■特報:世界の防衛,最新論点
今回はF-35戦闘機とF-35戦闘機に道を譲ったF-16戦闘機のその後の話題等を紹介しましょう。

オーストラリア空軍はF-35A戦闘機の配備を開始しました。これは2021年12月に実施されたもので、オーストラリア空軍は最初のF-35A戦闘機をティンダル空軍基地へ配備しています。ティンダル空軍基地はオーストラリア北部の防衛力強化に関して、10年間で80億オーストラリアドルを投じる防衛基盤強化の一環として基地機能を拡張してきました。

F-35A戦闘機は旧式化したF/A-18戦闘機の後継機としてオーストラリア空軍へ採用されていたものです。空軍はF-35Aが引き渡されるまでの繋ぎとして新鋭のF/A-18F戦闘攻撃機も採用していますが、今後F-35戦闘機の充足に伴い、これらの機体はF/A-18F戦闘攻撃機から広範囲の電子戦等をになうEA-18G電子攻撃機へと転換されることともなっています。

ティンダル空軍基地に配備されるF-35A戦闘機は第75飛行隊、F-35A配備に先駆け、滑走路の拡張や航空格納庫の刷新と基地インフラ施設の更新などを実施しており、オーストラリア北部の飛行場施設は順次7億3700万ドルを投じ基地機能を強化します。これらの施策は防衛力強化と同時に北部へ雇用を創出、国境隣接地域の人口定着も目的としています。
■F-35かSu-75かステルス機の混迷
F-35は自由にかえる航空機ではないというステルス機の話題です。

アラブ首長国連邦次期戦闘機はF-35戦闘機かSu-75戦闘機かで米ロ戦闘機競争が激化しています。アラブ首長国連邦は次期戦闘機として既に実績のあるF-35戦闘機を強く希望していますが、イスラエルなどの周辺情勢との関係から実現のめどは立っていません。アメリカは第五世代戦闘機ではなく4.5世代戦闘機を提示しますが、第五世代が最低条件です。

50機のF-35戦闘機と関連機材を230億ドルで取得するという巨額防衛装備移転、しかし対外防衛装備供与に関する制限を示したソブリン条項があり、アメリカ政府はダウングレード版のF-35をアラブ首長国連邦に提示したものの、その再設計費用を上乗せる事となり、低性能版を割高に売却する構図がアラブ首長国連邦の反感を招き、交渉が凍結されました。

Su-75はこうした中で急浮上したものです。これはロシアが輸出されたMiG-21戦闘機などの後継を意図して開発を進めている第五世代戦闘機で、2021年12月のドバイ航空ショーにおいても大々的に展示されています。無論開発中の機体でモックアップのみしか完成していませんが、バイデン政権がF-35輸出を渋るならば、この揺さ振りは続く事でしょう。
■ノルウェー42年ぶりの戦闘機交代
実に42年間の任務を完了したという話はなにか自衛隊のファントムを思い出す。

ノルウェー空軍は2021年1月6日よりF-35戦闘機の対領空侵犯措置任務警戒待機QRA任務を開始したとのこと。これはNATO統合防空基盤の一環で行われ、ノルウェー北部のエヴェネス空軍基地にて引き継ぎ式が行われると共に、1980年から42年間に渡り継続されたノルウェー空軍F-16飛行隊のQRA任務解除と引き継ぎの完了を意味するものです。

F-35戦闘機のノルウェー空軍への導入計画は52機が予定されており、2025年までに全52機が納入される計画、ノルウェー空軍の戦闘機はF-16戦闘機が順次退役し、この52機のF-35へ統合される計画です。F-16戦闘機はボードー空軍基地へ配備されQRA任務を実施してきましたが、ノルウェー標準時間1月6日1145時に任務の切替を行ったとのこと。

NATO統合防空基盤であるQRA任務において、ノルウェー北部のエヴェネス空軍基地はノルウェーはもちろんのことNATOでも最北の戦闘機部隊基地となります、これはロシアなど周辺の脅威がNATO域内へ接近する際の最前線となる事も意味し、基地には基地防衛隊や基地防空大隊の他、アメリカ軍のP-8A哨戒機部隊なども前方展開することとなります。
■F-16はルーマニアへ
F-35戦闘機の配備により余剰となったノルウェーのF-16は再就職できたようです。

ルーマニア空軍はノルウェー空軍のF-16戦闘機中古機32機を導入するとのこと。東欧地域へのロシア軍事圧力に直面するルーマニア軍はNATOに加盟すると共に機械化部隊のNATO基準への改編などを急いでいますが、MiG-29戦闘機など旧ソ連製戦闘機の老朽化にも悩まされてきました。ここで同じNATO加盟国であるノルウェーの支援を受けることに。

F-16戦闘機中古機32機はノルウェーから3億5400万ユーロで導入し、整備支援や整備器具等は別途1億ユーロで取得します。ノルウェー空軍は現在、F-16戦闘機をF-35戦闘機への機種転換の過渡期にあり、最近では12月9日に追加のF-35が到着しています。ルーマニア空軍は確実に運用可能なF-16戦闘機を新造よりも遥かに安価に取得できるようです。

黒海沿岸に位置するルーマニアはロシア軍の直接の圧力は今でこそ大きくはありませんが、2021年後半から緊迫度合いを増すウクライナ情勢が今後ロシアの圧力増大に対応しきれない場合には、ロシアが武力併合したクリミア半島からのロシア軍による黒海沿岸への圧力が増大するのも必至とみられ、ルーマニア空軍戦闘機整備は焦眉の課題となっていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回はF-35戦闘機とF-35戦闘機に道を譲ったF-16戦闘機のその後の話題等を紹介しましょう。

オーストラリア空軍はF-35A戦闘機の配備を開始しました。これは2021年12月に実施されたもので、オーストラリア空軍は最初のF-35A戦闘機をティンダル空軍基地へ配備しています。ティンダル空軍基地はオーストラリア北部の防衛力強化に関して、10年間で80億オーストラリアドルを投じる防衛基盤強化の一環として基地機能を拡張してきました。

F-35A戦闘機は旧式化したF/A-18戦闘機の後継機としてオーストラリア空軍へ採用されていたものです。空軍はF-35Aが引き渡されるまでの繋ぎとして新鋭のF/A-18F戦闘攻撃機も採用していますが、今後F-35戦闘機の充足に伴い、これらの機体はF/A-18F戦闘攻撃機から広範囲の電子戦等をになうEA-18G電子攻撃機へと転換されることともなっています。

ティンダル空軍基地に配備されるF-35A戦闘機は第75飛行隊、F-35A配備に先駆け、滑走路の拡張や航空格納庫の刷新と基地インフラ施設の更新などを実施しており、オーストラリア北部の飛行場施設は順次7億3700万ドルを投じ基地機能を強化します。これらの施策は防衛力強化と同時に北部へ雇用を創出、国境隣接地域の人口定着も目的としています。
■F-35かSu-75かステルス機の混迷
F-35は自由にかえる航空機ではないというステルス機の話題です。

アラブ首長国連邦次期戦闘機はF-35戦闘機かSu-75戦闘機かで米ロ戦闘機競争が激化しています。アラブ首長国連邦は次期戦闘機として既に実績のあるF-35戦闘機を強く希望していますが、イスラエルなどの周辺情勢との関係から実現のめどは立っていません。アメリカは第五世代戦闘機ではなく4.5世代戦闘機を提示しますが、第五世代が最低条件です。

50機のF-35戦闘機と関連機材を230億ドルで取得するという巨額防衛装備移転、しかし対外防衛装備供与に関する制限を示したソブリン条項があり、アメリカ政府はダウングレード版のF-35をアラブ首長国連邦に提示したものの、その再設計費用を上乗せる事となり、低性能版を割高に売却する構図がアラブ首長国連邦の反感を招き、交渉が凍結されました。

Su-75はこうした中で急浮上したものです。これはロシアが輸出されたMiG-21戦闘機などの後継を意図して開発を進めている第五世代戦闘機で、2021年12月のドバイ航空ショーにおいても大々的に展示されています。無論開発中の機体でモックアップのみしか完成していませんが、バイデン政権がF-35輸出を渋るならば、この揺さ振りは続く事でしょう。
■ノルウェー42年ぶりの戦闘機交代
実に42年間の任務を完了したという話はなにか自衛隊のファントムを思い出す。

ノルウェー空軍は2021年1月6日よりF-35戦闘機の対領空侵犯措置任務警戒待機QRA任務を開始したとのこと。これはNATO統合防空基盤の一環で行われ、ノルウェー北部のエヴェネス空軍基地にて引き継ぎ式が行われると共に、1980年から42年間に渡り継続されたノルウェー空軍F-16飛行隊のQRA任務解除と引き継ぎの完了を意味するものです。

F-35戦闘機のノルウェー空軍への導入計画は52機が予定されており、2025年までに全52機が納入される計画、ノルウェー空軍の戦闘機はF-16戦闘機が順次退役し、この52機のF-35へ統合される計画です。F-16戦闘機はボードー空軍基地へ配備されQRA任務を実施してきましたが、ノルウェー標準時間1月6日1145時に任務の切替を行ったとのこと。

NATO統合防空基盤であるQRA任務において、ノルウェー北部のエヴェネス空軍基地はノルウェーはもちろんのことNATOでも最北の戦闘機部隊基地となります、これはロシアなど周辺の脅威がNATO域内へ接近する際の最前線となる事も意味し、基地には基地防衛隊や基地防空大隊の他、アメリカ軍のP-8A哨戒機部隊なども前方展開することとなります。
■F-16はルーマニアへ
F-35戦闘機の配備により余剰となったノルウェーのF-16は再就職できたようです。

ルーマニア空軍はノルウェー空軍のF-16戦闘機中古機32機を導入するとのこと。東欧地域へのロシア軍事圧力に直面するルーマニア軍はNATOに加盟すると共に機械化部隊のNATO基準への改編などを急いでいますが、MiG-29戦闘機など旧ソ連製戦闘機の老朽化にも悩まされてきました。ここで同じNATO加盟国であるノルウェーの支援を受けることに。

F-16戦闘機中古機32機はノルウェーから3億5400万ユーロで導入し、整備支援や整備器具等は別途1億ユーロで取得します。ノルウェー空軍は現在、F-16戦闘機をF-35戦闘機への機種転換の過渡期にあり、最近では12月9日に追加のF-35が到着しています。ルーマニア空軍は確実に運用可能なF-16戦闘機を新造よりも遥かに安価に取得できるようです。

黒海沿岸に位置するルーマニアはロシア軍の直接の圧力は今でこそ大きくはありませんが、2021年後半から緊迫度合いを増すウクライナ情勢が今後ロシアの圧力増大に対応しきれない場合には、ロシアが武力併合したクリミア半島からのロシア軍による黒海沿岸への圧力が増大するのも必至とみられ、ルーマニア空軍戦闘機整備は焦眉の課題となっていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)