「ワンコイン(500円)で、こんな素晴らしいピアノコンサートを聴けるとは!?」というのが正直な感想だった。主役のピアニスト岩田真由美さんは相当にキャリアの持ち主である。彼女の紡ぎ出す音色は明らかに音の深みを感ずることができた。
昨夜(4月12日)、札幌時計台において「時計台ワンコインコンサートvol.2」が開催され参加した。コンサートは道銀文化財団の「道銀芸術文化助成事業」の後援を受けてのものだったようだ…。
出演されたのは、ピアノデュオの岩田真由美さんと山川充さんの「マ・コルド・ダルク」とヤングアーティストとしてピアノの畠山伶寧さん、ソプラノの畠山瑠那さんの姉妹だった。
岩田さんは東京芸大付属の音楽高校、そして東京芸大器楽科ピアノ専攻を卒業し、ヨーロッパで研鑽を積み、現在は岩見沢市在住で札幌市を中心に音楽活動をしながら、教育大岩見沢校で非常勤講師として後進の指導にも当たっておられるという。
一方、デュオを組む山川充さんも東京音大ピアノ科を卒業後、ヨーロッパを中心に各地で演奏活動をされたキャリアを持つピアニストである。
畠山伶寧さん、畠山瑠那さんの姉妹は二人とも教育大岩見沢校の音楽専攻で伶寧さんは卒業してプロを目指し、瑠那さんは在学中ということでいわば岩田さんの教え子に当たる方々である。
この日のコンサートでは「フランス音楽の夕べ」と題して、フランスを代表する作曲家ガブリエル・フォーレ(1845-1924)を特集した内容だった。(フォーレ以外の演奏も加わっていたが…)コンサートレポの例によって演奏された曲目を演奏者とともに羅列すると…、
◇J.P.ラモー/ロンド―形式によるミュゼット 鳥のさえずり
◇G.フォーレ/月の光 岩田真由美(ピアノソロ)
◇阿部俊祐/「かぼちゃごよみ」より 六月 畠山瑠那(ソプラノ)
畠山伶寧(ピアノ伴奏)
◇G.フォーレ/パヴァーヌ
◇G.フォーレ=メル・ボニス/月の光 マ・コルド・ダルク(連弾)
◇G.フォーレ=アールワイルド/「夢のあとに」による即興曲
山川充(ピアノソロ)
◇C.サンサーンス/「動物の謝肉祭より」
1.序奏とライオンの行進曲
6.カンガルー
7.水族館
12.化石
13.白鳥
14.終曲 岩田真由美・畠山伶寧(連弾)
◇C.ドビュッシー/「ベルガマスク組曲」より
1.前奏曲
3.月の光
4.パスピエ 畠山伶寧(ピアノソロ)
◇G.フォーレ/組曲「ドリー」作品56
1.子守唄
2.ミ・ア・ウ
3.ドリーの庭
4.キティ・ワルツ
5.優しさ
6.スペイン風の踊り マ・コルド・ダルク(連弾)
以上だったが、正直言ってG.フォーレなどという音楽家は私にとって初耳だった。その良さを感得せよ、と云われても私にはチンプンカンプンだったのが正直なところである。私的には多少とも聴き憶えのあったサンサーンスの曲がやはり心地良く聴こえた。
ところで岩田さんの紡ぎ出す音色だが、教え子である畠山伶寧さんと聴き比べてみると、明らかにその違いを感ずることができた。畠山伶寧さんとてプロを目指しているくらいだからその技量には十分なものを感じさせてくれたが、やはり両者を聴き比べてみるとその違いは歴然としていたように思えた。いわゆる岩田さんが紡ぎ出す音には深みのようなものを感ずることができたのである。やがては畠山もそのような技量を獲得していくのだろうが…。
岩田さんは、できれば今後もワンコインコンサートを継続していきたいという。岩田さんの中にはクラシック音楽をより多くの人たちに親しんでもらいたいという願いがあるのだろう。私もできるかぎり応援したい。