境内の雑草を引き抜きながらくま手でジャリジャリと松葉をかき集めていて、ささやかな菫の花を見つけた。そして、「ケキョ」って! えっ? と思ったっきりだったが、鶯のひと声を耳にした。
春草の中にもわきてむらさきの野辺にすみれのむつましきかな (伴 蒿蹊:江戸後期の人)
「紫野」の春の野辺を描く。紫野は「七野のその一野」で、内野、北野、平野、蓮台野などと並ぶ洛北の野。平安時代は天皇の狩猟の地だったことなど、かつて酒井輝久氏が名所句巡りを連載時に記されていた。今も大徳寺や今宮神社あたりに地名が残っている。
先月の17日に仏師・定朝の墓を訪ねたのも紫野の蓮台寺さんだった。境内には育てているのだろう、たくさんのすみれの花が咲き、まだ冷たい早春の風に花びらをそよがせていたのが思い出される。
江戸前期までの風流な人たちの旅は、歌枕名所を求めてのものだったという。「名所」とは「などころ」と読み、「古歌に歌われている有名な所」のことをいうと酒井氏。
道路標識に「紫野」の表示があるが、こうして古歌を知って楽しむと「紫野の蓮台寺のすみれ」の風趣も増すようだ。
さて、境内のこのすみれ草、抜いたでしょうか…。