このような確固たる一家言をお持ちの患者さんとお話しするときは大変なのである。まずはお持ちの持論をまずやんわりと否定することからはじめるが、これはうまくやらないと気分を害される。お話してもなかなか納得されないことも多い。このプロセスが面倒くさいし外来診療においてはリスキーなのである。怒らせたらまずい。そして持論を白紙にもどしたとしても、そこから新しい考えを受け入れてもらうまでにはまたまた一苦労なのである。昔はこの「隣の花子さん」を否定するような健康相談もしていたが最近では一切やめた。労多くしてまったく何ら得はないのだ。「先生、私36.5℃ですが今これはかなり熱があるんですようっ」 そういわれたらこう答えることにしている。「あぁ~そうなんですか。そりゃ大変だ」 こう言ってしまえばわずか数秒で話は次に進めるのである。スムーズに診療を進めることのほうが患者さんにとってはより大事なのである。そこに気がつくまでに5年もかかった。