G子はA型っぽく、時刻表で調べて約束の時間にピッタリに来る。
いっぽうで私はB型なので、そんな事をするわけがない。
早く行く分には待てばいいのだからと思って、テキトウに着いて待っている。
今日は二人とも同時間に着いた。
きっとG子が私に合わせてくれたのかもしれない。
だってまだ10分も前なのだから。
でも私は「ついてる偶然だ」と思った。
G子は「T男が急に会いたいと言って来た」と言うので、「それじゃ呼んでもいいけど?」と言うと「私はヤダ」とG子が言う。
「きっと私をはさんでT男とsakeちゃんが意気投合するからイヤ。」だからこの待ち合わせ場所も言わなかったと言い、ランチを食べてからT男と会うことにしたの、ドタキャンなんてできないもの、と言う。
「私は構わないよ、彼氏とのデートならドタキャンありにしよう、お互いに。」
「私はイヤ」
「待たせちゃっていいの?」
「だって、さっき急に電話してきたんだよ」とG子は言い、「sakeちゃんに会うって言ったら急にだよ。」と言う。
「また他の男だと疑ってるのかな??何時ごろ電話が来たの?」
「11時だよ。」
「2時間前か、それは急だね、そんな急に約束を変更できるわけがないだろうに。」
だからいいのよあんなヤツ、とG子は言い、ゆっくりランチを食べるんだと言う。
G子は「M君もズルイ」と言い、「sakeちゃんがズルイって言った意味が分かってきた」と言う。
「ズルイって?」
「T男ははっきり『G子が好きだから』と言う。でもM君は違う。オレと付き合った方がこう言うメリットがある、こう言うメリットがあるという理詰め。ギブアンドテイクをちらつかせてる。」
「そんなもんなのかねぇ。」
「ただ刺激を味わいたいだけ。」
「そうかもしれないね。」と私は言い、でもみんなたぶん同じだよ、と私は言い、「T男も私が好きなヤツも3人とも一緒だよ。」と言った。
「それじゃみんなズルイじゃない!」
「私達のモノサシからするとね。ただ男と女は根本的に違うんじゃないかなって気がする。男達は何らかの事情でストレスがたまったりして、はけ口がほしくなると、ズルイと言う感覚ではなくて、そうなるのかもしれない。私達が【この感情だけはどうしてもコントロールできない!】って言う部分があるように、彼らも彼らで何かあるのかもしれない。その部分が男と女ではズレているのだと思う。」
それにね、と私は言い、「こうなったのは全部自分達が振り切らないからだよ。悪いのは自分なんだよ。」と言った。
G子は「うん」と言った。G子がここでウンと言ったのは、たぶん今日が初めてではないかと思う。
と、ここまでは確かに会話が対等になっていたと思う。
それからだんだん会話の比重はG子に移り、G子は会社のリストラされた人のこと。かわいそうなので、自分が知り合いの会社に推薦している所だと言う話、それから昨日娘と行った観光地の話、そこが夕方になったら食べ物屋がどこもしまってしまって、命からがら急行に乗って帰ってきてやっとご飯にありつけたこと、それからこの前の某観光地の旅行の話、ナビを初めて使ったら全然頼りにならなくて道に迷って大変だった話、を始めた。
私はだんだんどうでも良くなってきて返事もままならないまま、「最近、小林正観さんの本にはまっている」と言う話をしようとするもG子が「それでいったいどんな本なの?」と訊き返してきたのは、それから30分後に行ったトイレから出てきた時だった。
(トイレの中で用を足しながら話をさえぎった事を思い出したのだろうか。)
だからね、と私は不器用に「できるだけ【ついてる】【大好き】【楽しい】【うれしい】と言う言葉を繰り返して使うの。それをね、3年続けているといいことがたくさん降ってくるんだって。今やってるところなんだ。」と言うが、G子はキャハハハハと笑うだけであった。
「だからね、物事には裏表があるんだよ。その中でいい方に着目して【あぁよかった】って思うようにするんだよ。」
「私、不幸なことばかりだもん。」
「そんなことないよ、離婚だってして良かったじゃないか。」と私は言い、あのまま結婚してたら元旦那の借金地獄を一緒に味わう事になったんだから。」と言うと、「T子もそう言ってた。」と言う。
「ママはアイツと別れたから、二人で楽しく暮らせるんだよって。」
「そうそう、そうだよ。」
「カードの事で連絡してみたけど、全然返事が来ない、きっとうつ病にでもなってるんだと思う。」
「ほらね、離れられて良かったんだよ。」
G子は「そんなこと言うのはsakeちゃんだけ。」と言う。
「そうなの?」と言うと、「みんなカラをかぶって本音は言わないよ。」とG子は言う。
「私だって、前はカラをかぶっていたんだよ。」
「そうなの?何が違うんだろう?」
「本音と建前があるのよ。」とG子は言うが、それ以上は話さなかった。
私はこれを「きっとこれは褒め言葉だ!」と思って、うれしく解釈することにした。
やっぱり、「いいこと」は探せばあるんだ。
どこでだって。
G子に「そろそろ待ち合わせ場所に行った方がいいよ」と言った。
「私のせいでケンカになっちゃ困るからね。」
G子は新宿まで一緒に行くか?と言うけど、私はううんと答えた。
T男に興味ないよ、と言った。
店を出てG子の後姿を見送った。
G子は1度も振り返らずに、改札口を出て行った。
いっぽうで私はB型なので、そんな事をするわけがない。
早く行く分には待てばいいのだからと思って、テキトウに着いて待っている。
今日は二人とも同時間に着いた。
きっとG子が私に合わせてくれたのかもしれない。
だってまだ10分も前なのだから。
でも私は「ついてる偶然だ」と思った。
G子は「T男が急に会いたいと言って来た」と言うので、「それじゃ呼んでもいいけど?」と言うと「私はヤダ」とG子が言う。
「きっと私をはさんでT男とsakeちゃんが意気投合するからイヤ。」だからこの待ち合わせ場所も言わなかったと言い、ランチを食べてからT男と会うことにしたの、ドタキャンなんてできないもの、と言う。
「私は構わないよ、彼氏とのデートならドタキャンありにしよう、お互いに。」
「私はイヤ」
「待たせちゃっていいの?」
「だって、さっき急に電話してきたんだよ」とG子は言い、「sakeちゃんに会うって言ったら急にだよ。」と言う。
「また他の男だと疑ってるのかな??何時ごろ電話が来たの?」
「11時だよ。」
「2時間前か、それは急だね、そんな急に約束を変更できるわけがないだろうに。」
だからいいのよあんなヤツ、とG子は言い、ゆっくりランチを食べるんだと言う。
G子は「M君もズルイ」と言い、「sakeちゃんがズルイって言った意味が分かってきた」と言う。
「ズルイって?」
「T男ははっきり『G子が好きだから』と言う。でもM君は違う。オレと付き合った方がこう言うメリットがある、こう言うメリットがあるという理詰め。ギブアンドテイクをちらつかせてる。」
「そんなもんなのかねぇ。」
「ただ刺激を味わいたいだけ。」
「そうかもしれないね。」と私は言い、でもみんなたぶん同じだよ、と私は言い、「T男も私が好きなヤツも3人とも一緒だよ。」と言った。
「それじゃみんなズルイじゃない!」
「私達のモノサシからするとね。ただ男と女は根本的に違うんじゃないかなって気がする。男達は何らかの事情でストレスがたまったりして、はけ口がほしくなると、ズルイと言う感覚ではなくて、そうなるのかもしれない。私達が【この感情だけはどうしてもコントロールできない!】って言う部分があるように、彼らも彼らで何かあるのかもしれない。その部分が男と女ではズレているのだと思う。」
それにね、と私は言い、「こうなったのは全部自分達が振り切らないからだよ。悪いのは自分なんだよ。」と言った。
G子は「うん」と言った。G子がここでウンと言ったのは、たぶん今日が初めてではないかと思う。
と、ここまでは確かに会話が対等になっていたと思う。
それからだんだん会話の比重はG子に移り、G子は会社のリストラされた人のこと。かわいそうなので、自分が知り合いの会社に推薦している所だと言う話、それから昨日娘と行った観光地の話、そこが夕方になったら食べ物屋がどこもしまってしまって、命からがら急行に乗って帰ってきてやっとご飯にありつけたこと、それからこの前の某観光地の旅行の話、ナビを初めて使ったら全然頼りにならなくて道に迷って大変だった話、を始めた。
私はだんだんどうでも良くなってきて返事もままならないまま、「最近、小林正観さんの本にはまっている」と言う話をしようとするもG子が「それでいったいどんな本なの?」と訊き返してきたのは、それから30分後に行ったトイレから出てきた時だった。
(トイレの中で用を足しながら話をさえぎった事を思い出したのだろうか。)
だからね、と私は不器用に「できるだけ【ついてる】【大好き】【楽しい】【うれしい】と言う言葉を繰り返して使うの。それをね、3年続けているといいことがたくさん降ってくるんだって。今やってるところなんだ。」と言うが、G子はキャハハハハと笑うだけであった。
「だからね、物事には裏表があるんだよ。その中でいい方に着目して【あぁよかった】って思うようにするんだよ。」
「私、不幸なことばかりだもん。」
「そんなことないよ、離婚だってして良かったじゃないか。」と私は言い、あのまま結婚してたら元旦那の借金地獄を一緒に味わう事になったんだから。」と言うと、「T子もそう言ってた。」と言う。
「ママはアイツと別れたから、二人で楽しく暮らせるんだよって。」
「そうそう、そうだよ。」
「カードの事で連絡してみたけど、全然返事が来ない、きっとうつ病にでもなってるんだと思う。」
「ほらね、離れられて良かったんだよ。」
G子は「そんなこと言うのはsakeちゃんだけ。」と言う。
「そうなの?」と言うと、「みんなカラをかぶって本音は言わないよ。」とG子は言う。
「私だって、前はカラをかぶっていたんだよ。」
「そうなの?何が違うんだろう?」
「本音と建前があるのよ。」とG子は言うが、それ以上は話さなかった。
私はこれを「きっとこれは褒め言葉だ!」と思って、うれしく解釈することにした。
やっぱり、「いいこと」は探せばあるんだ。
どこでだって。
G子に「そろそろ待ち合わせ場所に行った方がいいよ」と言った。
「私のせいでケンカになっちゃ困るからね。」
G子は新宿まで一緒に行くか?と言うけど、私はううんと答えた。
T男に興味ないよ、と言った。
店を出てG子の後姿を見送った。
G子は1度も振り返らずに、改札口を出て行った。