「拾集物語」を読む(十六の二) に小山田彌市郎の名前が登場し驚いてしまった。これはいわゆる将軍家の御威光に係る天下の御尋ね者の手配が、まさしく全国に行きわたっていたことを物語っている。
将軍綱吉の側室・お伝の方は、綱吉が甲府宰相時代に中臈に上ったとされるが、父親は足軽格の黒鍬者であった。お伝の方の兄・権太郎は素行の悪いならず者であったらしいが、博奕出入りで上記小山田彌市郎らに殺されている。ならず者であろうが将軍様ご寵愛の側室の実兄が殺されたのだから、小山田は天下の御尋ね者として手配された。拾集物語の著者・渡邊玄察は、この手配の人物がこの様な罪を犯した人物であることは知らなかったであろう。小山田は七月になって常陸の竜ケ崎で捉えられ、獄門に懸けられている。噂が駆け巡るのは早い、玄察が事の真実を知るにも、そう時間を要しなかったであろう。
尚、三田村鳶魚に、この事件にも触れた大変興味深い一文「お伝の方の一族」があるが、サイトでも紹介されている。
http://books.salterrae.net/amizako/html2/mitamuraodenn.txt