Sightsong

自縄自縛日記

島村英紀『火山入門』

2015-05-27 22:58:46 | 環境・自然

島村英紀『火山入門 日本誕生から破局噴火まで』(NHK出版新書、2015年)を読む。

本書は、本当の意味での入門書だと思う。プレートテクトニクスやプリュームテクトニクスなどをもとに、手際よく火山のメカニズムを説明している。また、火山にもさまざまなタイプがあり、それらの噴火の歴史を追うことによって、長い目で見れば日本における大規模な噴火は必然であることを示している。さらに、それがどこでいつ起きるかについて確実なことを言うことは難しく、予知も地震と同様に極めて難しいことを、明らかにしている。

これまで、マグニチュード9クラスの地震のあとには、必ず数年間の間に、近くで複数の噴火が起きていた。東日本大震災のあとには大きな噴火がなかったが、結局、2014年の御嶽山噴火が起きた。これからも起きる可能性は十分にあり、その「近く」とは震源から600キロメートル以内であった。

地震の影響だけではない。長い目で見れば、この100年ほどは異常に静かな時期であったという。そして、火山や地震に対しては、時期や場所や規模を特定する「予知」ではなく、長い時間と広い場所を視野に入れることが、むしろ科学的な知見であるということができる。すなわち、いつ何時、さしたる予兆もなく、日本のどこかの死火山と思われている場所からさえ、巨大噴火は起こりうるということである。

●参照
島村英紀『「地震予知」はウソだらけ』
ロバート・ゲラー『日本人は知らない「地震予知」の正体』
黒沢大陸『「地震予知」の幻想』
大木聖子+纐纈一起『超巨大地震に迫る』、井田喜明『地震予知と噴火予知』
石橋克彦『南海トラフ巨大地震』
石橋克彦『原発震災―破滅を避けるために』
『The Next Megaquake 巨大地震』
『Megaquake III 巨大地震』
『Megaquake III 巨大地震』続編


さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋

2015-05-27 07:27:32 | もろもろ

イタリア・スティピュラの「エトルリア」という万年筆を使っていて、インクフローがいまひとつなので、ペンクリニックで何度か調整してもらった。その結果、ペン先は良くなったが、古いインクが残っているかもしれないとのドクターの言。そんなわけで、プラチナが出している万年筆クリーニングキットを買ってきてペン先を漬けておいたところ、今度は、インクの吸入機構がうまく働かなくなった。

ちょうど新宿のキングダムノートでペンクリニックを開催していたので、出かけて行って、仲谷ドクターに診ていただいた。なんと、壊れていた。エトルリアの初期型は、ペンのお尻をくるくると回してインクを吸い上げるのだが、ペン軸の途中で分解できず、また中の部品がプラスチック製ゆえ壊れやすいのだという。そして、もうメーカーでも補修部品を作っていない。

毎日使うものである。困る。といって駄々をこねて騒いでも仕方がない。直らないものは直らない。古いタイプを使った自分が悪い。

そんなわけで、日本で唯一のエボナイト素材製造工場である「日興エボナイト製造所」が出している「笑暮屋」の万年筆を入手した。ちょうど谷中で出張販売をしていて、実際に触って確かめることができた。ろくろで削って作られた手作り万年筆である。エボナイトは固いゴムであり、何でも、黒檀(Ebony)に似ているためにその名が付けられたらしい。実際に、触っていて、独特の柔らかく軽い質感があって気持ちが良い。なお、エトルリアはセルロイドで作られており、こちらの質感も好きである。

中でもクリップが付いていないタイプ「萌芽」が個性的だったので、そのMサイズを選んだ。Sサイズとあまり値段が変わらないが、訊いてみると、「工作することは同じようなものだし、素材の量はさほど変わらない」からだという。また、中字が好きなので試し書きさせてもらっていると、ペン先(14K)を薄く研いだものもあると囁かれた。そちらの方が柔らかく好みであり、さらに、筆圧の弱いわたしでもインクがさらりと出るよう、調整していただいた。

いまのところ絶好調。


エトルリア(奥)と萌芽(手前)

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド