北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二二,再論-広域師団論:即応機動連隊-遠征機動連隊-装甲機動連隊-沿岸特科連隊

2022-01-03 20:22:32 | 北大路機関特別企画
■再論-広域師団論
 広域師団というかつての北大路機関連載は55回を掲載した後に即応機動連隊という新しい編成が実際に部隊改編され、理論再構築をしている最中です。

 広域師団の理念は現役部隊は全て機動運用部隊へ、有事の際には地域配備部隊と機動運用部隊を分けず、そもそも分離する運用は有事における遊兵化そのもの、という視点から着想しています。もちろん従来型陸上戦闘以外に備える、03式中距離地対空誘導弾と12式地対艦誘導弾に普通科中隊と施設隊を加えた沿岸特科連隊のような部隊も必要なのですが。

 即応機動連隊は、一説には部内研究でロシア軍の自動車化歩兵旅団が相手の場合は短時間で壊滅的な被害を受けたとの話も側聞しますが、非常に研究された部隊です。考えれば旅団相手に連隊が壊滅するのは、某普通科連隊戦闘団が重装備の混成団を相手に対抗訓練に臨み大損害の判定を受けた点に重なるものでして、寧ろ連隊の数を揃える論拠とできます。

 機動戦闘車隊は連隊隷下の大隊結節、その編成は3両編成の戦闘小隊を基幹とする縮小中隊2個という20両程度の編成ですが、現在の第3戦車大隊や第10戦車大隊の2個中隊編成よりも更に小型ながら、一応体裁は保っている編成です。これを本論では、戦車隊に置き換えたものを装甲機動連隊、対舟艇対戦車隊に置き換えれば遠征機動連隊、とすべきだ。

 装甲機動連隊は普通科部隊に戦車隊と火力支援中隊を充てる編成、一個単体で敵戦車部隊と激突させるには戦車20両というものは如何にも頼りないものですが、装甲機動旅団は3個装甲機動連隊と偵察部隊を基幹とする編成で完結するならば、旅団全体の戦車は60両を越え、普通科部隊の装甲化を進めればいまの中国の重型合成旅団にも劣らぬ編成でしょう。

 偵察戦闘連隊と3個機能別機動連隊、旅団はこの4個連隊と高射隊及び施設隊と通信隊に後方支援隊を基幹とする4100名規模、航空部隊は必要に応じ上級部隊より派遣隊を受ける。施設隊は機動運用を念頭に方面施設団を方面施設隊に縮小し、引き抜いて旅団施設隊とする。高射隊は指揮情報中隊と高射中隊を基幹とし、巡航ミサイル対処など当たる編成です。

 連隊の基幹となる普通科中隊ですが、これを増強改編して2個普通科大隊に強化すべきとは思う。一例として380名基幹の空挺大隊などは、大隊本部に3個普通科中隊をおいています。大隊本部は通信小隊と対戦車小隊に情報小隊を含み、普通科中隊は対戦車火力を01式軽対戦車誘導弾に留め、しかし独自の81mm迫撃砲をもつ迫撃砲小隊を置く編成を採る。

 普通科大隊ですが、空挺型の3個普通科中隊基幹ではなく、本州の戦車大隊型の2個中隊基幹とすれば人員規模を280名とでき、これは現状の師団普通科中隊の四割り増し程度の増強中隊に過ぎませんが、大隊編成としては一応体裁を保てる編成です。そして2個大隊を現役大隊とし、更に即応予備自衛官主体の第3大隊を置けば、留守部隊とできます。

 大隊。戦車隊も機動戦闘車隊も2個中隊基幹ですので連隊は2個大隊機動群を編成可能となります。ただ、第3大隊の指揮を全て即応予備自衛官に担当させられるのか、戦車隊や機動戦闘車隊を7両の3個准中隊運用とすれば、戦車隊長隷下に各大隊情報小隊を引き抜いて騎兵中隊のような運用が可能なのではないか等、まだまだ研究の余地があると思う。

 普通科連隊と機動連隊の複合化、これによる現役部隊すべての機動運用。大隊を連隊隷下に置く論拠はまさに此処です。つまり、隊区を持ち防衛警備災害派遣にあたる普通科連隊は機動連隊の役割を担う一方、地域警備、駐屯地をカラにせず即応予備自衛官部隊に移管するという運用を採るならば、心おきなく防衛出動や災害派遣に全力投入可能となります。

 即応予備自衛官、この部隊を二線級と誤解して演習場を見学しますと無知を曝します、実は現役部隊の支援車両が泥濘や積雪で行動不能となるところを、即応予備自衛官部隊が訓練指導のように救助する様子を一度ならずみる機会がありまして、考えれば即自部隊はベテラン揃い、しかも短期集中訓練を行う実は非常に高練度を備えた部隊でもあるのですね。

 師団全体で旅団だけでも1万2300名規模、ここに特科連隊と師団直轄部隊を加えれば1万5500名規模となり、師団旅団人員だけで6万2000名が必要となります。ただ、方面施設の管理替えや高射部隊の編入と駐屯地業務の民営化などで、陸上自衛隊全体では現役人員を10万名に抑え、現在よりも人員を縮小できる見通しで、その分の装備を強化可能です。

 広域師団。戦車300両体制や機動戦闘車200両の量産計画と減り続ける対戦車ヘリコプターという前提を元に、最低限装甲戦闘車や装甲車両の増勢が必要という視点を加味しましたが、戦車定数の枠内とはいえ、実質全ての戦車大隊を廃止するかなりラジカルな改編案であることは承知しています、ただ、これくらいの改編をしなければ体裁を保てないようにもおもうのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二二,再論-広域師団論:五方面隊下機能別旅団基幹の四個師団体制を目指せ!

2022-01-03 14:10:32 | 北大路機関特別企画
■再論-広域師団論
 新年防衛論集について本日は陸上防衛に関する一視点を再論してみたいと思います。

 師団というものを大きく再編すべきではないか。これは広域師団構想として、Weblog北大路機関草創期からの一つの主題ですが、外交防衛と安全保障環境の変容とともに必要な防衛力というものもまた変容していることを、やはり踏まえておかねばなりません。一方で、戦車装甲車始め、地上戦力は戦わずしての抑止力ではもっとも合理的に機能するものです。

 合理的に機能するというのは、陸上戦力が世界一般にもっとも想像しやすい軍事力の具現化であり、これが陸上で待ちかまえているという事実だけでも、軍事科学的にはシーレーン遮断やミサイルという選択肢がある場合であったとしても社会科学的には国民全般の共通認識として、自国防衛は盤石という認識を価値観として共有させやすいものがあります。

 広域師団。もともとは少数の大型師団へ自衛隊師団を再編するという主眼の研究でしたが、欧州各国をみますと1990年代から2010年代前半にかけての陸軍再編による師団の旅団化は2010年代後半より、旅団を基幹とした大型師団への再編という新しい変革を完了しようとしています。フランスとドイツやイギリスにイタリアなどは方向性では2個師団基幹へ。

 日本列島の大きさは、欧州地図にスライドさせますと北方の稚内を北欧のコペンハーゲンに充てるならば日本列島はちょうだいであり、南西の波照間は北アフリカのアルジェあたりに来るという、まさに日本列島は欧州大陸と地中海に匹敵する長さを有しています。すると欧州なみに2個師団では守り得ませんが、現状の9個師団にも規模として無理がある。

 4個広域師団という体制がもっとも合理的ではないか、旭川に北海道を守る第2機甲師団、練馬に首都圏と東日本を守る第1広域師団、千僧に京阪神と四国西日本を守る第3広域師団、福岡に九州と南西諸島を守る第4広域師団、この4個師団が最適で、加えて地域司令部や地域防衛行政拠点として、札幌と仙台に朝霞と伊丹と健軍に方面総監部を置く構図で。

 広域師団は、司令部機能を充実させるために新しい司令部を置くのではなく、第2師団と第1師団及び第3師団と第4師団を司令部機構を残し、師団管内の隊区は隣接する師団や旅団に編入させ、広域師団司令部とする、隊区の移管は方面混成団創設などで実例がありますし、陸上自衛隊は防衛行政面で幹部が不足しており、こうした再編は必要不可欠だ。

 旅団を主体とする。従来過去に議論した広域師団構想では、航空機動旅団と装甲機動旅団という機能別旅団編成を提案していますが、即応機動連隊という自衛隊の新しい試みは、より深層部分で防衛力整備へ自衛隊が大鉈を振るう覚悟を具現化させたものでした。従って、本論でも装甲機動連隊や遠征機動連隊といった改編への覚悟に応える案を提示したい。

 機能別旅団編成として、即応機動連隊を基幹とした即応機動旅団、戦車隊を有する装甲機動連隊を基幹とした装甲機動旅団、また軽量軽快な高機動車と対舟艇対戦車隊を組み合わせた遠征機動連隊を基幹とした遠征機動旅団を置き、現状の一個即応機動連隊に旅団重戦力を総取させる息苦しい編成から、難しいのだが複数の即応機動連隊基幹の旅団へ改める。

 第2機甲師団は隷下に第5装甲機動旅団と第7装甲機動旅団及び第11遠征機動旅団を置き、ヘリコプターは第2ヘリコプター隊に集約運用し特科部隊も第2特科連隊に集約、特科連隊隷下に第5特科隊と第7特科隊及び第11特科隊を置く。旭川と東千歳と真駒内の旅団を隷下に有し、北海道というロシア近傍の立地から戦車部隊を重視する編成とする私案です。

 第1広域師団は隷下に第6即応機動旅団と第9装甲機動旅団及び第12遠征機動旅団を置く、東部方面隊と東北方面隊、そして第1特科連隊隷下に3個特科隊を置く、また第2特科連隊も同様に全般支援大隊として現在は方面隊が装備しているMLRSも広域師団隷下に編入してしまう。MLRSはATACMSと後継の戦術ミサイルを運用可能で、全般支援可能です。

 第3広域師団は隷下に第10装甲機動旅団と第13遠征機動旅団に第14即応機動旅団、一個師団で中部方面隊管内全域を担当し、また現在の第1師団一部管区も引き継ぐ。これにより管内に海上自衛隊の舞鶴基地と呉基地及び横須賀基地、航空自衛隊の輸送機部隊の置かれる美保基地と小牧基地があり、恰も旧軍の広島第五師団並の緊急展開部隊として扱う。

 第4広域師団は隷下に第8装甲機動旅団、第15遠征機動旅団、水陸機動団を置く。水陸機動団には現在第8師団の隷下にある第42即応機動連隊を編入させ、海岸堡確保への重戦力を補完させる。広域師団は管区内での有事に際し初動部隊を果たし、同時に全国の広域師団は隊区警備を即応予備自衛官に移管し、全力で増援へ向かう。こうした理想の案です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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