何にでも飛びつく田舎オヤジである。今度は北広島市まで遠征し、漫談家出身ながら今や名優の誉れも高い泉ピン子の朗読劇を観に(聴きに)行ってきた。舞台は期待どおり、プロフェッショナルな舞台を披露してくれた。
11月18日(土)夕刻、北広島市芸術文化ホールで泉ピン子、村田雄浩が出演する朗読劇「すぐ死ぬんだから」の舞台を鑑賞した。
私の鑑賞動機は不純だった。その動機とは、まず遠く昭和50(1975)年当時、テレビで「テレビ三面記事ウィークエンダー」というあまり上品とはいえない番組で、ハチャメチャなリポートをして一躍人気者となり、その後は「おしん」ゃ「渡る世間は鬼ばかり」などでイメージを変える名演技を披露した泉ピン子さんの生の姿を見てみたいという単純な理由だった。その上、入場料が格安(2,000円)だったことも後押ししてくれた。
入場料が格安だったことは会場内で、「この舞台は宝くじ文化公演の支援を受けています」とアナウンスしていたから、格安が可能となったようで、前売券は完売の状況だったようだ。私の席は完売直前だったとみえ、ホール後方の2階席だった…。
そんな不純な理由だから、私は公演のほうも題名のように「すぐ死ぬんだから」とばかりに、泉ピン子が村田雄浩を相手に観客の笑いをとるような話をするものだと思っていたところがあった。したがって、何の準備もせずに当日を迎えた。
ところがパンフレットをよく見ると、内館牧子原作の同名小説を朗読するというではないか!これは大失敗!予め原作を読んでおくべきだったと…。
大筋のストーリーは、泉ピン子の実年齢と同じ76歳になる婦人が会社経営をしていた夫に先立たれてしまう。夫とは夫唱婦随の生活を送ったと思っていたところに、実は夫は40数年にわたって妾さんをつくっていたことが死後に判明した。そこから妾さんに対する反撃の様がストーリーのメインとなって展開されるのだった…。
泉ピン子、村田雄浩の二人だけの朗読劇だったから、二人とも何役もこなさなければならず、聴いている方はその解釈が大変だった。私の席は後方だったこともあり、時には彦妙なニュアンスが聴き取れないこともしばしばで、予め原作にあたっていないことを悔いる私だった。
それでも、二人はさすがにプロフェッショナル、原作の面白さを十分に伝えてくれた。特に村田雄浩さんのキレの良い活舌が心地よかった。
傑作は、舞台がはねた後だった。幕が一度下りた後に再び顔を見せた二人だったが、ここからはもう泉ピン子の一人舞台だった。適度の毒舌を織り交ぜながら、観客を沸かせ続けた。その時間は20分近くにもわたったのではなかったろうか?その中で、一般の演劇と違って身軽に移動できる朗読劇をこれからも全国を回ってやっていきたいと力強く語っていた。
彼女の末永い活躍を祈りたいと思う。