カイジ―賭博黙示録 (1) (ヤンマガKC (608)) 福本 伸行 講談社 このアイテムの詳細を見る |
漫画のお話でございます。
ネタバレはしていないつもりでございます。映画の予告編に映っている程度の言葉はあります。
ある時まで、ワタクシは子供に
「何かお薦めの面白い本があったら、私にも貸してね。」と、まるで理解がある親を演じつつ(?)、その実態は箱根のあらため婆よろしく検閲を入れていたのでございます(あらためば婆は検閲はしないけど)
と言うのは、もちろん冗談でございます。彼らの本を読むのはどちらかといえば子供との共有部分確保、または・・・探りだったのでしょうか、やっぱり。
彼らはいったい何を見たり読んだりして、何を考えているんだろうかと・・・
そして別の言葉で言うと、やっぱり「検閲」?
だからと言って、だめだしを出した事はほとんどありませんが、敢て言えば「サイコ」と言う漫画だけは、中学生だったルート君には見せない方が良いと忠告したことがあったような。いわゆる漫画的R‐15と言うやつですね。
それである日貸してくれたのが、この漫画。タイトルからして、不健全じゃないですか。
大丈夫かいなと、読んでみたわけです。
カイジって働かないし、考えないし、性格悪いし、友人いないし・・・
本当に最悪。最悪なのはカイジだけではなくて、その周りにいる人たちも、ひとりとして普通の人なんか出てきません。みんなろくでなし。
要するにカイジワールドなんですね。セレブにはセレブワールドがあって、普通に生きる庶民にはその庶民ワールドが、あるというもの。
例えば私の友人の中には、億単位の不動産を持っていたりする金持ちがいるかと思えば、かたや破産しかかっている人もいます。でも私と同じ庶民ワールドの仲間です。同じ発想、同じ金銭感覚、同じ常識を持ち合わせているからです。
カイジワールドの中心人物カイジは、親としては最もなって欲しくない人です。
やっぱり、大丈夫かいなと読み進めたのでした。
でもお話はどんどん面白くなっていきます。
ジャングルクルーズが・・、じゃなかった、ギャンブルクルーズがじゃんけんクルーズ。
「賭博黙示録」なんて書いてあるから、何が出てくるのかと思ったら、最初に出てくるのは「じゃんけん」なんですよね。
そう言えば、ラッタ君は
「だいの大人達が大真面目に船に乗ってじゃんけんを遣っている漫画。」と言って笑いながら貸してくれたのでした。
そのじゃんけんが面白いんですよね~。
また横道ですが、「じゃんけん」には単純ながら夢中になれる何かの魔力があるような気もします。一年に二回の子どもたちのためのパーティでは、必ず「じゃんけんゲーム」をしてきましたが、興奮の渦でした。中には毎年泣く子もいて・・・
はぁ~、やれやれ。
起死回生の勝負が「じゃんけん」って、発想が凄くないですか?
でも、私が「この漫画は大丈夫かしら」と言う懸念から脱したのは、鉄骨渡りのパートの時でした。
いや、むしろこの漫画は読んでもらいたいと思いました。
鉄骨の上で泣き叫ぶ男達の、心の底からの後悔の声を聞きたまえと、私は思ってしまいました。
社会の底辺で生きる者と言うと、なんとなく社会の矛盾や不運に流された弱者、または被害者であるかのような響きがないですか。でも彼らは自らの心の弱さ、自堕落さでそこにたどり着いた者達。
彼らの「やっと分かった。今までの俺は~・・・」「今度こそ・・・」と言う叫び。
人はいつからだってやり直せる・・・・。いやいやいや、そういう漫画じゃないんですよ。辛口な展開です。
それゆえ、本当の敵の大きさと許せない思いに、心が揺さぶられるのです。
たぶんですが、鉄骨渡りの辺りでは、私はその敵側の人間よろしく、上から目線で彼らを見ていたのだと思います。ゆえに彼らの後悔の叫びも、そういう人生にならない為の楔として、良いことを言わせているなと感心していたのだと思うのです。
でも非人道的な敵の前に、いつしかカイジを応援し、ふと気が付けばカイジワールドの住人に取り込まれてしまっていたのでした。
この漫画が凄い人気を誇っているのが分かります。
ところで私は気の弱い人間なのでございます。極端にハラハラドキドキさせられるものは苦手です。実際にはやりませんが、心の中ではドキドキしすぎて手もみをしてしまう、立ったり座ったりしてしまう、そんな漫画なんですよね。
我が家はコミック派で新作が出ると買ってくるのですが、私、初めてラッタ君に頼みました。
「『カイジ』は何とか話が落ち着くまで買わないで、なるようになったところで大人買いしてくれない?心臓に悪いから。」って。
だけど漫画の人気がある限り、主人公のカイジは大変な目に遭いながらも、懲りない男でい続けなければならないんですよね。ちょっと気の毒ですが、そうやって本当の敵に近づいて行くのかもしれません。実は我が家では、私の発言がいけなかったのか、パチンコ編までしか知りません。どうも彼らは(子供達)立ち読み派に転じてしまったみたいで、その先は知りません。
ですが、カイジワールドに取り込まれた私には、カイジの周りにいる者もみんなろくでなしとは、もう言えません。
支えあい、庇いあい、涙し、笑いあう、いつしかそんな者達が、彼の周りにはいたからです。
女性の皆様、食わず嫌いなしでたまにはこういう本も結構面白いものですよ。そういえば天海祐希さんが、この映画に関して「男が分かる作品」と言っていたとか。
それ、言えているかもデス。
本の感想は終わりですが、蛇足です。
映画の「カイジ」はランキング1位になったそうで、藤原君は頑張った甲斐もあるってもんですね。
この映画のキャスティングが決まった時、原作ファンの男性達は、あごの部分で難色を示していた方も多かったような気もします。
でもですね、いきなり書くとこける方もいるかもしれませんが、我が家のラッタ君今は程遠い顔をしていますが、イメージとして藤原竜也君にかぶるものが、親ばかの私にはかつてはあったのですよ。 ところでこのカイジにも、実は、こんな顔はしていませんが、ラッタ君と何かが被る、そんな気がして読んでいました。
と言うことは、カイジ=藤原竜也。
そのキャスティングはいいと思うとずっと前に書きましたが、そんな理由からだったのですよ。
エッ、なあに?
ああ、くだらないって?
だから蛇足って言いましたよね、私