金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

76:岩村陽子 『家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇』

2012-07-10 09:06:26 | 12 本の感想
岩村陽子『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』(新潮社)
★★★★☆

会社にあった本。
タイトルは「喜劇」となっているのだが、
ちっとも笑えない。
というか、怖いよ~!!!

一般家庭の一週間の食事の記録をとったものなんだけど、
「子どもも夫も食べたがらないから」
「高いから」
「面倒だから」
と、子どもが便秘になろうが、夫が病気になろうが、
家での食事に野菜を出さない主婦たち。
「自分が疲れるから」
「保育園でやってくれる」
「自然とやれるようになる」
と、箸の持ち方も教えない、好き嫌いも改善させようとしない、
ついでに面倒だからと皿も使わない。
子どもが空腹を訴えるまで食事を出さない、
訴えられても用意がないので、外食かコンビニごはん、
冷凍食品やお菓子を与える……
と、衝撃的なコメントのオンパレード。
「お母さん」は家族の健康が自分にかかってるという使命感を
持っているものだと思っていたのだが。
幕内秀夫『変な給食』も結構衝撃的だったが、
こっちは家庭が舞台なだけに愛情の問題を感じさせて恐ろしい。

しかし、この本は、一つの家族の一週間の食事をすべて
載せているわけではないので、
極端に悪い食事内容だけをピックアップしていると受け取られても
仕方ない。
証拠となる客観的なデータがないので、
話半分に受け取っておいたほうがいいと思うんだけど、
それでも十分に衝撃的な内容。


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75:小手鞠るい 『心の森』

2012-07-09 09:52:33 | 12 本の感想
小手鞠るい『心の森』(金の星社)
★★☆☆☆

父の転勤のため、アメリカの小学校に
転校することになった小学6年生の響。
英語がわからず、友だちもいない状態のまま、
アメリカでの生活をスタートさせた響は、
家の裏庭に続く森で、ひとりの少女に出会う。
名前をたずねても答えない彼女は、
響に一輪の花<デイジー>を手渡す。
森の中で響は彼女・デイジーと心を通わせるが……。

**********************************

おそろしいほどに何も残らなかった……。

いつおもしろくなるんだろうと思っているうちに、
盛り上がる部分も驚きもなく、読み終わってしまった。
いったいなぜこの本が課題図書に選ばれたのか、
本当にわからない。

他に誰もいない時期ならともかく、
コミュニケ―ションが取れるようになり、
同じ年代の友だちができてなお、小学6年生の男子が
小さい女の子に固執する理由があるのか?
登場人物にリアリティがないうえに、
舞台がアメリカである必要性もあまりなかったような?
これを読んで心動かされるとしたら、それは
「デイジーが死んでしまった」という事実によってのみだと
思う。
子どもにはとってそれなりに衝撃なのかもしれないが、
それだけだよなあ……と思う。

「人は新しい環境に順応していくことができる」とか、
「言葉がなくても心を通い合わせられる」とか、
テーマをひねり出すことは可能だけど、
それも無理やりにしかできない。
わたしはテーマ性の薄い小説にもあまり抵抗がないほうだと
思うけど、これはダメだった。


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NHK大河「平清盛」レビュー27

2012-07-08 20:49:07 | NHK大河「平清盛」レビュー
【第27話の一言】

また出てきやがって……!>鬼若

**************************************

いったいどうしたことだ。
だんだん楊貴妃・信頼がいとおしくなってきた。
清盛の名代としてやってきた家貞に、平氏が忠義を尽くしますと
名簿を差し出されて
「さようかー」
「頼もしいのう」
とニッコリ。
なんか可愛く見えてきたよ。

今回のトピックスの一つが、朝長初登場。
(早々に矢で射られていたが……)
野卑な田舎っぺ風味。
関東のヤンキー・義平とともに兄弟並べると、
頼朝だけが貴公子。
やはりお育ちの違いかしら。

屋敷にのんきに構え、信頼を騙して反撃の機会を
うかがっていた清盛は、すでに大物の風格。
あの重症の中2病患者と同一人物とは思えないね!
寝返ってきた二条親政派の二人(顔芸がおもしろい)を
利用して、帝を手中におさめ、内裏を攻撃→
退却と見せかけて待ち伏せ、
一斉攻撃で源氏を壊滅状態に追い込むのだが……

義朝が無言で清盛に「タイマン勝負しようぜ!!」と合図。

行くわけないだろ!!と思ったのに、来ちゃったよ清盛。
しかも、なぜ誰も追ってこない!?

非現実的すぎて呆気にとられてしまったが、
挽回できないところまで明暗が分かれてしまった、
義朝込みで想定されてた清盛の新しい世のビジョンは
永遠に実現することはないのだなあ……と思うと
ちょっと泣けた
ずっとこの御曹司二人の関係を軸にして描いてきたわけだし、
個人的にはこれもアリだと思います。
いまいち盛り上がりには欠けたけど。
来週、回想祭りで泣かせにかかるんだろうか。


〈その他いろいろ〉

・六波羅にやってきた二条帝が、追討の命を下すところ。
 盛り上がる場面なのに、背景は鶏が跳ねてるのどかすぎるお庭。

・経子が麻呂眉じゃなくなってる。
 成親が信頼についたのは、経子が重盛の妻だという保険が
 あったからなのね。

・牛車を覗き込み、女装した二条帝を「いい女じゃ」という義平。
 確かに二条帝の役の人は、声高いし、中性的な雰囲気。
 
・「常盤はあなた様だけの妻にございます」
 なぜ常盤は後々の自分の首を絞めるようなことを言うのか……。
 しかし、義朝は終始一貫して常盤のことが好きだなあ。
 由良と一緒にいるときとはちがって、素直で感情がむき出し。
コメント (3)
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74:堀江謙一 『太平洋ひとりぼっち』

2012-07-06 23:05:36 | 12 本の感想
堀江謙一『太平洋ひとりぼっち』(ちくま少年文庫)
★★★☆☆

ここ最近、「冒険家」が個人的なブームなのであった。

著者は海洋冒険家。
1962年に約3か月かけて、ヨットで太平洋単独横断を成功させた時の
経緯や航海中の出来事などをまとめた手記。
わたしは一日中家に引きこもっていることすらできないので、
約3か月、ヨットから出られないなんて発狂しそうだよ。

ミッドウェイと同経度の位置に達したときの日記がいい。
ミッドウェー海戦で散っていった「海の先輩」たちに
黙祷をささげるところ。

「先輩、ぼくはいま、花束を持っていない。許してください。
しかし、もしこのボートが、無事にゴールデン・ゲートをくぐったら、
それが先輩にささげる花です。」(p.127)


お母さんと犬に自分の無事を知らせたいとか、
動物の形をしたカステラを食べたいとか書いているところが
なんか可愛い。

わたしが読んだちくま少年文庫版は
一部文章が削除されているとのことなんだけど、
差別用語が使ってあったりしたんだろうか。
このちくま少年文庫版自体、初版が1977年と古いので、
今だったら削除されるであろう差別用語が結構使われてるんだよね。


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73:山田悠介 『パズル』

2012-07-05 09:58:07 | 12 本の感想
山田悠介『パズル』(角川書店)
★★☆☆☆2.5

超有名進学校・徳明館高校の中でも、さらにエリートを集めた
A組に所属する茂央は、勉強にしか興味のないクラスメイトや
成績によって露骨に生徒に対する態度を変える担任教師、
自分に勉強のみを強いる母親に疑問を感じていた。
そんな中、突然高校が正体不明の武装集団に占拠された。
犯人は担任教師を人質とし、A組だけ校舎に残るように要求する。
担任を救うには、校舎の各所に隠された2,000ものピースを探し出し、
48時間以内にパズルを完成させるしかないという。

***********************************

この人の本、初めて読んだ。
話題になってた時期に、確か同僚の女の子が『リアル鬼ごっこ』を読んでて、
「おもしろい?」と聞いたら
「登場人物の思ったことを全部書いてしまっている。
 はっきり書いてないことを読み取らせる、という部分がまるでない。
 国語の問題は作れない」
というようなことを言っていたのだが、それが非常によくわかった。
登場人物がステレオタイプで、心情が表面的なので、
「○○は××と思った」だけで説明ができちゃうんだよね。
初版が2004年だということを差し引いても、
今どきこんな人物描写はありなのか??
そして一つだけ除き、かなり初期の段階で真相に見当はついたんだけど、
「まさかこういうオチじゃないよね」というのが
すべて現実になってしまった……。
読み終わった直後は、無駄に時間を使ってしまった、と虚無感に襲われた。

しかし、人物の描き方・設定・オチのまずさを除いても、
遅々として進まない状況やクラスメイト同士の衝突、
タイムリミットが設定されていることによる緊迫感はあって、
真相が明らかになるまでの部分は結構おもしろい。
これを原案にして、うまい人が書いたらかなりおもしろくなるのでは?
小学生向けの「角川つばさ文庫」に入っていたが、
たぶん、小学生なら抵抗感なく楽しめる。


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映画:『サンザシの樹の下で』

2012-07-04 19:34:56 | 映画の感想
映画『サンザシの樹の下で』(チャン・イーモウ監督)
★★★☆☆3.5

文化大革命の最中、国策の一環で農村に派遣された
女子高生・ジンチュウは、地質調査隊の青年・スンと出会う。
同じ家に下宿するスンに好意を示され、ジンチュウは彼に惹かれていく。
しかし、その思想のために両親が迫害を受けていたジンチュウは、
貧しい一家を支えるためにも教職に就かねばならなかった。
高官の息子であるスンは、事あるごとに経済的援助を試みる。
互いに惹かれあう二人だが、ジンチュウの母に
二人の関係を見咎められて、スンは、ジンチュウの将来のために
会わないことを母親に約束する。
約束通りに姿を見せなくなったスンだが、
会わない間に彼は入院していた。
見舞いにやってきたジンチュウに対し、白血病だという噂を
否定するスンだが……

**************************************

『初恋の来た道』のチャン・イーモウ監督だということで
期待大だったのだが……
個人的に、相手役の男の子が消したい過去を思い出させるので、
彼には全然ときめかなかったわ

途中で何回も〈中略〉みたいに字幕で
「この間の出来事」という感じのあらすじ説明があり、
「いやいや、そこは会話なんかでさりげなく説明してくださいよ!」
と思ったし、さりげなく織り込まれている社会問題も、
あとから他の人が解説しているのを読んで理解できただけで、
物語の大筋は懐かしのセカチューと変わらないような気がした。
しかし、ベッタベタな展開なのに、泣かされてしまった……
『初恋の来た道』もそうなんだけど、
ストーリー自体には泣けないんだよね。
積み重ねられてきた前半の「恋」の描写が効いてて、
(『初恋の来た道』の良さのほとんどは、ここだと思う)
それが二度と戻らないというところに泣けちゃうの。
個人的にいちばん泣けたのは、中盤の、
川を挟んで向かい合っていたところ。
日本ではよく、川が生と死を隔てるもののメタファーとして
描かれるのだけど、中国でもそうなのかしら??
この後、「だから嘘だって言ったじゃない」と
コメディタッチに転換するかと思わせるようなところもあったんだけど、
そうはいかなかったな……。

ヒロインの女の子、最初は、超絶可愛かったチャン・ツィイーと比べると
見劣りするなあ……と思ってたんだけど、透明感があって、
笑顔がとてもキュート
スンは途中は完全にストーカーだった。
高校の中をのぞきすぎ。通報されてもおかしくないレベル。



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72:藤沢モト 『勝負師の妻』

2012-07-03 09:20:57 | 12 本の感想
藤沢モト『勝負師の妻―囲碁棋士・藤沢秀行との五十年』(角川Oneテーマ21)
★★★★☆

いや~おもしろかった!!

確か、羽生善治『決断力』の後ろの広告を目にして
この本の存在を知ったのだったが、
藤沢氏のことはまったく知らなくてもおもしろい。

アル中、ギャンブルに借金、女性問題、罵詈雑言、
子どもたちには見向きもせず、外に子どもを作ってくる……と、
「ひどい夫」のイメージを構成するありとあらゆる要素を
持ち合わせた感のある夫と、彼と添い遂げた妻の
馴れ初めから現在までをつづった一冊。
旦那さん、
「そんな金なんか、おれが稼ぐ」
って……
家にお金入れてないじゃねーか!!
とツッコミどころ満載なんだけど、
それで「奥さんがかわいそう」という感想が出てこないのは、
負けん気が強く、賢い著者の人柄ゆえなのかしらね。
もちろん、あくまでも著者からの視点でしかないので、
すべてが事実というわけでもないのだけど、
お金がなくても切り抜けちゃう、弱ると家に帰ってくる夫を
見捨てられない、そういう奥さんの才覚と包容力に
結局のところ甘えているのよね……。
愛人一人と協力関係を築くんだけど、別の愛人のことは
腹に据えかねていると見えて結構悪しざまに書いていたり、
「こんど生まれ変わったら、結婚なんかしないで自由に生きたい」
と書いていたりするところも、美しすぎなくて良い。

「スリッパは履いてるんですが、下着もつけてないんですよ。どうしましょう」
という警察からの電話に
「牢屋にでも入れておいてください」
と返すところに笑った。


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NHK大河「平清盛」レビュー26

2012-07-01 20:47:22 | NHK大河「平清盛」レビュー
【第26話の一言】

夢オチならぬ幻覚オチとか……

**************************************

20:30あたりからちょっと中だるみしてる感じもしたけど、
緊迫感があっておもしろかった!

前回、清盛が青春時代のメモリーを思い出させる
遠回しな激励をしたせいで、
へんな方向に元気づいちゃった義朝。
前々回あたりからの意気消沈・へなへなしおしおぶりとは
別人のような顔つき。
ほんと目が生き生きしてるのね。
このあたりの目の演技がすごいなあ……と思ってみてたんだけど、
これが最後の輝きなのだと思うとやるせない。
恩賞を望む言葉もなく、今後のビジョンも口にしていないあたり、
破滅覚悟とも受け取れるし。

義朝謀反の報を受けた清盛はひどく驚いてて、
重盛に「別におかしくない」と冷静に言い返されてたわけだが……
バージョンアップしてもやっぱり清盛は清盛って感じだった。
「あれほど言ったのに」
「俺があと少し登るまで、なぜ待てなかった」
ってさー、結局自分が引き立てられてる立場だから
言えることなんだよね。
「いつ実現するかもわからない武士の世が来るまで、
不遇の身で耐えろ」
「俺が出世したらなんとかしてやる」
って上から目線の発想だし。
その格差がストレスの一因なんだってば!
気に留めてるし、激励のメッセージを送りもしたんだけど、
一門を食わせなきゃいけないとか、棟梁としてのメンツとか、
「聞えよがしの陰口ならお任せ☆」の麻呂たちのイジメとか、
あれやこれやが重なって義朝が追い詰められていくところに
想像が及ばなかったのかしら……。
なに驚いてんだと思った。

危機迫る状況で平家一門はレベルアップ。
盛国の安定感はいつも通りだが、
源氏物語脳の時子がゴッドマザーの片燐をチラ見せ。
そして、ちょっと前から「え、死亡フラグ?」という演出が
見られた家貞は、熊野詣の途中で義朝謀反の報を聞き、
「戦支度してないよ~」と慌てる面々に
「ジャッジャジャーン☆ 戦セット~!!」
とドラえもん化。
用意周到すぎるよ!

ラストで信西との青春時代の回想が入って、
心情的な盛り上げを図っていたらしい今回。
「だれでもよーい!助けてくれ」が
「清盛殿、助けてくれ」になっていたのは
ちょっといいなと思ったけど、いまいち感情移入ができず。
ここ数回は「きれいな信西」だったものの、
その前は「ブラック信西」だったわけで、
そのあたりの意図が明かされていないので、釈然としない。
ずっと行われていなかった死刑を復活させてまで
清盛や義朝に身内を殺害させたわけだしさ。
清盛は完全に水に流してしまってるみたいだが……。

〈その他いろいろ〉

・クーデターが成功して、ご機嫌な信頼。
 つやつや・てかてか・ぷくぷく。
 まさかあの「楊貴妃=信頼」の「長恨歌」が
 伏線だとは思わなかったわ。

・小心者のセコい感じを全面に押し出してる成親。
 この人、なんで信頼についたの??

・解説係の師光くんが、信西への忠義ぶりを発揮して
 予想外の輝きを見せる。
 スコップもないのに、あんな大きな穴を掘る肉体労働……
 おつかれさま!

・義平はやばいと思った。精神的には為朝よりよっぽどやばい。
 イッちゃってる。

・意外に発想が腹黒い重盛。
 この子、相変わらず笑顔がなく、幸薄そうな雰囲気ね。
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