代で、海上自衛隊は陸上用のHSS-1運用評価を経て、その洋上配備へ乗り出した事が、同時にアメリカ海軍の運用体系からの脱却を意味するものでした。独自の運用体系と戦術研究を実運用にあわせ、装備化し、日本に必要な装備体系を独力で模索した上での回答です。
くらま竣工の1981年は、その運用体系を普遍化させた意味で大きな節目となりました。ヘリコプター巡洋艦を一隻整備する、軽空母を一隻導入する、これは世界各国ではあまり珍しいものではありません。しかし複数を導入し、常時複数を稼働できる体制が構築できなければ、防衛力として内部化したとは言い切れず、四隻目くらま竣工の意味は大きかった。
HSS-2B対潜ヘリコプターは現在のMCH-101掃海輸送ヘリコプターと同規模の大型機です。言い換えればEH-101としてMCH-101がイギリスイタリアで開発された要求仕様に、イギリス海軍とイタリア海軍が運用したHSS-2、シーキングヘリコプターを運用可能な艦艇にEH-101をそのまま搭載できるという、EH-101をHSS-2機体規模に収めた背景がある。
MCH-101は非常に大型機である事は一見して分かりますが、HSS-2も当時はアメリカ海軍が航空母艦艦載機として対潜空母に搭載していた高性能機で、駆逐艦規模の艦艇へはSH-2という小型機を想定していました。HSS-2はそれ程大型で、イタリア海軍やイギリス海軍のヘリコプター巡洋艦を除けばカナダ海軍が新技術により駆逐艦へ艦載していた程度です。
SH-60K哨戒ヘリコプターの対潜水艦任務でn高性能が伝えられる一方、HSS-2は独立してソノブイにより潜水艦兆候を計測します。SH-2であればソノブイを投下できますが分析機材を搭載する余力が無く、計測と分析は母艦へデータを伝送していました。HSS-2はこちらを独立し実施できた他、SH-2にはない吊下ソナーを直接海中に展開可能する事ができる。
HSS-2Bは母艦へ情報を伝送すると同時に独立した対潜哨戒機として、ソノブイ情報を分析し、兆候のある海域へは直接ソナーによる高精度の索敵を行う。これでも最新鋭の潜水艦を捕捉する事は至難ですが、逆に潜水艦はヘリコプターが展開している海域で身動きが取れません。そして潜水艦にヘリコプターを排除する手段は無く行動を封じられる事を示す。
くらま除籍は、同時に新しい全通飛行甲板型護衛艦へヘリコプター搭載護衛艦が世代交代したことを意味し、ヘリコプター搭載護衛艦という日本独自の装備体系を全通飛行甲板型として四隻揃えた事に新しい意味があります。全通飛行甲板型護衛艦の新しい意味とは、第一に航空機と航空隊規模で収容できること、第二に多種多様な航空機を搭載できること。
航空隊規模で収容できること。これはSH-60J/K哨戒ヘリコプターでもMCH-101掃海輸送ヘリコプターでも、この他の機種であっても飛行隊ではなく航空隊規模で、勿論常時搭載する事には限界がありますし、甲板係留併用や航空燃料と整備機材の上限もあるのですが、収容し運用出来る事に直結します。つまり、護衛隊に航空隊、2個の部隊を洋上に出せる。
航空隊規模で収容できること。即ち航空機は進出能力が高く、護衛艦とは比較にならない巡航速度を以て素早く展開可能です。難点は滞空時間が艦艇の遊弋可能な時間とは比較にならない程短く、航空基地か母艦が必要という点でした。ここで、航空隊を収容できるヘリコプター搭載護衛艦が加わる事で、航空機の能力を最大限発揮できる事へと昇華します。
多種多様な航空機を搭載できること。全通飛行甲板型護衛艦は、SH-60J/K哨戒ヘリコプターやMCH-101掃海輸送ヘリコプターに加え、AH-64D戦闘ヘリコプターやCH-47J輸送ヘリコプター、新たに導入されるV-22可動翼航空機は勿論、アメリカ海兵隊が岩国航空基地へ前方展開を開始したF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として搭載する事さえ可能だ。
多種多様な航空機を搭載できること。この意味は大きく、特にF-35Bの艦載能力は護衛艦くらま、ではほぼありませんでした。海上自衛隊には航空自衛隊のエアカバー圏外での行動に際し、イージス艦とターター艦のスタンダードミサイル、護衛艦のESSM/シースパローミサイルにて防空を担っていましたが、当たり前ですがこれらの装備は平時使えません。
平時という戦わない戦争での勝利、F-35Bが艦上に配備、そこまで行かずとも配備される可能性を残すだけでも、艦隊防空に新しい一歩を示す事が出来ます、即ちF-35Bはスクランブル発進を行える。重要です、航空自衛隊は如何に地対空ミサイルが強化されようとも戦闘機による緊急発進を任務から外さないのは、傍観か撃墜、以外の選択肢を果たすため。
防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。自民党国分部会が20日に示した防衛計画の大綱改訂への骨子です。これは近年、突如進む中国海軍による航空母艦量産の動き、連動して南西諸島や南シナ海での進出と南シナ海での不法奪取環礁人工島化という流れ、中国ミサイル爆撃機西日本沖への進出、新しい段階の防衛力が必要となったもの。
防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。この防衛型空母が示すものは新造艦となるのか、ひゅうが、いせ、いずも、かが、を改修するのかは未知数ですが、海上自衛隊は過去にもヘリコプター搭載護衛艦の増勢を検討した事が幾度かあり、護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦を2隻づつ配備していた時代、6隻から8隻体制構想もあった。
くらま退役から一周年、かが就役から一周年、我が国周辺情勢が緊張度を増して、冷戦時代には考えられなかった西日本沖ミサイル爆撃機の進出、南西諸島着上陸脅威の顕在化、そして1100回を超えた国籍不明機への対領空侵犯措置任務緊急発進、これらは残念な事ではありますが、万一への備え、戦闘を交えない戦いへの勝利の基盤は固まりつつあります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
DDH,ヘリコプター搭載護衛艦は海上自衛隊が独力で構想し構築した艦船装備体系です。
ヘリコプター搭載護衛艦くらま退役から今日で一年となりました。ヘリコプター搭載護衛艦かが就役から一周年である事も意味します。海上自衛隊は1973年から1981年までヘリコプター搭載護衛艦四隻の建造という一大事業を推進し達成しています。これは1973年の第一次石油危機、1979年の第二次石油危機の影響下では非常な困難を乗り越えて、です。
2009年から2017年にかけ、海上自衛隊は上記第一世代型ヘリコプター搭載護衛艦の第二世代への更新、はるな、ひえい、しらね、くらま、ヘリコプター巡洋艦型護衛艦の全通飛行甲板型護衛艦への世代交代という一大事業を推進し、航空機運用を重視した、ひゅうが、いせ、いずも、かが、四隻を四個護衛隊群へ配備する新たな防衛力整備を完了しました。
HSS-2対潜ヘリコプターの艦載運用以来、海上自衛隊は限られた予算から洋上航空部隊の錬成を継続的に実施し、HSS-2A対潜ヘリコプター、HSS-2B対潜ヘリコプター、SH-60J哨戒ヘリコプター、SH-60K哨戒ヘリコプター、と継続的な機種更新を実施し、日本独自の洋上航空運用体系を構築、普遍化させてきました。これは特筆すべき防衛力整備といえる。
はるな、最初のDDH竣工の1973年には、大型ヘリコプターの艦載運用はまだまだ世界各国では模索の時代で、海上自衛隊は陸上用のHSS-1運用評価を経て、その洋上配備へ乗り出した事が、同時にアメリカ海軍の運用体系からの脱却を意味するものでした。独自の運用体系と戦術研究を実運用にあわせ、装備化し、日本に必要な装備体系を独力で模索した上での回答です。
くらま竣工の1981年は、その運用体系を普遍化させた意味で大きな節目となりました。ヘリコプター巡洋艦を一隻整備する、軽空母を一隻導入する、これは世界各国ではあまり珍しいものではありません。しかし複数を導入し、常時複数を稼働できる体制が構築できなければ、防衛力として内部化したとは言い切れず、四隻目くらま竣工の意味は大きかった。
HSS-2B対潜ヘリコプターは現在のMCH-101掃海輸送ヘリコプターと同規模の大型機です。言い換えればEH-101としてMCH-101がイギリスイタリアで開発された要求仕様に、イギリス海軍とイタリア海軍が運用したHSS-2、シーキングヘリコプターを運用可能な艦艇にEH-101をそのまま搭載できるという、EH-101をHSS-2機体規模に収めた背景がある。
MCH-101は非常に大型機である事は一見して分かりますが、HSS-2も当時はアメリカ海軍が航空母艦艦載機として対潜空母に搭載していた高性能機で、駆逐艦規模の艦艇へはSH-2という小型機を想定していました。HSS-2はそれ程大型で、イタリア海軍やイギリス海軍のヘリコプター巡洋艦を除けばカナダ海軍が新技術により駆逐艦へ艦載していた程度です。
SH-60K哨戒ヘリコプターの対潜水艦任務でn高性能が伝えられる一方、HSS-2は独立してソノブイにより潜水艦兆候を計測します。SH-2であればソノブイを投下できますが分析機材を搭載する余力が無く、計測と分析は母艦へデータを伝送していました。HSS-2はこちらを独立し実施できた他、SH-2にはない吊下ソナーを直接海中に展開可能する事ができる。
HSS-2Bは母艦へ情報を伝送すると同時に独立した対潜哨戒機として、ソノブイ情報を分析し、兆候のある海域へは直接ソナーによる高精度の索敵を行う。これでも最新鋭の潜水艦を捕捉する事は至難ですが、逆に潜水艦はヘリコプターが展開している海域で身動きが取れません。そして潜水艦にヘリコプターを排除する手段は無く行動を封じられる事を示す。
くらま除籍は、同時に新しい全通飛行甲板型護衛艦へヘリコプター搭載護衛艦が世代交代したことを意味し、ヘリコプター搭載護衛艦という日本独自の装備体系を全通飛行甲板型として四隻揃えた事に新しい意味があります。全通飛行甲板型護衛艦の新しい意味とは、第一に航空機と航空隊規模で収容できること、第二に多種多様な航空機を搭載できること。
航空隊規模で収容できること。これはSH-60J/K哨戒ヘリコプターでもMCH-101掃海輸送ヘリコプターでも、この他の機種であっても飛行隊ではなく航空隊規模で、勿論常時搭載する事には限界がありますし、甲板係留併用や航空燃料と整備機材の上限もあるのですが、収容し運用出来る事に直結します。つまり、護衛隊に航空隊、2個の部隊を洋上に出せる。
航空隊規模で収容できること。即ち航空機は進出能力が高く、護衛艦とは比較にならない巡航速度を以て素早く展開可能です。難点は滞空時間が艦艇の遊弋可能な時間とは比較にならない程短く、航空基地か母艦が必要という点でした。ここで、航空隊を収容できるヘリコプター搭載護衛艦が加わる事で、航空機の能力を最大限発揮できる事へと昇華します。
多種多様な航空機を搭載できること。全通飛行甲板型護衛艦は、SH-60J/K哨戒ヘリコプターやMCH-101掃海輸送ヘリコプターに加え、AH-64D戦闘ヘリコプターやCH-47J輸送ヘリコプター、新たに導入されるV-22可動翼航空機は勿論、アメリカ海兵隊が岩国航空基地へ前方展開を開始したF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として搭載する事さえ可能だ。
多種多様な航空機を搭載できること。この意味は大きく、特にF-35Bの艦載能力は護衛艦くらま、ではほぼありませんでした。海上自衛隊には航空自衛隊のエアカバー圏外での行動に際し、イージス艦とターター艦のスタンダードミサイル、護衛艦のESSM/シースパローミサイルにて防空を担っていましたが、当たり前ですがこれらの装備は平時使えません。
平時という戦わない戦争での勝利、F-35Bが艦上に配備、そこまで行かずとも配備される可能性を残すだけでも、艦隊防空に新しい一歩を示す事が出来ます、即ちF-35Bはスクランブル発進を行える。重要です、航空自衛隊は如何に地対空ミサイルが強化されようとも戦闘機による緊急発進を任務から外さないのは、傍観か撃墜、以外の選択肢を果たすため。
防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。自民党国分部会が20日に示した防衛計画の大綱改訂への骨子です。これは近年、突如進む中国海軍による航空母艦量産の動き、連動して南西諸島や南シナ海での進出と南シナ海での不法奪取環礁人工島化という流れ、中国ミサイル爆撃機西日本沖への進出、新しい段階の防衛力が必要となったもの。
防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。この防衛型空母が示すものは新造艦となるのか、ひゅうが、いせ、いずも、かが、を改修するのかは未知数ですが、海上自衛隊は過去にもヘリコプター搭載護衛艦の増勢を検討した事が幾度かあり、護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦を2隻づつ配備していた時代、6隻から8隻体制構想もあった。
くらま退役から一周年、かが就役から一周年、我が国周辺情勢が緊張度を増して、冷戦時代には考えられなかった西日本沖ミサイル爆撃機の進出、南西諸島着上陸脅威の顕在化、そして1100回を超えた国籍不明機への対領空侵犯措置任務緊急発進、これらは残念な事ではありますが、万一への備え、戦闘を交えない戦いへの勝利の基盤は固まりつつあります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)