札幌はその地形ゆえ、昔から大雨の災害に何度も遭った地域である。その後、河川の改修や土地改良などによって被害から逃れる方策をとってきたが、地球環境が変化するに伴い、まだまだ安心はできないという。専門家からお話を伺った。
昨日6月17日(月)午後、札幌市白石消防署において札幌市防災協会が主催する「さっぽろ市防災・減災セミナー」に参加した。
工学博士で、北大の客員教授を務めながら、北海道地域防災マスターなど防災に関する専門家である鈴木英一氏が「さっぽろの大雨災害から命を守る」と題して講演されたのを拝聴した。
鈴木氏は地質学的に見て北海道は約38万年前にはちょうど札幌周辺を境にして二つに分断されていたと話された。それが約6千年前頃から海水が後退して現在の形に近い一つの北海道が形成されたという。つまり札幌周辺は非常に低い土地であり、水害に遭いやすい地域であることが地質学的にも言えることだとした。
事実、記録に残る水害の記録を振り返っても、明治37年、大正2年、昭和36年、昭和56年とつい最近まで何度も大水害に見舞われている。
その間、札幌市では市内を蛇行する河川を整備し、直線化を推し進めたり、新しく川を新設したり、堤防の整備をしたりと対策を進めてきてはいるが、けっして安心できる状況ではないという。
それはまだ地盤そのものが低地であったり、土砂災害の危険性を孕んだ土地が存在したり、という状況がまだまだあるのだという。加えて近年の地球環境の変化(地球温暖化など)によって大雨を降らすような大気の変化が顕著であるとも云う。
鈴木氏は「札幌で大雨が降る気象パターン」には次の四つがあるという。まず①台風の直撃によるものが6割、②前線による大雨が3割、その他③線状降水帯による大雨、④地形性降雨、などが考えられるという。
その中の①台風の直撃に関しては「地球の温暖化」が大いに関わっているという。地球が温暖化したことによって、海水温の上昇が顕著であるという。そのため、温暖化以前は例え台風が発生しても海水温が低いことから本州付近で 台風が衰退してしまっていたものが、温暖化後は勢力を保ったまま本道を直撃するようになったそうだ。
このように気象のパターンが変わったことによって、札幌における水害の可能性は一段と高まっている状況だと鈴木氏は警告した。
こうした中、札幌市では「浸水ハザードマップ」を作成し、市民に注意を呼び掛けている。(今回のセミナーにおいても私は居住地の中央区版のハザードマップを配布された)
鈴木氏はおそらくハザードマップの作成に関与されたのだろうと思われるが、講演において各区毎の浸水危険地域、土砂災害の遭遇が危ぶまれる地域など、危険個所を個別に指摘された。
こうした状況の中で私たちにできること、それこそが札幌市防災協会がセミナーを開催趣旨だろう。鈴木氏は、まず札幌市民が札幌の災害特性を知ってもらい、自分の住む場所の災害リスクを意識することだという。
「ハザードマップを知る」、「家族で話し合う」、「避難訓練に参加する」などの準備を怠らぬように!と注意され講演を終えた。
水害など災害に遭った方が「まさか自分のところが…」といったことを耳にすることが多い。その「まさか」のことに自分が遭遇する可能性がゼロではないと意識し、備えることの大切さを教えられたセミナーだった。