「れきぶんフェス」のパネルディスカッションは多様な人材が登壇して多彩な意見が交わされ興味深かった。市内各所でこうした議論が交わされることが、きっと札幌市の活性化に繋がっていくことだと信じたい。
「さっぽろれきぶんフェス」は、前編でレポした通りにお二人の講演の後、小休止のような形で北白石中学校吹奏楽部の女子生徒が指導者の伴奏で「札幌の四季の曲」をトランペットで演奏するステージ発表があった。披露された曲は、① 虹と雪のバラード ② この道 ③ 時計台の鐘 ④ ふるさと の4曲だった。たくさんの聴衆を前に堂々とトランペットソロを披露した女子生徒の精神力に感心した。
※ トランペット演奏を披露する北白石中学校吹奏楽部の女子生徒さんです。私の席からは顔がよく見えませんでした。(中央は伴奏をした顧問の先生、右は曲目を紹介した女生徒です)
さて、肝心のパネルディスカッションである。「札幌の歴史文化の楽しみ方・活かし方」をテーマとして、登壇者は講演をされた越田賢一郎氏、和田哲氏に加えて、旅行商品企画・造成を担う伴野卓磨氏(Discover EZO代表)、韓国語通訳案内士の高野康夫氏(ことばサポーターなぐね代表)の4人が登壇し、主催者である歴史地域未来創造株式会社やまチの代表・神長敬氏がコーディネーターを務めた。
※ パネルディスカッションに登壇した4名の方と、司会の方です。
パネルディスカッションは伴野、高野両氏が登壇したことで、越田、和田両氏の論旨とは若干趣きが違った異なった雰囲気となってきた。というのも、伴野、高野両氏は経営者の貌を持っていたということだ。お二人は単に札幌の歴史文化を楽しんだり、紹介したりするだけではなく、それを活かして商業活動として成立させたいという思いが滲んでいたということである。
伴野氏は言う。「地域の歴史や文化をガイドすることで適正な対価をいただき、地域経済を回す(潤す)視点が必要ではないか」と…。さらに伴野氏は「札幌は歴史的な事物を軽視していないか」と疑問を呈し、「札幌の文化を掘り起こし、文化的価値を高める働きが必要ではないか」と強調した。
一方、韓国人の旅行者を案内する高野氏は「韓国人の来日旅行者は若く、SNSを活用して旅行している。そうした方々への情報発信に力を入れるべきだ」と話された。「特に札幌(北海道)は食の宝庫である。歴史文化と飲食を組み合わせたような情報発信に力を入れるべきだ」と強調された。
そうした二人に対して、越田氏は「自然が豊かな札幌は、自然と人間に着目して古い札幌にもっと目を向け、過去から現在への繋がりを重視するような取り組みも必要である」と指摘し、特に博物館活動にもつと力を入れるべきと話された。
また、和田氏は「札幌は一般にアピールするような分かりやすい文化財が少ないのではないか。関係者がPRを重視し、若い人たちの関心度を高めるような取り組みが必要で、例えば “語り部” などの育成も課題である」と述べられた。
いずれの方々の主張も傾聴に値する内容なのではないかと思えた。
昨秋、私が訪れた北東北の縄文遺跡群の各遺跡では地元のボランティアガイドに大変お世話になった。どこの遺跡のボランティアも非常に熱心に、分かりやすくガイドしていただいた。しかもそのほとんどが無料だった。(施設入場料を徴収されたところはあったが)ガイドの存在が私の旅をどれだけ内容の濃いものにしてくれたか計り知れないくらい貴重だった。
ボランティアか否かはさておいて、地域の人々が己の地域の歴史文化を尊く思い、そのことを訪れた人たちに伝えるということは私の体験からもとても重要なことだと思われる。そういう意味で、今回のような議論を数多く実施することの必要性を痛感した「さっぽろれきぶんフェスティバル2024」だった。