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無名の人生 (文春新書) |
文藝春秋 |
【1】文春新書部 編集長から <文春新書新刊情報>
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★名著『逝きし世の面影』の著者、初めての語りおろし!
幕末・維新期に訪れた外国人の記録をもとに、江戸庶民の暮らしを見事に再現
した『逝きし世の面影』は累計13万部のロングセラーですが、著者である渡
辺京二さんは、この本を書けたのは「もともと自分自身が異邦人だから」と言
っています。
その渡辺さんは現在、熊本在住の84歳。戦前の最先端都市、大連で少年期を
過ごし、敗戦後の窮乏生活を耐え、その後の熊本への引揚げですべてを失い、
戦後を身ひとつで生きぬいてきました。
本書は、その半生をもとに語りおろされた人生論・幸福論です。
「成功」「出世」「自己実現」「有名になること」などくだらない! それら
は、むしろ不幸の原因となるのであって、本当の幸せはもっと別のところにあ
る――自身の経験に裏打ちされたその言葉には迫力があります。
しかし、有無を言わせないお説教がしたいのではありません。「好きなことだ
けやって来た私、植木等に次ぐ無責任男の私でも何とか生きて来られたと知っ
て、それなら自分も大丈夫と思って下さる方がありはしないか」と、生きづら
い人びとにエールを送りたい、というのが渡辺さんの思いなのです。
豊かな社会なのに何となく生きづらさを感じている私たち以上に、江戸の庶民
は、貧しくとも、無名であっても、どんな職業に就いていても、幸せに暮らす
術を知っていました。私たちは、知らず知らずのうちに自分で自分を追い込ん
でしまっているもの。そういう思い込みや囚われから現代人を解き放ってくれ
る本です。