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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

スペインより帰国、ito君コメント

2010年03月07日 20時06分16秒 | クライミング(寄稿文)
3月1日、クライミング情報を書いた。
ito君が、8c+をRPした、と。
感激したので、連絡をとって、メールをやりとりした。
本人了解のもと、内容を公開する。
皆さんの励みにもなるし、モチも上がる、と思う。
まず、スペインでの訪問エリアはシウラナサンタリーニャ
今回のツアーで登った主なルートは、次のとおり。

8b+、4本:
ドグマ、カレアボロカ、・・・シウラナで2本。
ロックファックス、ロリータシャル、・・・サンタ リーニャで2本。

8c、3本(なお、前回2本RPしているので、合計5本となる):
イングラビス、ロリータシャルマEX、ファベリータ、・・・全てサンタリーニャ。

8c+、1本:
イングラビスEx・・・サンタ リーニャ

以下、ito君からのメールの転載・・・

★(イングラビスEx、8c+について)
とりあえずルート説明ですが、サンタリーニャのど真ん中付近をインナーのガバやポッケをつないでトラバースしていく素直なルートです。
そこから一気にガツンと悪い核心。
コルネとアンダー一本指こなしたら、8b+の核心のパートに合流。
息つく暇なくやってくるのでかなりココでボディーがやられます。
ちなみにふり続く雨でこの一帯が染み出して苦労しました。
あとは微妙に落ちそうなパートはありますが、ここまできたら8cは終了です。
そしてガバでレストしたら、ここから本番。
カチの連続から続くガストンポッケ止めて、悪いカチとスローパーでクリップしたら、更に真上にあるアンダーをガストンし、
体幹で体を押し上げて更にアンダー、そして極悪カチでランジでフィ ニッシュです。

★(グレードについて)
他の8c+と比べるとムーブ自体さほど悪くはなく、お買得感はあります。
ただ体が万全では無い僕にとっては、体幹、前腕、精神全てが半端無いくらいに限界に達するルートで、最後のランジが簡単にはとまりませんでした。
8c+、日本にいる時は時間の問題かな~なんて思ってました。
でもハッキリ言って完全に井の中の蛙でした。
日本の高グレードのグレーディングはまた別物ですね
(スライドがあっているかどうか・・・)
僕的にはメタフォースがグレードダウンされ て8cとスライドがあう感じがあります。
8cと8c+の間にはとてつも無い壁がある様な気がしました。
そしてヨーロッパの連中はそれをわかってます。
とにかく8c+になると全くムーブが出来なくなる様なものが殆んどでした。
次回はそんなスタンダードな8c+を登りたいです。

★(今後の展望とトレーニングについて)
ちなみにさっき8cと8c+の違い書きましたが、8cを5本登れていてもそう思います。
というか登ったから余計に違いに気付いたのかもしれません。
なので9aはかなりヤバイですね。
でもココまで来てようやく、自分の弱点だけでなく、多くの失敗に気付かされました。
トレーニングは全て一からやり直しかなーと5年経って出した答えです。
でも一つだけ絶対に忘れたく無いのは「あきらめたらあかん」って事ですか。
でもこれからは少し肩の力ぬいてtake it easyで。

(以上、転載終了)

いかがでしたか?
励みになりましたか?
モチも上がりましたか?
我々も目指すグレードは違っても、同じクライミングの同志。
参考にすべき点を取り入れ、見習いたい。

ところで、上記コメントでも触れているように、かなり体調悪かったようだ。
オーバートレーニングからくる慢性疲労。
眼の調子も悪く、視界不良。
それにもかかわらず、成果を出したのは自信につながった、と思われる。
(私は底力を感じた)
クライミングを始めて約5年。(それも、20代半ばから)
こんな短期間で、よくこれだけ上達したものだ。
驚異の身体能力と精神力だ。
今後のますますの健闘に期待したい。
(でも、故障と怪我には気をつけて・・・クライミング界に『休業補償』の言葉はないから)

「隣の女」向田邦子

2010年03月07日 08時46分18秒 | 読書(小説/日本)

「隣の女」向田邦子(文春文庫)

短編集、次の5作収録。
「隣りの女」
「幸福」
「胡桃の部屋」
「下駄」
「春が来た」(これが絶筆となる)
昭和55年から56年の作品が集められている。
向田邦子さんは昭和56年8月の航空機事故で亡くなれれているので、
最晩年の作品集、ってことになる。
(以下、ネタバレ有りなので未読の方注意)

「隣りの女」は、平凡なサラリーマン夫婦の隣に、スナックのママさんが住んでいる、って設定。
この夫婦の妻が浮気をするんだけど、その時の夫とスナックのママさんの会話。
「結婚して」
「七年です」
「水商売ってのは七年やれば一人前だけど、結婚てのは七年じゃだめなのねえ」

その後、ママさんは、その夫を自分の部屋(つまり隣家)へ誘う。
「おんなじ間取りだね」
「そうよ。同じ間取りよ」
 ワイシャツを脱がせ、集太郎の手を自分のからだに廻させた。
「女も同じ間取りよ」

・・・この会話、うまい!
さて、この後どうなったか、自分で読んでみて。

「幸福」はドラマ化もされたようだ。
姉妹2人が登場するけど、この人物描写がうまい。
―妹を正座で楷書とすれば、姉は膝を崩した行書草書であった。
さらにインパクトあるのは、またまた匂いについて。
ヒロイン・素子のワキガが超くさい、って設定。
未だかつて、こんなヒロイン設定があっただろうか?
やがて、それがオチにつながっていく。

「胡桃の部屋」は、私の一番の好み。
父が蒸発して、若い女と住んでいる、って話。
父がいなくなったため、娘の桃子は「父」の役をやらざるをえない。
ニックネームが桃太郎。
職場の慰安旅行にも行かず、真面目にOLをして、弟や妹の学費をかせぐ。
もっとも印象に残るのは、桃子が父の愛人がやってるおでん屋を訪ねるシーン。
P141・・・
急に女が、あ、と言った。
 急に真面目な顔になり、スカーフを取ってお辞儀をした。おでん鍋に頭がくっつく程の、ひどく切実なお辞儀だった。

・・・いきなり核心描写で申し訳ない。
これも、その後の展開どうなるか読んでみて。
まだこれは中盤どころ、最終にどんでんがえしがあるから。
ところで、読んでいて、もうなんか『海街』(吉田秋生)の長女・幸(さち)を思い出した。
長女はどうしても「強く」ならざるをえないのだろう。

「下駄」は、父親が母親以外に生ませた「弟」が突然現れる話。
妙に嬉しかったり、腹立たしかったり、その微妙な心理描写がうまい。

「春が来た」は、絶筆となる最後の作品。
直子が恋人・風見を家に連れてきたことから、様々な波紋が広がる様子を描く。
「せつない」状況を小説で描くのは難しいが、見事に表現している。


(↑「海街diary」、現在3巻まで出版されている、未来の古典間違いなし!)