京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

学びがいっぱい

2022年01月26日 | 日々の暮らしの中で
洗濯物を外に出して乾き具合もよく、日差しのぬくもり度は大。春の如し、とはいかずとも、その兆しを感じる日だった。午前中は書き物、午後はメモを携え四条通りに面した大垣書店(京都本店)に行く。先日、八条のイオンモール内にある店で下見だけして帰ったので、購入を決めていた。

友人と落ち合って近況の交換。そして、半額出し合うことで成立、二人でこんな本を買ってみた。小川榮太郎著『作家の値うち』。

現役作家100人、主要505作品を、文芸評論家が100点満点で採点している。
「何よりも呆れるのは、そもそも小説としての水準に達していない作品が軒並み権威ある賞を受賞していること」「名を関した賞を安物扱い」などという言葉がある。

『ゴサインタン 神の座』『女たちのジハード』『砂漠の船』『第4の神話』『冬の光』…、これだけ読んでいるのだから私なりの興味を持ったはず。
【筆力は卓越している。なのに小説の設定や構想は文学的リアリティがなさ過ぎて、受け入れがたい。行動の条理を余りにも踏み外した不思議な人間が -脇役を含めて - いつも作品を占める。作品そのものの不条理。それなのに文章は書けている。現代文壇の七不思議】と評す。
娘が読みたくないという理由がわかったような気がした。ずいぶん前だが数冊、不思議な世界観がある作品を読ませてしまった。でも私は、なんか好きなんだ…。

【将来にわたる世界文学の古典となるべく約束されている、数少ない現代日本の作家である】【わかろうと思い、急ぎ通読しようとするより、言葉の呪縛力に身を委ねることだ。そのうねりの中に一度でも入れさえすれば、古井の文学が期待を裏切ることはめったにない】。わかろうとばかり努めたが入り込めずにきた古井由吉作品。結果はわからないが、おっしゃることを念頭に、読み直したいと強く思う。

自分の感性を大事にしたいし、本は読む人によって価値が異なると思っているが、氏の評に学べることは多岐にわたっていっぱい。厳しさの中にあたたかな視点での評価が素晴らしい。その視点もまた学びどころ。興味のある作家から読み始めた。

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2 コメント

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言い訳か? (伊豆の花)
2022-01-28 09:13:00
おはようです。

私は、「視力に問題があるから」という言い訳をして、読書をしなくなりましたが、時折、NHKの番組で読書をした振りをしています。
先日からは「金子みすゞ」に触れています。

大正時代に、一時期、女性が注目されていた時、彼女は見出されて(西城八十だったとか)童謡作家として希望をもったようですが、恩師が選者から離れると認めてくれる人(要は選者の主観に合わなくて)が無くなってしまい、失意のうちに亡くなわれてしまった・・・のだそうですよね。
でも、彼女の作品は、没後百年の現代に於いて、再び受け入れられている・・・素人考えですが、作品の良し悪しは選者が決める事ではなく、読者が共感できるか否かであって、全く個人的な事だと思うのですね。
勿論、売れる本は作家に取っても魅力でしょうが、それを狙った作品は、きっと、人の心に残る物にはならないだろうと思っています。

本を読まない人間の言い訳?ですが・・・
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読書は楽しんで、伊豆の花さん (kei)
2022-01-28 13:51:39
こんにちは。
ちょうど今頃でした。金子みすゞ館々長の講演会に参加しましたが、何年前だったか…。
好きなものもあれば、詩句だけ一人歩きじゃない?と思うものもあります。

作り手の手元を離れますと、かように読み手に委ねられる部分が大きいですよね。
読み手の感受性、読む力が良くも悪くもそこにひとつの評価を生みます。
読んで個人的な体験をして評価する。
その人にとっての作品との出会いは、そこに尽きるのかも知れません。
けれど、読み手の共感や評価だけが「作品」そのものの良しあしを決めるとは思えません。

『・・値打ち』、点数などはとらわれずに読んでいますが、他人の読み方を知り、気づかされ、「個人的な体験」からさらに読みの幅を広げる。
これは読書会での体験と通じます。
それに褒め上手! 短い言葉で的確に。褒める力も養いたい。それには、読む力ですよね。

読書は楽しみたい、それが根底にあります。
同時に、どのような作品にも作者が書こうとしたものが潜むわけで、読み手の感受性が問われると思っています。
読後に、「イマイチようわからんかった」「ああおもしろかった!」「時間ソンした」。多いです。だからこそ…。
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