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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ラファール-アラブ首長国連邦&クロアチア輸出と米欧機激突のカナダF-X選定

2022-01-18 20:15:18 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本ではF-2後継機開発が開始されるのですが世界の戦闘機市場はこうした状況となっています。

 アラブ首長国連邦はラファール戦闘機80機の取得契約に署名しました。フランスのマクロン大統領とアラブ首長国連邦のシェイクモハメッドベンザイードアルナヒャネ王子は、両国との長い防衛協力関係とともに、45年に登るフランス製ミラージュ戦闘機の実績に鑑み、新戦闘機にミラージュ戦闘機と同じダッソー社製ラファールを選定したとしています。

 ラファールF4,今回アラブ首長国連邦空軍が採用したラファールはフランス九軍以外では初の海外供与となる最新型のラファールF4となります。また併せてアラブ首長国連邦空軍が運用するミラージュ2000の中で近代化に対応するミラージュ2000-9近代化改修についても、2年前から着手されており、今回のラファール導入にあわせて継続されるとのこと。

 ミラージュ2000戦闘機はラファール戦闘機が開発された後にも順調な輸出を重ねていましたが、これが逆にラファール戦闘機が2010年代まで中々輸出契約が成立しない状況が続いていました。しかし、これら輸出されたミラージュ2000戦闘機の老朽化と共にラファール戦闘機はまさに遅咲きのかたちで、昨今輸出契約が順調に軌道に乗り始めている印象です。
■ラファールクロアチアへ
 クロアチアへのラファール輸出は遂に正式契約となりましたが顛末は興味深い。

 クロアチア政府はフランスからのラファール戦闘機導入計画を最終的に決定しました。これはクロアチアのアンドレイプレンコヴィッチ首相がフランスのマクロン大統領とともに最終合意に合意したもので、ダッソー社のエリックトラピエCEOがクロアチア首都ザグレブを訪問、クロアチアのマリオマノジッチ国防大臣との間で最終契約書に署名しました。

 クロアチア空軍が導入するラファール戦闘機は12機となり、訓練支援も行われます。これは当初フランスが、近代化改修費用を支払うのであれば原型となる中古の旧型ラファール戦闘機を無償譲渡するという、一見安価な案の提示に始ります。これは改良を断念すれば無償で戦闘機、ではなく改良費用と初期のラファールの抱き合わせ詳報というものです。

 クロアチアとフランスの交渉は続いて、比較的新しいラファールF3をクロアチアが導入する際には、旧式化したラファールを中古で無償譲渡するという提案となり、また最新型のラファールF4の売却など二転三転しました。ただ、ラファールのどれかを取得する交渉の口実に無償提供が端緒を築いた事も確かで、フランスの強かな交渉姿勢が垣間見えます。
■カナダ次期戦闘機計画
 カナダの次期戦闘機計画は米国製と欧州製の一騎打ちとなりました。

 カナダ空軍は次期戦闘機FFCP計画において最終選考にサーブ社とロッキード社を選定しました。サーブ社が提案している機種はJAS-39グリペンE,ロッキード社が提案している機体はF-35戦闘機です。この二機種とは第4.5世代戦闘機として最も安価な自由主義圏の戦闘機と、新進気鋭の第五世代ステルス戦闘機の定番が並んでいる構図といえましょう。

 FFCP計画では過去既にボーイング社のF/A-18E/Fスーパーホーネットに決定していますが、カナダ政府の国防政策の転換とF/A-18E/Fスーパーホーネットの取得費用見積もりが当初見積もりを大幅に超過した為、白紙撤回された過去があります。しかし中古のF/A-18C戦闘機など幾つか選択肢を検討したものの条件に合う機体が無く、再検討となっています。

 カナダ政府は競争入札を行う一方で、第4.5世代戦闘機のJAS-39と第五世代戦闘機のF-35という世代の異なる機種を単純に費用で比較できないとの立場も示しており、競合対話を二社との間で実施し、最終的に機種を決定したいとしています。カナダ軍は次期戦闘機の機種選定を2022年にも完了し、早ければ2025年に初号機を受領開始したい方針です。
■さらばレガシーホーネット
 オーストラリアでは一つの時代が終わりましたがつい最近までファントムが現役だった日本としては複雑な印象ですね。

 オーストラリア空軍はレガシーホーネットの運用を完了しました。オーストラリア空軍は当時のマクダネルダグラス社よりF/A-18A/B戦闘攻撃機を採用しましたが、初号機は1985年5月17日にアメリカ本土より実に15時間という長時間を用い、太平洋を戦闘機でフェリーするという離れ業を成し遂げた事で戦闘機の戦略展開に歴史を残しています。

 F/A-18A/B戦闘攻撃機のオーストラリア軍での運用は、ここから実に35年間に及びましたが、遂に11月29日、最後の機体はニューサウスウェールズ州のウィリアムタウン空軍基地において運用を終了しました。退役し基点と共にラストフライトを実施しています。なお、オーストラリア空軍では拡大改良型の最新のF/A-18E/F戦闘攻撃機を運用しています。

 F/A-18A/B戦闘攻撃機、オーストラリア空軍が運用した機体については一部をカナダ空軍が中古戦闘機として取得する計画がありました。これは一見新造機よりも安価であり、オーストラリア軍も次の戦闘機導入に際しての予算面の節約に寄与すると思われましたが、老朽化は維持整備費用の増大と予備部品確保の課題が大きく、こちらは実現していません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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