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「思い出トランプ」向田邦子

2010年03月03日 22時21分54秒 | 読書(小説/日本)

「思い出トランプ」向田邦子(新潮文庫)

短編小説集、13編収録されている。
先日読んだ「あ・うん」がよかったので、引き続き読んだ。
これには、直木賞受賞作品が3編含まれている。
「かわうそ」
「犬小屋」
「花の名前」
私は「かわうそ」が一番好み。
「犬小屋」は、電車で偶然顔見知りに出会うところから回想に入る巧さ。
(ヒロイン、ちょっとタカビーで好感度低いけど)
「花の名前」は、どんでん返しの妙。
上記以外の作品もレベルが高い、絶妙な切り口、名人芸が楽しめる。
なんとなく、円熟期の田辺聖子さんを思い出した。、
(田辺聖子さん昭和3年生まれ、向田邦子さん昭和4年生まれ、年齢も近い)
でも、笑いのタイプは異なる。
漫才と落語の違い?
ユーモアとウィットの違い?
大阪弁と標準語の違い?
向田邦子さんは、そこまで笑いを追求していないし。
どちらかというと、人生の断面をシャープな切り口で見せる巧さか。
気になったのは、「匂い」の描写が多いこと。
これだけ、匂いに敏感な作家は初めて。
(心理学で、匂いに敏感なのは感情が豊か、と聞いたような気がする)

【ネット上の紹介】
心に沁みる。泣けてくる。
これぞ不滅の恋愛小説.。 
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。
おきゃんでかわうそのような残忍さをもつ人妻。
毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。
やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――
日常生活の中で、誰もがひとつやふたつはもっている弱さや、
狡さ、うしろめたさを人間の愛しさとして捉えた13編。
直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」などを収録。

(以上、ネット上の紹介終了)

匂いで、思い出したけど、貴志祐介さんの「黒い家」では、
恐ろしく匂いに鈍感な登場人物が出てくる。
これがまた、怖いのなんのって。
(映画化もされていて、大竹しのぶさんが怪演されていた)
日本ミステリ史上、屈指の名作と感じる。
でも、貴志祐介作品では、「ISOLA」の方が、私の趣味。

おせいさんの落語(筑摩書房)


「推理短編六佳撰」北村薫・宮部みゆき・選

2010年03月03日 21時53分05秒 | 読書(小説/日本)
「推理短編六佳撰」北村薫・宮部みゆき・選(創元推理文庫)

なぜ読んだかと言うと、「瑠璃光寺」が収録されているから。
実はこれ、デビューする前の永井するみさんの短編。
応募総数362編。
この中から6編が絞られた。
どの作品もレベルが高い。
それでも、プロの作品と比べると落ちるし、
永井するみさんの「瑠璃光寺」も、後の作品と比べると見劣りする。
が、現在の実力を予感させる、光るものはある。
それを感じることが出来てよかった。
撰者の北村薫さんも「うまさを超えたものがある」、と評し、
宮部みゆきさんも、書き出しは素晴らしい、と褒めている。
ただ、登場人物に魅力が足りない、と。
「これだけのドラマを支えきるだけの役者じゃない」、と厳しいコメント。
この後、デビューして14年目。
魅力的な登場人物を生み続けている。
進化している、って事でしょうね。