Sightsong

自縄自縛日記

ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』

2018-05-12 07:15:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(Santé Loisirs、2015年)を聴く。

Joachim Badenhorst (bcl, cl)

2015/11/1-8に、喜多方のあちこちで収録された演奏である。古い手術室、日本酒の原水が湧き出る場所、田んぼ、いろいろ。鳥とのデュオもある。

かれのバスクラもクラも、このような佇まいに象徴されるようにとてもナチュラルであり、構築に向けた力が入っていない。ああ、心が安らぐ。それなのに、ハン・ベニンクのトリオで吹いていたり、オーケストラを率いていたりもするのだ。実にユニークな音楽家でありわたしは大好きである。

今年の最初に訊いたところ、春先の来日はなくなって、11月にでも来れるかなと言っていた。また新たな即興演奏に期待。

●ヨアヒム・バーデンホルスト
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 


ピーター・エヴァンス『House Special』

2018-05-11 20:05:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・エヴァンス『House Special』(2015年)を聴く。なおbandcampで無料。

House Special:
Paul Wilson (p, syn) 
Peter Evans (tp)
Sam Pluta (live electronics) 
Levy Lorenzo (perc, electronics)
Kassa Overall (drumset, drumpad)

48分間一本勝負のインプロヴィゼーション。無料だからアレなのかなと思ったがまったくそんなことはない。

サム・プルータらのエレクトロニクスはもはや普通のジャズ要素になっているし、それを含めても、ジャズ・フォーマットでの熱演と言ってよいだろう。サウンドは次第にヒートアップしてゆき、いい意味でグループが一体化する。興奮必至。

20分過ぎにピーター・エヴァンスのトランペットとポール・ウィルソンのシンセがハモったり、30分過ぎにエヴァンスのソロに焦点が当てられたり、35分ころにエレクトロニクスがリミッターを外したり、37分ころにエヴァンスとエレクトロニクス群とがやりあってお互いに痙攣したり、これは会場にいたら確実に動悸が激しくなり鼻血を流していただろう。エヴァンスのトランペットは一貫してマッチョであり完璧そのもの(絶賛)。随時介入するウィルソンのピアノもまた効果的。静かになってもドラムとエレクトロニクスが心臓の鼓動のように息づいており、ふたたび周囲の生命に活力を吹き込んでゆく。

なお本演奏は、NYのThe Stoneにおいて2015/9/22-27に行われたピーター・エヴァンスのレジデンシー最終日になされた。プログラムは以下の通り多彩であり、わたしもそのうち3つを観ることができた。(それにしても、ここにもデイヴィッド・ブライアントが参加していたのだな。恐るべし)

今年9月にエヴァンスが来日する予定だが、ぜひ、日本ならではの刺激的なプログラムが組まれてほしい。

9/22 Tuesday

8 pm Evan Parker’s US Electro-Acoustic Ensemble:(クレイグ・テイボーンは欠席)
Evan Parker (ss), George Lewis (electronics, tb), Ikue Mori, Sam Pluta (electronics), Ned Rothenberg (bcl, cl, shakuhachi), Peter Evans (tp)

10 pm Rocket Science:(クレイグ・テイボーンは欠席)
Evan Parker (ts, ss)
Peter Evans (tp)
Sam Pluta, Ikue Mori (electronics)

9/23 Wednesday

8 pm Peter Evans, Amirtha Kidambi, Leila Bordeuil and Brandon LopeZ Amirtha Kidambi (voice), Peter Evans (tp, piccolo tp), Leila Bordeuil (cello), Brandon Lopez (b)

10 pm Quartet Improvisations:
David Byrd-Marrow (french horn), Peter Evans (tp), Anthony Orji (bcl), Brandon Lopez (b)

9/24 Thursday

8 and 10 pm Pulverize the Sound:
Peter Evans (tp), Tim Dahl (b), Mike Pride (ds)

9/25 Friday

8 pm Peter Evans Quintet:
Peter Evans (tp, compositions), Ron Stabinsky (p, syn), Tom Blancarte (b), Jim Black (ds, electronics), Sam Pluta (electronics)

9/26 Saturday

8 pm Zebulon Trio:
Peter Evans (tp), John Hébert (b), Kassa Overall (ds)

10 pm Zebulon + David Bryant:
Peter Evans (tp), David Bryant (p), John Hébert (b), Kassa Overall (ds)

9/27 Sunday

10 pm: House Special: (コレ)

Paul Wilson (p, syn), Peter Evans (tp), Sam Pluta (live electronics), Levy Lorenzo (perc, electronics), Kassa Overall (drumset, drumpad)

●ピーター・エヴァンス
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
Pulverize the Sound@The Stone(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
トラヴィス・ラプランテ+ピーター・エヴァンス『Secret Meeting』(2015年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス+アグスティ・フェルナンデス+マッツ・グスタフソン『A Quietness of Water』(2012年)
『Rocket Science』(2012年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
ピエロ・ビットロ・ボン(Lacus Amoenus)『The Sauna Session』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)

ピーター・エヴァンス+サム・プルータ+ジム・アルティエリ『sum and difference』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 


Shuta Hiraki『Afterwhile』

2018-05-11 18:52:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

Shuta Hiraki『Afterwhile』(2018年)を聴く。

よろすずさんである。

前の作品(『Unicursal』『Ftarri 福袋 2018』)では、複数の音のレイヤーがあって、それらが自律的に代替可能なサウンドだという印象があった。つまり聴いていると無意識に誘い込まれ、いつの間にかレイヤー間を移動しているというような。

本盤の印象はちょっと異なる。相互並行な音世界は敢えて構築されていないように思える。

アンビエントドローンにより幻視される世界があって、その背後に、誰か「中の人」が移動し、息づいているような感覚がある(自然音のサンプリングなのかな)。その大きな幻視のためか、それとも「中の人」により目の前の世界にブリッジが架けられているためなのか、奇妙な多幸感を覚える。そしてよりナチュラルな仕上がりになっていて、なぜか聴いていて安堵する。

思い出すこと。90年代初頭に、再開発前の汐留に、パナソニック(当時は松下電器)が東京P/N(パーン)というショールームを開いていた。ヒトの脳内でアルファ波を出すという音楽も流れていて、うさん臭く思いながらも最先端を愉しんでいた(きっとみんなそうだったろう)。そんなものはやがて消えた。しかしそれは消えたのではなく、人の共有的な記憶や地下世界で熟成されて、いつの間にか別のリアルをまとって、二周まわってここにも姿を現したのではないか。まあ知らないし妄想です。

●Shuta Hiraki
『Ftarri 福袋 2018』(2017年)
Shuta Hiraki『Unicursal』(2017年)


マシュー・ルクス(Communication Arts Quartet)『Contra/Fact』

2018-05-11 16:11:28 | アヴァンギャルド・ジャズ

マシュー・ルクスの「Communication Arts Quartet」による『Contra/Fact』(Astral Spirits/Monofonus Press、-2017年)を聴く。

Mikel Patrick Avery (ds, perc, g, mellotron)
Ben Lamar Gay (cor, electronics, melodica, perc)
Jayve Montgomery (ts, clarinumpet, fl, samples, perc)
Matthew Lux (b, syn, g, chirimia, perc)

ベン・ラマー・ゲイが目当てで探したようなものだが、いや想像以上に愉快。

皆がエレクトロニクスや妙な楽器を使いまくってのたゆたう宇宙サウンド。フィールド感もあり現代的に生々しい。

マシュー・ルクスのベースは下から下品に場を響かせ、ジェイヴ・モンゴメリーのテナーにはファラオ・サンダースの咆哮が入っている。いやカマシ・ワシントンみたいに真面目にファラオをやるより、脱力してナチュラルにあやしいこっちのが正しいと思うよ。

もちろんゲイのコルネットもウェットに響いている。そこだけ雰囲気がオールドになったりして、気持ちいい。シカゴいいなあ。

●ベン・ラマー・ゲイ
ベン・ラマー・ゲイ『Downtown Castles Can Never Block The Sun』(-2018年)
ジェイミー・ブランチ『Fly or Die』(-2017年)


サイモン・ナバトフ『Tunes I Still Play』

2018-05-11 09:31:48 | アヴァンギャルド・ジャズ

サイモン・ナバトフ『Tunes I Still Play』(2017年)を聴く。

Simon Nabatov (p)

2017年、台湾でのソロピアノ演奏。

タイトル通り、ナバトフが「いまも弾いている曲」がプログラムに集められている。どれも面白いのだが、こちらが馴染み深いジャズ曲と比べると(しかも癖が強い)、その面白さが引き立ってくる。セロニアス・モンクの3曲、それからハービー・ニコルスの「Lady Sings the Blues」と「2300 Skiddoo」。

ニコルスのすぐれたカバー演奏といえば、ダック・ベイカーのギターソロや、ラズウェル・ラッド、スティーヴ・レイシー、ミシャ・メンゲルベルク、ケント・カーター、ハン・ベニンクの『Regeneration』を傑出した作品として思い出すのだが、それらは、ニコルスの重力圏に身を寄せたように単線のラインによるものだった。一方、ここでのナバトフは、複数のきらびやかなラインを華麗に紙縒り合わせてゆく。こんなニコルスをはじめて聴いた。

●サイモン・ナバトフ
サイモン・ナバトフ@新宿ピットイン(2017年)
サイモン・ナバトフ+マックス・ジョンソン+マイケル・サリン『Free Reservoir』(2016年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(ナバトフとマティアス・シューベルトとの共演作について)
サイモン・ナバトフ+トム・レイニー『Steady Now』
(2005年)


マイケル・フォスター+ベン・ベネット『In It』

2018-05-10 16:37:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

マイケル・フォスター+ベン・ベネット『In It』(Astral Spirits/Monofonus Press、2016年)を聴く。

Ben Bennett (ds, perc, membranophones)
Michael Foster (ts, ss, aerophones)

サックスとドラムスとのデュオ、しかもかなり苛烈なもの。ふと高木元輝と富樫雅彦とのデュオを思い出したりもするが、ここにはそのような一途さや情念などはない。もちろんすかしていたりテクに走ったりしているわけではない。

マイケル・フォスターはその幅広さが面白い。ほとんど枯れ木が朽ちたり、重い木の扉が閉められたりするような、ただごとでない軋みである。『While We Still Have Bodies』でのプレイとはまったく違う。マッツ・グスタフソンがミシャ・メンゲルベルクと共演した『Live in Holland』(1997年)ではじめてマッツのことを知り驚いたときの感覚が蘇ってきた。

●マイケル・フォスター
「JazzTokyo」のNY特集(2017/4/1)(マイケル・フォスター+リチャード・カマーマンの「The New York Review of Cocksucking」)
『While We Still Have Bodies』(2016年)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/5/1)(マイケル・フォスター+レイラ・ボルドレイユ『The Caustic Ballads』)
While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden(2015年)


テイラー・ホー・バイナム+マーク・ドレッサー『THB Bootlegs Volume 4: Duo with Mark Dresser』

2018-05-10 11:32:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

テイラー・ホー・バイナム+マーク・ドレッサー『THB Bootlegs Volume 4: Duo with Mark Dresser』(THB Music、2014年)を聴く。

Taylor Ho Bynum (cor)
Mark Dresser (b)

テイラー・ホー・バイナムのコルネットは、ミニマルというのとも違う気がするが、華美なものがなく、どや顔での吹きまくりもなく、常に発話というプロセス自体がクローズアップされているようなものである。従って対話空間における演奏も聴き所が多い。

ここではマーク・ドレッサーとのデュオ。かれのコントラバスにもまた中庸の素晴らしさがある。その結果、バイナムとの対話は肩肘張らずふわっとした境界内でのふたりの自然な佇まいが形となっているように思える。滋味があってとても気持ちが良い。

●テイラー・ホー・バイナム
トマ・フジワラ『Triple Double』(2017年)
『Illegal Crowns』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)
ザ・コンバージェンス・カルテット『Slow and Steady』(2011年)
アンソニー・ブラクストンとテイラー・ホー・バイナムのデュオの映像『Duo (Amherst) 2010』(2010年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)

●マーク・ドレッサー
マーク・ドレッサー7@The Stone(2017年)
マーク・ドレッサー7『Sedimental You』(2015-16年)
マーク・ドレッサー『Unveil』、『Nourishments』(2003-04年、-2013年)
『苦悩の人々』再演
(2011年)
クリスペル+ドレッサー+ヘミングウェイ『Play Braxton』(2010年)
スティーヴ・リーマン『Interface』(2003年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998年、2001年)
ジェリー・ヘミングウェイ『Down to the Wire』(1991年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)


ベン・ラマー・ゲイ『Downtown Castles Can Never Block The Sun』

2018-05-10 09:51:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

ベン・ラマー・ゲイ『Downtown Castles Can Never Block The Sun』International Anthem Recording Company、-2018年)を聴く。

Ben LaMar Gay (cor, syn, voice, fl, etc.)
Some Yoga Teacher (banjo) (tracks: 5 & 6)
Rob Frye (bcl, fl) (tracks: 1, 2, 3, 7 & 8)
Tommaso Moretti (ds, fl) (tracks: 10, 11, 14 & 15)
Will Faber (g, syn, fl) (tracks: 14 & 15)
Ed Bornstein (performer) (tracks: 13)
Polyphonic (syn, drum programming) (tracks: 5 & 6)
Jayve Montgomery (ts) (tracks: 1, 2, 3, 7 & 8)
Joshua Sirotiak (tuba, fl) (tracks: 14 & 15)
Hanna Brock (viola, voice) (tracks: 1, 2, 3, 7 & 8)
M'rald Calhoun (vln) (tracks: 5 & 6)
Gira Dahnee (voice) (tracks: 1, 2, 3, 7 & 8)
Zuzu Fé (voice) (tracks: 1, 2, 3, 7 & 8)

もともとシカゴ生まれで、ジェフ・パーカーやジョシュア・エイブラムスらシカゴの面々とジャズ的な活動をしていた人である。傑作、ジェイミー・ブランチ『Fly or Die』にもコルネットのオーバーダブで少し参加している。

しかしそれと本盤のサウンドとはまたずいぶん距離がある。ジャズも、人いきれがするような空間でのアンビエントな音も、賑々しい勢いも、ポエトリー・リーディングも、クラブのビートも、少し猟奇的な雰囲気もある。現代音楽的なアプローチもある。ベン・ラマー・ゲイ自身のコルネットも聴ける。

それが曲ごとに工夫を凝らして詰められている。聴けば聴くほど麻薬的になっていく。傑作。

●ベン・ラマー・ゲイ
ジェイミー・ブランチ『Fly or Die』(-2017年)


フィリップ・ホワイト+クリス・ピッツィオコス『Collapse』

2018-05-09 09:00:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

フィリップ・ホワイト+クリス・ピッツィオコス『Collapse』(-2018年)を聴く。

Philip White (electronics)
Chris Pitsiokos (as)

いま手元になくて聴き比べられないのだが、このデュオによる前作『Paroxysm』(2014年)よりもかなり進化した印象がある。

『Paroxysm』は異物の衝突という感があった。しかしそこでも、偉大なキメラたるピッツィオコスはエレクトロニクスに擬態もし驚かされた。

そして本盤はというと、衝突から融合へと歩を進めている。もはやピッツィオコスはエレクトロニクスそのものでもあり、ホワイトは身体の一部としてエレクトロニクスを使っている(エレクトロニクスと化している)。機械伯爵の未来は気が付くともうそこにあったのだ。

解説によれば、2枚の間にはいろいろと融合に向けた工夫もあった。「During the gap between albums, White designed and built a new feedback based instrument capable of analyzing and dynamically responding to Pitsiokos’s sound as well as its own in real time, giving rise to a third, alternative intelligence between them. 」

●クリス・ピッツィオコス
JazzTokyoのクリス・ピッツィオコス特集その2(2017年)
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
クリス・ピッツィオコス+ヒカシュー+沖至@JAZZ ARTせんがわ(JazzTokyo)(2017年)
CPユニット『Before the Heat Death』(2016年)
クリス・ピッツィオコス『One Eye with a Microscope Attached』(2016年)
ニューヨーク、冬の終わりのライヴ日記(2015年)
クリス・ピッツィオコス@Shapeshifter Lab、Don Pedro(2015年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
ドレ・ホチェヴァー『Collective Effervescence』(2014年)
ウィーゼル・ウォルター+クリス・ピッツィオコス『Drawn and Quartered』(2014年)
クリス・ピッツィオコス+フィリップ・ホワイト『Paroxysm』(2014年)
クリス・ピッツィオコス『Maximalism』(2013年) 


マタナ・ロバーツ+サム・シャラビ+ニコラス・カロイア『Feldspar』

2018-05-08 20:25:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

マタナ・ロバーツ+サム・シャラビ+ニコラス・カロイア『Feldspar』(Tour de Bras、2011年)を聴く。

Matana Roberts (as)
Sam Shalabi (g)
Nicolas Caloia (b)

2011年、モントリオールにおける共演。

サム・シャラビはエジプト出身の弦楽器奏者であり、ここでは、割れたような音色とともに中東音階の演奏を行う。また地元のニコラス・カロイアのベースもユニークであって、ふたりでマタナ・ロバーツを取り囲むような浮遊するサウンドを作っている。

その中のマタナ。Coin Coinシリーズを知っている今、このようにアンビエントな雰囲気で人の匂いがするアルトを吹くという指向性があったのだなと思える。実際に、このときにはじまったことでもなく、2002-03年頃の「Sticks and Stones」において土埃にまみれたサックストリオの音を出していたのだった。

●マタナ・ロバーツ
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
マタナ・ロバーツ『Coin Coin Chapter Three: River Run Thee』(2015年)
マタナ・ロバーツ『Always.』(2014年)
マタナ・ロバーツ『The Chicago Project』(-2007年)
アイレット・ローズ・ゴットリーブ『Internal - External』(2004年)
Sticks and Stonesの2枚、マタナ・ロバーツ『Live in London』(2002、03、11年)


ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』

2018-05-08 17:20:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(Tubapede Records、-2016年)を聴く。

Joachim Badenhorst (cl, bcl, tubes, some Flemish chanting)
Dan Peck (tuba, tubes)

ダン・ペックの下からのロングトーンやグロウルが、まさにこのジャケット画のように暗い中でのさまざまな形を描き出している。ひたすら吹いて音のグラデーションを作る間、何を考えているのだろう。

それと対話したり、雰囲気の中で散歩したり遊泳したりする、ヨアヒム・バーデンホルストのクラやバスクラ。思索しながら中間領域に居続ける音が本当に好きなのだ。旅や日常生活の様子をアップする、かれのインスタグラムのようで。(今年の11月ころにまた日本に行こうかな、とか言っていた。楽しみだ)

とくにグラデーションがドラマになってしまう、5曲目のタイトル曲にグッとくる。熱烈推薦。

●ダン・ペック
イングリッド・ラウブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
イングリッド・ラウブロック『ubatuba』(2014年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2008、13年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)

●ヨアヒム・バーデンホルスト
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 


ローガン・リチャードソン『Blues People』

2018-05-08 09:21:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

ローガン・リチャードソン『Blues People』(Ropeadope、2017年)を聴く。

Logan Richardson (as)
Justus West (g, vo)
Igor Osypov (g)
DeAndre Manning (b)
Ryan Lee (ds)

ブルースとロックを濃厚に入れ込んだ作品。すこし懐古的なテイストもあるけれど、ツインギターによるむんむんとした夜の雰囲気は悪くない。それに乗せてリチャードソンが透明なロングトーンを吹き続けていて、まるで夜の映画である。ライヴをやるとしてもこのようなサウンドをキメまくるのかな。

リチャードソンの前作『Shift』はパット・メセニーとの相性がどうもいまひとつだったのだが、今回のギターでハマった感じ。

●ローガン・リチャードソン
ローガン・リチャードソン『Shift』(2013年)
ローガン・リチャードソン『Cerebral Flow』(2006年)


ルイ・スクラヴィス+ティム・バーン+ノエル・アクショテ『Saalfelden '95』

2018-05-07 14:03:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

ルイ・スクラヴィス+ティム・バーン+ノエル・アクショテ『Saalfelden '95』(Noël Akchoté Downloads、1995年)を聴く。

Louis Sclavis (cl, bcl)
Tim Berne (as, bs)
Noël Akchoté (g)

1995年、ザールフェルデンでのライヴ。ジャケット写真はギィ・ル・ケレックである。なお同時期に同じくルイ・スクラヴィスを含めた音源をセットとして、ケレックは『carnet de routes』という写真集を出している。

怪物的な3人の共演であるからそれは面白い。

ノエル・アクショテがあやしくアウラを醸成し、その中で、スクラヴィスとティム・バーンが吹く。スクラヴィスは特にバスクラでは伽藍のごとき構造物を創り出す巨匠であり、一方で、バーンは遊撃的・猛禽類的に肉をついばんでいるような感がある。

●ルイ・スクラヴィス
ヨーロッパ・ジャズの矜持『Play Your Own Thing』
(2007年)
ジャズ的写真集(5) ギィ・ル・ケレック『carnet de routes』(1995年)

●ティム・バーン
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
ティム・バーン+マット・ミッチェル『Angel Dusk』(2017年)
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ティム・バーン+マルク・デュクレ+トム・レイニー『Big Satan』(1996年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)
ジュリアス・ヘンフィルのBlack Saintのボックスセット(1977-93年)

●ノエル・アクショテ
フィル・ミントン+ロル・コクスヒル+ノエル・アクショテ『My Chelsea』(1997年)
コクスヒル/ミントン/アクショテのクリスマス集(1997年)


ジョシュ・シントン『krasa』

2018-05-07 08:38:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョシュ・シントン『krasa』(Irabbagast、2017年)を聴く。

Josh Sinton (contrabass clarinet)

コントラバス・クラリネットのみのソロ演奏、オーバーダブ無し。

よくわからない人ではあるがやはり面白い、ジョシュ・シントン。いちど演奏を観たときも、次なる音世界をにらんで自分が出す要素の効果を模索し続けるという印象があった。

ここではコントラバス・クラリネットが超低音であるからこそ高音ももたらしており、その鼓膜を痒くさせるような破裂音やノイズと相まって、まるでエレクトリックギターのようにも聴こえたりする。

ところでこれをリリースしたのはジョン・イラバゴンのレーベル。かれはジャズ寄りに移行したのかと思っていたのだが、実験的な世界もまだまだ見つめているのだな。

●ジョシュ・シントン
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ネイト・ウーリー『(Dance to) The Early Music』(2015年)
Ideal Bread『Beating the Teens / Songs of Steve Lacy』(2014年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)


ジェイソン・モラン『Bangs』

2018-05-07 08:14:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェイソン・モラン『Bangs』(Yes Records、2016年)を聴く。

Jason Moran (p)
Mary Halvorson (g)
Ron Miles (cor)

変わった顔合わせだが、実際に音に接してみると、なるほど三者三様の色を発揮していて妙に納得する。

やはりロン・マイルスが入るとオールド・アメリカの雰囲気が醸し出されるのかな。メアリー・ハルヴァーソンもそんな流れのときにはアメリカンにコード演奏で合わせつつも、しかしやはり随時ぐにゃりと重力の特異点を落とし穴として差し出しており、つい笑ってしまう。変態だなあ。そしてジェイソン・モランは引き出しの多さを自然体で使って柔らかくまとめ上げている。

●ジェイソン・モラン
アーチー・シェップ『Tribute to John Coltrane』(2017年)
デイヴィッド・マレイ feat. ソール・ウィリアムズ『Blues for Memo』
(2015年)
ヘンリー・スレッギル(12) 『Old Locks and Irregular Verbs』(2015年)
ホセ・ジェイムズ『Yesterday I Had the Blues』(2014年)
ローガン・リチャードソン『Shift』(2013年)
トリオ3+ジェイソン・モラン『Refraction - Breakin' Glass』(2012年)
ポール・モチアンのトリオ(1979、2009年)