マタナ・ロバーツ『Coin Coin Chapter Three: River Run Thee』(Constellation、2015年)を聴く。
Matana Roberts (as, Korg Monotron, Korg Monotron delay, Korg Monotron duo analogue, wordspeak, early 1900s Archambault upright piano)
マタナ・ロバーツは、2014年に、アメリカ南部を25日間旅した。おそらくはそのときに得た印象や社会の記憶といったものを、彼女ひとりの演奏と声、そしてサンプリングにより、ひとつの作品にした。アメリカ南部や黒人の歴史が彼女のアイデンティティにおいて重要なのだろう。
たとえば、そこで見聞きした川や野といった風景が心象となって語られる。しかし、それらは必ずしもよくは聞き取れない。マルコムXによる演説テープも、「お客さん、兄弟姉妹、淑女紳士、友人と敵のみなさん、・・・普段は人びとの前にシャツとタイなしで出ることは無いので申し訳ないのだが、・・・」といった挨拶のあとは、サウンドに混ざっていく。
もちろん演説作品ではないのだ。ここでは、ドローン(空飛ぶアレではなく)の効果が素晴らしく、とても重層的な音楽として作り上げられている。塩辛いような音のサックスも良い。
●参照
2014年6月、ニューヨーク(4) ハーレム
ハーレム・スタジオ美術館
ナショナル・アカデミー美術館の「\'self\」展