やはりヴェテランの奏者は一味も二味も違う音色を奏でてくれたように私には感じた。今回のPMFの教授を務めるハインツ・コル氏のヴィオラで奏でるエレジー(悲歌)は深く悲しみに沈んだ音色に聴こえてきた。
連続してPMFである。昨日(22日)のお昼休み(12:25~45)、札幌市役所ロビーにおいて毎月開催しているロビーコンサートのPMF版が開催された。
数年前に同様のPMFのコンサートがあった時に、多くの人が詰めかけていて聴くのが困難だったことを思い出し、昨日は開演の1時間半前に市役所ロビーに着いた。するとさすがにまだ参加する観客の姿はなく、私は最前列に席を占めた。
※ 開会前のステージの様子です。私はこの最前列に位置しました。
文庫本で時間を過ごし、開演時間の12時25分、PMFの教授を務めるヴィオラ奏者のハインツ・コル氏と、PMFピアニストの佐久間晃子氏が登場した。
演奏された曲は、ヴュータン作曲の「ヴィオラとピアノのための悲歌 作品30」である。ハインツ氏は見たところ60代には遥か先に届いているのではないかと思われる大ヴェテランである。プロフィールを見るとかつてはウィーンフィルの至宝と呼ばれたそうだ。ハインツのヴィオラは前述したように、どこかに余裕を漂わせながらも、深く悲しみに沈んだ音色を会場いっぱいに響かせた。もちろん佐久間のピアノもヴィオラの音と同様に深い悲しみを十分に表現しているように聴こえてきた。さすがヴェテランの味、といった一曲だった。
※ ヴィオラ奏者のハインツ・コル氏
※ ピアノ奏者の佐久間晃子氏
続いては、PMFのアカデミー生にハインツを加えた弦楽四重奏だった。曲目は、ベートーヴェン作曲の「弦楽四重奏 へ長調 作品18 第一番から第1楽章」である。私は最前列でこの演奏を聴いたことで思わぬ発見をすることとなった。市役所ロビーの会場は普通のホールなどと違って、一段高いステージと客席は至近距離である。私の席からは奏者の一挙手一投足が手に取るように見て取れた。そこでわたしが視たのは奏者たちの “アイコンタクト” だった。
弦楽四重奏の場合、どうやら第一ヴァイオリンの奏者がリードすることになっているようだ。(私はそれすらも知らないのだが…)見ていると、全ての奏者が第一ヴァイオリンに視線を送っている。もちろん彼らを指導する立場のヴィオラのハインツも真剣に第一ヴァイオリンの奏者に真剣な視線を送っていた。例えウィーンフィルの至宝と言われる人であってもステージ上でアンサンブルを組む場合は一奏者に過ぎないという音楽界の厳然たるルールを見た思いだった。
この後、PMFのアンサンブルをさらに二つほど聴くことにしている。そのあたりに留意しながら残り二つのアンサンブル演奏会を楽しみにしたい。