田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

阿寒湖のマリモはなぜ丸い?

2012-08-11 23:18:58 | 札幌学 & ほっかいどう学
 世界的に見ても阿寒湖のマリモは大きくて丸いことで知られている。今日(11日)北大博物館市民セミナーで専門家から「マリモはなぜ阿寒湖で丸くなるのか」と題してお話を伺うことができた。 

 マリモとは球状のものばかりを云うのではないらしい。
 マリモは真水では成長しないらしい。
 波で動かされることでマリモはよく成長するらしい。

          

 マリモについて20数年にわたって研究をしている釧路市マリモ研究室の若菜勇氏のお話を伺った。
 本日、北大博物館土曜市民セミナーが開催され、「マリモはなぜ阿寒湖で丸くなるのか ~偶然の重なりがもたらす生物の球化現象~」と題しての講座であった。若菜氏はさまざまな側面から科学的にマリモを説明してくれました。それはきわめて科学的であったために、私の理解が十分とは云えないところもある。私が理解した範囲においてレポートするが、それもあるいは正確性を欠くところがあるかもしれないことをお断りしておく。

          
          ※ 講義をする理学博士の若菜勇さんです。

 まず、マリモの個体は球状ではなく細い糸状体をしているものを指し、それらは着生糸状体、浮遊糸状体、集合糸状体とって存在している。その糸状体のものが阿寒湖という特異な環境(偶然のかさなり)において球化していったという。
 マリモの糸状体のものは世界各国、日本全国にさまざまな形で存在しているが、球化するマリモは日本では阿寒湖だけだという。海外ではアイスランドのミーヴァトン湖に見られるという。

 次に、マリモを採集して水道水で栽培しても大きくはならないとのこと。そこで海水を薄めたものにしたところ成長し始めたということだ。このことはマリモの原種が海近くに存在していたことを示すことであり、阿寒湖の湧水には海水に含まれている火山性のミネラルが含まれていることがマリモの成長を促しているという。

 阿寒湖のマリモを観察すると、波で絶えず動かされ、そのことでマリモは絶えず全面で光合成が可能となるばかりでなく、マリモに付着する泥や他の藻などを払拭することができるそうだ。

 阿寒湖は、湖の形、湖底の状態、波動の環境、水源の多様性などマリモの生育には理想的な環境だということだ。マリモが球化し、成長するには適度の光と波動が必要とのことで、阿寒湖のマリモは成長も早く最大で5年で20cmも成長したという観測記録もあるそうだ。

 若菜氏の話を全て理解できたわけではないけれど、阿寒湖の近くに育ち、小さなころから身近な存在だったマリモについて興味深いお話を伺うことができた講座だった。

市民カレッジ 石狩川とともに 後編

2012-07-09 21:38:51 | 札幌学 & ほっかいどう学
 前編で石狩川が洪水に悩まされた歴史について触れたが、その支流である豊平川流域も洪水に悩まされた歴史があった。そして豊平川もまた捷水路工事によって現在のような姿になったことを知った。 

 石狩川流域がその昔幾多の洪水被害に遭ったと前編で触れたが、豊平川流域に広がる札幌市もまた何度も洪水の被害に泣かされた歴史があった。
 市民カレッジ「石狩川とともに」の第三講は「札幌の治水」についてだった。

          
          ※ 今回前後編で使用した写真のうち、唯一自分で撮った写真です。石狩川と豊平川の合流地点です。向こう側の白く覆われているところが石狩川です。

 札幌市は豊平川の扇状地に広がっているが、その下流域は低地で湿地帯であったために何度も洪水の被害に見舞われた。
 そのため札幌市では新川をはじめとして、琴似新川、雁来新川などいつくもの流水路が造成されたそうである。そして豊平川自体も石狩川に流入する新水路が捷水路工事によって造成されていたことをこの講座を受講して初めて知ることができた。
 以前の豊平川と石狩川の合流地点は、現在よりずっと江別側に寄ったところにあったということだ。
 そう云われてみると、私が一年前に石狩川との合流地点から豊平川を遡ったときに「河畔がわりあいスッキリしているなぁ」と感じたのは、人工的に造成された川だったということなのだろうか?

          
          ※ 豊平川を写す代表的な光景といって良いでしょう。

 意外なことを聴くことができた。
 それは豊平川が急流で知られる木曽川や吉野川より上流と下流の高低差が大きく、大変な急流であるということだ。そのため豊平川は川底が流れによって削られる危険があるという。
 豊平川を遡っているとき、川一面にコンクリートの造成物が置かれているところが何カ所か目に付いた。あの造成物は川底が削られるのを防ぐ「床止(とこどめ)」という装置だということを教えられた。

          
          ※ これも札幌市内を流れる豊平川を空撮した一枚です。

 第4講では「未来」をテーマにお話を聴いたが、石狩川、豊平川とも治水対策が進み洪水の被害を受けることも少なくなった。そして石狩川流域は豊かな穀倉地帯になり、豊平川流域は多くの人口を受け入れ大都市へと変貌したが、けっして治水対策が完成したわけではない、と講師の鈴木氏は指摘した。

 それは近年の天候の変化にあるという。
 地球温暖化の影響も受け、雨の降り方などに変化が出てきていると言います。
 そのために新たな対策が求められていると…。

               
          ※ 石狩川が日本海に注ぐ河口部分の図です。図の左側に茨戸川から日本海に注ぐ直線がありますが「石狩放水路」です。洪水の際に非常に役立ったそうです。

 一方、次のようなことも指摘した。
 洪水など自然災害に対しては、ハードの対策ばかりでなく「減災」という考え方も重要であると…。「減災」とは災害時において発生し得る被害を最小化するための取り組み(ダメージコントロール)である。それはハード面だけではなく、ソフト面において日常から災害を最小限に食い止めるための心構えであり、備えだろう。私もそのことが大切ではないかと思う。

          
          ※ 空撮で見る石狩川河口です。私は今年春この先端部分をぐるっと一周しました。

 日本の高度成長期には莫大な予算を投下して、日本国中で国土改造が進められた。しかし、今は予算面からも、自然保護の面からも以前のようなことができる環境にはないと云えるのではないか。
 今現在も国内的に見ると、自然災害での痛ましい事故は絶えないが「減災」の考え方を徹底することによってかなりのケースが未然に防げたのではないかとも思われる。
 「減災」の考え方が地域社会の中により徹底されていくことを望みたいものだ。

 4回にわたった今回の講座は、講師の鈴木英一氏にいわゆる役人臭さがなく、難しい内容を素人にも理解できる程度に噛み砕いて説明していただき、とても楽しく受講することができた。このような講座なら何度でも受講したい。

 これで私は「道民カレッジ」の8単位を取得することができた。(ちなみに札幌学院大学のコミュニティカレッジでは10単位を取得した)

市民カレッジ 石狩川とともに 前編

2012-07-08 23:52:40 | 札幌学 & ほっかいどう学
 久しぶりに市民カレッジの講座を受講した。石狩川の治水の歴史を興味深く受講した。少し時間は経ってしまったが私の記憶に残った講義の要諦を2回に分けてレポートすることにする。 

          
          ※ 石狩川をはじめ北海道内の一級水系を表した図です。

 ちえりあ(札幌市生涯学習センター)で市民カレッジを受講するのは2年ぶりだろうか?
 冬期間に石狩川の支流である豊平川河畔を遡ったり、石狩川河口を歩いていたりしたことから「石狩川」に興味を抱き、久しぶりの受講となった。
 講師は北海道開発局長を歴任し、現在は北大大学院の特任教授を務められる鈴木英一氏だった。氏は北海道の河川行政を担ってきた方で、治水の専門家である。
 講義のテーマは「石狩川とともに ~母なる大河改修の歴史と未来~」と題して、4回にわたっての講座だった。その日程と内容は、

 ◇6月 6日(水) 開拓期の石狩川
 ◇6月13日(水) 石狩川改修の始まりと利水
 ◇6月20日(水) 札幌の治水
 ◇6月27日(水) 石狩川の流域の未来  

 石狩川は講義題にもあるとおり北海道民にとっては「母なる大河」とも称され、その流域人口は320万人を超え、人口比でいうと北海道民の57%が集中しているという文字どおり北海道を代表する河川である。
 その石狩川の流域は開拓期の明治時代、低湿地あるいは泥炭地として幾度も洪水に見舞われる川であった。記録に残っている明治31年の大洪水では112名もの死者を出している。

          
          ※ ちょっと分かりづらいが、捷水路工事前の曲がりくねった石狩川の図です。

 石狩川というと、その曲がりくねった流路をショートカットし、洪水を未然に防ぐために長期間にわたり大規模な工事を施したことで知られている。(このショートカット工法を専門用語で捷水路<しょうすいろ>工事ということを知った)
 講義で提示された以前の石狩川と現在の石狩川ではずいぶんと姿を変えている。
 資料によると、捷水路工事が行われる以前は364kmあった石狩川は捷水路工事によって268kmと実に100km近く短縮されたということである。(それでもまだ日本で第3位の大河である)

 私が所属する団体が「野外散策」と称して8月下旬に月形町の皆楽公園へ行くことになっている。皆楽公園は大きな沼を中心とした素晴らしい公園であるが、この沼もその昔は石狩川の一部だった。石狩川の捷水路工事によって切り離され、今は住民の憩いの場となっているのだが、石狩川の周囲にはこうした沼が多数存在していると聞いている。

          
          ※ 捷水路工事によって石狩川の周囲にはこのような風景が点在しています。

 捷水路工事とともに、周辺流域の排水路工事、用水路工事も実施されることによって大きな田園地帯が生まれることとなった。今現在、周辺流域が豊かな穀倉地帯となっている背景には相当に大規模な河川改良工事が行われていたことを知ることができた。

          
          ※ 図は現在の石狩川水系の図です。          
  しかし、石狩川の改修は今なお続いているということである。(後編へ)


黒松内は生物相的に重要な地域らしい

2012-02-26 20:58:51 | 札幌学 & ほっかいどう学
 黒松内在住の専門家から「黒松内低地帯の生物多様性」についてお話を聴いた。黒松内はブナの原生林の北限として有名だが、それだけではないらしい…。 

 「温暖化ってどんなこと?」というテーマのもと、作家・林心平氏が各界の専門家と対談するシリーズが月一度のペースで開かれているが、2月25日その第5弾が環境プラザ(北区北条8西3丁目 札幌エルプラザ2F)で行われた。

          

 講師は黒松内町の「黒松内町ブナセンター」という博物館的施設で長らく学芸員を務められ、現在町の環境政策に携わっている高橋興世氏であった。
 氏の話の中で、黒松内はブナの原生林の北限であるばかりでなく、黒松内を流れる朱太川には天然のアユが多数生息していること、またカワシンジュガイという清流に棲む珍しい貝も生息しているとのことだった。
 これらは黒松内町が気候的にそうした生物が生息するに適しているという理由だけでなく、地域として自然や環境を護っていこうとしていることの証でもあると、話を聴いていて感じられた。

 ブナの原生林は歴史的に見て、徐々に北進を続けているとの調査結果が出ているとのことだが、そのことと地球温暖化について氏は直接的な言及はされなかった。
 というのは、現在声高に云われている人為的な地球温暖化はせいぜいここ100年くらいのことであり、ブナの原生林の北進は地球が間氷期に入って地球上の温度が徐々に上昇してきた結果であり、1,000年単位での話だからだった。

 林氏が高橋氏に問うた。「高橋氏は地球温暖化をどのように考えられているか」と…。
 高橋氏は「人為的に気温が上昇するのはマズイと思う。ただ、過去の間氷期において地球の気温は今よりもっと高い気温のときがあった。そうしたときにも人間は適応してきたという事実がある」と話された。

          

 生物の生息域の変遷を追う高橋氏のような立場からいう「地球温暖化」とは、地球の氷期・間氷期の周期による温暖化を指すようである。
 私たちが問題視している「地球温暖化」は、せいぜい最近100年間の人為的影響による温暖化を指している。
 同じ「地球温暖化」とは言っても分けて考えるべき問題である、と言われたような気がした。ただ、その人為的な温暖化が生物の棲息に多大な影響を与えていることも一方では事実である。

 作家・林心平が専門家にきく「温暖化ってどんなこと?」もいよいよ次回第6回(3/24)で終了である。第6回のテーマ「地球温暖化による海洋生物の変化」である。海底で今どのような変化が起こっているのか、興味深い。

 ところで、私のブログをチェックしている方の中で子育て中の方がいらっしゃったら紹介したいことがあります。
 それはこの講座のナビゲーターを務めている林氏のお子さん4人が毎回受講していることです。年齢的には上は中学生の娘さんから、小学校高学年の息子さん、小学校低学年の娘さん、一番下の子はおそらく学齢期前ではと思われます。
 その子たちが毎回最前列で話を聴いているのです。話を理解できるはせいぜい上の二人くらいかと思われます。それでも毎回4人の子どもたちは嫌がる様子もなく参加しています。

 このことで林氏とお話したことはありませんが、林氏の思いを想像すると…。
 一つは、お父さんの仕事を子どもたちに直接見せることの効用を考えられているのではと思われます。
 そしてもう一つは、林氏が関心を持っている自然や科学のことについて関心を抱いてほしいという親の願いかな?と思っています。
 さらには社会人が知的関心をもって学ぶ場に早い段階からそうした雰囲気を味わわせようということなのだろうか?

 こうした光景を見ていて、先日のサッカー日本代表のザッケローニ監督の言が思い出された。先日の対アイスランド戦には18歳の高校生をはじめ数人の有望な若い選手が招集された。その際、ザック監督は「試合に出すつもりはない。代表の雰囲気を味わってほしい」旨の発言をされた。
 林氏の子どもに対する思いはザック監督に通ずるものがあるのではないかと想像しています。
 子育て中のパパさん、ママさん、参考になりましたか?

札幌市民の誇り 大通公園

2011-09-15 23:23:25 | 札幌学 & ほっかいどう学
 札幌市民の誰もが集い、そして憩う大通公園…。大都市札幌の都心にあって札幌の発展を見続けてきた大通公園…。その大通公園が誕生して100年を迎えたという。大通公園の来し方を振り返り、未来を考えるシンポジウムを聴いた。

 9月12日、道新ホールにて「大通公園100周年 記念シンポジウム2011」(サブテーマ)~大通、中島、円山~三つの公園の100年とこれから~が開催された。
 実は、大通公園が今年100年を迎えたばかりでなく、円山公園は102年目、中島公園は101年目だそうである。
 シンポジウムは、初めに特別講演としてハードボイルド作家の東直己氏が「都市の緑陰-『コタンの口笛』から平成まで」と題して講演した。
 続いて、東氏も含めて5人が登壇してパネルディスカッションが行われた。

          
          ※ 最近の室内でのイベントはほとんど写真はNGである。開会前のステージを撮った。

 東氏が演題の中に「コタンの口笛」という児童文学書名を入れたのは、「コタンの口笛」には東氏が生まれ育った当時の昭和30年代の札幌の情景が描写されているということが理由だったようだ。その東氏は自らの幼少時代、そしてお子さんが小さな時に大通公園や札幌都心の街角で過ごした思い出を語られた。そうして、子どもにとって楽しく過ごした公園での思い出は一生の宝になると話された。

 パネルディスカッションでは北大名誉教授の小林英嗣氏、専修大北海道短大教授の小林昭裕氏、フリーアナウンサーの野宮範子氏、会社社長の小島神次郎氏、そしてコメンテーターとして東直己氏が登壇して、それぞれの立場から三つの公園を評価し、これからの大通公園をはじめとする三つの公園について提言された。

          
          ※ 入場者に配布された開催要綱と三つの公園の現況を記した小冊子。

 さまざま語られた中で、会場の共感を呼び説得力ある提言の一つとして、大通公園で市民や観光客がゆったりと寛ぐことのできるカフェなどが数多く出店してほしいという提言があった。いろいろと規制があるようであるが、私もこの提言には賛同したい。
 また、札幌市内は意外と緑が少ないという指摘があった。札幌の中心部を全て公園化するというような大胆な提言もあったが、そこまでいかなくとも三つの公園が緑で繋がるような工夫を行政も市民も考えていくべきではないか(それは一人ひとり家庭の庭先からという発想で)といったことが各氏から話された。

 他の都市の実状を私は知る由もないが、私から見ると札幌は緑を大切にし、公園の整備にも積極的に取り組んでいるように見える。そうしたことが全国の都市に伍して「魅力ある都市」全国一に何度も輝いている一因なのではと思っている。
 ただ、大通公園で開催されるイベントがあまりにも多く、公園の本来的な目的である市民や観光客が寛いだり、談笑を楽しむ空間としての役割が制限されているのではないかと感ずる点が少々残念である。


エゾシカは食べるシカない?

2011-09-08 19:43:33 | 札幌学 & ほっかいどう学
 以前は野獣であるエゾシカを食することに賛否両論があったように思っていたが、増えすぎて農林被害額が膨大となるに及んでエゾシカを食材とする考え方がコンセンサスを得てきたようである。 

 エゾシカの農林被害額が50億円を越えたそうだ。
 被害は道東・道北部から道央・道西部に広がっているらしい。
 エゾシカによって植生が破壊され、北海道の生態系が撹乱されてきているそうだ。

 9月4日(日)道新ホールで北海道新聞野生動物基金主催の「シンポジウム エゾシカを考える」に参加してきた。
 シンポジウムは、酪農学園の吉田准教授が「エゾシカ被害の現状と生息実態」と題して基調講演を行い、その後パネルディスカッションに登壇したパネラーの4氏も専門分野についてそれぞれスピーチをした。
そして最後に吉田准教授をコーディネーターとしてパネルディスカッションが行われた。

              

 基調講演で吉田氏は知床半島のスライドを提示して、知床半島の植生がシカが好まない植物だけに覆われてしまった(アメリカオニアザミ、フッキソウ、ハンゴンソウ)と報告した。
 そして平成22年の生息調査で約65万頭のエゾシカが道内に生息していると推定している。特に道西部における生息数の増大が顕著で、過去10年で約3倍に増えているということだ。それに伴い、農林被害額が50億円以上に上ると報告した。
 その他のパネラーのスピーチで印象に残ったのは、北大大学院の近藤教授が日本人は古来から雑食民族であり、野獣も好んで食していたことを話された。また、エゾシカの狩猟に関して「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という概念を紹介され、野生のエゾシカを捕殺するとき苦痛を与えないような捕殺が求められるとした。
 また、釧路短大の岡本准教授はエゾシカ肉を栄養素的に見ると脂肪分が少なく、鉄分などが豊富な非常に有用な食品であると報告した。

          

 今回のシンポジウムを聞いていて、増えすぎたエゾシカを捕殺し、それを食用として利用するということについてはすでにコンセンサスができているように感じられた。
 課題の一つは、例えば年間10万頭を捕殺したとしても食肉として流通させるにはあまりにも少ないということのようだ。
 また、食肉として利用するためには野獣であるがため、食肉として適するか否かの検査体制の構築が求められるが、その整備が難しい状況にあるということだった。

 関係者、そして研究者たちはエゾシカと人間との共生という難しい課題を前にして試行錯誤を続けているようである。
 その間にもエゾシカは増え続けている…。

グローバリズムと北海道経済

2011-08-28 23:04:35 | 札幌学 & ほっかいどう学
 私のブログにはふさわしくないような固いタイトル名である。この度タイトルにあるような講演を聴く機会があったのだが、すっかり老化した我が脳には難解であった。しかし、なんとか聴くことができたのでレポートすることにした。

          

 講師は農業経済学が専門の本間正義氏(東京大学教授)だった。
 本間氏は主張する。グローバル化の進展は、単なる貿易自由化が進むというだけではなく、制度の統一化、競争条件の共通化へと進展するだろう。制度や競争条件を協議するとき、そのネットワークの内にいるべきである。外にあることによって日本の産業がガラパゴス化するリスクは避けなければならない。
 したがって、TPP(環太平洋戦略的経済協定)には参加すべきである、というのが本間氏の主張だった。

 8月27日(土)、小樽商科大学創立100周年記念国際シンポジウムが京王プラザホテルで開催され、参加してきた。
 本間氏の講演はシンポジウムの基調講演として行われたものだった。

          

 本間氏は帯広畜産大学を卒業し、小樽商大で助教授、教授を勤めた経歴を持ち、北海道の経済、特に農業について相当に深く研究された方である。
 賛否が入り混じるこの問題、特に農業関係者からは猛烈な反対論が渦巻くこの問題に対して本間氏は明解に論じてみせた。

 TTP問題は国の食料の確保という問題、あるいは農産業の保護という問題と絡んで、国内的には難しい問題であり、私などの素人が口を挟む問題ではないのかもしれない。
 しかし、本間氏の講演を聴いた感想くらいは述べることを許されるだろう。

 本間氏は道農政部が試算した資料も提示してくれた。
 それによると、TPPに参加した場合北海道の農業産出額は現在のおよそ半分となり、コメ、小麦、てん菜などは壊滅的な打撃を受ける。そして農業経営者の3/4は廃業に追い込まれると道農政部は試算したという。

          

 こうした試算があるにもかかわらず本間氏はTPPの参加を促す。
 その根拠の一つは、試算そのものは関税を突然撤廃した場合の試算であり、実際は10年以上の期間にわたって段階的に撤廃することが認められているという点である。
 根拠の二つめとして、例えTPPに参加しなくとも市場開放要求は繰り返され、関税削減は避けられない趨勢にあるということを根拠として挙げる。
 そして本間氏はこの問題に対して「冷静な議論とマクロ的長期的視点から判断」することを求めている。

 1人の話を聴いただけでこの問題を論ずるつもりはないが、本間氏の明解な解説には頷ける部分も多々あった。
 できれば反対の立場に立つ方からの話も聴いてみたいと思った。

※ 午後の国際シンポジウムの部は、他の講座を受講するために聴くことができなかった。

札幌の西部山麓部は温泉銀座だった!?

2011-05-15 23:37:03 | 札幌学 & ほっかいどう学
 その昔、札幌市街地の西部山麓地帯にはたくさんの温泉施設があって市民の憩いの場になっていたという興味ある史実を伺うことができた。札幌の街にあった温泉盛衰物語である。 

 5月14日(土)北大総合博物館で「土曜市民セミナー」があり参加した。
 今回のセミナーは「札幌の市街地西部山麓にあった温泉」と題して北海道立総合研究機構の地質研究所長の藤本和徳氏が講師を務められた。
 地質に関係する固い話と思いきや、昔の絵図などを用いた地域史のような話で興味深く伺った。

        
        ※ 講義をする地質研究所長の藤本氏です。

 時代は明治から大正・昭和の初めにかけてである。
 札幌の市街地西部に連なる山々の麓に八つもの温泉施設があったということだ。
 まず、手稲山の北東山麓に「瀧の沢温泉」(手稲金山)、「藤の湯」(手稲本町)、「軽川温泉」 (手稲富丘)と三つの温泉があった。
 時代はそれぞれ多少違えども、明治末から大正にかけて開業するもどの温泉も湯量や温度ともかんばしくなく、昭和の初期に廃業を余儀なくされたようである。

 そして荒井山の南麓には「円山温泉」、円山と藻岩山のあいだには「札幌温泉」「界川温泉」「藻岩温泉」「不老閣」と五つの温泉が並んでいたということである。
 この中で最も特徴的なのが「札幌温泉」である。「札幌温泉」はその場で掘削して温泉を湧出させたのではなく、なんと定山渓温泉からパイプラインを使って引湯していたというのである。定山渓から札幌まで約25kmの距離に土管を敷設したというのである。
 そしてさらに、市街地から温泉客を運ぶために市内電車を運行させたという。
 相当の資金を注ぎ込んで大正15年(昭和元年)に開業した温泉営業だったが、経営不振に陥り昭和7年には閉鎖に追い込まれたということである。
 その他の温泉もそれぞれに物語りはあるのだが、それぞれ個人の事業主が夢を抱いて開業したものの長くは続かず閉鎖してしまったということだ。

 なぜ長く続かなかったかというと、先にも記したように温泉自体の湯量や温度の問題とともに、大正7年に定山渓鉄道が開通し、大型の温泉施設が建てられたこと。さらには昭和4年に定山渓鉄道が電化され定山渓-札幌間に一日16往復の電車が通じたことで札幌市民が定山渓を身近に感じられるようになり、湯量豊かな定山渓温泉には太刀打ちできなくなったことが原因だったということだ。

        
        ※ 図では見づらいが、赤丸が現在利用されている温泉です。

 講師の藤本氏によると、現在札幌の市街地では43の温泉井が利用されているということである。これは現在市内各所で温泉を謳って営業している施設を指すのだろう。
 ということは、明治から昭和の初めにかけて札幌市街に起こった温泉ブームが形を変えて再び静かなブームを呼んでいるということなのかもしれない。
 いや~。日本人は昔から今にいたるまで温泉が好きなんですね~。

春の花を探して…

2011-04-23 22:33:33 | 札幌学 & ほっかいどう学
 野幌森林公園にはまだ雪が残っていたが、公園内の木々や野草は春の訪れを感じているかのように芽吹きの準備を整えていた。そして春の早い福寿草やフキノトウなどはもう春真っ盛りという感じだった。

        
        ※ 参加者が70名を超えた観察会の開会式の様子です。               
  
 野幌森林公園の自然ふれあい交流館と北海道ボランティア・レンジャー協議会が主催する「春の花を見つけよう」という自然観察会が4月21日(木)にあり、友人を誘って参加してきた。

        
        ※ 公園内はご覧のようにまだ雪が残っていました。参加
         者は樹上の鳥の姿を追っているようです。      

 シニア層にアウトドア志向が盛んになっていることを反映してか、参加者が70人を超える盛況だった。
 観察会は7人に1人のボランティアガイドが付くという、理想的な形でスタートした。
 我々に付いたガイドはけっしてベテランではなかったけれど、熱心にガイドを務めてくれて気持ちよく観察会に参加することができた。

        
        ※ 春の使者「ミズバショウ」もまだこれからといった感じです。

 講座名は「春の花を見つけよう」だったが、花としては福寿草、フキノトウ、ミズバショウくらいが確認できた程度で、どちらといえば春を目前にして膨らんだ木の芽を観察するほうが多かった観察会だった。
 木や草花の名前を憶えるのがまったく苦手な私はほとんどその名を憶えることができなかったが、木や草花には意外なほど雄花(株)、雌花(株)に分かれていることをガイドから教えられた。
 また、参加者の中にはこうした観察会に数多く参加している人が多いようで、ガイドに積極的に問いかけ知識を増やしている人も目立った。

        
     ※ フキノトウの雄花、雌花を知っていますか?こちらが「雌花」だそうです。

        
        ※ そしてこちらが「雄花」その違いが分かりますか?

 植物の観察とともに、今回は木の葉がまだ出ていなかったこともあり、鳥の姿を数多く確認することができた。特にゲラの仲間が目立ち、コゲラ、ヤマゲラ、アカゲラを確認することができた。ガイドから「シマエナガ」という鳥を教えてもらったが、その姿はとても小さくてまるでハチドリのような可愛らしかった。

        
      ※ こうした木の芽が膨らんでいるのをたくさん説明されました。
       ちなみにこの芽は「エゾニワトコ」の花の芽です。         

 自然観察会に参加したとき、いつも生物の名を憶えることができずに落ち込むのだが、そのことはもうあきらめている。
 だから、今回に関して言えば体全体で森の春の息吹を感ずることができたことで「ヨシ」としたいと思っている。

        
        ※ 最後の写真は春の花の定番「福寿草」です。


北海道の農業ビジネス最前線!

2011-03-27 18:53:16 | 札幌学 & ほっかいどう学
 テレビでお馴染みのキャスター佐藤のりゆき氏がコーディネーターを務める北大の創成研究機構主催のシンポジウムに参加し、北海道の農業の現状について学んできました。

 北大の創成研究機構とは、これまで分野別、部局別に進められていた研究を横断的に組織替えすることによって、異分野研究者交流を進め新しい知を創造すること。併せて大学と地域社会との連携協力することをねらいとして平成21年4月に発足した組織とのことである。
 その発足に当たってキャスターの佐藤のりゆき氏が、大学と地域社会(市民)との橋渡し役として客員教授に就任したことは知られていた。

        
        ※ 「理系人間・文系人間」と題してレクチャーする佐藤のりゆき氏です。       

 その佐藤氏をコーディネーターとして3月23日(水)、北大学術交流センターで「のりさんと科学を語ろう!」と題するシンポジウムが開催された。
 シンポジウムは佐藤氏が「理系人間・文系人間」と題してレクチャーした後、4氏がそれぞれの専門の立場から農業ビジネスの現状についてのレクチャーがあり、その後その方々のトークセッションがもたれた。
 4氏のレクチャーのタイトル名は、
◇「北海道は農業で生き残る」  北海道農業研究センター   信濃卓郎氏
◇「工学で食のブランド化」   北大工学センター      船水尚行氏
◇「農業をビジネスにする」   農業コンサルタント     鈴木善人氏
◇「おいしくたのしい農業観光!」北大観光学高等研究センター 敷田麻実氏
というものだった。

        
        ※ 登壇した5氏によるトークセッションの様子です。
 
 レクチャーやトークセッションを聴いて私の正直な思いは「噛み合わなかったなぁ」という印象だった。佐藤氏がなんとか繋ごうと試みていたのだが…。
 その中で私は船水氏のレクチャーが興味深かった。氏のレクチャーの内容を報告する。
 氏の言う「食のブランド化」とは、①健康に良い作物、②安全な作物、③きれいな空気・水と良い土壌(環境)④農家のみんなが羨む自然と共生した生活、だという。
 そして農家の人が羨む生活とは、①廃棄物、排水を再利用する農業、②CO2をなるべく出さない農業、③自然の仕組みを利用する農業だとし、そこに工学が貢献できるところがあるという。

        
        ※ 船水氏がレクチャーした循環型農業のモデル図です。

 私にとって新しい知見だったが、農業にとって重要な肥料である窒素とリンが私たちが排出する糞便と尿に含まれているという。この糞便と尿から窒素とリンを効率的に取り出す技術は工学が貢献する分野であるという。
 リンは既に世界的にも不足してきているらしいが、これを工学的に処理し取り出す技術を開発することで船水氏の言う「食のブランド化」に近づくという。
 新たな視点を与えられた思いだった。