Sightsong

自縄自縛日記

中尾勘二@裏窓

2015-05-06 23:39:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

中尾勘二さんのソロライヴがゴールデン街の「裏窓」であると知り、足を運んだ。たぶん記者のDさんと酔って突入して以来、4年ぶりである。

ちょうど先日、中尾さんが加わっているグループ「ストラーダ」のライヴに行きそびれたこともあって、聴きたかったのである(『山道』と『Texas Underground』の2枚は昔からの愛聴盤)。

「裏窓」は狭い店で、6人座って満員。中尾さんはきっちり19時半に演奏をはじめた。その前に、多重録音をするが解説あり・なしのどちらがよいかと6人に訊ね、消極的なる満場一致で解説なしのもくもくプレイとなった。

1曲目は、訥々としたピアノ、かすれそうなヴァイオリン、いかにも木管らしき音のするクラリネット、さらに謎なドイツ語の朗々とした歌。2曲目は、声によるブギウギのようなドラムスとベースのパターン、やはりノリノリのピアノ、テナーサックス、謎なスキャット。これらの各要素を5分くらいずつ繰り返す。その間、ずっと向こう側の録音機を向いて、こちらを一顧だにしない。多重録音の結果を、曲が終わるたびに再生した。実に愉しい。なんてオリジナルな人なのだろう。

もう15年くらい前だったか、「コンポステラ」へのオマージュとして、故・篠田昌巳のかわりに林栄一さん、そしてオリジナルメンバーの中尾さんに関島岳郎さんが「フォトン」というグループを組んで演奏した。そのとき、林さんが中尾さんを評して「天才」だと言ったことを覚えている。

●参照
大島保克+オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』 移民、棄民、基地
嘉手苅林次『My Sweet Home Koza』
船戸博史『Low Fish』
ふいご


石原岳+康勝栄@Bar Isshee

2015-05-06 00:55:48 | アヴァンギャルド・ジャズ

千駄木のBar Issheeに足を運び、石原岳さんと康勝栄さんのデュオを観る。

石原岳 (g, electronics)
康勝栄 (electronics)

ふたりとも正体不明の電子機器を駆使する。会場は石原さんの意向でかなり暗く抑えられ、その中で、顕示的なノイズと、闇の中からかそけき音を増幅してマクロな領域に持ってきたような音波とが混じり合う。生き物のようでもあり、人為のようでもあり。

そして、光も音に連動したりしなかったりして明滅し、眼も耳も刺激され、まるで花火大会に連れてこられたように脳が覚醒した。

ところで、石原さんは沖縄県東村高江の人。高江のヘリパッドに反対するステッカーを持って来ておられたので、2枚購入した。さっそくスーツケースに貼り付けることに決めた。

●参照
Sakurazaka ASYLUM 2013 -TAIWAN STYLU- 


ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』

2015-05-06 00:18:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』(Savoy、1962-63年)という再発盤を見つけた。サヴォイでのブレイの演奏は聴いたことがなかったし、『Footloose!』と『Syndrome』の2枚分が収録されていてお得。

Paul Bley (p)
Steve Swallow (b)
Pete La Roca (ds)

ブレイは1932年生まれだからこのとき30歳くらいだ。そんなに若いのに、既に、我こそは美なりといったような、自らの発する音に耽溺するようなスタイルを確立していて、ちょっと感動してしまう。実際に、次々に繰り出す和音が気持ち悪いほど美的なのだ。かつて新宿ピットインでブレイのソロピアノを聴いたとき、近くに座っていた観客が、「美しい・・・」と漏らしてしまったことを思い出した。ビル・エヴァンスとはまた違った形で、後のプレイヤーに大きな影響を与えているに違いない。

曲もいい。一緒に活動していたオーネット・コールマンの「When Will the Blues Leave?」や、前妻(このとき既に離婚していたんだっけ?)のカーラ・ブレイによる「Vaskar」など、聴いているこちらが溶けそうである。

スティーヴ・スワロウのベースはメリハリがあって気持ちがよいのだが、でろでろの変態的な甘さを全面に出してくるのはいつ頃からだろう(もちろん、褒め言葉である)。

●参照
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』
ポール・ブレイ『Homage to Carla』
ポール・ブレイ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Memoirs』
ポール・ブレイ『Solo in Mondsee』
イマジン・ザ・サウンド