熊本にお住みの方でもこれを御存じの方はそう多くないと思う。
十数年前まで住んでいた花園の自宅から、本妙寺の裏手にある熊本市営花園墓地までは10分足らずの所にある。
墓地の中を横切り、左手に曲ると浄池廟の裏手に出て、清正公が鑓をもって立つ銅像へ登る階段に至る。愛犬をつれての散歩道であった。
花園に住んで知ったのがこの「しむげ」という名前である。広大な花園墓地は起伏にとんだ地形をしているが、三方は小高くなっており、一方は視界が開けている。ここが「しむげ谷」である。どんな漢字をあてるのか、長い間知らないで過ごしてきたが、「平成肥後国誌」に紹介されていた。
「無礙=無碍」は仏語で「無障礙とも。障りや妨げが無く自由自在であること。融通無礙。阿弥陀仏がもつ十二の光の功徳(十二光)に無礙光がある。また諸仏の智慧を無礙智、理解力を無礙解、弁舌力を無礙弁といい、各々それを法・義・辞・楽説の四つに細分する(法無礙智・義無礙智・辞無礙智・楽説無礙智の如く。これを四無礙智という」とある。
坂崎家、堀家、成田家、藪家、高本紫溟、長瀬真幸、猿木家、古城家、池辺家、林家、国友家、岩間家等多くの細川藩士のお墓がある。
小説「都甲太兵衛」の主人公・都甲家のお墓もあったが、最近改葬されたのか見受けられない。
四無礙谷にはいくつかのお寺があったともいう。中尾丸城も近くにあるし、少し下ったところは井芹氏が住んだとされ、井芹川にその名をとどめている。
かってすんだ花園の地は、歴史の宝庫ともいえる場所である。