CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】棺に跨がる

2016-02-01 21:21:58 | 読書感想文とか読み物レビウー
棺に跨がる  作:西村 賢太

久しぶりに氏の小説を読みました
ちょっと前に刊行されている分ではありますが、
私、このシリーズで、いわゆる秋恵ものというジャンルのそれ
初めて読んだのでありました

内容は、いつものとおりうらぶれているわけですが、
毛色が違うというか、なんだろう、新鮮だと思ったのは
この同棲相手である秋恵がいるところで、
ゲス野郎である貫太の視点から、身近な女性というものを
ありあり描いているというのが、なんというか
凄く面白くて、
実に、勝手なものいいと、都合のよい解釈と甘えが
存分に描かれていて、大満足でありました
なんだろうな、やっぱりどこか、
貫太に共感を催してしまうのである
だから結婚できないのか

とはいえ、ちょっと度が過ぎる暴力から始まり、
その関係がはらはらと砕けていく様を描いているので、
ぜんぜん読み心地がよいわけもないのですけども、
なぜだか、陰惨な気持ちになるではなく、
ただただ、手前勝手な男の抗弁と、情けない様を見るという
そういう読書だったわけですが、
それでいながら、女性を観察する弁が、
これまた、独特というか、言いえぬ魅力がありまして、
この、身勝手に母性というか、神性を高めていくような言い訳が
素晴らしくよろしく、まさに、
この崇めるという行為が、相手をくさするではないが、
より身勝手さが募るという具合の
掛け違いが、なんというか、もう、他人とは思えなくて
のめりこんでしまうのでありました

そんなわけで、話の筋はとてもわかりやすく、
苦闘というか、無駄なあがきを続ける男を見ているだけと
そんな具合だったわけですが、
それはおいといて、没後弟子騒動のほうは、
ちょっと本当にどうかするほど凄いなと、
やっぱりここに感動というか、感心してしまうのでありました
というか、この生き方もひとつ
羨ましいではないが、憧れるような魅力があるのです
ひとつ、何かを成そうと願い、
それに邁進し、本当にわき目も振らないというのは、
なかなかできることじゃないと、
たった一つ、一本あるだけで、憎めないような気になってしまうのが
このシリーズというか、氏の小説の魅力だなと
改めて堪能して思い知ったのでありましたとさ

こんだけ褒めてるけど、本当、合わない人には
まったく面白くない本だろうなとも思うのであります